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古い映画オススメ作品コミュの原作・ノベライズ

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コメント(85)

>>[45]

なお、『奇談』の方には、角川ホラー文庫から刊行された映画のノベライズ版がある。
諸星大二郎

『暗黒神話』

(集英社)

1990年に、前後編各50分ほどでOVA化された。
アニメ版は原作にほぼ忠実だが、一部の細かい展開やセリフを省略している。そのせいで、特にラストは説明が足りず、原作を読んでないと、わかりにくいかもしれない。
ロザリー・K・フライ

『フィオナの海』

(集英社)

父親から離れ、祖父母の住む島へ一人で移り住むことになったフィオナ。
その島の向こうには、彼らが元いた島がある。ローン・イニッシュ。フィオナの母親はそこで亡くなり、住民たちがその島を捨てた日、まだ赤ん坊だった弟のジェミーが、揺り籠ごと海に流され行方不明になった。今は誰も住むことのない荒れ果てた無人島だが、夜になるとかすかな灯りが見える。
そしてローン・イニッシュでフィオナは、行方不明になった弟の姿を目にする。

アイルランドの昔話やお伽噺を交えながら、島に生きる人たちの姿を描く。
ひとくちに言えば、実写版ジブリアニメといった感じで、とりわけ『となりのトトロ』系といったところ。
アイルランドの音楽にひたりながら、アザラシにほっこりして、美しい島の風景を満喫するファンタジックな作品です。
ウィリアム・ディール

『真実の行方』

(福武文庫)

映画の方は、二十五年くらい前に一回観たきりなので、記憶に自信はないが、最後のドンデン返しも含めて、映画は原作にほぼ忠実に作られていたようだ。
違っているのは、リンダが映画では殺されていたのに対し、原作では生きていて、少しだけ登場してすぐに姿を消すことと、原作では大司教の真の顔が暴かれることなく、水面下の司法取引に利用されることになる。
その点で、原作はあくまでも「正義」の問題を問うているように思う。

映画でヴェイルを演じたリチャード・ギアはそんなに好きな俳優ではないが、原作を読んでも、彼の顔しか浮かばなかったくらい。如何に適役だったかということがよくわかった。
また、本作でデビューした新人だったため、映画を観たときには子役程度にしか見ていなくて気に留めてなかったからわからなかったが、調べてみるとエアロン役はエドワード・ノートンだったらしい。「え、あの子が、(『レッド・ドラゴン』の)グレハム捜査官だったの?」とちょっと驚いた。

扉ページなども含まれるためた、正味ではないが、本書の本編最終ページは、666頁にナンバリングされていた。内容を考えると、極めて象徴的な偶然の符号である。
映画を観ていても面白く、割とサクサク読めるので、分厚い本だけど、あっという間に読み進んでいった。
映画を観て気に入ったのなら、原作もオススメ。
フランソワーズ・サガン

『悲しみよこんにちは』

(ダヴィッド社)

サガンというと、朝吹登水子の新潮文庫旧訳によって人口に膾炙した感があるけど、彼女の訳より一年先に安東次男が翻訳を出している。
このダヴィッド社版が、確認し得る一番古い訳なので、わたしはこれを持っている。

内容については今さら説明は不要だろう。
個人的な感想としては、特になかったりする。面白かったけど、なんか他人の家庭を覗き見た面白さといったところで、そこから何か考えさせられたとか、共感したとか、そんなことは全く無かった。
感想を書けと言われると困る本(笑)


ダン・グリーンバーグ

『ナニー』

(新潮文庫)

「観客は泣いている」と揶揄された、ウィリアム・フリードキン監督『ガーディアン/森は泣いている』の原作。
わたしも、『エクソシスト』のフリードキン監督作品という期待で映画館へ足を運び、泣かされた一人である。
フリードキンは、ホラーチックなメルヘンを撮りたかったらしい。

