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【エヴァ】二人の瞬間コミュの【本編 Scene13(Bパート)】Half and,Half

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レイはダークブラウンの瞳でアスカを見つめた。好奇心に満ちた目だった。


アスカ 「ファースト」
レイ  「あなたは…誰…」
アスカ 「…………………」
マヤ  「彼女と以前会ったことはない?…」
レイ  「え?…… ごめんなさい… わからないの。」

レイは本当に初対面であるといった風に、きょとんとした表情をしている。
対照的にアスカは失意のどん底といった表情をしている。

アスカ 「そんな…」


そんなアスカに対して、申し訳なさそうにうつむくレイに、
マヤが何かを手渡そうとした。

マヤ  「はい、おみやげ。葛城さんから。」

シンジ 「人形は…ダメだ…。」

ドアのかげから除いていたシンジはぼそっと呟いた。
しかし、レイの言葉はシンジの思いを裏切った。

レイ  「あ、小鳥の人形…」
    「かわいい! ありがとうございます。葛城さん。」

ミサト 「ミサト…でいいわよ。」

レイ  「ミサトさん…」
ミサト 「ん、なに?」
レイ  「ミサトさんって…十字架のネックレスしてるんですね。」
    「どうしてですか?」

ミサト 「んーん、どうしてって…昔からそうだったからねー。」
レイ  「ふーん…」
ミサト 「ひょっとして気に入った? …あなたにあげよっか…?」
レイ  「いいんですか? 嬉しい…。」

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シンジだけは、まだドアの外にいる。

無口でにぎやかな場所が苦手だったはずのレイ…
人形も十字架も嫌いだったレイ…。
やはり、シンジの知る彼女はそこにいなかった。



シンジ 「でも… やっぱり逢わなくちゃ… 」

『逃げちゃダメだ…』とシンジは自分に言い聞かせ、そして…
意を決したように入っていった。

レイ  「あ…」

次の瞬間、発せられる「あなた誰?」というレイの言葉が、
シンジには聞こえるようだった。思わずシンジは目をつぶっていた。

しかし、レイの言葉は、またもシンジの予想を裏切った。
それは、誰もが信じられない言葉だった。



レイ  「もしかして… し、シンジさん…? 来てくれたのね!」

レイの顔がぱぁっと明るくなった。嬉しさに輝いているような表情だった。

シンジ 「えっ?」

シンジ 「ボクのこと…わかるの?」
レイ  「なに言ってるの、シンジさん…。幼なじみでしょ?」
シンジ 「…ああ」


シンジは思い出していた。
アダムとのシンクロ率…666%を記録したあの日…。
自分の記憶、深層心理… そして、失われた過去の記憶まで… 
頭の中の全てが、アダムとの無言のやりとりの中で錯綜し、再認識された。

シンジはレイと子供の頃、逢っている。わずかながら言葉も交わしていた。

レイ  「ごめんなさい…」
シンジ 「どうして謝るの?」
レイ  「子供の時はあまり喋らなかったでしょ…
     どう言えばいいか判らなかったの、あの時は」


「どうして謝るの?」「どう言えばいいか判らない」

それは、いつもシンジを苦しませる言葉だった。いつも自分が不安だった。
しかし、そんな事は考えないようにしていた。昔からずっと…。

いま思うと、レイに対するなんとも言えない不安もそれに近いものだった。
レイを見てると… 目の前にいても、なぜか不確かで…。
次の瞬間には、どこかに行ってしまいそうな感じがした…。
きっと、自分の内面を見るようで嫌だったんだ。

だけど、いま話していて思う。
ボクには彼女が必要だった…。これまでも… これからも…。
もう失うわけには行かない。彼女は今、確かにここにいるのだ。

レイ  「夢の終わりは、夢のつづき…
     あなたに逢える…。そんな気がしてた…」

シンジ 「……………」
レイ  「……………」

二人の間に沈黙が流れた…。

長い沈黙だった…
それは…二人が失った大切な時間を取り戻そうとしているかのように見えた。

レイは懐かしそうに、飽きることなくシンジを見つめ…
シンジもまた、何かを考え…そして決意を固めるようにレイを見つめていた。




その沈黙を破ったのは、アスカだった。
アスカはそれまで言葉もなくうつむいていたが、
意を決したようにレイに近づいていった。


アスカ 「綾波さん、はじめまして… 私、惣流・アスカ・ラングレー。
     アスカでいいわ。よろしく。」
レイ  「よろしく…。」
アスカ 「レイって呼んでいい?」
レイ  「ええ、よろしくね、アスカさん。…シンジさんのお友達?」
アスカ 「そうよ、仲良くしましょうね。」

シンジ 「惣流…?」
アスカ 「もう、病院なんて辛気くさくて息が詰まるわ…。
     みんなでぱ〜っと遊びに行こうよ!ねっ。」
シンジ 「惣流、何もこんな時に…」
アスカ 「あんたバカぁ?こんな時だからうさばらしが必要なのよ」
    「ミサトぉ、レイも身体の方は、もう大丈夫なんでしょ?」

