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ミュリのオリジナル小説連載コミュの黒潮学舎 絵里華の場合3

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「絶対ここだと思ってた。予想あたってよかったー。」
沙樹はにっこり笑いながら言う。まぁオレが起きるのも真美を連れてるのも沙樹には予想の範囲だったんだろう。
「沙樹、ご飯終わったらあの薬もう一個くれ。明日の朝までぐっすり寝たいからな。」
オレが言うと沙樹は
「了解。」
と笑顔で返事をした。オレ達はレストランのボーイに導かれて窓際の席に案内される。そこはレストランの中でも特等席だ。窓からは海が見えた。もうだいぶ日が落ちてきたので暗いのが残念だ。みんなそれぞれと自分の食べたいものを取ってくる。
「じゃあ、いただきます。」
みんながそろうと沙樹がそう言って食べ始める。オレも真美もそれと同時に食べ始めた。
「バイキングも人気なんだぜ、ちなみに一人3000円だ。安いだろう?」
とりあえず普通の食事としては高いが高級ホテルの夕食バイキングの半額程度の値段だ。料理は決して高級ホテルに負けてないと思う。
「まぁこの船は一般向けだからね。このくらいの値段が妥当なんじゃない?これ以上高かったら利用客いないだろうし。」
沙樹が現実的なことを言う。組織もちゃんと考えて値段設定しているようだ。
「味は悪くないんだけどな。組織の運営している以上は料理に手は抜かないだろうし。素材調達からすべて組織で賄ってるからできる値段だ。」
組織では農業や漁業をおこなっているセクションもある。世界規模で行っているのでどこの国の食材でも取り寄せることができた。当然それらの輸送も組織の関連会社が行っているはずだ。そしてオレ達は雑談を交えつつ食事を取り終えてそれぞれの部屋に戻った。
「じゃあおやすみ真美、明日朝ご飯9時までにいかないと食べれないからがんばって起きるのよ。」
真美との別れ際に沙樹が叫ぶ。この調子じゃ朝もしっかりバイキング食うんだろうな。真美を部屋に送ってからオレと沙樹は自分の部屋の方に進む。沙樹が部屋に入る前にオレに薬の包みを渡してくれる。
「これさっきの薬と同じやつ。でも量は調整して朝には起きられるようにしてあるから安心して飲んでね。」
オレは「サンキュ」と言いながらそれを受け取った。
「じゃあお休み、絵里華。」
沙樹はオレにウインクしながら自分の部屋の扉を閉める。オレは薬の包みを握り締めながら隣の自室のドアを開けた。部屋に入ったオレはとりあえずシャワーを浴びて備えつけの部屋着に着替えた。コップに水を注いで沙樹の薬を飲むとそのままベッドに横になる。意外に速効性なのはわかっていたのでオレはその作用に素直に甘えた。

目が覚めるとわりと早朝だった。オレはとりあえず持ってきていた組織のミッション管理等を行っている端末の電源を入れて親父からの指令をチェックした。一応、衛星回線でつなげているので地球上どこにいても通信可能な代物だ。その画面には予想通りというか四国での追加ミッションの指令が届いていた。四国のラフィーユ分校に通っている生徒が潜在的に能力者でそれに気がついた他組織から命を狙われているらしい、すでに刺客が何人か送りこまれているようでオレへの指令はその刺客から生徒を守り組織へスカウトすることだった。その生徒は18歳の女子生徒でいわゆる呪術師の家系で本人は気が付いていないが呪いの力を持っているようだ。どっちかと言えばマイナスな能力の為か異能力者の存在を認めない秘密組織から命を狙われているらしい。とりあえず今のところ実害はでてないようだが、彼女の能力は使い方を誤れば世界にもマイナスに働く。組織は彼女の力をコントロールするか封印するかして、とりあえず支配下に置いておきたいのだろう。とりあえず組織から送られてきた概要を軽く読むと、オレは服を着替えて朝の食事場所になっている昨日バイキングを食べたレストランへと向かうことにした。オレが部屋のドアを開けた瞬間、沙樹が部屋の前に待っていてちょっとびびった。
「おはよー絵里華。そろそろ起きてくると思って待ってたのよ。」
あいかわらず強引な沙樹にオレは逆らわずに素直に二人でレストランに向かう。レストランには藤田クラスのみんなや沙樹や真美が揃っていた。
「おはようみんな。ゆっくり休めたか?」
オレが声をかけるとみんなはやっぱり少し委縮しているようだった。気持ちはわかるぞ気持ちは。
「おはよー。みんな今日も元気にいこー。」
沙樹もオレの後ろから元気に挨拶する。とりあえず少し気まずいのは無視してオレ達は食事することにした。
「絵里華、今日からまたしばらく寝られないかもね。」