原作の方も、なぜこういうことになったのか、いまひとつわかりにくいし説得力に欠ける気がする。
得体のしれないナニーの脅威に重点を置いていて、種明かしはおざなりの感があった。

山田風太郎

『魔界転生』

(角川文庫)

映画と原作は全く別物と思っていただいていいです。
原作の方が、魔界転生のメカニズムが明確でわかりやすい。映画は、天草四郎の生首が蘇った理由も、他の魔界衆をどうやって生き返らせたのか不明瞭だし、悪魔の呼び出しもずいぶんアッサリしていた。
原作は悪魔は関係なく、「忍法」ということになっているし、魔界衆の顔ぶれも天草四郎、宝蔵院胤瞬、宮本武蔵、柳生宗矩以外は違っている。ホラーというよりは、剣豪伝奇小説みたいな感じ。
フレッド・M・スチュワート

『悪魔のワルツ』

(角川書店)

音楽記者のマイルズは、高名なピアニストであるダンカンと知り合う。ダンカンは、マイルズの手を理想的なピアニストの手だと称賛し、頻繁に家へ招くようになる。
やがてダンカンが死ぬと、彼の遺言で、ピアノと楽譜を遺贈される。
人が変わったようになったマイルズに不安を覚える妻のポーラは、夫がダンカンそのままにリストの名曲『悪魔のワルツ(メフィスト・ワルツ)』を弾くのを目撃する。
ポーラ役にジャクリーン・ビセット、ダンカン役には、『007私を愛したスパイ』で悪役を演じたクルト・ユルゲンス。
音楽は、ジェリー・ゴールドスミス。
>>[30]

船戸与一の『ゴルゴ13』ノベライズを読んでいます。
『仕掛人・藤枝梅安』を始めとする池波正太郎の暗黒街小説もそうですが、短く簡潔ながら的確な文章で、「言葉を幾らも並べる」ことなく、「映画のたった数秒の説得力」を鮮やかに表現していました。
プロの殺し屋を主人公にした小説には、こうした書き方こそ似合うのでしょうね。
>>[30]

「プロは余計なことは喋らないものだ」

船戸与一

『落日の死影』

(小学館)

作家デビュー前に『ゴルゴ13』の漫画原作のシナリオを担当していた著者が、30本の自作の中から特に気に入ったエピソードを厳選して小説化した一編。
時代背景は漫画連載当時から、小説執筆当時に変えている。物語の背景や周辺人物を描き込み、漫画版では語られなかった背後関係も詳しく説明している。

漫画版では、ゴルゴ13とAX-3、二人の殺し屋の対決で終わっているが、小説版ではその後のケリをきちんとつけていて、話がスッキリ終わる反面、漫画版の無常感が薄れてしまったのは惜しい。
短く簡潔な文章が、ゴルゴ13の人物像を的確に描出し、漫画をそのまま読んでいるかのような雰囲気があって、とてもよかった。

なお、このエピソードは25分くらいのアニメになっているので、You Tubeで観られる。You Tubeはいつ削除されるかわからないけど、一応、リンクを貼っておきます。

https://youtu.be/e2RMAKXFgI8?si=flHhyReKoffO9vZh
清水宏・岸松雄

『小原庄助さん』

(『日本シナリオ体系2巻』所収)

大河内傳次郎主演の映画のシナリオ。
これが欲しくてこの本を買いました(⌒▽⌒)
>>[62]

このシリーズは、全6巻だけれど、とりわけ2巻の内容が充実している。
ネットで調べてみると、1巻はよくわからない。3巻以降のラインナップはあまり興味のないものが多かったので、2巻だけを買った。
>>[62](清水広,岸松雄) 晩春(野田高梧,小津安二郎) 野良犬(菊島隆三,黒沢明) また逢う日まで(水木洋子,八住利雄) きけわだつみの声(舟橋和郎) 羅生門(橋本忍,黒沢明) 愛妻物語(新藤兼人) カルメン故郷に帰る(木下恵介) 現代人(猪俣勝人) 本日休診(斎藤良輔) 煙突の見える場所(小国英雄) 東京物語(野田高梧,小津安二郎) 雲流るる果てに(八木保太郎,家城巳代治,直居欽哉) 君の名は(柳井隆雄) 解説(八住利雄)

