雅代さんはよく笑う。それがまぶしかった。
目がくりっとして、鼻筋は通ってて
体形はちょっと肉付きがいいけど
豊かなメリハリある体型と腕を堂々と出して
つやのある肌が目立ってて
あまり気にしないで少し焼けている肌が健康的に感じた・・・・
もう50を超えて何年もたつ僕には
40になったばかりの彼女は近寄りがたいくらいにきらめいて見えた。
赤羽にある行きつけのスナックでよく合う常連のＫがそこに連れてきた。
スナックのママに「ぱぱ」って呼ばれる僕はここの三枚目の位置づけを
キープしてる。ママからぱぱと呼んでもらえるなら嫌われてはないんだろう。
少し太めであほだから気の利いたことも言えない僕。
せいぜい歌って笑顔でいることが居場所を創る最善の方法だと知っている。
それが僕の生き方だ。
客がそんなにこないから終電までいても4000円ちょいで飲み放題
Ｋの半分くらいの頻度の常連だったとおもう
Ｋは独身。あちこちでいつもどっかの女の子を口説いてるみたいだ。
はじめてみたときは年上かと思ったがぎりぎり40代の49歳アラフィフで
とにかくこの店に誰か連れてこようとする。
同じコが二度来たのを見たことがない。結婚がしたいとよくぼやいてた。
結婚ねぇ・・・してみないとそのつまんなさはわからんのだろうな・・・
不細工でもないし、あんなにいろんなコと知り合いなのか付き合ってるのか
縁ができるなら結婚まで話をすすめないほうが幸せなんじゃないか・・・
もう人生ほとんど終わりかけてるのにいまさら何を求めてるんだろうこいつ
・・・と余計なお世話が頭のなかに渦巻く
またよりによって女の子どっかに連れてこれるならスナックなんかにこなくてもいいじゃないか
そして「今度女の子呼んでるんだ。大邦もこないか？」
・・・と言う感じにさそうんだ。
やたら僕をさそわないでもいいんじゃないか・・・と思う。
二人きりで攻めろよ、
そして僕に応援してほしいならなんかあらかじめ作戦を言ってくれ！
協力はするからさ！
Ｋが連れてきた女の子たちの中で雅代さんは飛びぬけていた。
可愛いなぁ・・・・と僕の顔に書いてあったかもしれない。
ママにもちょっと今日は違うなとわかっただろう。
なぜＫは僕に紹介するんだ？
裏で女の子への興味のラインが飛び交う彼は実際に女の人が来たら、なぜか無口だ。
カラオケは好きらしいがあまり声量がなくてメロディちょっとはずしてる
・・・欲望と実現した果実にいつもずれがある。
そこが彼の魅力なのか？無害そうには見える。背が高くて優しそうでもある。
そしてどうもこの日の雅代さんの話聞くとかなり長期にわたって誘ってくれてたから
一度くらい来てみようかとおもったとのことだった。
え？意外だ。Ｋは見た目よくて優しそうで紳士でモテてるんだと思ってた。
誘い方が下手なのか？見た目は問題なかろうに・・・
二度と連れてこない女の子たちは彼の毒牙にかかって同時並行で恋人なのか
それとも次がないので二度と連れてこれないのか
・・・僕にはわからなかった。
雅代さんは住んでるとこがかなり遠いらしい。あまり遅くまで歌えないだろう。
ママと二人きりの日も多いのに、この日の店はちょっと混んでいた。
8人でいっぱいのカウンターに5人。Ｋと僕が雅代さんを挟んで話し込んでる・・・いつもは一人カラオケくらいに歌いまくってるのに・・
人が座ってるの見たことないソファのボックスには客の荷物が詰まれてて、
黄色でない蛍光灯白の明るい店内でスナックというよりは学生の宅飲み部屋みたいだ。
「ぱぱちゃん？歌わないの？なんかいつもと違うわね。若い子きてテンションあがってる？」とママ。・・・あのね＾＾・・・orz
雅代さんが言わなきゃ30代なったばかりにもみえることを言っているのか
僕にくらべて若いと言いたいのか・・・どっちもなのか
アラフォーの雅代さんを若いと言い切るママはちょっと意地悪そうに見えた。
「大邦いつもの古い長渕頼むよ」とＫ。
・・・・おいいつもは長渕歌わないぞ！僕は洋楽かサンボマスターだ。
ママは意外にサンボで感動してくれる。
長渕・・・かなり前にＫの前で一回一曲だけ歌った記憶がある。古臭くてかっこ悪い曲だけどなぜかＫはこれをよく覚えてて
また歌え、また歌えとうるさい。若いころにアルバムかったらしく（not CD but LP）
