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夜とスージーと文学とコミュの恋人たちのための中国語ー英語小辞典

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おれね、"A Concise Chinese-English Dictionary for Lovers"っていうペーパーバックを書店で見つけてね、なんの気なしに手に取ったんだ。『恋人たちのための中国語ー英語小辞典』、小説かい? 著者は? Xiaolu Guo? 中国人? 聞いたことないや。ちょっとめくってみようか、おや、手書きで、「sorry for my english」。え、sorry for my english? あらら、ほんとだ、超ブロークン・イングリッシュ、動詞が落ちてたり、時制が狂ってたり、スペルが間違ってたり、破れかぶれでまぬけでおたんちんであんぽんたんな文章。凄いね、ここまでやるかってくらい。ギャグ? 文学的趣向? 主題にふさわしい記述? 母語から切り離されたヒロインが異国をさまよう物語? どんなふうに展開するんだろう? どんな結末をつけるんだろう? 読んでみよっか、この、辞書形式で書かれた恋人たちのための物語を。







いま。
北京時間真夜中12時。
ロンドン時間午後5時。
でも、わたし、どちらでもない時間帯。わたし、飛行機のなか。地上より25000キロの上空に座って、学校で教わっていますぜんぶの英語をおもいだそうとがんばってます。
わたし、会ってない、あなた、まだ。あなた、未来のなか。


外を見てます雲の層。考えてます航空乗務員は長距離飛行のあいだ特別な時間ゾーンが必要、じゃなくちゃわたしのような乗客は時間について混乱してしまう。体が空気のなかをフロートしてるとき、彼女はどっちの国に属しているのかしら? 
中国人民共和国のパスポートは、わたしのポケットのなかで曲がってる。


信じらんなくない? わたしロンドンに到着しちゃってる。で、ここは「ヒースろー(Heathlow!)空港」なのね、ロンドン空港じゃなくて。どれひとつとってもややこしいね、そこいくと中国は北京空港だもん、たんじゅん明快。窓口は、エイリアンとノン・エイリアンに分かれてるのね。で、あたしはエイリアンってわけね。ハリウッドのばかげた奇怪な映画を連想しちゃう。わたしは異星に住む存在、おかしな格好とけったいな言語をしゃべる・・・。


わたし、テキストブックを取り出す、”How are you?”"I am very well, How are you?""I am very well." 質問と答えが一緒じゃん。中国のことわざにあるよ、「鳥には鳥の言語あり、獣には獣の会話あり」。なーんてこと考えてるうちに入国審査も無事通過、そしてわたしはコミュニズムの国からやって来た合法的旅行者になったってわけ。それからというもの、わたしはどこへ行くにも 紅い A Concise Chinese-English Dictionary と一緒なの、そ、毛沢東語録のように紅い小辞典と。コンサイズって、たんじゅんでクリーンって意味。







わたしはロンドンのボロいホステルに泊まって、コンサイズの序文を読む。見るからに完璧で、わけわけんない可能性の高い文章。でも、わたしはそのテの”完璧な英語”を学ばなくちゃならない。なぜって、わたしには英語が必要、中国へ戻って、両親のやっている靴工場をインタ−ナショナルなビジネスに発展させておカネを儲けるために。父も母も、自分たちの生涯を犬のような人生だと感じている、でもおカネがあれば人生の最後の年月をマシなものにできる、そしてわたしはより良い人生を作る、西洋の教育で。


それはそうと、このホステルってどーよ。ボロいし、臭いし、わたしまで古びたみたい。この部屋は、なにもかもが濁った血の色。わたし中国の手作りスーツケースを開ける、わたしの故郷、温州で作られたもの。温州は、政府が言うには、中国最大の工業都市、ハンガー、衣類、皮ベルト、皮バッグ、コンピューター関連、いろんな製品を作って、世界中に輸出している。わたしの両親の工場にも、日本、シンガポール、イスラエルから注文が入る。でも、ここは西洋、わたしは温州のすべてから切り離されている。


わたしはコンサイスを読む、Abacus そろばん  Abandon  放棄する、放り投げる Abashed 恥じ入る、当惑する Abattoir 食肉処理場 Abbess 尼僧院長 Abbey 修道院 Abbot 僧院長 Abbreviate 語句を省略する Abduct 誰かの手足を縛ってどこかへ誘拐すること・・・語は霞み、意味は失われる。イギリスで最初の夜、わたしは暗闇のなかに身を投げる、飛行機疲れとともに。





つづく

コメント(1)

全体は2ページから8ページ程度の短い断章で綴られ、
季節の移り変わりのなかで物語が展開します。
章タイトルは以下のとおり。


Before
prologue

February
hostel
full english breakfast
property
fog
beginner
puronoun
slogan
weather
confusion
homesick
progressive tenses



March
homesexial
guest
misunderstanding
bachelor
green fingers
fertilise
instruction
charm
vegeterian
noble


April
surprise
pub
drifter
bisexial
chinese cabbage + english slug
privacy
intimate
free world


May
custom
fart
home
colony


June
prostitute
heaven
romance


July
physical work
isolate
humoure
migraine


August
equal
frustration
nonsense
discord
identity
anarchist
hero
freedom
schengen space


September
paris
amesterdam
berlin
venice
tavira
faro
dublin


October
self
abortion
nostalgia
age
lighthouse

November
pathology
pessimism / optimism
electric
bestseller


December
future tense
possess
chrismas


January
betray
infinity
expel
dilemma
timing


February
contradiction
fatalism
race
departure


Afterwards
epilogue

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