第3巻 近松物語(依田義賢) この広い空のどこかに(楠田芳子) 織田信長(結束信二) 人間魚雷回天(須崎勝弥) 夫婦善哉(八住利雄) 六人の暗殺者(菊島隆三) 浮雲(水木洋子) 米(八木保太郎) ビルマの竪琴(和田夏十) 赤線地帯(成沢昌茂) 警視庁物語(長谷川公之) へそくり社長(笠原良三) 乳母車(沢村勉) 真昼の暗黒(橋本忍) 夜あけ朝あけ(片岡薫) 嵐を呼ぶ男(井上梅次,西島大) 明治天皇と日露大戦争(館岡謙之助) 巨人と玩具(白坂依志夫) 愛と希望の街(大島渚) モスラ(関沢新一) 解説(松田昭三)

第4巻 名もなく貧しく美しく(松山善三) 釈迦(八尋不二) 豚と軍艦(山内久) 駅前団地(長瀬喜伴) 切腹(橋本忍) キューポラのある街(今村昌平,浦山桐郎) 憎いあンちくしょう(山田信夫) 座頭市物語(犬塚稔) 新選組始末記(星川清司) 誇り高き挑戦(佐治乾,深作欣二) にっぽん昆虫記(長谷部慶次,今村昌平) 恐喝(田坂啓) 独立機関銃隊未だ射撃中(井手雅人) 大殺陣(池上金男) 幕末残酷物語(国弘威雄) まるでヘビのような<牝>(馬場当) 帝銀事件・死刑囚(熊井啓) 鬼婆(新藤兼人) 二匹の牝犬(下飯坂菊馬,渡辺祐介) 飢餓海峡(鈴木尚之) 解説(馬場当)

第5巻 にっぽん泥棒物語(高岩肇,武田敦) われら人間家族(勝目貴久) 893愚連隊(中島貞夫) 陽の出の叫び(藤田敏八,広瀬襄) こころの山脈(千葉茂樹) クレージーだよ奇想天外(田波靖男) 総長賭博(笠原和夫) 日本の青春(広沢栄) 少年(田村孟) 女体(池田一朗,増村保造) 新選組(松浦健郎) 男はつらいよ(望郷篇)(山田洋次,宮崎晃) 無常(石堂淑朗) 緋牡丹博徒お竜参上(加藤泰,鈴木則文) 裸の十九才(新藤兼人,関功,松田昭三) 君は海を見たか(倉本聡) 女生きてます(森崎東,熊谷勲) 現代やくざ血桜三兄弟(野上竜雄) 約束(石森史郎) 一条さゆり濡れた欲情(神代辰巳) 解説(田波靖男)

第6巻 戦争と人間(第一部) 山田信夫著. 砂の器 橋本忍,山田洋次著. ある映画監督の生涯 新藤兼人著. 新幹線大爆破 小野竜之助,佐藤純弥著. 金環蝕 田坂啓著. 祭りの準備 中島丈博著. さらば夏の光よ ジェームス三木著. 青春の殺人者 田村孟著. 犬神家の一族 長田紀生ほか著. 北陸代理戦争 高田宏治著. 幸福の黄色いハンカチ 山田洋次,朝間義隆著. はなれ瞽女おりん 長谷部慶次,篠田正浩著. 柳生一族の陰謀 野上竜雄ほか著. 曽根崎心中 白坂依志夫,増村保造著. 冬の華 倉本聡著. 人妻集団暴行致死事件 佐治乾著. 帰らざる日々 藤田敏八,中岡京平著. 鬼畜 井手雅人著. 男はつらいよ・噂の寅次郎 山田洋次,朝間義隆著. 二百三高地 笠原和夫著. 解説(鬼頭麟兵)
ホイットリー・ストリーバー