聞きこんでて、小さな声量でさびをちょこちょこはもってた。
なんでそんなのを・・・とぶつぶつ言いながらも、Ｋがなんか意図があるのかとじゃあといつものジャイアンみたいな声量で歌うことにした。
「おーい、お前！♪ こーのごろー調子はどうだねぇ・・・」
長渕は博多出身、田舎から出てきて歌うたいになりたい。なかなか成功しないけど相変わらず歌うたってて
そうかと思えば女が嫌いとうそぶいてた友達まで結婚したとか・・・それでも俺は冷たい街東京でもう3年やってきた
そしてここ東京で歌い続けてやっていく・・・・そんな内容の歌詞だ。
このときの長渕はもうベストテンに常連くらいのヒットメーカーであったが
当時のヒット曲を差し置いて、僕が歌った「友への手紙」という曲はＫを喜ばせたらしい。
たぶん長渕が上京したてのころに作った曲なんだろう。
逆流というLPは歌を歌い続けるということにも、
男女の恋愛にも後の長渕にない素直さがにじみ出てる。
ＫはそのLPがすごく好きだったらしい。
「おいらーーみたーーいな へなちょこやろぉーーは♪ もすこし・・・っここでーーー♪
もーーーまれーーーなけーーればーーーおおぅ いえぃー＾＾」
さびをＫもくちずさんでた。
この曲だけは音痴の僕のジャイアンボイスがよく合う気がする。
「わぁ、この曲いいです。」と雅代さん
「しらないよね＾＾まだ生まれてないんじゃないかな」
そう50半ばの僕も小学校中学年のころに聞いたLPだ。
「私も昭和ですよ。友達とか歌う曲って古くても新鮮に聞こえることありますね」
「僕はチョイデブだからあんま恋愛の歌とかは似合わないんだよね＾＾。
英語が好きだから洋楽うたうけど、自分のきゃらにかぶるデブのサンボマスターが唯一歌えるラブソングメーカーだと思ってます。」
「あはは。私も体形気にしてます。ぱぱさん、ぜんぜんありだとおもうけど」
「ありがとー。つけあがっちゃうから甘やかさないで＾＾」
・・・いかんＫにもっと振らなきゃ。Ｋはなんでこういうとき黙りがちなんだろう・・・
Ｋがママに「おでんかって差し上げたでしょ。よかったらふるまってよ。」と
「あ。それじゃ僕にマルシン正宗のワンカップください」と僕。
この店にくる途中の丸健水産という立ち飲みの店でＫはよくおでんを買ってくる
そのおでん屋の常連はワンカップの熱燗を頼んで
300mlのうちほとんど飲んで残り50mlほどを残してから
そこにおでんの出汁を入れてもらいちょっと
七味唐辛子を入れる「だし割」というのをよく頼む。
ママの店もＫが丸健のおでんを差し入れるときのためにワンカップの酒を常備することにした
お燗はつけてくれないけど、おでんそのものはレンチンで軽くあっためてくれる。
「雅代さんもワンカップ頼んだらどうかな。Ｋ、だし割の説明してあげてよ」
Ｋは丸健のおでんの話をとうとうと熱く語る。へーと聞いてる雅代さん、まあ楽しそうでいいわ＾＾
とおもったやいなや
Ｋは一通り語ったあたりで突然帰ると言い出した。
明日朝が早いのだそうだ・・・。女の子さそっておいて店に置き去りにして何考えてるんだ
「帰っちゃいましたね」と僕
「ええ。私もう少し大丈夫です」
「なんかＫと雅代さんがいい感じになるように応援しなきゃとか思ってたんですけど」
「え？私、Ｋさんが私とぱぱさんイイ感じにしようとしてくれてるんだと思ってました。」
「？僕、既婚者です？」
「私もですよ」
え？雅代さんも変わってる？？？
ママが受けてる。
「ぱぱちゃん。びっくりしてるーー」
「そりゃそうですよ。こんな子にからかわれたら・・・」
正宗がだし割のとこまできたのでママに差し出す。
おでん手つけてないや・・・
フォト
「七味が効いてまじで、だし割ってうまいな」と味わったあと
「私にも味見させてください」と雅代さん
あったまりますね・・・でしょ・・・と感想。
飲むとこずれてて間接キスではないけど、なんかドキドキする僕。
「なんか赤羽って感じで僕こういうの好きなんです」
「ええ、あったかくていいですね。私の生活にはなかった感じです」
どんな生活してるんだろう。裕福なマダムさんなんだろか。
雅代さん少し酔ったみたいだった
あまり終電気にしてないように見えて
「大丈夫ですか、僕早く切り上げてもいいので
