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夜とスージーと文学とコミュの自由の樹のオオコウモリ

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その島を楽園と呼ぶのは、白い肌をしたよそ者の、いかがわしい夢にすぎない。そう、それはどこかえたいの知れない遠くの国からやって来て、気がついたら「こちらの」すべてを奪いさらんとしていた連中の、素性の怪しい夢だ。すなわち、ビリー・ザ・キッド、切り裂きジャック、アル・カポネをヒーローとする連中の、自分勝手な夢の投影だ。では、他方、その島にもともと暮らしていた「かれら」は、どんな夢を夢見てきただろう? 




「読者よ、おれは学校に行っていない−書けない、読めない、算数もない、なにもない。でも、おれの夢はビッグで、おれはなんでもビッグだ。おれはごくつぶしとみんな言う、でもおれは男だ。おれは教会のあるちっぽけな村から来た、だから信心がある。おれは愛いっぱいの家から来た、だからみんなに愛がある。おれは聖なるミュージックのある土地から来た、だからミュージックが歌える。おれはかあちゃんのおなかから笑いをもってきた。」



小説家ウェントは、オセアニアのちいさな島サモアに1939年に生まれ、サモア人の物語を描く、英語を使って。かれはよくよくわかっている、自分が用いる道具、英語が相手側の言語、そう、むしろ自分たちの文化を奪い取っていった連中の言語であることを。そしてこの短編集は、どうやら「あえて英語で書くこと」の可能性の諸相が追究しつくされているらしい感触が、翻訳をとおしてさえ、感じられる。



喩えて言えばウェントには、「ポストコロニアル時代の深沢七郎」のような趣がある。ただし、意味を読むのではなく、ゆっくりたのしみながら読むこと。ゲラゲラ笑いながら。




アルバート・ウェント著 河野至恩 訳『自由の樹のオオコウモリ』日経新聞社刊2006年

自由の樹のオオコウモリ;山の末裔;墨の十字架;フル大佐―つよい男のぜんぶをもった、生きているもっともつよい男;サラブレッドに乗った小悪魔;復活;ホワイトマンの到来;独立宣言;バージンワイズ―信心あるつまらない男のさいごの告白




(アルバート・ウェント)/著者は、1939年西サモア(現サモア)の首都アピア生まれ。サモア文学を代表する作家、詩人。ニュージーランドに留学し英語を修得。現在、ハワイ大学の客員教授。

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