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【エヴァ】二人の瞬間コミュの【本編 Scene13(Aパート)】Half and,Half

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レイは病室のベッドに座り、宙を見つめていた。
しかし、ずっとうつむき加減で蔭のあった、以前のレイとは違う表情をしていた。
そう、まるで長い夢から醒めたばかりのように、ぽーっとしていた。
その夢が良い夢だったかのように、しあわせそうに…
夢見がちな微笑みすら浮かべて…。

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「レイが助かったの…。」

ミサトがそう言ったとき。シンジは耳を疑った。

最初、ミサトはシンジに話すべきかどうか迷った。
果たしてこれが、良いことなのか、悪いことなのか
判断が付かなかったから…。

レイが生き延びたことは、もちろん歓迎すべきことだが、
やはり「かつてのレイではない」ということが、
ミサトをためらわせていた。



レイは死んだ。まぎれもなく死んだのだ。

あの、雨の中で泣いた日から数日…
シンジはやっとその現実を受け入れはじめていた。
それなのに…………。

シンジは嫌悪感をあらわにして言った。

シンジ「綾波がいなくなったって、やっと納得できてきたっていうのに…
    こんなのってないよ!!なんなんだよ、まるで人形を取り替える
    みたいにカンタンに… 人をなんだと思ってるんだよ!!」

行き場のない怒りの言葉だということは、シンジにもわかっている。
しかし、血を吐くような苦しみの中で諦めようとした、レイへの想い…。
それが、また助かったと言われても素直に喜べない…。
それほどシンジの心の傷は大きかった。
そして、ミサトもそれを痛いほど感じていたから、それ以上は何も言わなかった。

シンジにとっては、生き返ったレイがエヴァの記憶から再構成された、
レイの抜け殻のように思えてならなかった。

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数日後、
ミサトのアパート。シンジの部屋。
ろくに物も食べないまま、ずっと部屋にこもって、もう何日になるのだろう。
S―DATのテープも聴き尽くして、いい加減、耳が痛い。

窓の外はずっと雨が降っている。気持ちがまったく晴れない。

S―DATのテープから、ちょうど音楽が途切れたとき、ミサトの声がした。

ミサト 「シンジくん、入るわよ。」
シンジ 「………………………」

ミサト 「レイの意識が戻ったそうよ…」

シンジ 「…………………!」

シンジは身を堅くした。漠然とした不安が、大きな現実の壁になって
現れたような気がした。

ミサト 「シンジくん?どうする?お見舞いに行く?」

シンジは自問自答した。

『逃げちゃダメだ…』
『逃げちゃダメだ…』
『逃げちゃダメだ…』
『逃げちゃダメだ…』
『逃げちゃダメだ…』

本当は、とうに気持ちの整理は出来ているはずだった。
それでも、最後の決心にわずかばかりの時間を要したのだった。

決心した面持ちでシンジは言った。

シンジ 「音楽も聴き飽きましたし…。行きますよ。どういう結果に
     なってようと、綾波のことをこの目で見届けておきたいですしね。」
ミサト 「そう… 気をしっかり持ってね。」

そう言ったミサト自身も、かなりやつれた様子だった。

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直上最終決戦から40日後。
臨時に一般開放している、ネルフ直属・軍病院の廊下を、見舞い組は歩いていた。
マヤ、ミサト、アスカ…。 そして、一番後にシンジがいる。

マヤ  「私が昨日面会したときも、まるで『初対面』だったわ。」
    「記憶は完全にないと思って下さいね。ショックだとは思うけど…」

マヤ  「あ、ここです。」

個人用病室の前に来た。
表の名札に綾波レイとある。

定時検診を済ませ、ちょうど病室から出てきた看護婦に挨拶して、
話していたマヤが表情を変えた。
小声だったが、少し詰問するような感じで、看護婦に詰め寄っていた。

話が終わるのを見計らって、ミサトがマヤに訊いた。

ミサト 「どうしたの?」
マヤ  「面会中らしいです。」
ミサト 「え?レイには他に知り合いなんていないはずよ。」
マヤ  「それが入院患者の老婦人と話し込んでるらしいんです。」
ミサト 「え?」

そんな、人見知りの激しいあのレイが…?
看護婦が逃げるように去っていった後、病室のドアは開いたままだった。
驚きのあまり、4人は思わず立ち聞きする形になった。




レイ  「おばあさん。私、夢を見てたの」
老婦人 「ふうん、どんな夢?」
レイ  「でも、空想めいてて… ちょっと恥ずかしいわ…」
老婦人 「そんなこと言わずに話してごらんなさい …笑わないから…」

レイ  「…ええ… わたし、ずっと小鳥を飼っていたの」
    「かごの中はとてもせまくて、いつもかわいそうだと思ってた。
     でも、いつか空が晴れたら、きっとどこかに飛んでいけると
     思うと、気持ちが楽になったの。」
     
レイ  「あるとき、雨が止んで…青い空が見えた。わたし、嬉しくなって…
     その鳥を放してあげた…そしたら、嬉しそうに飛んでいったの。」

レイ  「こんな話聞いても、楽しくないよね。ごめんなさい。」

老婦人 「そんなことないわよ…その鳥はね、あなた自身を暗示してるのよ。」
レイ  「え?」

老婦人 「篭の鳥はとらわれた想像力や、不自由な恋愛を表すとされているの。
     そして空に放したという事は、自由になりたいという思いと
     打ちひしがれた現実からの逃避…」

レイ  「打ちひしがれた現実…?」

老婦人 「いや、まあ憶えてないことは、どうでもいいことよね。
     そう、それが予知夢なら… それは未来からの啓示なの。
     あなたが色々な束縛から解放される、予感なのかも知れない…。

レイ  「予感…。」
     
老婦人 「さあ、もっと話して聞かせてちょうだい。」

レイ  「おばあさんにはなんでも話せるみたい。わたし、こんなに人と
     話したことがないような気がするの…。ホントはもっと話して
     おけば良かったって思ってたような気がして…」

老婦人 「うんうん… さあ、続きを…。」

レイ  「ええ… 昔、よくお話しする男の子がいたわ…」
    「なぜか、その男の子だけは覚えてるの…
     理由はわからないんだけど、知ってるの。」

老婦人は微笑みながらレイの話を聞いている…。

レイ  「不思議ね…何も憶えてないはずなのに…
     きっと生まれたときから、憶えてた…そんな気がする…。
     前世からの絆なのかも知れないね。」



その時、立ち聞きしているのに気が咎めたのか、ついにマヤが声をかけた。

マヤ  「レイちゃん…」
レイ  「マヤさん…」
老婦人 「まあ、大勢で…。お友達…?」
レイ  「さあ… 」

老婦人 「じゃ、私はおいとましましょうか。」
レイ  「ああ、ありがとう。おばあさん。また、お話ししに行きます。」
老婦人 「楽しみにしてるわ…。」

老婦人は面会の3人に会釈し、病室から出ていった。
そして、まだドアの外にいるシンジとすれ違いながら…。

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【Bパートにつづく】
                           (初出 96/03/25)

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