『薔薇の渇き』

(新潮文庫)

リドリー・スコットの弟トニー・スコットの初監督作品で、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・ボウイ、スーザン・サランドン共演『ハンガー』(1983年)の原作(1981年)。
ストリーバーは、他にも現代に生きる人狼をテーマにした『ウルフェン』(1978年)が、アルバート・フィニー主演で映画化(1981年)されている。

アン・ライスの『夜明けのヴァンパイア』(1976年)と同じタイプの吸血鬼小説で、原作と映画では結末が違う。
何を思ったか、20年後の2001になって、続編の『ラスト・ヴァンパイア』を発表。これも新潮文庫から翻訳出版されているらしいが、前作のラストとは矛盾する設定が一部あるという。三部作として引き続く2002年、『Lilith's Dream』を発表。これだけが翻訳出版されていない。
そういうわけで面倒だから、わたしは一作目しか読んでないし持ってない。

船戸与一

『鬼畜の宴』

(小学館)

「ゴルゴ13」ノベライズの第二弾。
金持ちの暇人二人が、二人の殺し屋同士の対決をショーとして見物しようという策略を立てたのを端緒として、ゴルゴ13の報復を受けるエピソード。
船戸与一

『おろしや間諜伝説』

(小学館)

「ゴルゴ13」ノベライズ版の第三弾にして最終巻。
定期的に出てくるゴルゴ13の出生探索回のひとつ。大抵どれも違ってたり、曖昧に終わるのはわかっているのに、やはりゴルゴ13の出自への興味は尽きないのか、読者に人気のあるネタ。
それにしても、『ゴルゴ13』に、ニッポンが出てくると、ひどく場違いな感じがいつもする。
ニッポンの漫画なのに不思議なことだ。
アルベール・カミュ

『異邦人』

(新潮社)

「太陽のせい」

ムルソーの殺人とその動機については、最近他で読んだ以下の文章がわかりやすく説明してくれていると思う ↓


近所近隣は寝鎮まった、深夜の淋しい横町である。ほかに誰もいない空き家同然の家の中で、両切を吹かしながらその禿頭を睨んでいた犯人の気持ちは誰しも想像出来るであろう。そこへ何も知らない老爺が、鼻緒を引締めるために力を入れながら前屈みになる。テカテカ頭を電灯の下にニューと突き出す。トタンに使い終わった重たい鉄槌を無意識に、犯人の鼻の先へゴロリと投げ出す。·····これじゃ殴らない方が間違っている。何の気もない人間でもチョットの間·····今だ·····という気になるだろう。笑っちゃいけない。そんな千載一遇のチャンスにぶつかれば吾輩だってやる気にならないとは限らない。禿頭と鉄槌の誘惑に引っかからないとは限らない。

つまりこの事件はホンノいっ刹那に閃いた犯罪心理が、ホンノいっ刹那に実現されたものに過ぎないのではないか·····

両切を吸口なしで吸ったり、上等の下駄を履いたりするインテリならば·····殊に虚無主義的(ニヒリスティック)な近代の、文化思想にカブレた意志の弱い人間ならば尚更、文句なしに、そうしたヒステリー式な犯罪をやりかねないであろう可能性がある。

吾輩はズット以前、借金のがれの暇潰しに警視庁の図書館に潜り込んで、刑事関係の研究雑誌を読んだことがある。その時に何とかという仏蘭西(フランス)の犯罪学博士の論文の翻訳の中に出ていた「純粋犯罪」という名称を思い出した。犯罪に純粋もヘチマもあったものではないが、つまり何の目的もなしに、殺してみたくなったから殺した、盗んでみたくなったから万引したという、ホントウの欲得を忘れた犯罪心理·····生一本の出来心から起こった犯罪を純粋犯罪というのだそうで、この種の犯罪は世の中が開けてくるにつれて殖えて来るものである。

