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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第108回 王都作 自由課題「きょう何釣った?」

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プロローグ
 これはかれこれ二日前。
 上流で渓流釣りをしていた男が一人。
 置き慣れているはずの足場で、一気に態勢が崩れる!
 足を滑らせ、流されてゆく………

1章
 ここはとある田舎のひなびた釣場。
 キョウコとシュンイチが釣り糸を水面に垂らし、獲物が引っかかるのを待っている。
 キョウコが眠さを噛み殺しながらアクビする。
「ふぁ〜ぁ・・・来ないねぇ〜」
 シュンイチは呆れて、
「アクビすんなよお前」
 キョウコ、ムッとしながら、
「だってシュンイチ!あたしはあんたにつきあってるだけだから!もう来てやんない勝ち誇り

 そうこうしてる間に突然、キョウコの釣り竿が大きく動いた!
 二人は同時に気づき、
「あ!」
 キョウコがすぐにリールを巻き上げる。
 キョウコの釣り竿の先がしなった反動で空へ跳ね、釣り糸が舞う先端におよそ二頭身の釣果(?)が。
 シュンイチ、キョウコのいる方へ青いポリバケツを差し出し、
「キョウコ、ここ入れろ!」

―――

 テラス席で早速釣果を確かめた。
 確かにさっき宙を舞ったおよそ二頭身の正体は人間、しかも顔は目のくりっとした謎の男性。
 今は、バケツからは出され、シュンイチが手持ちの白いタオルで包んだところ。
 頭は成人のそれより一回りくらいは小さくなっていて、腕や足など末端に至っては乳幼児……
 彼がシュンイチの顔を、つぶらな瞳でまじまじと見つめる。
 シュンイチは考え込み始め、
「う〜ん、たしかに見た目は人面魚じゃなく、れっきとした人間の形をしている。でも、話せない。それはどうしたことか。しかもコイツが水面を揺らさずにどう泳いでいたのか?謎だ🤔」

 ちょうどそこに山田大が通りかかった。
 大が片手をおおきく振りながら、
「網野さ〜ん」
 シュンイチも大のいる方へ明るい笑顔で、
「おお!ダイさん!いいとこに来た!!」
 で、シュンイチがこれまで起こったことをかいつまんで話すと、大は自身の膝上に謎の乳幼児っぽい男性を乗せたまま滔々と語り始めた。
「そもそも上流からヘンな物質が流れ込んでる川でね、水質おかしいんだよ。だから俺は行かない。で、その水に浸かりすぎると、徐々に魚になっちまうんだ。おそらくこの彼も魚になりかけていたんだろうな。だから釣り針に刺されても痛くない。それはともかく、間一髪のところで助かってよかった顔(笑)
 時折、大が膝の上の存在とゆる〜く戯れながら目を細める。
 キョウコが興味深く聞き入って、
「じゃあこの人、これからどうなっちゃうんですか?」
 大はすぐに返し、
「水抜き。体じゅうからね。この彼、相当やられちゃってるから時間かかるけど」
 キョウコは納得した表情で大を見て、
「ちゃんと元の姿に戻れると知って安心しました。ありがとうございます」
 大からは、軽く会釈された。

 言い終わったところで、キョウコは誰かから見られていたことに気づいた。
 話題にした二頭身くらいクンからだった。
 まだ体は白いタオルにふんわりと包まれていた。
 さっきよりは落ち着けたらしく、今度は誰でもいいからかまって欲しがってるように見える。
 キョウコはつい、路上にいる猫をなでるときのように、二頭身くらいクンの頭をなでた。彼は満面の笑みでキョウコの手の感触を満喫してるように見えた。キョウコは何気なく、
「ペット、また飼おうかな?」

―――

 大とシュンイチはまだ、話をしていた。
 シュンイチは大に対して、
「じゃあ、コイツは多分渓流釣りかなんかで岩場から足を滑らせちゃって清流の中へ落ちたんだな。とすれば、その近くにコイツの残した荷物あるだろ。それで身元判るんじゃね?」
 大の表情が明るくなった。

 一行、釣場の主に事情を伝え、ひたすら上流へ向かう。
 キョウコがある岩場の川近くに、釣り道具セットを発見した。
「あれ、彼の物っぽい!中見ようよ」
シュンイチは少しだけ迷ったがとりあえず、
「そうだな、普段は開けねぇが……今回ばかりは非常時だし……しゃあない」
 荷物を開けると、使い残している釣具の他にも、黒革の折り畳み財布が入っていた。中には身分証があった。
 シュンイチはこういう物を目にすると、つい余計なことほど考えてしまう。
“謎だった男の名は、本橋明(モトハシ アキラ)だったんだな。つか戻れるんか?コイツ…”

 一行、釣場の受け付けへ戻り、さっき話した主に本橋かもしれない男を引き渡す。
 シュンイチが巻きつけた白いタオルに包まれた男は、とても悲しげにシュンイチとキョウコを見ていた。


2章
 ほぼ奇跡的に元の姿に戻れた本橋。
休日にアポが取れて、会うことになった当日、
お世話になった白いタオルと菓子折り携え、
キョウコとシュンイチに挨拶に伺う。
 キョウコが迎えに出て、話になる。
 キョウコは彼のくりっとした目を見て
“あの時の釣果ちゃん!無事だったんだ…”
 そこから鮮明に思い出せた。
 シュンイチも玄関に来て、歓待する。
 彼らは同棲中だった。
 キョウコは照れながら「別にいいって」
 シュンイチは咳払いした後「あの川行くな!」
 本橋は深々と頭を下げたまま「すみませんでした。そうします」


(了)


―― cahier ――
流れた下流は足がつかない深場
本橋はこの川に正味2日ほど浸かっていたと思われる
普通なら死んでる

―― イメージ作りに使ったものたち ――
川で溺れた動画たち
まだ浅瀬
https://www.youtube.com/watch?v=s9EQlflT_tw
後半凄かったhttps://m.youtube.com/watch?v=y55hrFTNSW4
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