陰陽師@二次創作小説コミュの天狗･其の後【天空返却ｰ安倍晴明と対話することｰ】

天狗･其の後【天空返却ｰ安倍晴明と対話することｰ】
ここは懐かしい陰陽寮。
私は晴明様を前にして今回の事の顛末を報告していたのでありました。

晴明｢…そうですか。御苦労様でした。立派に勤めを果たしてきたのですね｣

私｢ありがとうございます、晴明様。これはお預かりしていた天空の綴りでございます｣

すっと綴りを差し出せば晴明様も優しく微笑んでその綴りを受け取ります。

晴明｢確かに。いかがでしたか、天空は｣

私｢はい。最初から最後まで私たちのためにとても良く協力してくれました。
天空の力が無くては今回の討伐はありえませんでした。本当にありがとうございます晴明様｣

晴明｢そうですか。やはり、貴方に託して正解だったようですね。
天空は誤解されがちなのですが、根はとても良い式神なのです。本来ならもっと強い式神のはずなのですがこの人の世ではその力もごく僅かしか出すことができず、本人にとっても余計に悔しく感じているところでしょう。
私のもとにいるときは、力では騰蛇に適わず、かといって真面目さでも他の十二天将には適いません。気持ちが荒めばまた別の十二天将と揉めてしまう。
他の十二天将がそれぞれの持ち味を活かして役に勤めれば勤めるほどに天空はさらに劣等感だけが募るばかり。とても辛い思いをさせてしまっていたのです。
しかし、貴方に託したとき、他の式神の力を借りているとはいえ、自分なくしては辛い戦いになるとわかっているからこそ、憎まれ口を叩きながらもきっと彼なりに一生懸命になったことでありましょう。
人も式神も誰かの役に立ち、感謝されることはとても幸せなことなのです。陰陽師とは式神を使うだけでなく、そのような幸せも感じさせてあげることも役目のうちだと思うのです。
ですが、私の手の内にある間その経験を私は天空にさせてやることができませんでした。貴方にはとても感謝しています。
天空の綴りを貴方に譲ってしまえば、天空の自尊心を傷つけることになりますからこの綴りはしかと受け取ります。
しかし、もしよければまた天空を討伐に連れて行ってやってください。
そして貴方もまた貴方のために関わった全ての者に感謝する事を忘れてはなりません。たとえその感謝を今すぐ返すことはできなくても、感謝の気持ちはきっと伝わるものなのです。
そして自分が返せるときは労を惜しまず全力で相手を助けなさい。私はね、陰陽師とは式神に感謝し、感謝されて繋がることがあるべき姿であると思うのですよ｣

私｢はい。わかりました。晴明様。ありがとうございます｣

穏やかな晴明様のお言葉一つ一つが心に染み入るようでありました。陰陽道とはなんと深いものなのでありましょう。
思えば今回の討伐は本当に多くの者に助けられたものでありました。この恩は僅かなことではとても返せるものではありません。
それでもふっと目を閉じて、助けてくれた者全てに感謝の念をより一層募らせたのでありました。