(夢野久作『山羊鬚編集長』
第二篇「両切煙草の謎」)
>>[71]

電車のホームの端に、ぼんやりと立っている人間を見て、なんとなく背中を押したくなる。普通は思うだけでやらないが、ムルソーはそれをやったわけである。
断崖絶壁の端に立って下を覗き込むと、ふいに引き込まれそうになる。それを他人に向けたら、突き落とすのである。
いみじくも、民話に登場する妖怪"サトリ"が言ったように、「人間は思ってもいないことをするから怖い」のだ。
自分にもそういう衝動があることを自覚し、これを抑える意識を持つことが大事なのである。

内田庶・文
(コーネル・ウールリッチ原作)

『裏窓の目撃者』

(学習研究社)

「こおろぎが一匹、内庭で鳴いているわ。あれが鳴くときは、どんなことがあるか、知ってて。おばあさんがよく、わたしにいったのだけれど·····
あれが鳴くと、だれかが死ぬんですって。それもこのごく近くでよ。
きっとこの近くよ。そう離れたところじゃないわ。もう、死に神はきているのよ」

ヒッチコック監督の原作である同名短編小説を、子供向けにリライトした本。
のちにハードカバーの単行本化されていて、初めてこれを読んだのは、その単行本版を図書館で借りてだった。
大元の原作を読んでないので比較のしようがないけれど、少なくともこのリライトは、主人公を成人男性から少年に変えてはいるものの、ヒッチコックの映画版に近いようである。

夢野久作

『ドグラ・マグラ』

(角川文庫)

「難解だ」と聞いていたけど、物語が二転三転するものの、最後まで読めば真相はハッキリする。難解でも何でもない。
ただし、この物語自体が、狂人の書いたものなので、どこまでが本当で、どこまでが彼の妄想なのかという疑問が残る。そこで読者それぞれの意見が分かれ、議論を呼ぶところなのだろう。

推理(探偵)小説という括りで扱われているらしいが、ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』のような心理小説と見なすべきで、始めからそのつもりで読めばわかりやすいし、悩むこともない。

読者は、ギリギリまで主人公の青年と共に迷わされ、懊悩し、答えを得られないでいる。そして最後の土壇場で、アッ!と胸を突く真相を叩きつけられる。それはさながら、メクラだった目が開いたような感覚である。
とても面白かった!大満足!!
>>[74]

【ネタバレ!】

『ドグラ・マグラ』の物語をどう捉えるかは、大別して二つある。



a、書いてあることをそのまま鵜呑みにする読み方。この場合、正木博士が、自身の理論を立証するために我が子を利用した、すべての黒幕であり、犯人ということになる。



b、狂人が事実と妄想を巧妙に織り交ぜた虚構。その理由として以下の二点が挙げられる。

1、心神喪失下に行った犯罪を自覚していない主人公は、なぜ自分が無意識にそのようなことをしてしまったのか、(自分では合理的、かつ事実と思える)理由を求める。

2、心神喪失下にあった者が、ふと正気に返ったとき、自責の念から逃れるために、他者に責任転嫁する。そうして、自分がしたのではないと思い込みたがる。あるいは、別の人間になりたがる。
主人公が、自分は何者か、名前すら思い出せないこと、また、自分自身の姿の幻覚を見るくだりがその傍証である。

bの場合、どこまでが本当で、どこまでが彼の妄想であるかが論点になる。そして、事実はどうであったのかという疑問が残る。
たとえば、「正木博士は本当に呉一郎の父親なのか?」。
私生児であった彼は父親を求めていた。正木博士は、患者としての彼にとっては父親の象徴であり、父親と同一視するに格好の対象だった。その正木博士をすべての元凶にして真犯人だと糾弾するのは、エディプス・コンプレックスのあらわれであるとも見なし得る。
そうではなく、偶然にも、正木博士が呉一郎の、やはり実父であったという解釈も出来る。

