2004年08月15日(日)
君にデレク・ジャーマンの詩を。
小学校、中学校、高校、大学を問わず、同窓会に招かれる前に、私は必ず「誰か死んだのはいるかい?」と聞いていた。
二十代の頃は、私特有の毒舌として聞き流されていたが、三十も半ばに突入すると、本当に死んだ者が出てきたので、最初の同窓の死以来、毒舌はきっぱり封印してしまった。
昨日に生まれ、今日を生き、明日で死ぬ・・・
この言葉は、日記を書いていない間に、死んだ高校時代の友人の葬式で読み上げた弔辞の一部である。
親友というわけではなかったが、放課後、たまたま帰り道が一緒になると、決まって、遠回りして、大町自然公園の辺りをぶらぶらしていた仲だった。
当時は、まだ、動植物園がなくて、ほんとうに、鬱蒼とした森林の真っ只中だった。
シャツに緑色の染みが出来るくらい、二人して緑の中に横たわって、足元から腕まで這い登ってくる蟻をじっと眺めたり、風に揺れる百合の花を目玉の奥に吸い込んだりしていた。
「一人でじっとしているのも好きだが、二人でこうしているのも悪くないね」と当時の死んだ友人。
「一人より二人の方が怪しく見えねえだろ」と私。
お互い、ニヤリと笑い合う。
「犬神とそういう仲になるなら、サボテンがいっぱい並んだ植物園の中で抱き合いたいね」
「サボテンが好きなのかい?」
「うん。あっちの方が緑が濃いからね」
「ふーん」
後に、二人でミニシアターにて、デレク・ジャーマンの「ザ・ガーデン」を観た時は、お互い、顔を見るのも気恥ずかしくて、帰り道はずっと顔をそむけたまま押し黙っていた。
理由は分かりすぎるくらい、分かっていた。
お互いの求めるものが、すべて、あの映画作品に込められていたからだ。
そして今。
生き残った私は、死せる君へ何も恥じることなく、愛を込めて詩を朗読しよう。
デレク・ジャーマン「おやすみ、ジョニー」
天はさらさらと崩れた
千の太陽より熱い炎が
ひばりの歌声をのみつくした
永劫の歴史はここに終わり
粉々に砕けてカオスの彼方へ帰っていった
だからもう始まりも終わりもないんだ
死亡記事も最期の審判も必要ない
発電所は時間通りに始業のチャイムを鳴らす
海辺に立ち並び ブンブンと音をたてて
フィッシュ・アンド・チップスを掲げている
日暮れに私は
川岸の向こうから流れてきた声を聴いた
「通行車はX線の手荷物検査にご協力下さい・・・」
「検査は三回行われます・・・」
なるほど静かな一日だ
私は核のお茶を入れ
入江に迫る嵐にそなえて塀を修理した
九時半にやっと
リッドの教会の向こうに日が落ちる
紫羅欄花が夜風に香る
十時、私はランタンを灯す
青灰色の塀の壁に
明るいピンク色の蛾がちらちら光る
私は本のページをぺらぺらめくり
小象のような咳をする
私は庭を歩く
死んだ友たちの手をとりながら
霜に被われた私の世代に
老いはあっという間に訪れ
冷たく冷たく冷たくなって 友たちは静かに死んだ
忘れられた人々は泣き叫んだのか?
あきらめのため息をつき
無知に小さな声で抗議しながら
冷たく冷たく冷たくなって 静かに死んだ
私はもう言葉もない
私の震える手では
この怒りを表せない
ただ悲しみだけがある
もう言葉はない
冷たく冷たく冷たくなって おまえも静かに死んだ
朝四時につながれた手
街の地下深く
おまえは眠っている
甘く芳しい詩をもう聴くこともない
冷たく冷たくなって 静かに死んだ
マシューはマークとファックし、マークはルークとルークはジョンと ジョンはいま私が横になっている
この寝台で寝た
どうかこの詩をうたいながら もう一度
私の指に触れておくれ
冷たく冷たく冷たくなって 私たちは静かに死ぬ
私の紫羅欄花 薔薇 青スミレ
朽ちた果てた美しき庭よ
来年、また咲きますように
冷たく冷たく冷たくなって 私は静かに死ぬ
おやすみ 少年たち
おやすみ ジョニー
おやすみ おやすみ
死せる友よ、緑はだんだん少なくなっていく一方だが、私が生きている限り、私たちの緑は青々と輝いている。
今日はここまで。
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