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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百七十七【アマビエ・弐】

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【アマビエ・二】 
役人がアマビエと名乗る妖と出会った翌朝のこと。 
夜間の海は青白い波が輝いて怪しくも美しいばかりであったというのに 
昼間の海は赤錆色の汚ならしい色がざぶざぶと漂っているのでありました。 
まるで血の海のようだと村の者々も怯えてはおりましたが、不思議なことに降ろした網にははち切れんばかりに無数の魚が豊かにかかるのでありました。 
最初は小さな鰯。次第に河豚、鯵、鰆、次第にチヌや鯛、鰹まで。 
海には豊漁祈願の帆を掲げた船がわんさかと漕ぎ出して、漁村はたいそう活気づいたのでありました。 

次の日も翌月も豊漁は続き、よい魚がとれるという評判はたちまちに広がりました。 
漁村での食いぶちはいうまでもなく、干物に酢漬けに鰹節。 
方々の村から都の大名様までが大漁の魚を買い付けに来るのだから、もう村のものは大にぎわい。 
滅多に村に立ち寄らぬ南蛮渡来の商人や清の焼き物売りまでもが船旅の食糧として乾物などを買い付けにやってくる。 
なんとも珍しい商品や値が張りそうな焼き物も今なら簡単に手が届く。 
焼き物売りの商人が軽い咳をしきりにしていたとしても、 

なぁに。長い船旅で喉が潮にでもやられただけさと誰もが思う。 
そのうちに目利きな旦那だとおだてられ、田舎の漁村では使いもしない焼き物もこのときばかりはあれよあれよという間に売れていく。 

「へぇ、へぇ。こんな片田舎な貧乏漁村に 
清の焼き物なんざ買っていつ使うっていうんだい。 
なに。価値があるものだからこそ、家宝にするって。 
おめぇさん、頭を塩水にでも浸けてきたらどうなんだい」 

と豊漁のあまり無駄買いをした亭主が女将にしこたま叱られる様をげらげら笑う人々も、 
もうちょっとましなものを買っておくれと叱る女将も、 
よもや尻に敷かれっぱなしの哀れな亭主から清の焼き物のついでに疫病神をもれなく頂戴しているなどと、頭をかすめるはずもありません。 

「あぁ、怒鳴りすぎて喉が痛むよ。 
ちょいと、こんな大事なときに 
風邪なんかひいちゃぁいられないんだ。 
船にはまだまだお天道様に逢いたくて 
したかない魚がごまんといるのさ。 
天日に干された蛸足みたいにこちとら 
引っ張り蛸なのさ」 

と、ひとしきり亭主を叱り飛ばした女将が耳の下を擦れば、妙なしこりができている。 
そういえば、僅かに熱もあるようす。 
「へん。こんなことで仕事をやすんでいられるような 
怠け者はすぐに食えなくなるってもんさ」と 
袖を間繰り上げ、蛇のようにのたくる 
魚の腸(はらわた)をえいやっと絞り出し 
女将が、ごほん。と咳き込みましたが 
そのとき気丈な女将には側で魚を紐に 
吊るしていた器量良しな海女達皆に 
その日の賃金をくれてやる前に小さな災厄を 
贈ったことなど知るよしもないことでした。 

そして、器量良しな海女達はその夜、 
珠のような愛らしい我が子に死神を贈り 
漁から帰ってきた夫を労うとともにその懐へ 
彼岸への片道切符を忍ばせていたなどと誰が 
想像したでありましょう。 

豊漁の後の予言はこのようにして静かに、 
しかし確実に漁村の人々に寄り添って 
いくのでありました。(続)

コメント(1)

弘化3年(1846)、肥後国で流行った病は赤痢らしい。魚や洪水などの後に泥水で汚染された農作物からが
原因で、下痢などの症状が主かな。と思います。
赤痢でえがくか、新型コロナに寄せるか
めちゃくちゃ迷いましたが
とりあえず新型コロナの方に寄せて書いていきます。

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