駅まで送りますよ。入り組んでてわかりづらいし」
まだ大丈夫を２−３回言ってじゃあそろそろと。
「ちょっと酔ってしまったから、手つなぐか、肩かすか、おんぶしてください＾＾」
あらら、そこまでにはみえないけど・・・・うそでしょ
「はい。」と手を出した。雅代さんは恋人みたいに指を一本一本絡めるつなぎ方をしてきた・・・
まだまだ夜はこれからと店先にビールケース逆さにした席で飲む人たちを横目に駅へ行く。
僕はこんなとこでＢ級のグルメばかりつまんでますと赤羽っておじいさんやおばあさんから話しかけられたりよくしますと
街のこと話した。
なんか楽しそうでいいですね。私の街にはない。たっくさん孤独な人が隣り合って住んでいる。・・・雅代さんはそういった。
孤独が寄り添って生きてるのは赤羽も同じだ。ただド田舎昭和の赤羽の空気が
隣の孤独への干渉をゆるす。僕はそう思ってた。そしてこの空気を表す言葉が
日本語でうまくでてこない。言葉を探してたら
二人同時に「Alone Together(孤独が連れそっている)」と言葉がでた。
「英語は慣れてるんですか？イメージしたフレーズが同時に出たようで・・・」僕は聞いた。
「そういうわけでないけど、仕事で使うのでたまに日本語で言い表せないフレーズを感じると頭に浮かびます。
ぱぱさんも同じ言葉うかんだんですね」
「僕はどこでもAloneTogetherを感じてるのかもしれません。はずかしなから家庭の中でも・・・。
あの店くらいしか居場所感じられなくて、おどけてバカみたいにしてればママも愛嬌くれるし」
「ママさんぱぱさんを相当好きだと思いましたよ。孤独を受け止めるのが仕事だとおもうのですが
受け止めて気持ちの良い孤独でないと人は受け止められないと思うんです。」
人通りのないところで雅代さんは手を引っ張り僕を引き寄せようとした。
え？僕はただ驚いていた。パーソナルゾーンがゼロになることを望んでるように見えた。
「Ｋはいいんですか？」僕はおろおろしてた。
「ばかね。私ぱぱさんが気に入ったのよ。いや？」
ありえない。彼女が僕を気に入るのも、そして僕が彼女を否定することも・・・・
目をつぶる雅代さんを抱きしめてキスをした。何年ぶりに女性の柔らかい体を抱きしめたろう。
自分が汗をかいていないかとかそんなことが気になる
でも唇を離すことが怖くて、軽く触れた唇をゆっくりと長く味わってた
「終電なくなるのを待ってたの。泊まれる？」
どうして僕？と聞くことは許されるんだろうか・・・・ただなにもこの夢のような申し出を壊したくなくて
その疑問を発すると壊れてしまいそうで僕は無言で強く首を縦に振った
「ホテルあるのかしら、手持ちがなければ私が出してもいいです」
「いや僕出します。カードもあるし、駅前なら○○ホテルがあった。ラブホテルはどこにあるかもわかりません」
安っぽいラブホテルみたいなとこに連れて行きたくなかった。そしてラブホテルなんて僕の人生には無縁だったからほんとにどこにあってもしらない。
仕事で帰れなくなる夜も多いから僕はなにも問題ないけど
彼女は大丈夫なんだろうか？
ホテルにチェックインして部屋に入ると彼女はてきぱきとバスタブに湯を張って僕を
ベッドに押し倒して貪るようにキスをしてくれた・・・・
ここまできたら聞いてもいいだろう
「あ・・・雅代さん・・・えっと・・・ありがとう・・・」
雅代さんは僕を見て噴き出した。ありがとうってのが間が抜けてたかもしれない。
「おかしいかな・・あ、なんで・・僕だったの？こういうことよくあるの？」
「なんででしょうね＾＾Ｋさんやほかの誘い出してくれる人にはなんにもこんな気分わかなかったんだけど
だからひとつめの質問はわからない。そしてはじめて会った男性とホテルに来たのははじめてよ。
というより、結婚してからほかの男性とキスをしたのもはじめて」
うそ・・・でもいいか。目の前にある真実のほかの何を僕は確かめようとしてたんだろう。
ひょっとして彼女は赤羽という街を愛し、赤羽という街に同化してた僕を気まぐれにからかったのかもしれない。
どう見ても奔放なあばずれな女性には見えなかった。
「ぱぱさん？誰かに愛されてるって感じたことある？誰かに愛されたいって感じたことある？」
