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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百七十五【人柱師・完】

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【人柱師・完】 
冬弥「あれは…一体…」 

人柱師が引きずり込まれたあたりには水が赤く染まったものの、たちまちに流され、何事も無かったかのような穏やかな流れへと戻っていくのでありました。 

火男「あれが、この川の主さ」 

冬弥「えっ!」 

火男「川は、そこに見えるだけが川じゃない。 
水底から地下に染み出した水は、広大な水脈を創り出す。 
都の中央を流れる巨大な水脈を 
守り、司る竜こそがあの黄竜というわけだ。 
俺が川に落ちた熱で水の神の領域が火の神に侵されて、目を覚ましたのを、陰陽師が呼び寄せたのさ」 

冬弥「あれが…この川の…主」 

火男「あいつにとって人柱なんていう、土に埋められた死体なんて供物にすらなりやしない。 
強い妖力を持った人柱師こそ最高の獲物。 
腹が満たされたことにより、再び穏やかな眠りについた。 
神への捧げ物となり、神の身体の一部となる。 
結果的にあいつが本物の人柱になったんだ」 

冬弥「本物の人柱…」 

煌めく水面を眺める冬弥の手が、ぐっ。と握られたのでありました。 

初「冬弥…。ありがとう」 

冬弥「初…。なぁ、初。嫁に来いって言ったやつだけどな。 
本気だからな。来て、くれる、よなっ!?」 

緊張した面持ちの冬弥に、ぷっ。と吹き出した初でありました。 

初「そんなの、こっちからお願いするに決まってるだろ。 
…ありがとう、冬弥。あたし、もうひとりぼっちじゃないんだね」 

この村に来て、初という娘の穏やかな顔を初めて目にすることができたのでありました。 
このふたりならば、いつまでも幸せに寄り添っていけることでありましょう。 

※※ 

やがて、村の衆がちらほらと、川の様子を見に集まってきたのでありました。 

村人「助かった。陰陽師さん、あんたがいなけりゃ、儂らあの化け物にころっと騙されるところだった」 

村人「けど、橋はこれからどうするよ」 

村人「おい、冬弥。たしかお前、橋は鬼が架けるとかどうとか…」 

冬弥「うん。そのことで、話があるんだ」 

やがて、砕けた橋のたもとに大量の馳走と酒とが用意されました。 
昼は誰も居ないのに、夜のうちにだけ橋が何者かの手によって創り進められてゆくのでありました。 
一体どのような人物が橋を創り出しているのか。 
気にはなっても、橋の完成まで、夜間の外出は村で固く禁じられていたのでありました。 
それでも時折百鬼夜行の類が家の外を通るのが度々見かけられたという話もあちらこちらで囁かれ 
酒も馳走も尽き果てた四十九日の後に川に架けられたその橋は、鬼が架けた橋だと噂され 
その後百二十年もの間、一度も流されることはなく、村と都を繋ぎ続けたのでありました。

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