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repairman Jackコミュの秘密の仕返し segret vengeange 1日曜日

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コメント(8)

日曜日
ウィージー、土曜の晩に襲われる
一
「ジャック」お母さんが階下のホールから呼んでいる。「ウィージーから電話よ」
ジャックは掛け布団から顔を出すと苦労して目を開け、ベッドの脇にある目覚まし時計を見た。
8:30の文字が赤く光っている。目を細めて窓を見た。日除けの角から朝の曇り空が見えた。
「後でかけ直すよ」
「重要だって言ってるわよ」
日曜の朝八時半にどんな重要な事があるって言うんだ?
唸り声を上げ、ベッドから滑り出しジーンズを履くと、主のいない兄と姉のベットルームを通り過ぎ、裸足で階下に降りていった。トムはジャージーの法学部を終えるところで、
ケイトはストラッドフォードの医学部に入学した所だった。
右に折れて、お母さんが卵を割っている台所にはいって、コーナーに置いてある受話器を取り上げた。
「ヘイ」
「ジャック、話さなくちゃ。最悪よ」
「あそ、ハロー、ご無沙汰だな」
スクールバスの停留所でちょっと話すくらいで、最近はあまり顔を合わせていない。
「真面目に言ってるの、ジャック。話をしたいのよ」
その声の何かが・・・どこがとは言えないけど、動揺してる様に感じた。
あいつは家族とうまくいってない、特にお父さんと。
ウィージーはジャックから見ても少し変わっている。たぶんひどく変なふうに思われてるんだろう。
ジャックにとっては変じゃない。単に・・・ウィージーなんだ。
たぶん怒らせたんだな。
「オーケー。朝ごはん食べたら来るかい?」
「ダメ。誰かに聞かれたくないの。橋で落ち会って、自転車でバレンスに行こうよ、
あそこなら誰も聞いてないから」
ウィージー・・・いつも神秘的だな。そうだな、USEDのバイト時間まではまだ暇がある。
「いいよ。何か食べさせてくれよ、三十分後だ」
「そんなにかかるの?」
「お腹が減ってるんだよ、ウィーズ。二十分でいけるかがんばるよ」
「オーケー」
電話を切って、ニヤリとした。今度はなんだ?ウィージー・コーネルにはボーっとしてる暇はない。
ジャックもそれに付き合うしかない。
 居間から声がした・・・まず男の声、それから女の声。
ラジオかな?テレビ?うちの家族は日曜日の朝にそんなのをつけたことはない。
今だと新聞を読む時間だ。何かついてたとしても、マムのブロードウェイのサウンドトラックだ。
チェックしに行くと、親父がテレビの前に座り、身を乗り出し、画面に釘付けになっている。
画面には・・・黒煙の中、炎を上げる瓦礫の山、消防車と救急車が行き交っている。
ベイルート、レバノン、とある。右下角に小さくCNNの文字が見える。
「何かあったの?」
親父は顔を上げた、鎮鬱な面持ちだった。「このコンクリートの山が見えるか?
発狂したアラブが吹っ飛ばす前は、四階建ての兵舎だった」
ジャックは瓦礫を見つめた。四階建て?今や一階部分しかない。
「空爆?」
「いや。トラックに爆薬を積んだ気狂い野郎が正面玄関から突っ込んで吹っ飛ばしたそうだ」
ジャックは目をぱちくりさせた。「自分も乗ってるのに?」
「ああ。こう言うのを、自爆テロ、と言うそうだ。同じことが何マイルか先のフランス軍の兵舎でも
起こった。死者の数は三百人にも届くらしい」
ジャックは仰天した。
「頭が変なの?つまり、自分も吹っ飛ばされるのに?」
「そうだな、第二次大戦の神風特攻隊も自爆の任務を与えられていたが、
あれは戦いで、戦争中の話だ。この若造どもは平和維持活動の一環でやったんだ」
「でも・・・どうして?」この行動は理解しかねた。
「どうして?あるリポーターがパールハーバーの様だと言ったね・・・日曜の夜明けの奇襲だ。
だがジャップはまず宣戦布告をする良識があった。
それに国があり、軍隊があり、我々が反撃することが出来た。
いくつかのグループ、イスラム聖戦と呼ばれてるが、犯行声明を出している。
そいつらは一体誰だ?誰もそんなものは知らんらしい、
四月にアメリカ大使館を爆破したと犯行声明を出した連中以外はな」
ジャックもその話は聞いていたが、何か違う気がしていた。
違うもの、もっと悪いものだ。父親の表情や声音から、カンカンに怒っているのがわかった。
何年か前にイラン人質事件を覚えてるけど、今度は自爆テロか。
中東はどうなってるんだ?頭が変になっちゃったのか?
