犬神チルドレンの女の子の一人が土屋アンナ主演の「さくらん」を観たのがきっかけで、花魁と遊女に興味を持ち、夏休みのあいだ図書館で遊女について調べ物をしていたけれども、市の図書館は当たり障りのない風俗の視点からの本ばかりなので、遊女の心に肉迫したい彼女は不満であった。
そこで、犬神図書館に遊女について書かれた最良の本はありませんかと問い合わせてきた。
私は暑気あたりでふせっていたが、携帯メールでサラさんに竹内智恵子著「鬼灯火の実は赤いよ」を貸し出すように指示した。
他にも同じ著者による「昭和遊女考」、「鬼追い」があるのでそれらも貸し出しを指示した。
女の子への携帯メールで、以下の「鬼灯火の実は赤いよ」のなかの一文を送った。
鬼灯火(ほおずき)って白い花が咲くんだいね。
いつか青い実になって、やんがて赤くなる、外の袋が次第に青から赤になって、真っ赤に熟する頃、十五夜様になるんだいね。
女郎の腹に居付いた鬼子は、青い実になったかならんうち、鬼追いださね。
実が赤うなっちゃ、女郎の腹は、十五夜様みたくまんまるフグの横っとび、したらば女郎はお稼ぎにならんで追借で嘆くわいね。
鬼灯火の実は赤いよ。
根があって、葉があって、お天道様の陽の下で大威張りだいね。
その根が、女郎の腹の鬼子追う魔力あるのんに、なして、あんなにキレエな実が成るんだい。
赤い実にも毒はあるろかね。
鬼灯火の実は、赤いよ。
ゾゾ気する程、きれくて赤いよ。
そのまま、歌詞になりそうなこの文章は、著者による東北出身の遊女たちからの聞き書きのひとつである。
読んだ女の子は大いに感動したらしく、蒸し暑い熱帯夜にもかかわらず、自転車でサラさんのお寺(犬神図書館の近くにある日蓮宗のお寺。サラさんはそこの娘)に駆けつけ、サラさんとともに犬神図書館からくだんの本を借りていった。
その子はお稽古で三味線や琴を習っているとのことだから、冗談めかしてああいうのを歌ってごらんよとメールしたら、何と本気で曲をつけて歌うつもりだそうである。
もしうまくいくならば。
エレキ三味線、エレキ琴、そしてエレキ琵琶を作ってあげよう。
三上寛以来の怨歌の誕生だ。
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