沙樹は何らかのモノを感じ取っているらしい。指令の出ていることはまだ誰にも話していないのだが。
「まぁ、オレ的には強制的に寝かされそうな気もするがな。」
とりあえず指令のミッション中に傷を負い、沙樹に手術されそうな気がするのは気のせいでは決してないだろう。
「そんときはそんとき。ちゃんと準備万端にしてあるし、黒潮学舎のほうにも医療施設はあるから何が起こっても安心だよ。」
沙樹はあいかわらずにこにこしているがサディストの雰囲気がモロにでていた。
「賢祐もいることだし、助手には困らないから。」
どうやら沙樹の頭の中ではオレの手術は決定事項らしい。まぁオレ的にもその予想は大半当たってると思う。そんなこんなでオレと沙樹が周りから浮いてる会話をしているときにミュリシスがレストランに入ってきた。
「おはよう。オレもまぜてもらっていいかな?」
ミュリシスはまっすぐオレ達の席にきた。
「ミュリシス姉様、昨日はサンキュー。真美預かってもらっちゃって助かったわ。」
沙樹が率先して席をひいてミュリシスを座らせる。
「いや、こちらこそお姫様とデートできて光栄だったよ。」
ミュリシスは真美に向かってウインクつきでいった。あっというまに真美の顔が赤くなる。本当に女なのかと疑ってしまうくらいミュリシスはフェミニストだった。
「ミュリシス姉様、もう船の仕事はいいのか?」
確か船の当直任務をこなしたはずだ。昨夜はほぼ一睡もしてないだろう。
「ああ、船長にすべて任せてきたよ。一応夜間は当直してたから黒潮学舎についたら少し仮眠をとるけど、オレの今日の仕事はほぼ終わりかな。」
ほぼ終わりといってもたぶんミッションがあるはずだ。ミュリシスのところにも何らかの指令が届いているだろう。
「絵里華やオレには黒潮学舎の宿泊棟が割り振られてる。藤田クラスのみんなには温泉付きの旅館を手配してあるよ。じっくり修学旅行気分を楽しんでおいで。」
ミュリシスは藤田クラスのみんなを安心させるように言った。彼らも薄々とは今回の研修のウラに何かがあることを感じているのだろう。
「四国についたらオレ達は仕事、お姫様達は観光だ。バスで観光地巡りしておいで、夕方には一回黒潮学舎に全員集合予定だけどね。」
オレもミュリシスの言葉を肯定するように言った。彼ら藤田クラスとオレ達とではまったく別の任務なのだから。
「さて、そろそろ部屋に戻ろうか。11時半頃までにバスをのせてあるデッキまで来てバスに乗っておくこと、いいね。」
藤田先生が明るく言ってみんなはその言葉に従う。
「オレらはこのまま黒潮学舎に行くからここでお別れだな。みんなまた夕方にな。」
オレはそう言うと席をたった。ミュリシスと沙樹もそれに続く。真美も帰る方向が一緒だからついてきた。
「あたし達は先に船おりるから時間までゆっくりしておいで。夕方にまた会いましょ。」
沙樹がそう言って真美に手を振る。
「じゃあなお姫様。楽しんでおいで。」
オレも真美にそういうと自分の部屋に戻って荷物をまとめる。一般客がおり始める前にオレは組織の人間専用の出入り口に向かった。そこには沙樹やミュリシス、それにクリストファーも来ていた。
「よろしく頼むぜ。」
オレが言うとみんなは無言で頷いた。船が港に接岸すると一般客がおり始める前に優先的にオレ達は降りる。港には迎えの車が来ていた。車に乗り込むとオレ達はいったん聖ラフィーユの黒潮学舎のほうに向かった。校舎の中の秘密の扉からオレ達は地下にある基地に入る。そこの作戦司令室みたいなところにオレ達は案内された。
「少しだけ仮眠取ってくるよ。昼過ぎには起きるから。」
ミュリシスがそう言って司令室の隣にある仮眠室に入る。時計を確認すると11時前だった。司令室の画面に今回の護衛対象である女子生徒のデーターが映し出される。続いて敵組織から遅れこまれた刺客の情報が映し出された。情報によると彼らは科学を絶対とした狂信的な一派で、科学で証明できないことはこの世から消し去ろうと活動しているようだった。当然オレ達の様な神の血族も彼らからしたら排除対象なのだろう。武器は一般的に銃で、射撃訓練を受けたスナイパーが3人四国に送り込まれているらしい。ただしあくまでもオレ達の組織のことは知らずに、生徒のことだけを嗅ぎつけ行動しているらしい。とりあえず大っぴらな昼間の遠距離射撃とかではなく、短銃で人目につかずにこっそり始末が方針らしいので、他の一般人を巻き込む可能性は低いだろう。
「今日あたりしかけてきそうだから放課後注意だね。この子帰宅部だし。」
沙樹が資料を見ながら言う。
「とりあえず怪我の治療は任せて存分にやってきなさいな絵里華。」
沙樹がオレの顔を見ながら言う。どうせオレが怪我するのはもう決定事項なんだよな?
