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【エヴァ】二人の瞬間コミュの【本編 Scene10(Aパート)】星のない夜へ

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残酷な天使がいるとしたら…
それは「希望をもたらす天使」の姿をしているだろう。
幸福の絶頂から失意のどん底に突き落とされる絶望感。
実体のない期待に誘われて歩き続ける、果てしのない徒労の旅…。

人が安易に絶望できるなら、それが一番幸せなのかも知れない。

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ネルフ中央作戦司令室・第二発令所。

室内はいつも以上に緊張した空気に包まれていた。
絶望的な作戦の進行中に敵が襲来したのだ。

マヤ  「パターン青。そ、そんな… こ、これはエヴァです。」
ミサト 「どちらの方角からなの?」
マヤ  「そ、それが…全方位から包囲した形で接近中です。総数は12機。」
ミサト 「なんですって?」
冬月  「これはダミープラグだな。碇、ゼーレの老人たちは本気だぞ」
ゲンドウ「なに、問題ない。エヴァに乗って誰かを守ろうとする意志さえあれば、
     アダムの進化は満たされる。今まで欠けていた要素は意志の力だけ
     だった…。今ならシンジは十分切り札として役に立つ。」

冬月  「…赤木博士。初号機の方はどうなっている?」
リツコ 「まだ、反応はありません。ただ、初号機とのシンクロ率は
     90%に達しています。」
ゲンドウ「とにかくゼーレのエヴァの足を止めろ。N2爆雷散布!」

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ネルフ本部地下セントラルドグマ内。
巨大に膨れ上がったアダムの蘇生体に初号機が胸まで没していた。
下半身の細胞は完全に同化している。
シンジは初号機の中でほとんど意識を失ったような状態になっている。

最終局面…「エンジェル・ダイビング」作戦は、凍結中のアダムに初号機ごと
入り込んで強引にシンクロし、一気に状況の解決を図ろうとするものだった。

神の子として作られた最初の人間…アダムは位から言えば「天使=使徒(ANGEL)」
より上位であり、彼らを従える立場にある。だが、人類は失楽園、バベルの塔、
ノアの箱船などの逸話にあるように、神の禁忌をことごとく破り、その地位を
失ってしまった。

そして今、滅びの淵に立った人類の最後の希望が、シンジと初号機なのだ。

アダムが元の地位と力を取り戻すことは、すなわち使徒の攻撃を受け付けなくなる
ことを意味する。しかし、シンクロに失敗すれば…アダムのエネルギーは暴走し、
地上は破壊し尽くされるだろう。それどころか一つ間違えば、神の世界を象徴する
…この太陽系そのものが失われるかも知れなかった。



アダムとエヴァが接触するとサードインパクトが起こる…
全てが嘘ではなかったのだ…。

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ゼーレがこの作戦を阻止しようとするのは、このアダムの力を手に入れようとする
ためであり、絶対権力を掌握するためであった。これまでネルフとゲンドウを監視
していた彼等はついに牙を剥いたのだ。だが、これが彼等の命取りとなった…。


スクリーンにはN2爆雷の洗礼を浴びる量産型エヴァ各機が映っていた。
何機かは実際に一時的な行動不能状態になったが、なお7機がジオフロントに
向かっていた。

冬月  「愚かな…この作戦を避けて、使徒襲来が収まることは
     ないというのに。」
ゲンドウ「止むを得んな。零号機を出せ。」
ミサト 「1対7ではとても勝ち目は…。」
ゲンドウ「いいから出せ!」
ミサト 「は、はい… エヴァー零号機、発進!」
冬月  「赤木博士。アダムとのシンクロはまだか?」
リツコ 「依然、初号機とのシンクロ率は上昇中ですが、まだ、アダムに
     反応はありません。シンジくんはトランス状態に入りました。」


プラズマを発しながら発進口からせり上がる零号機。
目前に達していた7機の量産型エヴァは一斉に零号機に襲いかかった。

かつてリツコが「人類にとってのひとすじの光明」と評した、レイの
ATフィールドはシンジという「守るもの」を得て明らかに変化していた。
外界からの変化を拒絶するだけの『内向的な排斥力』から
『誰かを守る意志の力』に…。

