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陰陽師@二次創作小説コミュの夜半の邂逅 2

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1の続きです。
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「では、如何いう意味だ」


 ふと離れていく蜃気楼の顔。騰蛇は、ぺたりと自分の顔に触れる何かを感じた。やや遅れて、それが蜃気楼の手なのだと悟る。時間故に誘っているのかとも思うが、見上げる蜃気楼の瞳もその手つきも、やはり艶っぽいものは一切含んでいなかった。むしろ、幼子が何も考えずに気になった物をふと食んでしまうかの様な、純粋さしか感じない。
 顎から頬へと、顔の輪郭をなぞる様に滑っていくその手は、意外なほど滑らかだった。騰蛇も蜃気楼も、分類するならば武闘派で、しかも蜃気楼は常に長根を振り回しているのだから、もう少しゴツゴツしているのだと騰蛇は思っていた。その想像に反して、手弱女の繊手という程では無くとも、十分に柔らかい。


「何だろう。未だ成長しきっていないのか、若しくは主さんが十分な霊力を注げていなかったのか……昼間は偶々互角だっただけで、本来のアンタの力なら、勝てないような気がするよ」


 騰蛇には、蜃気楼の云う『本来の自分の力』というものはよく分からない。これ以上に伸びる余地があるのか、之が限界なのかは、判断しかねた。
 そも自分の限界なぞ、誰に分かる筈もない。
 これが自分の限界だ、と自分自身で境を定めてしまわない限りは。


「どうせまた直ぐにアンタと戦うでしょ? 次は、本物の全力で戦ってよ。じゃないと、折角アンタに勝っても自慢できやしないわ」


 拗ねたように云う蜃気楼に、思わず笑みが零れた。
 騰蛇は、自分が可愛げのある性格でない事はよく理解している。加えて、自分の力になのか、他人から見れば常に不機嫌にでも見えるのか、余り他者に懐かれることも無い。勾陣や天空あたりはそれでも突っかかってくるが、こうも邪気のない視線を向けられると云うのは少しこそばゆい気がしないでもない。


「……ふ、無茶を云う」


 主の霊力分配が問題であったのならまだしも、まだ成長余地があるというのであれば、一朝一夕で急激に力が伸びる筈もない。その無茶を成せと云うのだから、また随分と過激なことだ、と騰蛇は内心愉しく思う。自分を恐れず、邪気も持たず、真正面からぶつかってくる者は随分と久しぶりだった。
 くつくつと笑う声に、真面目に取り合っていないとでも思ったのか、蜃気楼が唇を尖らせた。

 その表情をみて、更に笑いが零れる。


「蜃よ、お前の云う『本来の力』と云うものは、俺には分からん。が、一つだけ確かな事がある」


 ふと、蜃気楼自身に興味を抱いている自分に気付く。
 酔狂な、と騰蛇は内心苦笑した。
 もそり、と僅かな衣擦れの音が静かな部屋でやけに大きく響く。


「確かな事? それは、な……っ!」


 蜃気楼が言い切る前に、その問う言葉は騰蛇によって食まれてしまった。


「俺は、女に組み敷かれる趣味は無い、という事だ」
「ちょ、えっ……な、何。何するのよ」


 瞬きを一つ。

 まっさらな褥の白を収めていたはずの蜃気楼の視界は今、歪に走る天井の木目を映している。余りに刹那の事で瞬時には状況を把握出来ずに、蜃気楼は瞠目した。

 声が微かに震えているのは、驚きか、恐怖からか、それとも期待からなのか。

 自分とは似て異なる赤味がかった琥珀に映る自分の顔が、随分と間抜けだと蜃気楼は思考の端で思った。それが現実逃避であるとは、薄らと気づいている。


「何、か。知っていて知らぬフリをするのか、真に分からぬか……。どちらでも構わん。今に解る」


 笑う騰蛇にあわせて揺れる髪がくすぐったくて、蜃気楼は身を捩る。或いは自分よりもずっと強い力を秘める男の瞳に射竦められて、思わず視線を逸らしたのかもしれない。


「……あんまり、解っちゃいけない事の様な気がするのは気のせい?」



 ぽつりと零れたそれに答えたのは、くつくつと笑う男の低い笑声だけだった。



(了)

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 後の展開はみなさまの想像にお任せします(^p^)

コメント(4)

うきゃぁ!騰蛇さん色気ありすぎですハート達(複数ハート)
でもなんだろう、蜃気楼ちゃんは汚しちゃいけない感じがするので
他の十二天将とかが駆けつける物音で

騰蛇「やれやれ。興がそがれた。」
なんていって見逃してくれるような気がします。
最後どきどきしてしまいました!騰蛇さんかっこいい♪
この後どうなるのか、考えるとニヤニヤしてしまいます…ハート
ただ、個人的な想像では、思わせぶりなことだけして蜃気楼さんを帰しちゃうのかな、と思ったり。
そして、このことがあってから蜃気楼さんは騰蛇さんの前だとどぎまぎしちゃうようになったり…
妄想してしまいました(笑)
素敵な話ごちそうさまです!

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