「いつもだよ。人に嫌われるのが怖くてへらへら笑ってる。周りが楽しそうなら安心するし、
誰も僕を邪魔とは言わないけど、誰からも必要とされてない。」
「・・・」
「変かな…卑屈だと自分でも思うけど」
「ぱぱさんみて。なんかわかったの。自分に似てるかなって
誰からも愛されてないって感じてるんだろうなと」
「君はきれいだよ。愛されると思う。」
「ばかね。容姿じゃないの。私、上手に孤独を抱えてる人しか愛せないのよ。たぶん」
シャワーにいざなわれ、ベッドで僕は歳にもよらず何度も何度も繰り返した。
自分に存外に残っていた男性機能に驚きを禁じ得なかった。
仕事なんて一日くらいどうでもいいし、彼女もすごくどん欲だった。
疲労で眠りにおちて明け方になって僕は聞いた。
「雅代さん、執着してはいけないのかもしれないけど
また会えるかな・・・。一晩だけというのはつらい」
雅代さんは唇を重ねてからいたづらっぽい表情で言ってくれた
「もしそうだったらヤリ捨てじゃない。私は一晩だけで飽きちゃう女？」
いいようのない喜びがこみ上げて僕は雅代さんを抱きしめた。
浅い眠りによる疲労を抱えて朝の静まり返った赤羽を二人で駅にむかった
すこしひんやりした空気が優しかった。
ラインを交換してそれぞれ別のホームに分かれる前に自然に唇を触れ合った
僕はたぶんはじめて恋に落ちたんだと思う。
目がくりっとして、鼻筋は通ってて
体形はちょっと肉付きがいいけど
豊かなメリハリある体型と腕を堂々と出して
つやのある肌が目立ってて
あまり気にしないで少し焼けている肌が健康的に感じた・・・・
もう50を超えて何年もたつ僕には
40になったばかりの彼女は近寄りがたいくらいにきらめいて見えた。
赤羽にある行きつけのスナックでよく合う常連のＫがそこに連れてきた。
スナックのママに「ぱぱ」って呼ばれる僕はここの三枚目の位置づけを
キープしてる。ママからぱぱと呼んでもらえるなら嫌われてはないんだろう。
少し太めであほだから気の利いたことも言えない僕。
せいぜい歌って笑顔でいることが居場所を創る最善の方法だと知っている。
それが僕の生き方だ。
客がそんなにこないから終電までいても4000円ちょいで飲み放題
Ｋの半分くらいの頻度の常連だったとおもう
Ｋは独身。あちこちでいつもどっかの女の子を口説いてるみたいだ。
はじめてみたときは年上かと思ったがぎりぎり40代の49歳アラフィフで
とにかくこの店に誰か連れてこようとする。
同じコが二度来たのを見たことがない。結婚がしたいとよくぼやいてた。
結婚ねぇ・・・してみないとそのつまんなさはわからんのだろうな・・・
不細工でもないし、あんなにいろんなコと知り合いなのか付き合ってるのか
縁ができるなら結婚まで話をすすめないほうが幸せなんじゃないか・・・
もう人生ほとんど終わりかけてるのにいまさら何を求めてるんだろうこいつ
・・・と余計なお世話が頭のなかに渦巻く
またよりによって女の子どっかに連れてこれるならスナックなんかにこなくてもいいじゃないか
そして「今度女の子呼んでるんだ。大邦もこないか？」
・・・と言う感じにさそうんだ。
やたら僕をさそわないでもいいんじゃないか・・・と思う。
二人きりで攻めろよ、
そして僕に応援してほしいならなんかあらかじめ作戦を言ってくれ！
協力はするからさ！
Ｋが連れてきた女の子たちの中で雅代さんは飛びぬけていた。
可愛いなぁ・・・・と僕の顔に書いてあったかもしれない。
ママにもちょっと今日は違うなとわかっただろう。
なぜＫは僕に紹介するんだ？
裏で女の子への興味のラインが飛び交う彼は実際に女の人が来たら、なぜか無口だ。
カラオケは好きらしいがあまり声量がなくてメロディちょっとはずしてる
・・・欲望と実現した果実にいつもずれがある。
そこが彼の魅力なのか？無害そうには見える。背が高くて優しそうでもある。
そしてどうもこの日の雅代さんの話聞くとかなり長期にわたって誘ってくれてたから
一度くらい来てみようかとおもったとのことだった。
え？意外だ。Ｋは見た目よくて優しそうで紳士でモテてるんだと思ってた。
誘い方が下手なのか？見た目は問題なかろうに・・・
二度と連れてこない女の子たちは彼の毒牙にかかって同時並行で恋人なのか
それとも次がないので二度と連れてこれないのか