 マムがソーセージと卵で、親父をテレビの前から引き剥がした。
葬式のような朝食で、沈黙を破ろうと、マムが無理矢理、何か話をしようとした、親父は兵舎の
「セキュリティの甘さ」についてぶつくさ言っていた。
ジャックは親父がこんな風になるのを見た覚えがない。
親父は朝鮮戦争からの退役軍人で、軍について何か言ったことはない。
いつも、自分の息子は、軍関係のものに近寄ってほしくないと言明していた。
でも多くのアメリカの兵士が死んだことには、心の底から動揺しているようだ。
軍人と武装勢力との間に一線を引いてるんだな。
戦った仲間たちに何らかの同胞意識が芽生えたんだろう。
この地方の退役軍人クラブで集まってるみたいに。
朝食が終わると親父はまたテレビに戻り、ジャックは自転車を取りに行った。
二
ウィージーとオールドタウンの橋で落ち合った、クエイカー・レイクにかかった一車線の
狭い木の橋だ、湖、言うほどの大きさでもない、池、くらいかな。
自分のBMXにまたがると額の汗を拭った。曇っているのに暑い日だ、もう十月だって言うのに。
1983版のファーマーズ・アルマナックはこの辺りに涼しい雨が降ると予測していた。
ジャックの経験では、まだ水泳パンツを携帯しておけ、と言う事だ。
 十四才を遊び回った辺りを見回した。ジョンスン、ニュー・ジャージー、バーリントンの小さな街。ルート206の西側から、ジャージー・パイン・バレンスの西の際まで。
この街がいつ設立したのか正確に知るものはいないが、
1860年のいつだかにアンドリュー・ジョンスン大統領が何日か逗留してから、
クエイカートンからジョンスンに名前が変わった。
見ると、ウィージーがノース・フランクリンの角を回り、バナナ・シートのシュヴィンに乗って、
クエイカートン・ロードをやってくる所だった。
ルイーズ・「ウィージー」・コーネルはジャックの数少ない友達の一人だろう、
コーディ・ベックマンの失踪事件以来、何週間かのご無沙汰だった。
ほんの四ヶ月違うだけで・・・ウィージーは十五になりたて、ジャックは一月までお預け・・・
ジャックより先に学校の課程を終えた。ジャックは下の学年の一年生で、
ウィージーは二年生に進んだ。
 着ているものは・・・びっくりだ!・・・黒いジーンズ、黒いTシャツ、黒いスニーカー。
肩までの長さの黒髪はポニーテールに結んで、ペダルを漕ぐたび前後ろに揺れている。
 近くまでくると、顔が見えた、何か悪いことがあったのは知ってた。
まず、アイライナーをしていない・・・今までで最小のメイクアップ。
この一年で覚えている限り初めてのことだ。違う顔に見えた。
「大丈夫?」そばまでくるとジャックは言った。
「ダメ」橋に向かって向きを変えた。「森の中で話すわ」
 後についてオールドタウンに入った、もともとの開拓は、ウィージー曰く、
みんなが考えているより、ずっとずっと古い、世界の隠された歴史、と呼んでるものの一部だ。
セプティムス・ロッジの四角い建物を通り過ぎた、先月の地下浸水で出来た穴を避けて通った。
歩道の上に一ダース以上、中には何ヤードの幅のある穴もある。
 クエイカートン・ロードに近づくと、オールドタウンは終了し、パインズの森だ、
ジャックは雷の木の横の定位置にレスター・アップルトンのトラックが停まっているのに気がついた。曜日によってレスターかガス・スーイがムーンシャインを売っている。
二人の男がテールランプの所にいて、レスターが大きな瀬戸もののジャグからウイスキーボトルに
入れているのを見守っている。
アップルトンはパインズの古い家系で、近親結婚をしてるらしい。
疑う者がいても、レスターがその証拠になっている。
痩せこけて、左目はいつも鼻の方に向いており、房になったこわい髪の毛が
