神奈川【市民と野党と労組】連帯コミュの『安倍政権と憲法と地方政治のゆくえ』

『安倍政権と、憲法と、地方政治のゆくえ』―参院選結果と新たな政局をふまえて―
日本共産党川崎市議会議員団主催講演　２０１３．１０．５　　渡辺　治

参院選で、自民党は議席圧勝、得票率も増加、得票数も増加した。民主党は引き続き後退、維新の会の後退で、保守二大政党制は崩壊。保守多党制が進行した。対抗する日本共産党の躍進。これら３つの参院選の３つの特徴は、バラバラの結果ではなくセットとして関係し合っている。自民党が圧勝した３つの要因は、新自由主義側からの「対案」の提示でもある。２０１２年１２月の衆院選と今回の参院選を比較すると、得票率は２７．６３％→３４．６８％、得票数は１８３万６千票増えている。大都市部よりも地域の回復が強い。大都市では大阪よりも東京が強かった。

　いま、安保や革新自治体運動とは異なる国民的共同の形の国民的共同の形が求められている。その改憲や構造改革を阻む国民的共同づくりのために、必要な重要要素。 ①地域の保守 ②市民運動 ③女性の力これらが一体となって、新しい力が湧いてきている。総評が元気なころの社共共闘で国民の三分の一以上をとても臨めない現状をみると、新しい形の統一戦線が国民的規模におよぶことがわかる。９条改悪反対、原発稼働反対、ＴＰＰ反対の一点で良心的な保守の人々とも共同しうる新たな変化を見逃すまい。古賀誠、野中広務など自民党の幹部たちはなぜ発言するのか、地域の破壊への懸念とともに、戦前を繰り返さないという痛切な思いがある。地方構造改革で地域保守層の離反―反構造改革、新たな福祉国家構想の担い手が生まれている。
（＊櫻井注　渡辺治、二宮厚美、後藤道夫などそうそうたるメンバーが、「福祉国家構想研究会」を立ち上げここ数年間堅実で具体的詳細な構想を創造し、それは出版化されるとともに、日本共産党の政策にも一部生かされている）

①第一要因―選挙制度、民主党の減少に自民党が助けられた。
　３１の１人区で自民党は29勝２敗
　（２敗は、沖縄選挙区の糸数慶子さんの勝利と
　　岩手選挙区の無所属で小沢一郎氏に反発した平野議員と思います　櫻井注）
②第二要因―「アベノミクス」への「仕方ない期待」とくに選挙との関係では「第２の矢」
　１）公共事業と地力
　　　公共工事請負金額の著しい増加地域と自民党得票率の上位県の対応－１３年４～６月期比較
　　　北陸２６．５％増　（石川①　福井③　富山④）
　　　中国２８．４％増　（山口②　島根⑥）
　　　九州５１．７％増　（鹿児島⑤　佐賀⑨）
　　自民党の平均得票率（３４．６８％）を上回るのは３０県―日本共産党の１１都府県と対照的
　　自民党の得票率４０％以上県の数の推移
　　　２００１参　３０　２００３衆　１４　　２００４参　６　　２００５衆　１５（小泉郵政改革選挙）
　　　２００７参　１　　２００９衆　０　　　２０１０参　０　　２０１２衆　１
　　　２０１３参　１９
　２）なぜ自民党の強い地方では投票率が下がったか
　　　０９年総選挙（６９．２７％）と比べて全国では投票率１６．６ポイント下がる（５２．６１％）
　　　石川では２０．６８ポイント下がる　山口も２１．４ポイント下がる
　３）安倍首相の本音を隠した
　　　改憲隠し　消費税増税、ＴＰＰでもごまかし続けた、安保法制懇も休業状態

保守二大政党制の崩壊―民主党の引き続いての後退で保守二大政党制崩壊、保守多党制
　・民主党もさらに減る　維新の会も減る
　・保守二大政党制崩壊
　　　保守二大政党制の２つの条件―第１条件の崩壊
　・保守多党制の成立―保守多党制は改憲、構造改革強行には不利な政治体制
　　保守二大政党制の２つのねらい
　　保守多党制では改革強行できない