・・・僕にはわからなかった。
雅代さんは住んでるとこがかなり遠いらしい。あまり遅くまで歌えないだろう。
ママと二人きりの日も多いのに、この日の店はちょっと混んでいた。
8人でいっぱいのカウンターに5人。Ｋと僕が雅代さんを挟んで話し込んでる・・・いつもは一人カラオケくらいに歌いまくってるのに・・
人が座ってるの見たことないソファのボックスには客の荷物が詰まれてて、
黄色でない蛍光灯白の明るい店内でスナックというよりは学生の宅飲み部屋みたいだ。
「ぱぱちゃん？歌わないの？なんかいつもと違うわね。若い子きてテンションあがってる？」とママ。・・・あのね＾＾・・・orz
雅代さんが言わなきゃ30代なったばかりにもみえることを言っているのか
僕にくらべて若いと言いたいのか・・・どっちもなのか
アラフォーの雅代さんを若いと言い切るママはちょっと意地悪そうに見えた。
「大邦いつもの古い長渕頼むよ」とＫ。
・・・・おいいつもは長渕歌わないぞ！僕は洋楽かサンボマスターだ。
ママは意外にサンボで感動してくれる。
長渕・・・かなり前にＫの前で一回一曲だけ歌った記憶がある。古臭くてかっこ悪い曲だけどなぜかＫはこれをよく覚えてて
また歌え、また歌えとうるさい。若いころにアルバムかったらしく（not CD but LP）
聞きこんでて、小さな声量でさびをちょこちょこはもってた。
なんでそんなのを・・・とぶつぶつ言いながらも、Ｋがなんか意図があるのかとじゃあといつものジャイアンみたいな声量で歌うことにした。
「おーい、お前！♪ こーのごろー調子はどうだねぇ・・・」
長渕は博多出身、田舎から出てきて歌うたいになりたい。なかなか成功しないけど相変わらず歌うたってて
そうかと思えば女が嫌いとうそぶいてた友達まで結婚したとか・・・それでも俺は冷たい街東京でもう3年やってきた
そしてここ東京で歌い続けてやっていく・・・・そんな内容の歌詞だ。
このときの長渕はもうベストテンに常連くらいのヒットメーカーであったが
当時のヒット曲を差し置いて、僕が歌った「友への手紙」という曲はＫを喜ばせたらしい。
たぶん長渕が上京したてのころに作った曲なんだろう。
逆流というLPは歌を歌い続けるということにも、
男女の恋愛にも後の長渕にない素直さがにじみ出てる。
ＫはそのLPがすごく好きだったらしい。
「おいらーーみたーーいな へなちょこやろぉーーは♪ もすこし・・・っここでーーー♪
もーーーまれーーーなけーーればーーーおおぅ いえぃー＾＾」
さびをＫもくちずさんでた。
この曲だけは音痴の僕のジャイアンボイスがよく合う気がする。
「わぁ、この曲いいです。」と雅代さん
「しらないよね＾＾まだ生まれてないんじゃないかな」
そう50半ばの僕も小学校中学年のころに聞いたLPだ。
「私も昭和ですよ。友達とか歌う曲って古くても新鮮に聞こえることありますね」
「僕はチョイデブだからあんま恋愛の歌とかは似合わないんだよね＾＾。
英語が好きだから洋楽うたうけど、自分のきゃらにかぶるデブのサンボマスターが唯一歌えるラブソングメーカーだと思ってます。」
「あはは。私も体形気にしてます。ぱぱさん、ぜんぜんありだとおもうけど」
「ありがとー。つけあがっちゃうから甘やかさないで＾＾」
・・・いかんＫにもっと振らなきゃ。Ｋはなんでこういうとき黙りがちなんだろう・・・
Ｋがママに「おでんかって差し上げたでしょ。よかったらふるまってよ。」と
「あ。それじゃ僕にマルシン正宗のワンカップください」と僕。
この店にくる途中の丸健水産という立ち飲みの店でＫはよくおでんを買ってくる
そのおでん屋の常連はワンカップの熱燗を頼んで
300mlのうちほとんど飲んで残り50mlほどを残してから
そこにおでんの出汁を入れてもらいちょっと
七味唐辛子を入れる「だし割」というのをよく頼む。
ママの店もＫが丸健のおでんを差し入れるときのためにワンカップの酒を常備することにした
お燗はつけてくれないけど、おでんそのものはレンチンで軽くあっためてくれる。
「雅代さんもワンカップ頼んだらどうかな。Ｋ、だし割の説明してあげてよ」
Ｋは丸健のおでんの話をとうとうと熱く語る。へーと聞いてる雅代さん、まあ楽しそうでいいわ＾＾
とおもったやいなや
Ｋは一通り語ったあたりで突然帰ると言い出した。