エセル・リナ・ホワイト

『バルカン超特急』

(小学館)

アルフレッド・ヒッチコック監督の同名映画の原作。
大陸横断超特急の車内で、一人の老婦人が失踪し、その行方を孤立したヒロインが突き止めるという大筋は映画と同じだが、老婦人の失踪の理由は大きく違う。
従って、事件の背後に政治的事件が絡んではいるものの、映画なような国際謀略ではないし、クライマックスの派手な立ち回りもない。
しかし、それだけに水面下で進行する犯罪の不穏な影が終始つきまとって読者をゾクゾクさせる。
映画版がそうだったが、原作でもラストの描写によって、この物語の隠れた真のヒロインは実に、失踪した老婦人であるかのように感じられた。
ケン・グリーンウォルド

『シャーロック・ホームズの失われた事件簿』

(原書房)

本書は、ホームズのパスティーシュには違いなかろうが、それよりも、【ベイジル・ラスボーンのホームズ】のノベライズとして読むべきだろう。だから、コナン・ドイルのホームズは頭から取り去って、ベイジル・ラスボーンのホームズ映画を観てから読むと、理解できるし、無心に楽しめる。
個人的には「カンバーウェルの毒殺魔」が一番好きだ。文学的にも優れた内容だと思う。
>>[78]

ついでに書いておくと、わたしのホームズ俳優ベスト3は以下の通り。

1、ピーター・カッシング
2、アーサー・ウォントナー
3、ベイジル・ラスボーン
【ネタバレ!】

久田樹生

『小説版・樹海村』

(竹書房文庫)

一応の辻褄合わせは出来ているが、『犬鳴村』と比べて、かなりストーリーが雑だった。
細かい説明も省かれていて、なぜあの箱があそこから出てきたのか、なぜ母親は箱を返すためにわざわざ幼い娘二人まで連れ出したのか、箱を返すという宿命を担う因縁は何か、不明瞭なまま。
特に終盤、次々に人が死んだり、真相が明るみになっていく過程が、取ってつけたようにご都合主義。
焼いたはずの箱がまだあるのはどういうわけか、また、探している箱が何の脈絡もなく突然目の前に現れる意味もわからない。
作者にもわかってないんじゃないか。
最初のところでじっくり話をすすめ過ぎたせいで、肝心なヤマ場に紙幅(映画なら尺)がなくなったから、あとはテキトーに駆け足した感じ。
霊能力とか霊感とか、ああいうご都合設定は、手抜きするのに便利なシロモノだ。
トドメは、クライマックスにおける諸星大二郎『生命の木』ばりの展開は、結局なんだったんだというオチ。

デイヴィッド・ビショフ

『ブロブ』

(角川文庫)

『スティーブ・マックイーン絶対の危機(ピンチ)』(1958年)のリメイク版『ブロブ/宇宙からの不明物体』(1988年)のノベライズ。
映画では省かれたり、わかりにくい部分を補ってくれているし、映画をまだ観ていなくてもわかりやすく面白い。
文章もしっかりしていて、出来不出来の大きく分かれるノベライズの中で、上の部類に入るので、自身を持ってオススメ出来ます。
角田喜久雄

『虹男』

(春陽堂文庫)

大映スリラー・シリーズの第一作として公開された1948年の同名映画の原作。
原作は新聞連載されただけあって、毎回、興味を引くように、次々と謎や新事実があらわれ、その畳みかけるような展開は読者を飽きさせない

映画は、視覚効果を工夫した演出を試みているとは言い条、当時としてはどうだったか知らないが、今観るとストーリーが単調で、ネットでの評判はあまりよろしくない。
何よりも、肝心の「虹男」が姿を見せないことが、大いに不満を呼ぶようだ。

