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repairman Jackコミュのthe Night World改 夜明け

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コメント(4)

金曜日
始まり・・・
マンハッタン

キャロルはグレーケンの建物の屋上で輝く朝の光を浴び、
ブラウスを脱ぐ勇気があればいいのになあと思っていた。
ジャックとビルは扉から外に出た途端シャツを脱いでいた。
雲ひとつない青空の暖かな光の下、躊躇なく肌を晒す男性の無頓着振りが羨ましかった。
 私だって?ブラウスの一番上のボタンに手を伸ばした。
一緒にあんな事を切り抜けてきたんだもの、こんな事何だっていうの?
でも二つ目のボタンで手を止めた。ビルだけだったら多分。でもジャックもここにいる。
 いろいろあって私は変わったの、わかってるけど・・・これはちょっとやり過ぎね。
謹厳なカトリックの少女が、未だにキャロルの中に住んでいた。
「まだ信じられない」ジャックが言った。
ビルはシティを見回した。「酷い目にあったね」
 キャロルも見た。シティにまともな窓は一つもない。
壊れたビルディングがあっちにもこっちにも、重力穴に呑まれて無くなったビルディングもある、
そのビルディングから崩れ落ちた瓦礫に壊されたビルディングもある。
火事の煙が地区のあちこちから立ち上っている。
その下には瓦礫だらけの通りを避けながら、ごくたまに走る車が見える。
茫然とした顔つきの人々が歩道を彷徨い、
何時間か前に出現したシープメドウズの穴の周りで立ち尽くしている。
「そう悪かない」ジャックが言った。
「ミッドタウンの空気がこんなにきれいなのは、いつ以来だろう」
 ジャックは生き返ったように力に満ち溢れている。
キャロルはその訳を知っていた。短波ラジオが生き返ったのだ。
ジャックは愛する人たちと連絡がついたのだもの。
 ビルは頷いた。「うまいことを言うね。どうやってこれを建て直せばいいんだろう」
ジャックはしかめっ面をした「おれたちにやれってか?」
「やらなくちゃ」キャロルが言った。「一からやり直すチャンスよ、今度はちゃんとしなくちゃね」
ビルは頷いた。「少なくとも全力は尽くそう」
「おほほ、わお!」ジャックが笑い出した。
「ポーリーはアンナに出会い、アンナはポーリーに出会ったな」
キャロルが振り向いた。「何がいけないの?」
「絵に描いた餅。確かに新しい世界や人類愛についちゃ語りつくせないほどだろうが、
誓ってもいい、遅かれ早かれ前とおんなじクソッタレ状態に転落する。
真に有能な人間を一度はリーダーと仰いかで、街の立て直しに全力を捧げるかもしれないが、
一方じゃ口先だけの連中が、何にも作れ出せないくせに物事をリードしようとする。
そうやって自分の都合のいい方向に転がして行くだろうよ」
「そうとは限らないわ」キャロルが言った。
「出来るわよ、もっとよくなるわ。リーダーについて言うなら・・・」下の方を見た。
「あなた達二人が何をしたか、わかってるかしらね?」
「わかってないね」ジャックがぴしりと言った。
突然ジャックは落ち着かない様子になった。シャツを着始めた。「行かなくちゃならない」
「ヒーローになりたくないのかい?」ビルが言って微笑んだ。
「関心を持たれるのもごめんだね」振り返ると歩き始めた。
「行っちゃうの?」キャロルが言った。
「ああ。早いとこ車にガソリンを入れてペンシルヴァニアに行こうと思う」目を輝かせた。
「エイブがジーアとヴィッキーを連れて帰ってくるんだ。エスコートしないとな」
「気をつけて」ビルが言った。
 キャロルはジャックを見送った。
ジャックが階段まで行った時、ひとりの少女が、七歳か八歳、のプロンドの巻き毛の子だ、
ジャックの方にやって来た。子犬を抱いている。一体全体どこから現れたのだろう。
