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紙の新聞コミュのIW痔P選手権試合

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極私的闘争記(1) 愛と青春と野望と苦痛のイボ痔
壮絶!「出たがりおジさん」とのたたかい

コメント(3)

 ついに出た!といっても『紙プロ』5号のことではない。文字通りの持病が出たのだ。痔、である。詳しくいうと、イボ痔である。
 ヤツと俺とは、もう11年以上のつきあい、いや闘いの歴史がある。この世の中では、ケツの穴という恥ずかしい部位も、いっちょ前に痛くなることがあるんだなぁと、ということを初めて実感したのが18歳のころだった。
 俺は、クソ寒い冬場に、タクシーの洗車のバイトをしていた。夜明け前の午前4時。バカでかい洗車の機械を通過してきた車のフロントガラスの水滴を拭き取るのが仕事だった俺は、次から次にセッセとフロント・ガラスを拭いていた。
 嵐のような忙しさが過ぎ、ようやく一段落つく。そこで、思いっきりノビをひとつ。次に、屈伸運動をしようと思い、ヒザを曲げた瞬間、ビビビビッと電流が、ケツの穴あたりから脳天のあたりまで駆け抜けたのだ。あまりの痛みに最初は何が起こったのか良くわからなかった。
 しかし「あっ、これはきっと『痛いんだ』、痛みを伝えるための電流なんだ・・・」ということが0.0004秒後くらいにわかると、俺はケツの穴の辺りをズボンの上から押さえ、「ぐぅおぉぉぉぉおおおおお!」という叫びにならない叫び声をあげた。
 この世のものとは思えない痛みだった。いままでに体験したことのない種類の痛みだった。俺はその場にうずくまった。そして、何よりショックだったのは、前途洋々人生前進希望友情愛青春という文字共が身体の周りをバリアのように飛び交っている、ウラ若き18歳のこの俺が、『痔』になってしまったらしいという事実だった。幸い、周りのバイト連中には気が付かれなかったようだ。
 けっこうツッパラカッテいた俺は、その連中に、「どうした?」と聞かれ、「じ、じ、じ、痔になったみたいだ・・・」と告白することは最大の屈辱だったのだ。
 有刺鉄線をブルブル巻きにされたような気分のまま、バイトをようやく終えた俺は、日払いのバイト料をもらうのももどかしく、なるべくケツの穴を刺激しないようにソロリソロリと、まるで初めて盗みに入ったドロボーのような足取りで帰路についた。
 ようやく家に辿り着き、自分の部屋の引き戸につっかえ棒をし、誰も入って来れないようにしてから、ズボンとトランクスをいっぺんに脱ぎ、手鏡を股の下に持っていった。己の肛門様をジックリと見るというのは、生まれて初めての経験である。なかなかうまくいかなかったが、なんとかようやく肛門様を拝む事ができた。
 そこには、小指ほどの突起物=「イボ」がピコッ!と出ているではないか。
 ”これが『痔』というものか・・・”
と、俺は天を仰いだ。「いったい原因はなんなんだよおおお」と誰に言うでもなく、つぶやいた。そして、布団に入り”お痔さま、お痔さま、・・・どうかこれ以上痛くならないでください、お願いします”とケツの穴付近に手を当て、心の中で祈った。そして祈りながらいつのまにか寝てしまった。
 翌日、目が覚めた俺は、瞬間、痔のことなど忘れていて、時計を見ようと頭上にある目覚し時計にググッと手を伸ばした。その瞬間、ズキンッ!と痛みが走った。
「なんだなんだなんだ・・・・・・」と訳もわからず立ちあがると、また再びズキンッ!と前よりも激しい痛みが走った。
少しでも体を動かすと痛む、というのは昨夜から何の変化も見せていないようだった。再び俺は、パジャマの代わりのジャージとトランクスを同じにズリ降ろし、手鏡を股の下にもっていった。
 ”昨夜よりも小さくなっていますように・・・・・・”
という想いも空しく、ピコッと突き出ていた「イボ」は、なんと、ヌロン、という感じで親指大にまで成長していた。
 汚い話だが、といっても今まで十分汚い話をしてきたので、今更断ることもないのだが、「イボ」は凶悪な雰囲気をたたえ、せせら笑うように、ケツの穴を見事に塞いでいた。ケツの穴は全く見えない状態である。
 ここで痔になったことのない人に説明しておくが、イボ痔というのは肛門の中から、イボあるいは直腸が出てくるもので、(医学的には俺は何もわからない)小指の爪の先ほどが出てきただけでも痛い。体を少し動かしただけでも、尻から脳髄にかけて雷が落ちたかのような痛みが走る。本当に痛い。嘘じゃなく痛い。しかもヤツは親指ほどの大きさもあるのだ。