日本共産党の躍進の３つの要因
　１）躍進の構造
　　　得票数、得票率ともに２０００年代に入っての停滞に歯止め、巻き返し
　　　大都市部での躍進―全国平均以上は１１都府県
　　　　例：東京７．４０→１３．７１％　　７７万３千票（比例第三位）
　２）小選挙区制の下での保守二大政党制確立、今回壊れた
　　・都議選での躍進の秘密
　　　議席大躍進８→１７　得票率１２．５６％から１３．６１％へとさほどはあがらず、得票も前回よりも減る
　　＊（櫻井私見　１２衆院選と同日の都知事選挙で脱原発市民運動と選挙運動がむすびつき、
　　　　　　　　　都知事は当選しなかったが、共闘と盛り上がりの気運が都議選参院選へと発展した）
　　・保守二大政党制の危機→保守党乱立、衆院と参院の選挙制度の違い（１～５人区）
　３）運動の高揚が政治の転換に結びついた―１２年総選挙での萌芽が全面開花
　　　反貧困、反原発が政治へ　　吉良よし子＋山本太郎（２４．３％）、宇都宮健児都知事候補１０６万票
　４）アベノミクスへの対案が、浸透し始めた―アベノミクス反対者の票獲得
　　　無党派層のかなりが共産党へ、ＮＨＫ東京出口調査、共産党支持７％→１３．７１％参院選後「アベノミクス」第２幕で構造改革の新段階へ

　安倍総理は参院選後新自由主義の再起動から新自由主義新段階へ
・財界の懸念と構造改革の再起動を圧力は、統治の利益と矛盾する
・消費税引き上げと法人税減税、設備投資減税
　庶民の暮らしを無視して大企業富裕層のための安倍政治
・ＴＰＰ参加の強行
・原発再稼働をなぜ焦るのか？　安倍外交と原発
アベノミクスによる構造改革の焦点としての社会保障構造改革の新段階
・社会保障制度改革はどこが新しいのか　社会保障制度改革国民会議報告
①社会保障の構造改革と「アベノミクス」成長戦略のドッキング
②国と自治体の責任縮小　　「自助」「共助」「公助」論の無責任政治
③地域への構造改革遂行責任の丸投げ
・自民党政権時の地方分権改革→地域主権改革で「義務付け枠付け廃止」
・国民健康保険の都道府県単位化でさらに「前進」、これを確保するために
　提供体制都道府県化
臨時国会でプログラム法案を提案する意向
公的社会保障の削減に伴う大企業の市場創出をすすめている

参院選後の安倍政権は改憲の新戦略をもっている。
・アメリカオバマ政権のアジア戦略の2つの転換がある。ひとつは、直接介入主義への反省である。もうひとつは、対中国の二面戦略である。アメリカは日本への政策に二面性がある。アジア諸国は、第二次世界大戦での日本のアジア侵略戦争を忘れていない。日本国民が明文改憲することを警戒している。日本政府は、誤算と修正、先延ばししている。９６条改憲への国民の批判で解釈改憲を選択しつつ明文改憲を視野にいれている。戦争作りの機密保護法制定の策謀もすすめている。

　地域を根城に保守にも呼びかける。ＴＰＰ、消費増税阻止、社会保障の破壊、原発再稼働反対で共同を。
（＊櫻井注：その点では原発ゼロをテーマに首都圏脱原発再稼働反対連合などが主催となり、日本共産党も積極的によびかけ参加した四万人の集会・パレードは重要な成果である。いまの共産党は市民運動も大切に対応していて好感がもてる。）
　対案を掲げて、消費税を上げずに社会保障を充実し、景気回復、地域経済の再建の展望をもちたい。

なお、渡辺氏は、参考文献として渡辺治著『安保政権と日本政治の新段階』（旬報社）をあげ会場で販売してくれたので、早速買ってゆっくり読んでいる。