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改憲阻止!民治主義を_市民の会コミュの(7/10)砂川事件 (【資料】 昭和三四年一二月一六日  最高裁判所大法廷  砂川事件本判決全文 掲載)

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 裁判官石坂修一の補足意見は次の通りである。
 わたくしは、多数意見に賛同するものであるけれども、次の通り補足意見を述べ
る。
一、自衛権と日米間の本件安全保障条約との関連についての多数意見の説明は、わ
たくしには十分理解し難い点があるので、若干の見解を附加する。
 わが国が平和と安全と生存とを維持し、専制と隷従と偏狭とを除去し、国際社会
において名誉ある地位を占めるため、急迫不正の侵害に対し、これを排除するため
自ら衛る権利を有することについては、異論があるとは考へ得られない。正義と秩
序とを基調とする国際平和を希求しない国家或は集団に、屈服すべしとする者はな
いであらう。自衛権は、急迫不正の侵害に対し已むを得ざる場合、わが国自らこれ
を行使し得ること当然であつて、若しその行使が禁止せられて居るとするならば、
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自衛権を以つて無内容となし、単なる画餅とするに外ならぬ。わが国自ら自衛権を
行使し得るものとする以上は、これに即応する有効適切なる手段をも持ち得るもの
とすべき結論に帰着する。
 憲法九条は、国権の発動なる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を国際紛争
解決の手段としては、永久に放棄し、右の目的を達成するため、戦力を保持しない
ことをこそ規定すれ、わが国が自ら右の如き自衛権行使の手段即ち防衛手段を保有
することを、全面的に禁止して居るものとは、到底解し得られない。
 蓋し、国際紛争解決の手段としての、国権の発動なる戦争と武力による威嚇又は
武力の行使は、勝敗により事を決する意図の下に、いづれもこれにより相手方を制
圧、屈服せしめ、以つて国家の一方的利益に国際紛争を終局に導くことを目的とす
るものであり、憲法九条はかゝる目的のために戦力の保持せられることを禁止した
ものと解すべきである。これ等は、既に述べたるが如き自衛権の行使及びそのため
の防衛手段とは、全く法的意義を異にし、彼此の間は、峻別せらるべきものであつ
て、混淆を許されぬ。
 往々、右防衛手段について、原始的或は粗笨なる武器に類するものゝ名を挙げ、
かゝる器具のみは、機に臨み変に応じ国民それぞれの工夫において、その使用を許
さるゝが如く論ずる者もないではないけれども、時態にかんがみれば、かくの如き
方法は、国家のための防衛手段中に算へる値があるとは考へ得られない。されば、
自衛権行使のため有効適切なる手段を、国家が予め組織整備することも亦、法的に
可能であるとせざるを得ない。
 而して、前記の如き侵害は、時と場合とによつて、その様相千差万別であり、予
め容易にこれを想定し難かるべく、従つて、これに即応する有効適切なる防衛手段
の形態をも亦、予め容易に想定し難いであらう。思ふに、右の如き侵害に対する有
効適切なる防衛手段を、国家が現実に持つべきか持たざるべきか、持つとすればそ
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の形態、規模を如何にすべきか等は、国家内外の情勢及びその推移を勘案して始め
てその判断がよくせらるべき所である。(固より、その形態、規模は、侵さず、侵
されざるの限界を保つべく、その防衛行為は、侵害より生ずる紛争が、国際連合憲
章に従つて解決を見るに至る迄の間における当面の措置たるべきものと解すべきで
ある。)かゝる事項は、元来政治に干与すべからざる裁判所の判断になじまないも
のである。これは専ら、政府及び国会の政治上の責任において決定せらるべきもの
であつて、裁判所の審査すべき法的領域ではない。このことは、わが憲法が、三権
分立を基本として居ることよりする極めて当然なる帰結である。
