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悪夢の書架コミュの家族の肖像

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愛した家族へ、僕が残す言葉の断片

あるいは自分への嘲りと後悔

幸福と、後悔と、希望と絶望

残すつもりはなかった

全ては淡い雪のように忘れられて行くものだから

コメント(4)

勲さんのことからはじめよう。彼は僕の妻と長男のすばる君を誰よりも愛した男だから。
造園業をやっていた。妻が生まれたときに誰よりも無邪気に愛した男。そしてすばるに限りなく愛を注いだ男だから。
彼には長男がいたけれど、言葉にするほどの人間じゃない。僕に「南極の森を見に行こう」という発言をした事でどんな男かわかるだろう。
勲さんの家には多くの客が来た。その中のひとり、明らかに石原造園の将来を馬鹿にしていた。
でも、そこにはたまたま僕がいたんだ。長女の夫であり「婿」である僕がいた。
僕はあらゆる知識で彼を圧倒し、当時まだまだ一部の人間しか使えないコンピューターの知識を見せつけた。彼は「開いた口が塞がらない」状態だったね。
そこからの記憶はあまりない。憶えているのは、ひたすら彼が感動していたのと、溶けちゃうほど嬉しそうな勲さんの笑顔だけ。幸福な夜だった。

妻が死ぬ一週間前に、彼は他界した。彼は男気に溢れる人間だったけど、あまりに弱かった。
すばる君が生まれた日、僕は病室にいて、彼の産声を聞いた。
翌日、見舞いに行った僕を待っていたのは、妻の叫ぶような謝罪だった。
僕は祝福し、嗚咽する彼女を抱きしめた。
それから、どれだけの幸福な時間があっただろう。とても数え切れない。
ただ、父親の血であるのか、彼は本当に勉強が出来なかった。まともな文字も書けないくらい。
まだ一歳にもならなかった彼を、海に連れて行った。抱えてね。
たくさん、たくさん、彼に愛を注いだ。
かなり無茶したけど、高校を卒業させた。お金だけで世の中、なんとかなるもんだ。

彼とは音信不通。もう何年も会っていない
ぶうちんが生まれた日、僕は死にかけていた。交通事故。
ただ、産声が「おぎゃー」じゃなくて「ぷぎー」で、妻は動転して「人間ですか?人間ですか?」と、慌てたという。
彼は保育園で人気者だったけど、小学校では廊下で授業を受けさせられた。理科や体育では、班に入ることも許されなかった。でも、彼はいつでも笑っていた。
頭はめちゃくちゃに良かった。高校だって、難関校に楽勝で入った。
間違えと言えば、僕が中学二年の時に買ってやったiMacだったろう。彼は使い回すどころか、14歳でいくつものゲームやDirectorコンテンツを開発していたし、オリジナルのフイルタ、3Dのレンダリングをものにしていた。僕が勤めていた会社の社長が舌を巻くぐらいはね。卒業してから、スクエアエニックスのデバッガまでしていた。

彼はいま、「ゴミ拾い」のバイトをしながら、新宿のはってん場のいい顔だ。
最後に。愛する妻の話。

話せないね。言葉に出来ないから。
長髪で、白いワンピースの似合うしなやかな身体。
強がりで、あまえんぼのくせに、泣き虫。
僕の料理が大好きで、でも、文句ばっかり
「量が少ない」
でもね、でもね。フライパンには限界があるんだよ。

いつか、君に逢える日のために
僕は頑張るよ。

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