頭皮からあっちこっちに突き出している、膝までのオーバーオール、裸足でスニーカー。
手もくるぶしも垢塗れで灰色になっている。背中は曲がりねじくれて、
いつも前屈みで右に傾いている。絶えず大きな赤いベロで唇を舐めている。
 パインズ一のアップルジャックを作る、と言う人もいる・・・父親から秘技を教えられたと。
ジェイコブ・・・ガス・スーイのものとは違った味わいだ。
どれも、はっきり言って非合法だが、何か言う人はいない。
アップルジャックはパイン・バレンスの生活の一部なのだ。
「どこに行くんだい?」ジャックはウィージーに呼びかけながら、
木の間を抜けるファイアーブレイクについていった。
「わかるわよ」ウィージーは振り向きもせずに言った。
 バレンスに何度も何度も出入りしてるに違いない・・・人生の中で一番の回数だろう・・・
ジャックは少しばかり不安を感じずにはいられない、
四フィートの松の灌木がもつれあってモジャモジャの枝が道の上から迫ってくる、
自分を捕まえるチャンスをうかがっているかのようだ。この場所は生きている。
「今なら話せる?」
「あの場所に着いたら」
二人は更にバレンスの奥深くに進んだ、州の真ん中に位置する百万エーカーの森林地帯には
人間が足を踏み入れたことのない隠された場所だ。
毎年迷い込んでいなくなる人間が何人かいる。
お馴染みの、釣り禁止/狩猟禁止/罠禁止/立ち入り禁止、の看板が至る所に貼り付けてあるので、
フォスター老の土地に入ったに違いない。スポングを通り過ぎた、
根性曲がりのパインの民が罠を仕掛け、ミセス・クレヴェンジャーがその度に弾いている場所だ。
あの人は最近ここに来たらしい、なぜなら全ての罠が顎に木の枝をくわえている。
 ウィージーはフォスターの土地を更に奥に進むと、道を外れて、
草地の尾根を挟んで二つの轍がある小道に入りこんだ。
ジャックはここまで来たことがないが、ウィージーはあるんだろう。
バレンスを探検して回るのが好きだから。
 ついに、小さな広場で立ち止まった、頑丈な背の高い樫の木が一本あり、
ひょろひょろした松の木が連なっている。
ウィージーはジャックの方を振り返ると言った。
「ここでそれが起こったのよ」
あたりを見回した。「ここで何が起こったんだい?」
ウィージーの顔が歪んで目が涙でいっぱいになった。
「カースンに襲われたのよ」
知らないうちにジャックは自転車を降り、ウィージーの顔を見つめた。
「あいつが何だって?」
突然ウィージーはジャックに抱きついて胸に顔を埋めた。
「そうよ!あいつ私にしようとしたの・・・わかるでしょ!」
啜り泣くウィージーに、ジャックは腕を上げて、それからどうしたらいいかわからずにいた。
ついにその手をウィージーの背中に回して優しく抱きしめた。
何か言おうかなと思ったが何も出てこなかった。考えつくのは、殺してやる、事くらいだ。
 カースン・トリヴァーは大きくがっしりした三年生で、バーリントン・バジャーズのキャプテンで
クォーターバック、そしてサウス・バーリントン・カントリー・レジョナル・ハイ・スクールの
憧れの恋人だ。
夏に最初にウィージーに興味を示した時、ウィージーのIQがたちまち八十ポイントなくなった。
ジャックは、彼女がバレンスで儀式的に切断された死体の共同発見者であるという噂話のせいだと考えていた。
以来何度か周りをうろつき回っているのを見かけたが、それ以上の事をする気配はなかった。
明らかに事が起こったんだ。
ウィージーはしばらくしゃくり上げていたが、身を解き、下を向いて目をこすった。
「ごめん。長いこと抱えすぎてたんだと思うの」
「家族に言った?」
ウィージーは途端に顔を上げた、荒々しくも怯えたような目の色だ。
「言わない!言いっこないわ!言わないでね!あいつと一緒に出かけたのも知らないんだから!