 そこでバカにしているヤツに告ぐ、そこでバカにしてるヤツに告ぐ! 痔をナメるなっ! 痔を笑うヤツはいずれ痔に泣くのだ!その時になっても、俺は助けてやらんからなっ!
 と、一通り怒鳴ったところで、唐突に場面はケツの穴が「イボ」によって塞がれてしまい、もがき苦しんでいる18歳の俺へと戻る。
 ともかく俺は、60分フルタイム闘い、ヘロヘロになったレスラーのような足取りで本屋へと向かった。周りに誰もいないのを確かめ、痔に関する本をパラパラとめくり、サッと目を走らせた。どうやらお痔さんには、
?不潔にしている事 ?酒 ?タバコ ?香辛料等の刺激物 ?寒さ etc・・・
が大敵であるらしいということがわかった。
 確かに人生の中で一番不潔な年頃かもしれないが、ほとんど毎日風呂には入っているし、体もスミズミまで洗っているから、原因は?ではない。となると、?、?、?、?が問題だ。酒とタバコは15歳から。量もハンパじゃない。ラーメンにはハンパじゃないほど、コショウとラー油をタップリと入れる。寒い中のバイト。これだけ原因になるものがあれば、痔になる為に生まれてきたようなものだが、どうも解せない。
 この程度だったら、俺の周りにも同じような条件の友人がいるからだ。他の友人は「痔の”ジ”の字」もないのに、なぜ、俺だけがこんなにも苦しまなくてはならないのだろうか。本をさらに読み進むと、「痔になる原因は?」の頁に、ぐぐっとそこだけ文字が浮かび上がってくるかのような、インパクトを持った個所があった。原因は「コレダ!」と思った。「マチガイナイ!」と思った。そこにはこう書かれていた。
 「遺伝」
 ・・・・・・そうだったのだ。俺の両親は2人とも痔だったのだ。「ジ獄の一家だ」と、くだらないダジャレをつぶやきつつも、俺はこの時ほど自分の親を恨んだ事はない。
 また、ソロソロと痛みが走らないように家路についた俺は、それから1歩も家を出ずに、「自己治療」に勤めるlことにした。本に書いてある通り、風呂に何度も入り、幹部を暖め、繊維質の食べ物を採るよう心がけた。
 とにかく、風呂に入っているときだけが、生きている実感を味わえるのである。湯船につかっている時は痛みが安らぎ、極楽そのものなのだ。この時ばかりは「イボ」のヤツと対等に闘える。湯の中でヤツを指で肛門の中に押し返すのだ。中に一瞬でも引っ込むと、痛みは我慢できるくらいになる。
 風呂から上がると、塗り薬を患部に塗布する。しかしこれは、ケツの穴に指を突っ込み、中まで塗布しなければ効き目がないのである。しかし、幹部に触れるのはけっこう痛いし怖いから目をつぶり、股を開き、グッと腰を落として(ラジオ体操第2の要領)一気に塗る。一気に塗るべし!塗るべし!塗るべし! と丹下段平化しながら、一気に塗る。これを一日に何回も繰り返すのだ。
 ”こんな姿を誰かに見られたら、のぼる、お婿に行けなくなっちゃう、いや〜んばか〜ん”状態、である。
 こうして3日間の壮絶な格闘の末、ついにヤツが俺の体の表面から引っ込んだ。苦闘、である。涙、である。俺は、”よくぞあんな強暴なヤツとここまで闘い抜いた、エライエライ”と、自分自身をホメてやった。
 そしてヤツが去ってからというもの、平穏無事な暮らしが、俺を包んだのである。
 春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、やがて悪夢の3日間から1年を迎えようとした冬の夜。
 俺は19歳になり、ラーメン屋で働いていた。シャッシャッシャと見事なリズムと手さばきで中華用フライパンを操っていた瞬間に、来た! ビビビッッッと来た! ヤツである。
 また出たのだ。俺はジェイソンかフレディに、夜道にバッタリ出会ってしまったような恐怖を覚えた。案の定、ヤツは3日間居つづけた。しかもこの年は、壮絶、過激なダブル・パンチだった。
 その頃俺は、悪友2人と1軒家を借り住んでいたのだが、そのうちの1人がどっかからタムシをもらってきたのである。その菌が、ヤツとの格闘の真っ最中に、俺に移った。後ろは『痔』で、前は『タムシ』である。俺は呪われているのか、と思った。名誉の為に言っておくが、決して不潔にしていたからではない。風呂には毎日入り、下着も毎日取り替えていた。それなのに・・・・・・ああ、それなのに・・・・・・。
 体を動かしてなくても、何もしなくても、前はひっきりなしにカユイ。それで前を掻くとその振動で、後ろの『ヤツ』がギャンギャン悲鳴を上げる。ハッキリ言うと、キンタマが死ぬほどカユくて、掻くとケツの穴の痔が痛むのである。ノンストップ地獄絵図とはこのことだ。
 冗談ではなく、「これでは生きていてもしょうがないな」と思った。しかし、タムシと痔を苦に自殺、では、例えろくな人生を送っていない俺でも、寂しすぎる、と思った。
 その後、タムシには二度とかかっていないが、ヤツはそれから7年もの間、毎年冬の冷え込む季節になるとやってきた。1年に1度の大格闘である。「座薬」という新兵器で、なんとか毎年ヤツを撃退していた。
 普段から気を遣っているせいか、ここ2〜3年は、ヤツは来ていない。来そうだな(出そうだな)と思ったら、痛みは無くとも座薬を入れておく。ガードは完璧なのだ。ただ、痛みがない時に座薬を入れると妙に気持ちよく、「うっふ〜ん♪」などと声を上げ、変態化してしまいそうで怖い。
 もう二度とヤツはやって来ない・・・・・・と思っていたら、つい4日前に”ビビビッッッ!”と来た。ヤバイと思ったが遅かった。ヤツは俺のスキを見逃さなかったのだ。今回は久しぶりだからか、いつもより数段痛みが激しく、期間も長引きそうだ。今、この原稿を打っているだけでも響く・・・・・・。
 だが、俺は闘う! 今回の闘いのテーマは『紙プロ』の存続だ。ヤツが引っ込めがば『紙プロ』は続く。俺が病院に行けば、休刊。自分で勝手に決めた闘いのテーマだが、負けるわけにはいかないのである。
 バカなことを言ってないでサッサと切れって? いや、痔はジ力で治すもの。闘いとは全て自力で何とかするものなのだ! ・・・・・・ぐおお、イタイ・・・・・・。
 
 

 
紙のプロレス 第12号 1995.2.1発行

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