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ミュリのオリジナル小説連載コミュの黒潮学舎 絵里華の場合6

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次にオレが目覚めると、目の前に沙樹の顔があった。隣に真美の顔も見える。さらに姉貴である真紀子もちらっと見えた。
「おはよー絵里華。といってももう夜だけど。」
どうやらオレはしばらく寝かされていたらしい。まぁ、いつものことだけどさ。
「沙樹、どうせなら朝に起こせよ。睡眠のリズム取り戻すのが大変だろうが。」
オレが窓の外を見てみると真っ暗だった。どうせならさわやかな朝の目覚めといきたかったものだ。
「どうせ朝までもっかい薬で眠ってもらおうと思ってたから、そこらへんは大丈夫。一応状態のチェックだけね。」
これもいつものことだけどな。あきれるオレの身体を沙樹がチェックしていく。
「痛みのあるところは?」
沙樹の問いにオレは
痛みはいまのとこないな。鎮痛剤が残ってるのならそのおかげかもだけど。」
と首を振って答えた。すると沙樹は
「痛みどめももうきれてるから大丈夫よ。怪我の方は完璧に治癒してるみたいね。さすがバケモン並みの体力だわ。」
とか意味不明なことを抜かした。例えが悪すぎるだろう。
「とりあえず体内の出血も取り除いたし。一日眠っていたからね、絵里華ならそれくらい回復するだろう。」
沙樹の後ろからシャレイルが顔を覗かせてオレの身体を観察しながら言う。ヴァンパイアである彼の瞳には、オレの体内の様子まで透視できているはずだ。彼らにかかればCTだのX線だの検査での診断は必要ない。
「オレ全然覚えてないや。病院ついて沙樹が点滴の側管から麻酔薬いれたのは覚えてるけど、そのあと今まで完全に意識がなかったからな。」
怪我をしてからこっち、ロクに意識を保っていた記憶が少ない気がする。オレはベッドから起き上がろうとしてあることにきがついた。
「沙樹。コレはなんだ?」
オレのベッドにはビーズクッションのぬいぐるみが並べられていた。なんとなくその一つを手に取るとかわいい犬の形をしていた。
「何って、ビーズクッションでしょ。絵里華に限って血流うんぬんはないとは思うけど、一応は普通の人間並みに処置してみただけよ。」
あきれるオレに沙樹がしれっと答える。そういえば普通の人間はこのようなクッション等で除圧をしないと血流障害で組織が壊死するはずだ。だが、オレ達の身体ではまずありえないことだった。
「まぁ、理屈はわからないでもないが。悪趣味ですぎだぞ。」
オレは犬のぬいぐるみを元に戻すとがっくりとうなだれた。なんかいろんな意味で疲れた気がする。
「どうせならかわいいほうがいいじゃん。こっちも楽しいんだし。」
沙樹はまったく悪びれた様子がない。そんな沙樹に後ろに立っていた男がくすりと笑った。
「あれ、貴仁も居たんだ?」
沙樹の後ろに立っていた男、佐藤貴仁はシャレイルの同族であり同じ麻酔科第二医局のドクターだった。
「ひどいな。私が君を迎えにドクターカーで羽田まで行ったのに。」
どうやらドクターカーを運転していたのは貴仁だったみたいだ。
「ごめん、あんときはさすがに限界でさ。シャレイルに点滴刺された記憶はあるんだけど、その他のことはあいまいなんだよね。」
オレは貴仁に謝る。
「君の処置を担当したのは私だよ。麻酔で眠った君の胸にドレーンを刺して貯留していた血液を抜いたんだ。そのおかげでこの短時間でここまで回復できたんだからね。」
そういや誰かがそんなこと話してたっけ。ドレーンで抜くとか。オレは薄い記憶をたどってみた。
「本当なら局所麻酔でするような処置なんだけど、絵里華が針キライだからわざわざ全身麻酔薬を使ってあげたの。あたしに感謝しなさいよ絵里華。」
沙樹が自慢げに言う。それでも沙樹なりの気遣いなのだろう。
「まぁ神の血族の便利な身体だからいろいろし放題できるとこもあるんだけどね。普通の人間ならこんなに簡単にばんばん麻酔とか使えないわけだし。その点、絵里華は楽だよね。どんな薬でも使いたい放題だし、中毒にもならないし、致死量なんかの計算もほとんどいらないもんね。」