うちにいたと思ってるんだから!」
「わかったよ」言い淀んだ。「その・・・どんな風に・・・?」
「一緒に出かけないって言ったの。私の好きな誘い方で、わかるでしょ、私たちが死体を見つけた事、コーディについて、みんな聞きたいからって」
ジャックは顔を顰めた。「それで君の思考力は大きな歯抜けのクマ並みに落ち込んだんだ」
気を悪くしたらしい。「そんなんじゃないわ」
「前にもそんなところを見たけどな」
「いいわよ、オーケー、学校一のいい男に興味を持たれたら・・・あなたにはわからないわね」
「わからないね」
「とにかく、うちの両親は絶対行かせてくれない、三年生と外出なんて、
特に車でなんて、って言ったのよ」
トリヴァーの車・・・クールなマスタングGLXコンヴァータブルだ。
ジャックは自分がそんな車に乗るなんて想像もできない。
「で、誰にも言うなって言ったんだ」
ウィージーは頷いた。「あんな事になるなんて想像もしなかったでしょ?」
「想像してればよかったな」
「まあとにかく、昨日の晩、オールドタウンまで歩いて、
そこで拾ってもらってパインズの中に行ったのよ」
「少しくらい不安にならなかったのかよ?」しかめっつらをした。
「今思えば、そうすべきだったわ、でも死体の話をして、どんな風に切断されてたのかの話をして、
コーディの事、パインズのミステリアスな事、それで彼が誰にもまだ知られていないすごい場所を
見つけたから、見に行こうって、だから、行くって言ったのよ」
「もっともだね」
ウィージーにパインズのすごい場所を見つけたなんて言うのは、
猫の前にのたくる金魚を吊るすようなもんだ。
「それで、ここで車をとめて、私に何か見せるんじゃなくて、突然掴みかかって来たのよ」
目をパチパチさせた。
「やめて、って言ったけど、やめない。身体中をさわりまくって、押しやったんだけどやめないの。
ブラウスのボタンを外そうとしたわ。とうとうぶん殴ってやったら呆然としたわ。
あいつは金切り声で、ゴスロリの奴はケツが軽い筈だって罵ったの、怖くなって車から飛び出した。
それでも諦めないの。追いかけて来て掴みかかって来て、ブラウスが破けたけど、
構わず走り続けたわ」
「カースン・トリヴァーを振り切ったのかよ?」あの男はエース・アスリートだ。
「木の間に逃げ込んで隠れたの。あいつ、見つけられなかったわ、
だからそこに立って叫び声を上げるしかなかった。
多分自分のような男にとって、他の女の子たちと同じように、私もお手軽に行けると思ってたのよね、でもあいつ・・・」震える手で顔を押さえた。
「ジャック、とっても怖かったの。あいつ、気が狂ったみたいになってたわ。
最後にやっといなくなった」
「歩いて帰るまま放って置かれたのか?」また怒りが込み上げて来た。「告発してやるべきだ」
「出来ないわ!忘れたいだけよ」
「襲いかかったんだぞ。強姦か暴行か、両方だ。犯罪だ。警察に言うべきだ」
「オマイゴッド、いやよ!訴えたら、家族も巻き込まれるわ、あいつは私がキチガイで、
一緒にいた事なんかないって言うでしょう、証明できないし、みんなあいつの側にたつわ、
だってあいつは有名人で、私はなんでもない人間だから、
それに、あいつが私を誘ったなんて誰が信じるかしら、私は変な奴として知られてるし、
あいつに襲われたと言ったらみんながなんて言うか、考えるまでもないわ」
ウィージーが一息ついたので、ジャックは割り込んだ。
「じゃあ・・・おれに何かして欲しい訳?」
ジャックがスワヒリ語でも話したかのような顔をされた。
「何か?違うわ。それに、何か出来るの?」
自分がギャラハドさながらに、ウィージーの名誉をかけてトリヴァーと戦う幻影が頭をよぎった・・・そして地に倒れる自分。
ジャックはそこでやめた。「助けがいらないなら何で話したのさ?」
どうして他の誰かじゃなくて?
