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六命+一揆 営業日誌コミュの《Melntese》66日目

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【Eno.1149 九】

リンゴーン、リンゴーン。
わー、ひゅーひゅー。
ぱちぱち。

未だ鳴り止まない鐘の音と歓声と拍手。
九は両手で耳を塞ぐ。

「煩い、何これ……」
「あ、もしかして……を…したって……」

わー、ひゅーひゅー。

何か思いついたようなねこっぱちだが、よく聞こえない。

リンゴーン、リンゴーン。

「え、うるさくて聞こえな……」

ーー願い事はなんだい、可愛い小鳥。

突然、脳内に響く甘い誘惑の声ーーー夢の中で聞く声。

ひゅーひゅー。
ぱちぱち。
ぱちぱち。

ーー叶えてあげるよ……相応の対価と引き換えに。

ぱちぱち。
ぱちぱち。

「……そうだ。」

オレは、この声に差し出したものがある。


途端、周りの音が消える。
自分が何者であるか思い出す、明確に。


猛禽型の悪魔に目をつけられ、嬲るように追い回された恐怖。
気まぐれに自分を助けた彼の立派な体躯。
彼を木陰から見つめていた日々。

桜の樹の下でノンビリと昼寝をする彼を見ているだけで、暖かい気持ちになった。
それだけで幸せだったはずなのに、欲が出た。

ーー分不相応の、願い。

甘い声で誘惑しながらオレを嘲り嗤う契約の悪魔にオレが差し出した、モノ。
そして、得たモノ。


『私は永遠の愛なんてもの、信じてないよ……だから、おまえ達が証明して見せてよ。』


「そうだ、オレは……」



『私は暇で仕方がないんだ。だから、ゲームをしようか、可愛い小鳥。』


初めて彼と会話をした時。
桜の木の下で寄り添うように座って話をした昼下がり。
大きな腕に抱かれて眠った夜。


『彼との記憶と感情が全て失われたお前が』


気持ちが通じ合って『恋人』と呼べるようになった、あの日。
いびつで丈の足らないマフラーを巻いている彼。
桜の花びらがついたフカフカの毛皮に抱きつく。


『姿カタチの変わった彼を』


日向の匂い。
冷たい鼻先。
ざらつく舌。

ポンポンとなでられる頭。
調子外れの鼻歌。


『再び愛することができるのか?』


家族はいないと聞いた時のこと。
自分と番いになって家族を作ろうと言われたあの時。
契約の悪魔と賭けをすることにしたあの時。


『おまえ達が勝ったら、今までの契約の対価を無償としよう。』


……やっと思い出した。
でも、いまひとつ状況が飲みこめない。


『でも、おまえ達が負けたら、おまえと愛する者の魂を貰うよ。』


九はギクリと体を震わす。

ーーどんな罪も背負ってあげる。

愚かな選択をした自分に、寄り添ってくれた。
永遠の愛を誓った。
この世で一番大切な、彼は。



彼は、何処に?





「イチジク!」


クリアな声。
満月のような猫目。


ああ、彼だ。


増大な情報量と緊張感に苛まれていた状九は、安心して意識を手放した。






『おまえ達の言う永遠の愛とやらが、少しでも私の暇つぶしになるといいけど。』

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