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repairman Jackコミュの6 土曜日

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コメント(5)

一
「一緒にいればよかったなあ!」
バス停に向かって歩きながら、エディがこう言うのはもう千回目くらいだ。
ルービックキューブを弄んで、見もしないでまえにうしろにまわしている。
「どうして残らなかったんだろう?」
「お前が弱虫だからだよ」ジャックが言って聞かせた。
「我こそは!我こそは!史上最強の弱虫王なり!」
二人はエディに、他のみんなにしたのと同じ話を聞かせたが、
二人がロッジにいた事はエディは知ってるので、そこはスペシャルバージョンだ。
ピラミッドを見つける事は出来なかった、
建物を後にした時、崩落の穴に落ちていったと語って聞かせた。
「お前たちみたいなヒーローになれたのにな!」
「そのキューブをちゃんと合わせるまではダメだね・・・
天才であるおれがおまえの代わりに合わせるまではな」
「ルービックのヒーローにもなるのか?出来るならだけど」
「私たち別にヒーローじゃないわ」ウィージーが言った。「そう言うのやめて」
「でも、そうじゃん!メーン、もし俺も一緒にコーディを見つけてたら、
今日は学校にスーパーマンのキャップをかぶっていくよ」
「そうでなくてよかったわ」ウィージーが言って、ジャックをチラリと見た。
ああ、ジャックも、よかったと思った。エディの口を閉じておく方法はない。
遅かれ早かれ、ロッジにいた事をバラすに決まってる、ミスター・ドレクスラーとの契約がわやだ。
ジャックとウィージーは昨晩の夜、救急車が到着した混乱の起こる前に素早く話し合った。
来るであろう注目は集めたくない、コーディ救助について果たした役割は最小限に話すことにした。
質問を受ける時・・・シフトでないにも関わらず現れたティムに・・・
崩落した穴に落ち、コーディの泣き声が聞こえて、一緒によじ登ってきた、と言った。
怪物に囚われていた、コーディの話は?
おれたちにはわからない・・・一度も見ていない。暗すぎて下では何も見えなかった。
ある意味終わった事だ。ジャックはティムに、自分達の名前を出来るだけ伏せておくよう頼んだ。
不思議そうな顔をしながらも、出来る限りそうする言ってくれた。
「頭の具合はどう?」ウィージーが尋ねてきた。
ジャックは後ろ側の、頭皮の柔らかくなった部分に触った、ゴム糊くらいの感じになっている。
「オーケー、だと思う」
救急隊が昨晩傷を見て、縫った方がいい事はいいが、それほど深くないし、必要ないだろうと言った。応急措置をしただけだった。
母親はシャツの血を見ただけで気絶しそうになったが、
父親と二人にティムが、コーディを見つけた話をすると、ジャックを誇りに思ったようだ。
 あの動物が自分の血で考えを変えたことについては、やはり何故だかわからない。
それがいやだったわけではない・・・そりゃそうだ。ただ不思議だったのだ。
不思議だったのはウォルトも同じだ。
単なる偶然だったのか、ウォルトが触ったら、コーディが・・・
それとも何なんだ?明日かしら、あなたが必要になるでしょう・・・
何もかもおかしすぎる。
家族は今日は一日うちにいたらと提案したが、出かけたかった。
救助の話題は学校中に広がってたし、そこでヒーロー扱いされたかった。
ヒーローってことは注目されるって事だ。ジャックもウィージーもそれはごめんだった。
ウィージーの方の理由はよくわからなかったが、自意識過剰なのは知ってる、
おそらく多くの人に注目されれば、それを暴露してしまうと思ったのだろう。
自分はジャックでいたい・・・ただのジャック・・・
一人の子供が歩いていて、どこに行こうと、特別に注目を集めないでいたいのだ。
 ああ。ヒーローなんていらない。少なくともそんな外観は。だけど心の中ではけしからんくらい、いい気分だった。ミスター・ヴィヴィーノを追い詰めて、すんでのところでやられそうになっていた迷子の子羊を見つけたんだ。
夜の間にやり遂げたことは、まあ、悪くなかったな。
一つを除いては・・・
「またあの小さなピラミッドに出会えるだろうか?」
ウィージーは目を閉じて、身を縮めた・・・まるでその質問が肉体的痛みを伴うかのように。
ジャックにはその答えがわかった、でもヴィージーはその答えを受け入れられるのだろうか。ウィージーがショベルカーをあやつってオールドタウンの道を掘り返し、埋もれた街とピラミッドを探す、ワイルドなヴィジョンが見えた。
「その話はしたくないわ」
「だよね、で・・・」
「オーケイ、イエス、そうよ。なくなってよかったの、オールドタウンの下に埋もれて。わかったのよ、それが。泣き叫んでたでしょうよ、あの下で失われてしまったとしたらね、でもロッジの下で守られてる、って思った方がずっといいわ。気が狂うほど取り返したいけど、なくなってしまったことを受け入れなくちゃならない。少なくとも、あの時みたいに私たちから盗られたんじゃない。すごい違いだわ・・・少なくとも私にとってはね・・・それに何か意味があるとすれば」
「あるさ、ある種の」ジャックはウィージーを見た。「そう言いたいんだろ?」
「そうね・・・この瞬間は、とりあえず。学校に行ったら全く違う気持ちになるかもしれないけど、今この瞬間は、このサークルがわかる、埋もれたピラミッドが明るみに出た・・・わたしたちのせいでね。そして今また埋もれた・・・わたしたちのせいで。サークルが閉じたのがわからない?」
サークルが閉じた・・・ウィージーは、二人の人生の最近の出来事がピラミッドをめぐるサークルだと気がついてたのか?