沙樹の言うことももっともだが、とりあえずオレは沙樹のテンションについていけずにがっくりとうなだれた。
「私達はその点少し不利かな。人間の薬は私達には一切効かないし。ヴァンパイア用の薬がいくつか開発されたけど、限られた場所にしか用意されてないから。私達だって痛覚はあるからね。まぁ滅多に怪我をすることもないんだけど。」
貴仁がそう言いながら自分の手首に牙を突き立てる。うっすらとそこから血が流れだしたがすぐに出血は止まり、傷口も早送り再生でも見ているような速さでふさがっていく。
「私達を傷つけることが出来る物は自分達の牙か爪、もしくは特殊な金属で作られた武器だけだからね。それ以外では私達の肌は傷つくことがない。当然傷ができれば痛いわけだが、私達にはその痛みを止める薬がなかなかないんだよ。まぁ、余程の大怪我じゃない限り痛みを感じるのは受けた傷が再生する間の僅かな間だけどね。」
ヴァンパイアである貴仁の説明に真美がふむふむと納得している。
「一番手っ取り早いのは、同族に噛んでもらうことだな。吸血せずに毒液だけを送り込んで貰えれば痛みは感じなくなるしな。」
オレも麻酔の代わりに噛んでもらえばよかったかな?と一瞬思ったが、ヴァンパイアの毒液は速効性の代わりに効果も短いのだった。
「ということは、怪我したら自分で自分に噛みつけばいいってこと?」
真美が貴仁の言葉を聞いて質問する。貴仁はそれを聞くと笑い転げた。
「それがそうはいかないんだ。自分の毒液は自分には無効なんだよ。自分ではないヴァンパイアの毒液は有効なんだけどね。」
笑い転げている貴仁の代わりにシャレイルが答える。オレは何とか納得した真美に話しかけた。
「お姫様。クソ親父にいじめられなかったか?」
真美はあれからクソ親父と一緒に帰ったはずだ。
「絵里華のお父さん、とっても紳士だったわよ。まぁ絵里華に対してはSなのはわかったけど。」
真美の言葉にオレは苦笑した。真美はこうみえて、とても人間観察力が優れている。
「真美はほんといろいろ適応力高いよね。本当はすごい人間観察能力があるのかも。やっぱり運命に選ばれて組織に入ったんだよ。」
沙樹も俺と同じ印象を真美に対してもっているようだった。オレは真美の適応力に驚いている沙樹に
「さてと、オレはもう少し休んだほうがいいのか?」
と聞いてみる。身体の方はだいぶ調子が良かったが完璧ではなかった。
「そうね。明日には退院させてあげるから、ありがたく思いなさい。」
沙樹はオレの言葉に気を取り直して薬液が入れられている注射器を手に取った。準備万端だったらしい。
「ルートの側管から入れるから痛くないよ。よかったね絵里華。」
貴仁が冗談交じりにオレにつながっているルートを手に取ると沙樹に渡す。
「じゃあ明日の朝までぐっすり眠れる薬を入れるからね。おやすみ絵里華。」
沙樹の言葉を聞きながらオレは自分につながれた注射器を見た。ゆっくりと薬液が流し込まれていく。同時に意識が遠のいていく感覚があった。すぐに身体に力が入らなくなりオレは襲ってきた睡魔に逆らえずに眠ってしまった。

次の朝目が覚めたオレは、身体が断然軽くなっているのを感じた。
「おはよう、気分はどう?」
聖ラフィーユ大学病院で組織幹部専用病棟の看護師をしている姉貴が聞いてくる。
「だいぶいい。このぶんなら起きれそうだ。」
オレは言いながらベッドから身体を起こす。もう痛みも完全になくなっていた。
「じゃあ沙樹を呼ぶわね。チェックが済んだら退院できるわよ。」
姉貴が言いながら院内専用のPHSで沙樹を呼びだす。沙樹はすぐにやってきた。
「おはよう絵里華、元気になった?」
沙樹はオレの具合を確認しながらいろいろとチェックをしていった。
「大丈夫そうね。じゃあ点滴抜いてあげる。」
言いながら沙樹がオレの腕に刺さっている点滴を抜いて綿花で押さえて止血する。2-3分して沙樹が手を離す頃には留置針の入っていた小さな傷口はふさがっていた。
「残念だけど、退院ね。またいつでも戻ってらっしゃい。」
マジに残念そうにいう沙樹にオレはあきれつつもベッドから起き上がった。身体は完璧にいいようだ。