例え、それが作られたものだったとしても…。

レイは1対7の劣勢をものともせず、よく戦っていた。ダミープラグにはない
生命力というべきものがレイのATフィールドを鉄壁にしていた。
量産型エヴァは零号機のATフィールドに阻まれ、なかなか前進できない。

とはいえ、やはりレイの苦戦は否めなかった。一角を突破した量産型エヴァが、
零号機の肩口にプログナイフを突き立てた。激痛に身をよじるレイ。

ゲンドウ「伊吹二尉、現在の零号機の戦闘モニタを赤木博士の方に送れ。」
マヤ  「は、はい…。」

ゲンドウ「リツコ…わかっているな。」
リツコ 「はい…。」

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シンジはすでに人間の五感を失っていた…。アダムとエヴァにシンクロした世界
は、直感的なイメージだけが支配している漠然としたものだった。感情があるか
どうかさえ、すでに怪しい。もうろうとする意識の中で、シンジは茫洋たる不安
の海に堕ちていくような感触を抱いていた。シンクロ率が上がって行くに連れて
増す、自分自身の不安…自己防衛本能がそうさせているのだろう。

しかし今起こった、この胸騒ぎは明らかに別の危機を暗示していた。

その時、奔流のように零号機の戦闘イメージが流れ込んできた。
直通の神経パルスむき出しの感情… 強い意志で戦っているレイ。
しかし、それでも隠しきれない、恐怖感や危機感、絶望感、そして諦め…。
そのどれもが全て不吉なパルスばかりだった。

そして次の瞬間、まさに零号機の急所を直撃するイメージが飛び込んできた。
量産型エヴァが正面でプログナイフを構え、今にも突き刺そうとしている様が、
零号機の視点で頭に飛び込んできた。

シンジ「うわあああああああああ!!!!」

リツコ 「司令、初号機のシンクロ率は急上昇!一気に600パーセントを
     超えました! まだ…まだ伸びます。」
冬月  「碇め、酷いことをする。」
ゲンドウ「フッ… 予定通りだ。」
リツコ 「初号機のシンクロ率は666パーセントに達しました!
     アダムの神経パルスに影響!あ、初号機が…」

モニタが初号機とアダムの方に切り替えられた。アダムの背中、ちょうど初号機が
ダイブしている辺りから、まがまがしい光とともに羽根が開いていった。

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零号機は量産型エヴァが繰り出したプログナイフを間一髪で避けていた。
ATフィールドによるためだけではない。量産型エヴァの指揮系統に混乱が
生じていたのだ。一瞬、量産型エヴァの動きが止まっていた。

マヤ  「ゼーレ本部がたった今、消滅した模様!…
     使徒の攻撃だったようです。」
ゲンドウ「ついに来たか… 予定より早かったようだな…」
冬月  「なんのことだ?」
ゲンドウ「最後の使徒… 天の戦闘団・最強の大天使、
     ミカエルが襲来したのだ…」

    「奴はパルスに敏感だ。ゼーレ本部も量産型エヴァコントロール用の
     パルスを探知され、攻撃を受けたんだろう。」


次の瞬間、地鳴りがした。大天使ミカエルの荷粒子砲がジオフロントに直撃した。

冬月  「…あれがミカエルか?…まさか、ゼーレ本部はドイツのはずだぞ…」
ゲンドウ「クッ…迎撃しろ! 奴には瞬間移動能力がある。惑星上はどこだろうと
     一瞬で到達する。瞬間移動を妨げられるのはATフィールドのみだ」

リツコ 「司令、初号機の羽根が開いていきます!
     シンクロしたものと思われます。」
ゲンドウ「よし、すぐに出せ… 非常用カタパルトを使用しろ…」
リツコ 「まだ覚醒しきれていないと思われますが…」
ゲンドウ「かまわん。覚醒を待って、方舟が破壊されては元も子もない…
     急げ!…」

冬月  「…審判の日というわけか…」

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【つづく】
                           (初出 96/03/21)

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