「わかる。確信をもって」
ジャックは安堵の波が押し寄せるのを感じた、二人がハイウェイまでたどり着いた時の、不可思議な平安に続いて。
 ジョンスン中の子供達に知れわたる・・・この狭く緊密なコミュニティ中に広がる・・・でも街の外の子供達はローカルラジオから流れる朝のニュースで知ることになる。
 ハイウェイまで来て右を見てドキッとした、ミセス・ヴィヴィーノが小学校のバスストップにいるのが見えた。サリーは一組の子供や、よそのお母さん達と一緒に自分の母親のそばにいた。あの人たちが知らないはずがない。
ビデオのイヴェントは昨日の晩の出来事だが、何週間も前の様に思われる。
驚いた事に、ミセスVが他のお母さんから離れどちらに向かって道を渡って来た。
「ジャック?話していいかしら?」
ジャックは凍りついた。何を話そうと言うんだろう?
道を渡って来たその表情には、「ノー」と言い難いものがあった。だがジャックはグッと堪えて言った。
「二人とも先に行っててよ」ウィージーとエディにそう言うと、ミセス・Vの方に向いた。
「ヴィデオテープの事、聞いてると思うのよ」何フィートの距離まで近づくと言った。
ジャックは頷いた、口の中が乾いている。「うん、はい。ごめんなさい」
「コーディが見つかってよかったわ。あの子のためにも、ご両親のためにも、それから、あのテープの話がどこかに行っちゃったのが、よかった」
「うん、そうだね・・・」
もっと喋りたかったが舌が固まってしまった。
「誰がやったか知ってる?」
おお、ジーズ。全身の筋肉が緊張した。どうして聞くんだ?疑ってるなんてことがあるんだろうか?天にかけてそんな筈ない。ミセスVをしっかり見つめると、サングラスに歪んだ自分の顔が映って見えた。
「何の噂も聞いてないですね」
「その人は私たちに好意でしてくれたんだろうけれど、プライヴァシーを侵害したの。二人の人間だけの間の秘密を盗んで、公にしたのよ」
盗む?盗む?
「人は一つの側面しかみないわ、結婚生活の中の一つの出来事、わかってないのよ。その前のことは人は知らないでしょ・・・あの人は息子を亡くして・・・親が見る悪夢が現実になって、人が変わってしまったの・・・今までにはあり得ないような、望んでもいない人間になってしまったのよ」
あの暴力行為の言い訳をしてる?
続けた。「あのヴィデオテープが全てを変えてしまった。家族は分断され、家は売りに出されるわ。サリーは友達と別れ、別の場所に行くでしょう」
サングラスの下から涙が、光る筋になって頬の上を流れ落ちた。それを拭うと言った。「みんなが全てを無くしたの・・・ヴィデオテープの男以外はね、多分自分のことをある種のヒーローだと思ってるんでしょうけど。その人に出逢ったら、そうじゃないわ、って言ってやって。その人に、あなたは善意でやったんでしょうけれど、それが地獄への道を開いたのって」
ジャックは凍りつくような沈黙の中、ミセスVが向きを変え、サリーの所に戻るのを見送った。
どうしてかわからないけど・・・わかったんだ。
追いかけて、言い訳したい、自分の家で起こっていることをそのままにして、どんな犠牲を払っても結婚生活を続けたかったのか、と言いたかった。でもサリーが払う代価は?サリーには選択の余地はない。サリーはもう笑えなくなったんだ。
でも言えば白状するようなものだ。
ミスター・ヴィヴィーノがトニーの死で変わってしまったからか、怒りの感情をコントロールするのをやめてしまっただけなのか。ジャックの判断では、あんな行動をとる男は、やったことでわかる、ずっと悪いやつだったんだ。
でも自分がやった事については?