「そういえば、研修に行く前にスカウトした子。組織の訓練施設でがんばってるわよ。かなり筋はいいみたいね。」
オレが服を着替えるのを見ながら沙樹が言う。まぁ沙樹の言葉も当然だろう。筋がよくなければあのクソ親父がわざわざミッションをたてて捕獲に人員を派遣するはずもないのだから。
「またあとで様子はみにいくよ。」
オレは着替えを終えて数日過ごした病室を出る。姉貴が手をふって見送ってくれた。沙樹もまだ仕事が残っているらしく、うらめしそうにオレを見ながら病棟に残る。オレはエレベーターで1階まで降りて病院を出た。クロノスタワーに帰ろうとバス乗り場のほうに向かうとバス停にはミュリシスと貴仁がいた。
「絵里華も無事退院か。」
ミュリシスが少し微笑みながら言う。
「おかげ様で。今回ミュリ姉様にはだいぶ負担かけたな、すまない。」
オレはミュリシスに頭を下げる。
「気にするな。オレは役得だって言っただろう?真美ちゃんもお見舞い来てくれたし、それなりに楽しかったよ。」
ミュリシスはオレの肩を抱きながら言う。オレは少しほっとして頭を上げた。
「私も楽しかったよ。久しぶりにドクターカーの運転もできたし。あのサイレン鳴らしながら高速飛ばして走るのはけっこう快感なんだ。」
貴仁がいたずらっぽく言う。
「私もクロノスタワーに戻るところなんだ。みんなで一緒に帰ろうか。」
貴仁もミュリシスもクロノスタワーに部屋を持っている。クロノスタワーには地下から地上までいろいろな所に組織構成員の私室がある。幹部クラスのオレやミュリシス、貴仁は当然クロノスタワーセントラルの高層に私室を持っていた。学園内はバス路線がはりめぐらされておりオレ達はそれを利用してクロノスタワーに戻る。基本的にICカード式になっている学生証や組織の発効している身分証明書をバスを降りるときに読み取り機にかざすだけで無料で利用できた。クロノスタワーにつくと一般用入り口ではなくオフィスタワー専用の入口の方から入る。一般用からもつながってはいるのだが、そこまでの混雑をさけたいメンバー用にこうした組織専用の入口も準備されていた。オレ達はそのまま15Fのエントランスホールにむかう。この階までは共通フロアーになっているが、そこから先はタワーごと、また階数ごとのエレベーターに分かれていた。オレ達は全員セントラルタワーの幹部専用エレベーターに乗る。オレはエレベーターに乗りこむと階数ボタンの下についているスロットに専用カードを読みこませる。ミュリシスと貴仁もオレに続く。幹部専用エレベーターはカードスロットに専用カードを読みこませないと動かないシステムになっていた。カードを読みこませると、それぞれの私室のある階の階数ランプが点灯する。ミュリシスは67F貴仁は65Fに部屋を持っていた。それぞれの階で彼らと別れてオレは70Fの私室に戻る。部屋に入ると今までの疲れがどっとでたのか、そのままリビングのソファーに身を投げ出した。視界の隅に自分が研修に持って行っていた荷物がうつる。どうやら誰かが運び込んでくれていたようだ。私室とはいえ、ホテルのように掃除も入るし沙樹やクソ親父や豊なんかは部屋の合鍵を持っているのでオレの部屋に出入りすることは可能だった。少し休むとなんとか疲れもひと段落したようで、オレは身体を起こして執務室のパソコンを開く。メールボックスには何件かのミッション報告メールとクソ親父からの指令書が届いていた。クソ親父からの指令書には今日の日付から10日間の休暇が記されていた。クソ親父にしては本当にめずらしい配慮だ。10日の休暇後の午前10時にクソ親父の部屋に出勤予定になっていた。とりあえずオレはパソコンの電源を落として荷物の片づけを終えると寝室に行ってシャワーを浴びる。それが終わると私室を出て地下の訓練施設へと向かった。地下訓練施設では裏のラフィーユの生徒達や組織の構成員が様々なトレーニングをつんでいた。オレは研修前にスカウトした青年コウキのもとに向かう。彼は早速裏ラフィーユの養成コースに入学していて、授業を受けていた。

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