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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百六十九【人柱師・六】

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【人柱師・六】 
ざく。ざく。 
と、枯れ葉を踏みしめ獣道を歩いてゆけば、山道は深く、さらに険しく、まるで人の侵入を拒んでいるかのようでありました。 

火男「おぉい。いるか、熊童子!」 

熊童子「なんだ、火男か。久しいな」 

現れたのはかつて京の都を狂乱の恐怖に陥れた酒呑童子の配下が一人。 
温和な雰囲気を纏った熊童子でありました。 

火男「悪いな。頼み事をしたいんだ」 

火男の言葉に、熊童子の優しく細められていた目に、険しい光がやどります。 

熊童子「人の…頼み事か。座れ。話だけは聞いておこう」 

ぱちり。と焚き火の火が、はぜた。 

熊童子「…なるほど。人柱を立てずとも、流れぬ橋を建ててほしい。か」 

火男「引き受けてくれるか、熊童子」 

熊童子「いや。鬼は本来人に関わるべきじゃない。 
かつて桃姫にとりつかれた酒呑童子様の下で人間相手に随分と事を起こした俺が言えたことではないかもしれんが。 
それは、お前も充分に理解していると思っていたのだがな、火男よ」 

火男「あぁ、そうだな。だがな、熊童子。 
すでに関わっているものが人ならざるものであれば、話は別だ」 

熊童子「人ならざるもの…?」 

火男「あぁ。あの村、人でないものの気配がしていた。 
それが神を語って人を殺めるというのなら、俺も神として黙っているのは良い気がしない」 

熊童子「なるほどな。解った。 
そういうことなら致し方ない。おい、坊主」 

冬弥「はい!」 

熊童子「酒と、米。それに馳走を用意しろ。とりわけ酒は多く貰うぞ。 
それこそ橋を架ける費用をすべてつぎ込む額だ。 
それでいいなら、手を打とう」 

冬弥「良いよ。もとより橋を架ける金は用意してある」 

熊童子「なら、良い。酒呑童子様も酒が手にはいるとあれば、多少のことは大目にみてくれる方だからな」 

良かった。と皆の顔がわずかに綻んだのでありました。 

熊童子「あぁ…。あと、あまり夜中に橋を覗きに来るなと村人に伝えろ。 
でないと、小鬼が馳走と間違えて人を喰うかもしれないからな」 

そういって、冬弥の顔を覗き込む熊童子からは、一瞬温和な笑みが消え、かわりに獲物を狙う猛獣のような、ひやりとする気配が立ち上ったのでありました。 

冬弥「は、はい!」 

青ざめた冬弥が返事をすると、再びにこり。と温和な顔に戻った熊童子でありました。 

熊童子「なら、交渉成立だ。今から木材の支度をはじめるからな。 
四日後くらいから造り始めることができるだろう」 

そう告げると、熊童子は山の奥へと去っていったのでありました。 

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