 プライヴェートに侵入した。人の生活を覗き見して、ヴィデオテープを撮ったのは正しかったのか?
あの時は正しい事だと思った。今となっては確信が持てない。
でも何かよくないことを見た時に、知らん顔をして自分の日常の仕事だけを気にしてればいい、と言うのはどうなんだ?
別の見方をすれば、結果として夫婦の仲を引き裂く事になったのか?
こんがらがった頭を振った。白か黒かハッキリしていた事が数日たったら間のグレーに滲んだ。もし時間を一週間前に戻せたなら、果たして同じ事をしただろうか?
ああ、したとも、サリーのウエットスーツに飛んだ殴打の音、吹き飛んだあの姿。ああ、たぶん、した。正しい、と思うことをやっぱりしただろう。しかし今は正しい事をするのが、薔薇色の結果を招くのではないのを知った。生ぬるい曖昧さの感覚と言えばいいのか。
自分を見つめるサリーに気がついた。強いて笑顔を浮かべ、小さく手を振って見せた。サリーは振り返した。
しかし、その顔に笑顔はなかった。
二
「ハイ、ジャック」
ウィージーとエディに続いてバスに乗り込みながら、暗い気持ちに囚われて上の空だった。目を上げて、カリーナを見つけた、エンジニアのキャップ、だぶだぶのセーター、ジーンズ、窓際の席から微笑みかけている。隣の通路側の席が空いている。
「おお、ハイ」
「座る?」誘いかけるような目で言った。
あたりを見回して言った。「クリスティンは?」
「体調不良なんだって」
エディが空いている席に滑り込み、ウィージーが後ろの方の友達の席に向かうのをチラッと見た。バックパックを椅子の下に入れて、カリーナの横に腰を下ろした。
「昨日の晩、コーディが見つかったって聞いたわ」カリーナが言った。
いいね。モーニング・ニュースを聞いたんだな。それから思った、このバスでニュースを聞いたのがカリーナだったなんて。
「うん、すごいニュースだよね」
「何があったのかしら?誰が見つけたのかな?」
オーケー、さりげなく行こう。
「二人のこの辺りの子だよ」
笑いを噛み殺した、そのうちの一人が何も言わずに隣に座ってるのがわかったら、カリーナはどうするだろう。すげえかっこいいと思うだろうなあ。
カリーナにかっこいい、と思われる考えが気に入った。
肩をトントン叩かれ見上げるとエディがルービックキューブを差し出していた。
「オーケイ、天才少年。お手上げだ。デカいこと言ってたよな。やってみせてくれよ」
ジャックは受け取ると、あっちにこっちに回してみてから言った。「ふん、ホントにメチャクチャだな」
「だろ。プレゼントするよ。俺はやるだけやった、後はお前の番さ」
「学校に着くまでに返してやるよ」
エディは笑い出した。「いいぜ、よろしくな」
ジャックはエディを見上げた。「おれのルービックの腕を舐めてるだろ?」
「ヘイ、もしも学校に着くまでに直せたら、お前をおんぶして全クラス回ってやるさ」
「乗った」
運転手が通路を塞ぐなと合図したので、エディは自分の席に帰った。
カリーナはキューブを見つめた。「本当に学校に着くまでに直せるの?」
ジャックはにっこりした。「もちろん無理さ」
「じゃあ、どうやって・・・?」
椅子の下のバックパックを引っ張り出し、ジッパーを開けて、新品のルービックキューブを取り出した。
「この一週間、このためにずっとこいつを持ってたのさ」
カリーナは口に手を当てて笑いを堪えた。「あなたって、悪魔ねー!」
「変装した悪魔なんだ」そう言うと、元のキューブをバックパックに隠した。
「おっかしい!これを知ったらカンカンになるわね」また笑った。「まずコーディ、今はこれ。昨日の晩のVFWのひどい事件がこれで帳消しね」
ジャックは危うく椅子から飛び上がりそうになった。「どうして知ってるの?」
「うちのパパは退役軍人なの。あそこにいたのよ。お母さんに話してるのを聞いちゃった」
カリーナのお父さんに会ったことは一度もない、知ってる筈ない。
「君、どう思った?」
肩を竦めた。「ざまあみろだわ」
躊躇うことなくそう言ったのでジャックは驚いた。それからミセス・Vの言葉を思い出したが、カリーナの言う方に気持ちを切り替えることにした。
「でも・・・プライヴァシーを侵害したんだ」
「うん、確かに、でも公的機関に引き渡してくれたのよ。自分が投票した相手の事わかってなかったんでしょう?私だったら全て知りたいわ、自分に影響を与える力のある人についてはね」