「誰かに言わなきゃならなかったのよ。家族には言えない、エディにも他に人にも言えないわ。
学校の女子たち・・・無理。信頼できるのはあなただけなの。
誰かに言うだけで救われる、わかる?」
ジャックにはわからなかったが、どうでもよかった。
信頼できるのはあなただけ、が頭の中で鳴り響き、心地良いこだまとなった。
「じゃあただあいつをやり過ごすの?」
「あいつとは距離を取って、二度とこんな事が起こらないようにするわ」
「警察に言うんだ、ウィーズ」
「ありえません!自分で自分の首を絞めるだけよ。終わったし、過ぎた事なの。私は無事よ。
ある意味学びがあったしね」
「どんな?」
「よく知りもしない男と車になんか乗るもんじゃないって事」深いため息をついてあたりを見回した。「ね、もう気分が直った」
「ウィーズ、ちょっと前まで泣いてたくせに」
「封じ込めていたからよ。これで吐き出したわ」・・・微かに微笑むと鋭くジャックを見た・・・
「今他の人に話した、百パーセントもよくなったわ」
まごつきながらジャックは首を振った。「イカれてるよ」
ウィージーからほほえみがきえた。「そんな風に言わないで、ジャック、お願い。あなたはやめて」
激しさにびっくりした。この言い方にひどく神経質になってるんだな。
「オーケー。わかった」ジャックはにっこりした。「ゴスチックは?それは言ってもいいのかい?」
ウィージーはジャックの腕を叩いた。「私、ゴスじゃないもん!」
「違うのか?待てよ・・・黒いドレスで、バウハウスとスージー・バンクシーを愛してる。
うちの親父がよく言うけど・・・」
「やめてよ!」ウィージーは耳に指を突っ込んで、訳の分からない言葉を呟いた。
「ボビッターボビッターボビッタ」
「・・・アヒルみたいに歩いてアヒルの声で鳴いてたら、アヒルである可能性が高い」
耳から指を外した。「言い終わった?」
「ああ」
「結構。そういうのはただの好み。ファンクラブにはいりたいわけじゃないわ。
レッテルを貼られるのは嫌いなの」
それはジャックも同じだ、という訳でその話はやめることにした。
三
二人は自転車まで戻り、ファイアブレイクを通ってジョンスンに戻ろうとしたが、
ウィージーが手を上げた。
「わかってるかしら、この辺りを通ったことがないの」
ジャックはニヤリとした。「つまり、フォスター老の土地のある場所は知らないって事?」
肩を竦めた。「あの人は広大な土地を所有してるわ。見ていこうよ」
ジャックは時計を見た。「帰らなくちゃ。USEDに行かなくちゃならないし・・・」
「ねえ、ジャック。少しだけよ。私が行ってもいいけど・・・」
ジャックには彼女が言いたくないのがわかった。
昨夜の事があって、ここで一人でいたくないんだ。
「オーケー。だけどちょっとだけ・・・」
しかし、すでに自転車を置いてウィージーは歩き出していた。
彼女が立ち止まり、指差した所までついて行った。「あそこに開けた場所があるのを見て」
ウィージーの後について並んだ木々にそっていくと、なるほど、開けた場所がある。
この開け具合はちょっとおかしい・・・ほぼ正確な四辺形、フットボール競技場くらい、
そして何も生えていない。全く何もなし。
「ここは何なんだ?」ジャックは言いながら砂地を調べた。
「誰か来て草を刈ったのか?それとも除草剤を撒いた?」
「除草剤なら枯れた草がのこるわ」
もう一度見てみた。言う通りだ。植物の気配はないし、枯れ草もない。