明日朝が早いのだそうだ・・・。女の子さそっておいて店に置き去りにして何考えてるんだ
「帰っちゃいましたね」と僕
「ええ。私もう少し大丈夫です」
「なんかＫと雅代さんがいい感じになるように応援しなきゃとか思ってたんですけど」
「え？私、Ｋさんが私とぱぱさんイイ感じにしようとしてくれてるんだと思ってました。」
「？僕、既婚者です？」
「私もですよ」
え？雅代さんも変わってる？？？
ママが受けてる。
「ぱぱちゃん。びっくりしてるーー」
「そりゃそうですよ。こんな子にからかわれたら・・・」
正宗がだし割のとこまできたのでママに差し出す。
おでん手つけてないや・・・
フォト
「七味が効いてまじで、だし割ってうまいな」と味わったあと
「私にも味見させてください」と雅代さん
あったまりますね・・・でしょ・・・と感想。
飲むとこずれてて間接キスではないけど、なんかドキドキする僕。
「なんか赤羽って感じで僕こういうの好きなんです」
「ええ、あったかくていいですね。私の生活にはなかった感じです」
どんな生活してるんだろう。裕福なマダムさんなんだろか。
雅代さん少し酔ったみたいだった
あまり終電気にしてないように見えて
「大丈夫ですか、僕早く切り上げてもいいので
駅まで送りますよ。入り組んでてわかりづらいし」
まだ大丈夫を２−３回言ってじゃあそろそろと。
「ちょっと酔ってしまったから、手つなぐか、肩かすか、おんぶしてください＾＾」
あらら、そこまでにはみえないけど・・・・うそでしょ
「はい。」と手を出した。雅代さんは恋人みたいに指を一本一本絡めるつなぎ方をしてきた・・・
まだまだ夜はこれからと店先にビールケース逆さにした席で飲む人たちを横目に駅へ行く。
僕はこんなとこでＢ級のグルメばかりつまんでますと赤羽っておじいさんやおばあさんから話しかけられたりよくしますと
街のこと話した。
なんか楽しそうでいいですね。私の街にはない。たっくさん孤独な人が隣り合って住んでいる。・・・雅代さんはそういった。
孤独が寄り添って生きてるのは赤羽も同じだ。ただド田舎昭和の赤羽の空気が
隣の孤独への干渉をゆるす。僕はそう思ってた。そしてこの空気を表す言葉が
日本語でうまくでてこない。言葉を探してたら
二人同時に「Alone Together(孤独が連れそっている)」と言葉がでた。
「英語は慣れてるんですか？イメージしたフレーズが同時に出たようで・・・」僕は聞いた。
「そういうわけでないけど、仕事で使うのでたまに日本語で言い表せないフレーズを感じると頭に浮かびます。
ぱぱさんも同じ言葉うかんだんですね」
「僕はどこでもAloneTogetherを感じてるのかもしれません。はずかしなから家庭の中でも・・・。
あの店くらいしか居場所感じられなくて、おどけてバカみたいにしてればママも愛嬌くれるし」
「ママさんぱぱさんを相当好きだと思いましたよ。孤独を受け止めるのが仕事だとおもうのですが
受け止めて気持ちの良い孤独でないと人は受け止められないと思うんです。」
人通りのないところで雅代さんは手を引っ張り僕を引き寄せようとした。
え？僕はただ驚いていた。パーソナルゾーンがゼロになることを望んでるように見えた。
「Ｋはいいんですか？」僕はおろおろしてた。
「ばかね。私ぱぱさんが気に入ったのよ。いや？」
ありえない。彼女が僕を気に入るのも、そして僕が彼女を否定することも・・・・
目をつぶる雅代さんを抱きしめてキスをした。何年ぶりに女性の柔らかい体を抱きしめたろう。
自分が汗をかいていないかとかそんなことが気になる
でも唇を離すことが怖くて、軽く触れた唇をゆっくりと長く味わってた
「終電なくなるのを待ってたの。泊まれる？」
どうして僕？と聞くことは許されるんだろうか・・・・ただなにもこの夢のような申し出を壊したくなくて
その疑問を発すると壊れてしまいそうで僕は無言で強く首を縦に振った
「ホテルあるのかしら、手持ちがなければ私が出してもいいです」
「いや僕出します。カードもあるし、駅前なら○○ホテルがあった。ラブホテルはどこにあるかもわかりません」
安っぽいラブホテルみたいなとこに連れて行きたくなかった。そしてラブホテルなんて僕の人生には無縁だったからほんとにどこにあってもしらない。