「プライヴァシーを守る権利は誰にでもある」
カリーナは頷いた。「全くよ。でもプライヴァシーを守りたかったら、公の場に打って出たりしないでしょ。私生活を秘密にしたい人はスポットライトを浴びるところに足を踏み入れるべきじゃないし、自分の秘密を守るべきだわね」
ジャックにも秘密がある・・・他人にとやかく言われたくない。天に誓って公機関になど持ちこんだりはしない。
でも誰にだって秘密はあるよね?あの埋もれた街の生き物だって秘密の生活があったんだ。
「真実が明かされたんじゃないかしら」付け加えた。「真実って大切じゃない?」
「当たり前さ」
カリーナは拳を上げた。「真実」
「でも何、が、真実かな?」そう尋ねると、どう出るかを見守った。
「真実はそこにあるのよ」
ジャックは待った。カリーナはそれ以上言わず、ただジャックを見つめ、微笑んだ。
「そこに?」
カリーナは頷いた。「そうよ。それが真実よ。いつも心の持ちようや、言い回しで物事は方向を変えるけど、真実は変わらないわ。真実は行き着く先よ、辺りを逡巡したとしても、目が見えないとしてもね」
君の考え方が好きだ、カリーナ・ヘイドゥン、ジャックは思った。
「君は思想家だね、違う?」
カリーナは眉を寄せた。「考えすぎって言われてるわ」
ジャックはカリーナを肘で突っついた。「そうだね、何も考えてないやつの分まで君が考えなくちゃな」
カリーナはジャックに身を寄せて笑った。この感じ、この笑い声がいいな。「ありがと。今度考えすぎって非難された時に使ってみるわ」
「誰が言うの?」
微笑みが消えた。「主にお父さんね」
お馴染みの言い回しだ。
「謙虚になれって?」
カリーナは口をあんぐり開けた。「どうして知ってるの?」
「同じ問題を抱えてるやつを知ってるのさ」
「本当に?その女子はどう対処してるの?」
ジャックは後ろのウィージーをチラリと見た、本を読んでいる。
「己の中にいるよ」
「時には難しいわ」
ジャックはまた突っついた。「自己中でいろよ。君の考え方、すばらしいよ」
たちまち言いすぎたと思った、最後の言葉は取り消したかった。でも、その時カリーナがこっそりと拳で突っき返してきて、オーケーだったのがわかった。
ふたりはしばらく黙って座っていた、ジャックはウィージーが言ったことを思い出した。
これでサークルが閉じたと思わない?
そうだ。一つだけじゃない。
自分の人生がかなりこんがらがって来た事を思った・・・興味深いいくつものサークル、全てはあの小さく不思議なピラミッドについて回っていた。
善良なのか邪悪なのか、自分達が学んできた化学的に考えるとどうなのか、何かの触媒として・・・反応したのか?
 一つのサークルは大勢のロッジ・メンバーの死を招いた・・・一人はフリーホルダーだった・・・でもそれがスティーヴ・ブラッサードの問題を暴いた。スティーヴが救われたなら、それはよかった。
だがフリーホルダー党員の死はミスター・ヴィヴィーノにスポットが当たる事につながり、偶然にもジャックをトニーの家族の輪の中に導いた。ジャックは結果的によかったと思っていた、今朝ミセス・ヴィヴィーノと話をするまでは。今はそれほどに確信が持てずにいる。
 別のピラミッドのサークルがジャック達を昨晩ロッジへと導いた。そのおかげでコーディ・ボックマンは生きて、家族と朝を迎えた。ジャックとウィージーがピラミッド探しに行かなかったら、溺れ死んでいただろう。
 サークルの中のサークル・・・輪の中の輪・・・ジャックの人生の歯車にギヤが入り、二転三転している。
ピラミッドはなんだったのだろう・・・触媒?
もしそうなら、失われてよかったかも。
それとも違うか。
最近の二ヶ月はえらくおもしろかったな。
数奇な人生を生きられますように・・・古い中国の呪いの言葉だぅたかな?
でもカリーナ・・・彼女はサークルには関わりがない。ピラミッドから外の場所にいる。その方がいいような感じがする。
カリーナと一緒にいるのが好きだ。時々、ウィージーに似てると思う・・・スマートで頑固、思索家・・・でも他は違う。彼女の斜に構えたところが好きだ。
数奇な人生を生きられますように・・・
ジャックの感じでは、この先もっと面白い事がある。願わくば、面白さが度を越していませんように。
www.repairmanjack.com

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