「これ見て」ウィージーは言うとひざまずいて、縁に沿って生えている鮮やかな緑色のシダを調べた。歯を広げて目を近づけ、何やら呟いた、それは「コブ」と言ってるみたいに聞こえた。
「何だい?」
「チャセンシダよ。普通バレンスには生えていない、土壌が酸性すぎるの」
ジャックは心ならずも目を回した。「一体どうしてそんな事を知ってるんだ?それでなんで?」
立ち上がるとジャックを見た。「パインズには失われた多くの都市があったからよ・・・
いろんな街が生まれては消えていった」
「とか、建て直されたりな、おれたちがよく知ってるやつだ」
頷いた。「かつて街があった場所を特定する一つの方法がチャセンシダなの。
パインランドの土壌は酸性で、チャセンシダは酸性を好まない。
埋もれた建物の基盤の上に生えるの、古い石灰岩やモルタルがその上の土の酸度を下げるからね」
まわりを指した。「私たちが立っているのは古い基部の上よ」
ジャックは剥き出しの四角い地面を見た。「何の?」
ウィージーは剥き出しの地面の上に踏み込むと真ん中の方に向かって歩き出した。
ジャックは後に続いた、歩いた後に跡が残った。
生き物の気配はない。黄金虫も、みみずの穴も、蟻一匹いない。
ここで何かが育ったことはなかったように見える。
柔らかな土壌に何かが欠けているように思えたが、確とはわからなかった。
 ウィージーはくる、と振り返って、指差した。「わかる?チャセンシダがグルリに生えているわ。
ここに建物があったのよ・・・大きな建物が」
「大きい、なるほど。何の場所だったんだ?真ん中にはどうして何にも生えないんだ?何だかデッド・ゾーンみたいだな」
「デッド・ゾーン・・・」ウィージーはジャックを見た。「何で聞き覚えがあるのかしら?」
「映画だろ」ジャックはファイア・アンド・アイスの試写を見に行った時見た。「思うに・・・」
「しいいいいっ!」ウィージーは言って指差した。
見ると、ひとつがいの、若いパインランド鹿がこっちへやってくる。
ジャックを身を固くして、そいつらが空き地に近づいてくるのを見守った、
二頭は中に一歩入ろうとすると、突然右に曲がりチャセンシダに沿って左の端まで歩いて行った。
次の角までくるとまた左に曲がり、まるで向こうから飛び越えてこっち側に来たかのように進み、
遠ざかって行った。ジャックは二頭の白い尾が木々の間に消えていくのを見送った。
「今の見た?」ウィージーが囁くように言った。
「ほら」ジャックを地面を指し示した。
「少なくともこの一週間雨が降ってないけど、おれたちの足跡しか残ってない。
動物たちはここを横切らないとしか説明のしようがないよ。
ここは実際、マジでデッドゾーンなんだ。ここに何があるんだろう」
「或いは、何があったか、ね。わからないけど、でも・・・よくない感じがする」
ジャックは彼女の言わんとすることがわかった。
ウィージーは嫌な顔をして見せた。「ここにこれ以上いたいとは思わないわ」
ジャックだってそうだ、だが微妙な顔つきで付け加えた。
「どっちにしても、もうバイトに行かないと」周りを見回した。
「この場所は君の言う、隠された世界の秘密、の一部だと思うのかい?」
頷いた。「絶対よ。でも少しまだ秘密の何かが残ってるかも。帰りましょう」
ジャックは何も言わなかった。何もなかったとしても、
ウィージーはカースン・トリヴァーに捕われているみたいに見える。
だがそれはジャックには関係のないことだ。

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