茶道の心を味わう研究会コミュの◆茶道の心、禅の心◆

茶道の心、禅の心　（その１）

半年も前のことになりましたが、世界で最初の禅学国際会議が今年の５月13、14日に京都・花園大学で行われました。出席者は100人程度の少数でしたが、私の目測では外国の方は２割が中国人、２割が東アジア、欧米、残りは日本人でした。

テーマは日本の臨済宗が主幹経典として基本に据えている臨済録（臨済禅師の語録）の研究と中国の臨済禅師1150年遠諱記念、並びに白隠禅師250年遠諱としていましたが、内外の発表者の多くはそれに囚われず、禅全般の伝搬について命題として発表していました。

1日目の最後に花大のアメリカ人教授と高位の日本人禅僧教授の二人の対話禅セッションでしたが、主発表者はアメリカ人のショア教授でした。ショア教授は日本で25年も禅に親しんで精通しており、禅の一般社会における有意性について論を展開しました。

中でも、貴重な禅の特色として、世界の人が日本の禅に惹かれるのは、①禅によってキリスト教の本源が良く理解できる、②禅には純粋修養の内容がある、③世界の宗教の中で唯一生活に結び付いているのが禅で、一般生活、床の間、茶室、空白の美、茶道などに結び付いている…ためであると述べました。

日本語での論説でしたが、一文毎に中国語で通訳するので制限時間オーバーでしたが、配布レジメではＱ＆Ａありとなっているので、終わらせようとする司会に向け、強い言葉で「質問有り」と手を上げました。

私がショア教授に質問したのは…禅の影響が日本の一般社会、茶道など日本文化全般に及んでおり、世界的に稀な展開であるというのは理解できる。白隠禅師は特権階級から一般庶民への教化先を転換し、思いやりの精神や日本文化に心を注入した。

しかし現代日本は個人主義、自己中心主義が台頭し、禅の影響は形式化している。茶席でも「今日是好日」の禅語を床の間に掛けては「今日は良い天気で、楽しくお茶が飲める楽しい日なのでこの軸を掛けました」などと表面の文字に捉われて説明している。今後禅は再度生活や文化に、その意識を注入できると考えているか？

ショア教授は答えに窮し、日本人禅僧教授に助けを求めましたが、「その可能性はある」というだけの回答でした。司会者はこの答えで十分かと問うので「了解」としましたが、質問の意義は、答えを求めたものではなく、あくまで禅問答であり、発表者二人の禅レベルを明らかにする質問でした。

夜は京都市内中心で、このコミュニティにも参加してくれているある方と飲む約束があり、急ぎ正門を出ようとすると、高齢の方が足早に追いかけてきて、「貴方の質問は本日の最高の問いかけであった。自分も禅の形式化、形骸化には憂慮している」と言われました。名刺交換したら、京都大学の哲学科の名誉教授でした。

翌日の会議でのエピソード…前に座っている若い女性と話をしましたが、中国の師範大学の先生でした。「昨日の貴方の質問は特に印象に残っていた。今朝の坐禅会では私は貴方の向かいに座っていた。引き続き交流したい。」後日、彼女の元へ茶道の心を展開している私が執筆の「茶道叢話抄」を何話か送りました。

…このシリーズは当面《その４》まで予定しています。
また、詳細な話の内容をお知りになりたい方は直接連絡ください。