 前述の如く、わが国が憲法上、防衛手段保有の可能なることに基き、この手段を
持たない場合或はその不十分なる場合、政府が、わが国の安全を保障するため外国
と条約を締結し、以つて防衛のための軍事的協力を受けることを決定し、国会がこ
れを承認する以上、かゝる条約を違憲であるとはなし得ない。わたくしの意見は、
この点に関する島裁判官の補足意見及び河村(大)裁判官の補足意見第二乃至第四
点と出発点において若干の差はあるにしても、結局合流して居ると信ずるが故に、
これ等を引用する。
 かゝる見解に立つときは、日米間の本件安全保障条約は、憲法に違反しないもの
となさざるを得ない。従つて、この条約に基いてアメリカ合衆国軍隊がわが国に駐
留することは、憲法上許すべからざるものであるとする原判決は、これを維持しな
いことゝなる。
二、最高裁判所が、条約に対する違憲審査権を有するや否やについて、多数意見が
これを明確にして居るとは、必ずしも解し得られない。
 若し、違憲審査権を規定した憲法八一条に、「条約」の語が現はれて居らないこ
とより出発して、これに対する最高裁判所の違憲審査権を否定する結論に至るなら
ば、甚しき誤謬に陥るであらう。
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 仮にわが国の根本組織、国民の基本的人権等に関し、憲法に牴触する条約の締結
を見たる場合、最高裁判所は、これを座視すべきものではあるまい。
 わたくしは、最高裁判所に、条約に対する違憲審査権ありとしつゝ、本件安全保
障条約は違憲でないとする奥野裁判官及び高橋裁判官の意見に賛同し、なほ右両裁
判官の意見と相容れる限り、この点に関する小谷裁判官の意見を支持する。
三、多数意見において説明を省略せられた上告論旨に言及する。
 わたくしは、田中裁判官の補足意見第一点及び垂水裁判官補足意見第三点に賛同
し、なほ若干の見解を附加する。
 原判決は、一面アメリカ合衆国軍隊がわが国に駐留することを憲法上許すべから
ざるものとしつゝ、他面「安全保障条約及び行政協定の存続する限り、わが国が合
衆国に対しその軍隊を駐留させ、これに必要なる基地を提供しまたその施設等の平
穏を保護しなければならない国際法上の義務を負担することは当然であるとしても」
と判示して居る。少くとも、アメリカ合衆国の立場としては、その軍隊をわが国に
駐留せしむる権利があり、わが国の立場としては、その権利を尊重すべきことを承
認するものゝ如くである。想ふに、条約が国内法上無効であつても、国際法上は直
ちにその効力を失ふものではないとする見解に基くものであらう。
 この見解よりすれば、現にアメリカ合衆国の軍隊が、わが国の同意を得て、国際
法上、わが国に駐留して居る以上、それが国内的に違憲であると否とに拘りなく、
いやしくも右駐留の事実が、国際法上適法に解消せらるゝまでは、この軍隊のため
の施設の平穏を保護する目的を以つて刑事立法を行ふことは、憲法の精神に反する
虞れがあるとも考へ得られない。しかもこれは、刑法の住居侵入罪並に軽犯罪法違
反とは全くその法益を異にする事項である。これがため如何なる刑事立法を行ふや
は、政府及び国会の政治上の責任に帰する立法政策の問題であり、これらの機関が、
その政治的裁量に従ひ、刑法一三〇条より軽く、軽犯罪法一条三二号より重き刑罰
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を規定した刑事特別法二条を目して、原判決が、合理的理由がないのに国民に対し
特に重い刑罰を以つて臨んだとするのは、諒解し難い所である。(記録に依れば、
アメリカ合衆国軍隊の使用する本件施設は、有刺鉄線の柵等を以つて囲繞せられ、
兵舎、宿舎、兵器庫、航空滑走路等を含む地域であつて、本件侵入行為のあつたの
は、右滑走路最先端に至近なる場所であつたこと及び何人かが前記の柵を破壊した
箇所より、本件侵入が行はれたことに留意すべきである。)
 いづれにせよ、原判決が刑事特別法二条を直ちに憲法三一条に違反するものと結
論したのは、甚だ早急に過ぎるといはねばならない。

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