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ジャンピエールテンシンの庭コミュの初夏のお庭だよりファイル

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初夏のオニワから坂道へ
(The Rock of Tenshin Garden より抜粋・和訳)

さて、竹林が途切れたあたりになると、日の光が差し込んでくる。
そこからしばらくは、まばらになった竹の根元を被うように
青々とした葉蘭(はらん)の茂みが続く。

もし、自分が今、寿司職人として修行中の身であったなら、
葉蘭の茂みは、また別の意味を持っていただろう。
しかし、本当に寿司職人であったなら、
人々が休みを取っているこんな日の昼どきに、
小さな羊歯類や苔の発達に喜びを感じながら
坂道を歩きつづけていることはできない。

「雅」、「春霞」、「能登」、「光悦」、
などと名付けられた、
種々雑多で多様な寿司の組み合わせを前に、
到底推測しがたい集中力を持って、
あるいは、どこか別の空間にいるような、
無心の境地をもって、
巻き、包み、握る。そしてガリ。

「雅」の桶の、茶巾の上に乗っている小さな海老が、
かんぴょうの結び目と同期しているか、
「光悦」の桶の、最も目につく場所に、
小鰭、鯖、鰯、鰹、がその隊列をくずさないでいるかを
電子頭脳を搭載した最新気鋭の機械のように
次々とそして淡々と校閲していかなければならないのだ。
口に入れることは、許されない。

白い衣類をまとった若い男たちが、
いくつもの桶を持ち去ったあと、
小鰭や鰹の端きれをばらちらしのために纏めている自分は、
竹林の傍の坂道を歩いている自分とは、
まったく違う世界を生きている、はずである。

寿司職人は言う。
「小鰭は、一貫でいいですか?」
小鰭と鰹を一貫ずつにしてほしい旨を告げている自分は、
まだ一貫の寿司も口にしていない。
葉蘭は青々と、眼前に広がっている。

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