ミサト 「ま、まあね。検査は終わってるし…いいんじゃない?
     私とマヤは用があるから遠慮するけど…」

アスカ 「ふ〜ん。ま、しょうがないわね。とりあえず私たちだけで行こっか!
     ぱ〜っと行くわよ。もちろんシンジの奢りでねっ。」
シンジ 「なんでボクが? それに遊ぶとこなんてあんまりないよ!」
アスカ 「ぐだぐだ言わないの!さあ、レイも着替えて、着替えて」
レイ  「くすくす…。」

アスカ 「シンジ〜、なにしてんの?」
シンジ 「えっ?」
アスカ 「えっ?じゃないわよ!!さっさと出て行きなさいよ!
     着替えるんだから。」
シンジ 「えっ?あ、あ。」

真っ赤になるシンジを見て、レイが笑った。

レイ  「くすくす…。いいのよアスカさん。シンジさんもここにいて。」
シ&ア 「えっ?」
レイ  「そのかわり…。少しの間だけ… 後ろ…向いていてね。」
シンジ 「あっ、ああ…」

シンジは後ろを向いた。後ろから衣ずれの音が聞こえてくる。
シンジは高鳴る胸の動悸に戸惑っていたが、
やがて聞こえてきた、かすかな歌声に驚き… そして耳を奪われた。
歌声の主はレイだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


つーきーのふねーに わたしーをさそーってー

ほしぞらーのうーみでおどりましょうー

いえないー…おーもーいー おねがいー…くーちづーけてー

うーたごえをあなたーとーかさねてー

いつまでもうたいつーづけるーの

つきせぬーおーもーいーー

わたしをーみーつめーてー…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

リボンを結び終わったレイが振り向いて言った。

レイ  「シンジさん… 終わったわ…。もういいわよ。」
シンジ 「い、今の歌は…?」
レイ  「歌…?」
シンジ 「い、いま唄ってた歌は…どうやって憶えたの?」
レイ  「そういえば…どうして憶えてるのかしら?」

レイは少し考えてから言った。

レイ  「眠ってるときに聞こえていたような気がする。」
    「きっとお母さんが唄っていたのよ。」
シンジ 「お母さん…?」
レイ  「そう、お母さん… きっとそう…」



そこにいた中でミサトだけは知っていた…
レイの記憶がMAGIによって造られていたことを…。

そして直感していた。
この唄が、セントラルドグマの水槽の中で仮想記憶を移すときに聞かされて
いた歌だということを。そして、それは母の部分『バルタザール』が唄った
子守歌だということに…。

MAGIはこの少女について…
科学者として彼女の過酷な運命を冷徹に見つめ…
女としてゲンドウからの寵愛に嫉妬し…
そして、同じように母として愛さずにはいられなかったのではないかと…。

MAGI… 赤木ナオコ博士… リツコ…を思い…
そして、同じ女の業の深さを思い…ミサトは泣いた。

マヤ  「いいんですか?」
ミサト 「あなたも見たでしょ? あのアスカが… シンジくんが…
     あんなにレイのことを思って…
     私は…あの子たちの好きにさせてあげたいわ…。」

マヤの瞳もミサトと同じく、いつからか涙に濡れていた。

ミサト「死んでも生き返って踊り続けた、
    赤い靴を履いた少女は、もういないのね。
    ここにいるのは、綾波レイという、
    ただの14歳の女の子なんだわ。」

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ようやくシンジも決意した。昔のままのレイはもういない。
けど、記憶なんて、僕らで作っていけばいいんだ…
もう、悲しい思い出はいらないさ。

表に出ると同時に、シンジは自分がしていたマフラーを、
レイの首にふわっと巻いた。クリスマスの時の想い出の品だった。


シンジ 「今日は…ちょっと冷えるから…」
レイ  「シンジさん…」
    「あたたかい…」

シンジ 「行こうか…あやなみ… いや… れ、レイ。」
レイ  「はい。」


失われた半身が戻ってきた…
シンジにとって、いま、そのことだけが限りなく貴重なことだと思えていた。
気持ちの整理には時間がかかるだろう。それでもいい。もう逃げない。
目の前の現実を見つめよう。
ただ『レイが生きている』という現実を…。

シンジの想いが通じてでもいるかのように、
レイはシンジを見つめて、微笑んでいた。

40日40夜の間、降り続けた雨が上がり、青空が顔を出し始めていた。

希望の葉をくわえて帰ってきた小鳩のように、
レイはみんなの心に光を灯したのだった。

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同病院、別室。
外出していく3人のチルドレンを窓越しに見ながら、冬月はつぶやいた。

冬月  「やはり、人類は『希望』なしではやっていけん。
     碇… お前の思惑通りになろうと…
     たとえ神に逆らうことになろうと…。
     そのためなら、私は悪魔にでもなんでも、喜んで魂を売ろう。」

冬月  「リツコ君…君の言葉を伝える代わりに、
     子供たちを見守っていくことにするよ。
     全ては、我々『大人』の胸だけに納めておこう…」
     
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【エピローグにつづく】
                           (初出 96/03/26)

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