「probability」は、まさにケインズの著作「A Treatise on Probability」の研究対象そのものである。
この著作の中でケインズが取り扱っている「probability」は、客観的であり論理的なものであるが、必ずしも数量化できるとは限らないものである。その意味では、この著作のタイトルは『確率論』ではなく『蓋然性論』と訳されるべきであるという意見も根強くある。(たとえば浅野栄一『ケインズの経済思考革命―思想・理論・政策のパラダイム転換』勁草書房、2005など)
ケインズは、「不可能(性)=impossibility」と「確実(性)=certainty」の間にあるものとして蓋然性(probability)を説明している。不可能を数字の「0」とし、確実を数字の「1」とすれば、その間の数値で表されるのは、我々が数学などで馴染み深い「確率」である。しかし、ケインズは「数値化できない蓋然性(non-numerical probabilities)」についても「A Treatise on Probability」の中で取り扱っている。