 ジャックはその子の前に急停車した。お互いに見つめ合う。
ジャックが何か言うと、その子が頷いた。それからジャックが妙な振る舞いに出た。
片膝をついて少女を抱え、抱きしめたのだ。
「見た?」キャロルが言った。
ビルは頷いてしかめっ面をした。「泣いてた?」
キャロルにも確信があった。「あの子誰なのかしら?」
ジャックが目をこすっているのを見ていると、何かが飛んできて少女の頭に着地した。青白い色のパラキートだ。
キャロルにジャックの大声が聞こえた。「パラベラムか?」それから笑い出した。
「こいつは驚いた!」
 ジャックは少女の手を取り、犬と鳥は少女にくっついて階段を降りていった。
「何だろう?」
キャロルは首を振った。「あの少女はジャックが話してた子じゃないと思うわ」
「違うね」ビルが言った。「どうも何か・・・あの子には子供らしさがないね」
「誰だかわからないけど、ジャックはあの子をがっちりガードしてるわ。あの子に手を出す者は神の守りがが必要ね」
ビルはキャロルの腰に手を回し、荒れ果てた街の光景から引き戻した。
「神は誰も守ってはくれないだろうね」
「言葉のあやよ。日の出は誰の、或いは何の手柄になるのかしら?」
ビルは笑い出した。「大勢の人が、Here comes the sun、を歌ってたよ。
新しい賛美歌になるに違いないね。でも君の言うのも最もだ。新しい神話の誕生だ。
太陽信仰の復活、それは確かだ。どうなるのかが楽しみだな」
「でもそれって、間違いなのよ。みんなで崇め讃える神を模索するんでしょうね」
「目新しい事でもないさ」
「でもあなたはどうなの?手柄の一端を担ったでしょう」
ビルは首を振った。「いや、ただの使いっぱだよ」キャロルの目を覗き込んだ。
「君こそただ一人、真実の鍵を見つけてそれを使った。
うわべじゃなく、内面の答えを見つけたんだよ」
「人ってそんなものなんじゃない?
誰でもそれぞれの担当があるのよ、でもそれをちゃんと運営するのは難しいわね。
何となくその方向に流されてただけよ」
「恐怖とは病気のようなものだね、僕たちは他の人より恐怖に免疫があったんじゃないかな。
他の人からのきっかけが必要な人もいるんだよ、
だけど僕たち全員が誰でも一歩引いて考える力を持ってるんだ、
もう付和雷同して恐怖にとらわれるのはよそう」
キャロルはビルの腰にギュッとしがみついたまま、風に乱されたビルの白髪まじりの髪を整えた。
「物事は変わっていくと思う?」
ビルは首を振った。「僕はジャックより楽観的なんだけどね、ジャックが正しいかもしれないね。
何も変わらないだろうよ」
「そんな事ないわ、ビル。私は変わったもの、あなたも変わったわ、
私たちみんなこの事で変わったの」
「一番変わったのはグレーケンだね」
 そうだわね、キャロルは胸を突き刺される思いがした。
あなたが特に変わったわね、グレーケン。
あなたはどうするのかしら、マグダが死んでしまったら、あなたはどうするのかしら?
 それからシルヴィアとジェフィ・・・あの人たちは?そしてニック・・・
正気に戻る日が来るのかしら?
 たくさんの疑問、たくさんの未解決のもの。
  キャロルはビルの腰にしがみついた
ただ一つだけ確かなものがある・・・ビルが好き、
それから今日この日を経験した人の中で、日の出が当たり前と思う人はいないって事。


 その足元、真下のアパートメントの部屋では、三十五才の肉体から歳をとらない赤い髪の男は、
ねじ曲がり、虚無の中に生きる女、かつて愛し、共に歳を重ねたいと思った女に、
スプーンですりおろしりんごを食べさせていた。
少女、グレーケンより年上の少女が子犬を腕に抱えて部屋に入ってきた。
グレーケンは少女と抱き合った。グレーケンの家族が一人増えたのだ。

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