「さてと、武器の点検でもするか。」
オレは武器庫から適当に銃を調達してきた。各基地には武器庫があって武器携帯の許可をもつ組織のメンバーなら武器を借りることができた。オレは持ってきた武器の1つをクリストファーに渡す、ミュリシスの分は机の上に置いた。沙樹は基地に残って後方支援なため手ぶらだ。オレとクリストファーが配置の打ち合わせをしていると奥の部屋からミュリシスが起きてきた。
「おはよう。作戦は決まった?」
ミュリシスは机の上に置かれていた銃を服の下に身に着けていたホルスターに差し込む。
「とりあえず、放課後に狙われるだろうから。そこを返り討ちかな。」
彼女の下校コースで人目につかない場所があった。おそらく狙われるならそこだ。
「じゃあ放課後から彼女のガードだね。がんばってきてねー。」
沙樹は他人事のように楽しそうだ。まぁ、沙樹にとってはお楽しみイベントみたいなものだろう。オレ達は学校が放課後を迎えるまでコースの下見や情報収集に走った。そして迎えた放課後。学校の門から出てきた彼女に気がつかれないように距離を取りながらオレ達はガードについた。彼女は徒歩通学で10分ほどのところに住んでいていつも歩いて通学していた。予想通りの地点に近づいたあたりでオレ達は殺気を感じた。オレ達はすぐに殺気の元をつきとめてその場に向かう。クリストファーには彼女のガードに徹してもらってオレとミュリシスで挟み撃ちをしかけた。敵もオレ達に気がついたみたいで一旦身をひく構えを見せた。ミュリシスにもターゲットの少女のガードを任せてオレは一人で彼らを追跡する。オレははっきりいって逃げ出した彼らをなめてかかっていた。だが、それは彼らの作戦でオレの追跡の間に三人の刺客にターゲットのまわりを囲まれていた。意外と腕がたつ奴らだったようだ。彼女目がけて銃弾が発射された瞬間にオレも銃で奴らを撃つ。彼女の周りには咄嗟にミュリシスが結界を張って弾を止めた。オレは自分の身体を彼女と刺客の間に入れて彼女をかばい、弾をよけながらつぎつぎと刺客を倒していった。だが、完全には防ぎきれず肩に一発食らう。その痛みに気を取られた一瞬に最後の一人になっていた刺客の銃弾をモロに胸のあたりにくらってしまった。肩の傷とは比べ物にならないくらいの激痛がオレを襲う。しかしオレはその痛みをこらえ銃で最後の一人にトドメを刺した。自分の撃った銃の衝撃で胸痛がさらに増幅する。オレは完全に刺客を全滅させたことを確認してから地面に膝をついた。すぐにミュリシスが駆け付けてくれる。
「絵里華、大丈夫・・・じゃねぇな。」
ミュリシスはすぐにオレの状態を判断して応急手当をはじめる。組織ではそのあたりのことも習うのでテキパキと止血が行われた。
「すぐに沙樹のとこに運んでやるから少しガマンしてろ。」
沙樹のところに行くのはいやだが、この場合選択肢はない。ミュリシスはオレを抱き上げると一気に沙樹のところまで瞬間移動を行った。移動した先である組織基地の医療施設では沙樹が術衣を着てうれしそうに待っていた。
「おかえり、絵里華。」
沙樹はにっこりと笑いながらオレを出迎える。
「肩と胸。どっちかが動脈かすってると思う。」
ミュリシスがオレの状態を沙樹に報告する。
「OK、ありがとミュリ姉様。」
ミュリシスはオレの身体を処置台の上に横たえる。
「絵里華。クリストファーには彼女の勧誘を頼んであるから。もし無理そうなら能力を封印して記憶操作して元の世界に戻すよ。だから安心して休んでろ。」
ミュリシスの言葉にオレは一応の任務終了を迎えられてほっとした。
「さーて。じゃあそろそろ休ませてあげようか。」
沙樹がオレの腕を縛ると浮き出てきた血管にわりと太い針を突き刺す。痛みは元々の銃創の痛みにまぎれてあまり感じなかった。
「すぐ楽になるからね。がんばったね絵里華。」
沙樹が針に点滴をつないだ後に側管から注射器で薬を入れる。その様子を横眼でみながらオレの意識は闇に飲まれていった。

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