原作も映画も、基本的なストーリーラインは同じだが、虹男の伝説と由来、伝えられるその姿、精薄の三男、金魚屋敷、屋根部屋、摩耶博士の研究e.t.c.·····いちいち例を挙げると切りがないくらい、映画では原作を端折ってしまっている。
おまけに、ラストのドンデン返しまで無くして、真犯人すら変えているのである。
要するに、原作の面白い要素を全部取っ払っているのだから、映画版が物足りないのも道理だ。

映画を観て、原作もわかった気になってほしくない。たとえ虹男が実際に出てこなくとも、読者の想像力を刺激してイメージを広げていく手法の小説で読むのと、ビジュアルを見せてしまわないと話にならない映画では、それだけで全然違う。だから、是非とも原作を読んでほしいと思うんである。面白いから。
辻真先・塚本裕美子
(原作/安彦良和)

『巨神ゴーグ』

(ソノラマ文庫)

同名のロボット・アニメのノベライズ。
当時のロボット・アニメの中では異色作だったと聞き、また、スティーブンソンの『宝島』がベースになっているということから興味を持った。
全26話をわずか2冊にまとめているため、ずいぶん省略したところもあるだろうけど、その取捨選択が上手く出来ていて綺麗にまとまっている。
もう少し説明を加えて三巻本にすればもっとよかったのにとも思わなくはないが、子供の頃に読んだ冒険物語の懐かしさを十二分に味わえた。
レイ・ブラッドベリ

『刺青の男』

(ハヤカワSFシリーズ、
のち、ハヤカワ文庫)

1969年第四刷・映画化帯付き。
全身に18の刺青のある男。彼の刺青は毎夜、月の光を浴びで動き出し、それぞれの物語を語り始める·····

各短編は独立しているが、プロローグとエピローグで繋がれた、これは連作短編集というべきだろうか。
テーマも時代も様々で、基本的に未来、または近未来のSFだが、科学的なガジェットなしで描かれる作品もある。

1969年の映画化作品では、この内の3篇(『草原』『長雨』『今夜限り世界が』)のみを原作としているらしい。

『長雨』は、『世界の恐怖怪談』(学研ユアコース)に簡略版が収録されていたが、今回、初めて完全な形のものを読んだ。色んな出来事が省略され、ラストも変えられていたことに気づいたけど、この作品だけは、原作よりも簡略版のほうが印象に残った。

なお、『万華鏡』は、手塚治虫『火の鳥宇宙編』の前半部分の元ネタになっているという。元ネタであるこちらのほうが、より過酷な描写で、ラストの悲しいながらも美しいオチは圧巻。

各編の分量は短く、ニ、三十分もあればゆっくり読めるし、1951年の発表なので、宇宙船ではなくロケットであったりと、古くはあるものの、そのドラマは今読んでも色褪せない。
ロジャー・フラー

『逃亡者』

(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

本書の原題 "Fear in a Desert Town" が示す通り、第1シーズン第一話『愛と憎しみの果て』(原題 Fear in a Desert City)のノベライズで、途中、一部に変更があり、それ以降の展開に影響を及ぼしてはいるものの、そこを除けば、細部まで忠実に再現しているといえる。

映像版では最小限にしか語られない事件や裁判、脱走前後の背景や経緯の詳細、細かい心理描写もあり、映像版のファンには貴重な内容。
ただし、著作権表記からすると、原書が第1シーズン本国放送中に刊行されてるらしいので、のちに妻子も登場するジェラード警部が独身ということになっているのはご愛嬌。

アメリカ本国でこの続きが出ているのかどうか知らないが、翻訳刊行されているのはこの一冊だけなので、これ単体では物語が完結していない。
あくまでも、テレビドラマ版とのタイアップ的な小説だと思う。

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