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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百五十九【袖引小僧・壱】

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【袖引小僧】(ソデヒキコゾウ)
道行く人の後ろから引っ張る悪戯な妖怪。
気づいてもらえないと、怒って袖を破いてしまう。


【袖引小僧・壱】
むかし、あるところに畑作を営む家族がおりました。
長かった冬がようやっとあけた頃のことでありました。

おとう(父)「こりゃぁ、今年はいかんな」

畑の土を一掴み握ったおとうは静かに首を振りました。
酷使した畑土は鍬もろくに入らず、雨で肥料が流れれば、固くひび割れてなんとも痩せた土地となっておりました。

おとう「こりゃぁ、今年は畑をあきらめにゃなるめぇ。
おとうとおかあは都に働きにでるだで、坊は隣のお爺のところでやっかいになれ。
ちゃんと手伝いをするんだぞ」

坊「うん…。おいら、良い子にする。
お爺のこと、うんと手伝うで。
おとうとおかあはいつ帰ってくるんだ」

おとう「刈り入れ時になる頃には帰ってくるだ。
うめぇもんをたくさんと、冬に織る機(はた)の糸を買ってくるだで」

そういうと、おとうとおかぁは 坊の頭を愛おしそうに撫でて、都へ出稼ぎにゆきました。
お爺の家に預けられた坊は、おとうとおかあの言葉通り爺様をよく手伝いました。
足を悪くしていたお爺は大喜びでありました。
坊は田の手伝いを終えると、決まって村の端にいき、都の方を眺めながらおとうとおかぁの帰りを待ちわびたのでありました。

坊「おとうとおかあは元気かな。はやくかえってこねぇかな」

そういうと翌朝も坊はびちゃ、びちゃと泥まみれになりながら、腰を屈めて懸命に稲を植えておりました。

坊「おとうとおかあは元気かな。
うめぇもんたんと買えたかな。
はやくかえってこねぇかな」

目もくらむような日の下で、坊は蝗(いなご)を掴んでは竹串に刺しておりました。
そのおかげで稲は蟲にも負けず青々と育ってゆきました。

坊「おとうとおかあは元気かな。
うめぇもんたんと買えたかな。
冬の機織る糸は買えたかな。
はやくかえってこねぇかな」

やがて黄金色の稲穂はずしりと重く垂れ下がり、約束の刈り入れ時となりました。

坊「おとうとおかあは元気かな。
もうすぐ帰ってこれるかな」

坊はざっく、ざっくと稲を刈り取ってゆきました。
これで冬を越す米はなんとかまかなえそうでありました。
稲穂を刈られた丸い痕が点々と続く田は、遠くの景色まで見通せて、なんだか余計に寂しく映ります。

坊「おとうとおかあは元気かな。
稲穂もかって米はたんとできたのに。
まだかえってこねぇかな」

けれども、おとうとおかあはまだ帰ってくる様子もありません。

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