仕事で帰れなくなる夜も多いから僕はなにも問題ないけど
彼女は大丈夫なんだろうか？
ホテルにチェックインして部屋に入ると彼女はてきぱきとバスタブに湯を張って僕を
ベッドに押し倒して貪るようにキスをしてくれた・・・・
ここまできたら聞いてもいいだろう
「あ・・・雅代さん・・・えっと・・・ありがとう・・・」
雅代さんは僕を見て噴き出した。ありがとうってのが間が抜けてたかもしれない。
「おかしいかな・・あ、なんで・・僕だったの？こういうことよくあるの？」
「なんででしょうね＾＾Ｋさんやほかの誘い出してくれる人にはなんにもこんな気分わかなかったんだけど
だからひとつめの質問はわからない。そしてはじめて会った男性とホテルに来たのははじめてよ。
というより、結婚してからほかの男性とキスをしたのもはじめて」
うそ・・・でもいいか。目の前にある真実のほかの何を僕は確かめようとしてたんだろう。
ひょっとして彼女は赤羽という街を愛し、赤羽という街に同化してた僕を気まぐれにからかったのかもしれない。
どう見ても奔放なあばずれな女性には見えなかった。
「ぱぱさん？誰かに愛されてるって感じたことある？誰かに愛されたいって感じたことある？」
「いつもだよ。人に嫌われるのが怖くてへらへら笑ってる。周りが楽しそうなら安心するし、
誰も僕を邪魔とは言わないけど、誰からも必要とされてない。」
「・・・」
「変かな…卑屈だと自分でも思うけど」
「ぱぱさんみて。なんかわかったの。自分に似てるかなって
誰からも愛されてないって感じてるんだろうなと」
「君はきれいだよ。愛されると思う。」
「ばかね。容姿じゃないの。私、上手に孤独を抱えてる人しか愛せないのよ。たぶん」
シャワーにいざなわれ、ベッドで僕は歳にもよらず何度も何度も繰り返した。
自分に存外に残っていた男性機能に驚きを禁じ得なかった。
仕事なんて一日くらいどうでもいいし、彼女もすごくどん欲だった。
疲労で眠りにおちて明け方になって僕は聞いた。
「雅代さん、執着してはいけないのかもしれないけど
また会えるかな・・・。一晩だけというのはつらい」
雅代さんは唇を重ねてからいたづらっぽい表情で言ってくれた
「もしそうだったらヤリ捨てじゃない。私は一晩だけで飽きちゃう女？」
いいようのない喜びがこみ上げて僕は雅代さんを抱きしめた。
浅い眠りによる疲労を抱えて朝の静まり返った赤羽を二人で駅にむかった
すこしひんやりした空気が優しかった。
ラインを交換してそれぞれ別のホームに分かれる前に自然に唇を触れ合った
僕はたぶんはじめて恋に落ちたんだと思う。
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コメント(17)
登場人物の年齢と赤羽という舞台が、私のゾーンにはまりました！！！！
「オオ赤羽、赤羽よ」と叫びたくなるほど、昭和生まれの飲んだくれの中高年にとって、レトロな解放区であり、サンクチュアリです。
北区カルチェ・ラタンとでも呼びたいです。
時代遅れのサルのような自由の刑に処せらて執行猶予中とウソぶくニセ実存主義者が、まるます家で、たぬき豆富を酒のアテにして、嘘八百を語り、昭和の場末的スナックで崩れた姫を口説くような、くたびれた大人のチープな遊戯場であり社交場。
「いこい」で一杯ひっかけた後、かっては２３区内唯一の醸造所で、地元で作っていた伝説の酒、丸眞正宗のカップ酒を握りしめて、路上飲みをして、そしてOK横丁で暴れて、KOされて、そこから見知らぬ（いや自分が覚えていないだけの）女に介抱されて、もう一軒繰り出す。
そんな廃人のパラダイスの赤羽。
ああ、赤羽に生きたい。
ちなみに昔、ある女優さんと二人で飲んでいて、住むならどの街で暮らしたいかという話になり、「赤羽！」と小学生のように誇らしげに即答して、ドン引きされました（実話）。
「オオ赤羽、赤羽よ」と叫びたくなるほど、昭和生まれの飲んだくれの中高年にとって、レトロな解放区であり、サンクチュアリです。
北区カルチェ・ラタンとでも呼びたいです。
時代遅れのサルのような自由の刑に処せらて執行猶予中とウソぶくニセ実存主義者が、まるます家で、たぬき豆富を酒のアテにして、嘘八百を語り、昭和の場末的スナックで崩れた姫を口説くような、くたびれた大人のチープな遊戯場であり社交場。
「いこい」で一杯ひっかけた後、かっては２３区内唯一の醸造所で、地元で作っていた伝説の酒、丸眞正宗のカップ酒を握りしめて、路上飲みをして、そしてOK横丁で暴れて、KOされて、そこから見知らぬ（いや自分が覚えていないだけの）女に介抱されて、もう一軒繰り出す。
そんな廃人のパラダイスの赤羽。
ああ、赤羽に生きたい。
ちなみに昔、ある女優さんと二人で飲んでいて、住むならどの街で暮らしたいかという話になり、「赤羽！」と小学生のように誇らしげに即答して、ドン引きされました（実話）。
>>[9] 赤羽好きさん発見＾＾ーーっ。まるます家のおすすめなのかたぬき豆腐しらないです・・・名物らしい鯉こくたべて「なんかぱさぱさしてんな・・・」というまだまだ弱い赤羽初心者かもです
あと・・・「いこい」も好きです＾＾おお赤羽よ・・・ってわかります＾＾
なにげに黒人のやってるミュージックバーなどなどいまだ発見がつづく怪しい街です＾＾・・・・
いえね…孤独な人たちってたくさんいるよね・・・でも隣が干渉してくるひょっとしたらうるさい孤独が集まる街が描いてみたく・・・
でも僕のパターンですぐ主人公にいい思いをさせてしまうという・・・
なんとなく孤独を飲み込んでくれる街が描きたかったっす
ロイヤーさんの赤羽ディープそうで興味津々です＾＾
あと・・・「いこい」も好きです＾＾おお赤羽よ・・・ってわかります＾＾
なにげに黒人のやってるミュージックバーなどなどいまだ発見がつづく怪しい街です＾＾・・・・
いえね…孤独な人たちってたくさんいるよね・・・でも隣が干渉してくるひょっとしたらうるさい孤独が集まる街が描いてみたく・・・
でも僕のパターンですぐ主人公にいい思いをさせてしまうという・・・
なんとなく孤独を飲み込んでくれる街が描きたかったっす
ロイヤーさんの赤羽ディープそうで興味津々です＾＾
この文章がほとんど速攻の小説のようです OKからKOとか秀逸・・・笑
>>「オオ赤羽、赤羽よ」と叫びたくなるほど、昭和生まれの飲んだくれの中高年にとって、レトロな解放区であり、サンクチュアリです。
北区カルチェ・ラタンとでも呼びたいです。
>>時代遅れのサルのような自由の刑に処せらて執行猶予中とウソぶくニセ実存主義者が、まるます家で、たぬき豆富を酒のアテにして、嘘八百を語り、昭和の場末的スナックで崩れた姫を口説くような、くたびれた大人のチープな遊戯場であり社交場。
>>「いこい」で一杯ひっかけた後、かっては２３区内唯一の醸造所で、地元で作っていた伝説の酒、丸眞正宗のカップ酒を握りしめて、路上飲みをして、そしてOK横丁で暴れて、KOされて、そこから見知らぬ（いや自分が覚えていないだけの）女に介抱されて、もう一軒繰り出す。
そんな廃人のパラダイスの赤羽。
>>ああ、赤羽に生きたい。
一度だけ赤羽で空の天井を見つめて眠りに落ちて朝を迎えました
たくさん嘘八百に聞こえるようなことを言ったかもしれない＾＾
見知らぬ女性は介抱してくれませんでした＾＾・・・・
>>「オオ赤羽、赤羽よ」と叫びたくなるほど、昭和生まれの飲んだくれの中高年にとって、レトロな解放区であり、サンクチュアリです。
北区カルチェ・ラタンとでも呼びたいです。
>>時代遅れのサルのような自由の刑に処せらて執行猶予中とウソぶくニセ実存主義者が、まるます家で、たぬき豆富を酒のアテにして、嘘八百を語り、昭和の場末的スナックで崩れた姫を口説くような、くたびれた大人のチープな遊戯場であり社交場。
>>「いこい」で一杯ひっかけた後、かっては２３区内唯一の醸造所で、地元で作っていた伝説の酒、丸眞正宗のカップ酒を握りしめて、路上飲みをして、そしてOK横丁で暴れて、KOされて、そこから見知らぬ（いや自分が覚えていないだけの）女に介抱されて、もう一軒繰り出す。
そんな廃人のパラダイスの赤羽。
>>ああ、赤羽に生きたい。
一度だけ赤羽で空の天井を見つめて眠りに落ちて朝を迎えました
たくさん嘘八百に聞こえるようなことを言ったかもしれない＾＾
見知らぬ女性は介抱してくれませんでした＾＾・・・・
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