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ミュリのオリジナル小説連載コミュの黒潮学舎 絵里華の場合4

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気がつくと沙樹がオレの傍についていた。もう処置は終わったらしく痛みもほとんどない。
「気分はどう?」
オレが目覚めたことに気がついた沙樹が聞いてくる。
「今のとこ悪くはないな。まぁ、無傷で終えたかった仕事だったんだけどな。」
敵組織の能力を過小評価しすぎていたのが今回の敗因だ。小さな組織といえども油断大敵ということか。
「総帥はむこうの能力がけっこう高いと知ってて、わざわざミュリ姉様とクリストファーまでつけてくれてたんだよ。絵里華が一人で処理できると踏んだのが敗因だね。」
沙樹にトドメさされてオレはけっこう凹んだ。
「肩の傷はかすった程度だけど、胸の方は大動脈を損傷してたわよ。血管縫合して出血も止まってるけど、しばらくは絶対安静ね。」
沙樹の痛い話にオレは少し寒気がした。まぁオレの身体なら大ダメージ以外は時間さえあれば再生できるが、痛みはある。今回も治るまである程度の痛みは覚悟しておかなければならないだろう。
「ミュリシス姉様も力くれてたから治りは良好よ。運が良ければ真美と一緒に戻れるわ。」
沙樹はオレの頭をなでなでしながら言う。オレは沙樹の優越感たっぷりな態度にむかついたが、いつものことなので気にしないことにした。その時コンコンとドアがノックされる。沙樹がすぐにドアを開けに行った。ドアのほうをちらっとみるとミュリシスと真美が顔を出していた。
「あれミュリシス姉様。あ、真美連れてきてくれたんだ?」
沙樹が二人を部屋に招き入れる。
「絵里華は?」
ミュリシスの問いに沙樹がオレを指差して言った。
「さっき意識が戻ったとこ。まだ鎮静させてないから、話しするなら今のうちにね。」
どうやら沙樹はオレをもういっかい寝かすつもりだったらしい。まあ意識のない方が身体の回復は速いんだけど。
「かっこ悪いとこみられちまったな。」
オレは近寄ってきた真美とミュリシスに言った。
「大丈夫なの?痛くない?」
真美が心配そうに聞いてくる。その表情は暗かった。真美なりにオレのことを心配してくれてるんだろう。
「痛み止めがきいてるから、痛みは今のとこ大丈夫だ。ただ、かっこ悪すぎて情けないだけだ。」
オレの言葉に真美が少しだけほっとしたような顔になった。
「一応勉強のために、お姫様にも見てもらってた方がいいだろうと思って。組織の現実の一部をさ。」
ミュリシスがさっきまで沙樹が座っていた椅子に座りながら言う。
「そうね、真美も少しこういうことにも慣れておいた方がいいわね。こんなのけっこう日常茶飯事だからさ。」
沙樹がミュリシスの意見を肯定する。できるかぎりこんな場面に真美をかかわらせたくはなかったが、組織にいる以上避けては通れないことだった。
「とりあえずミッションは完了して、一人優秀な人材を組織に加えることができたんだけど。彼女他の組織から狙われてて、絵里華がかばって怪我したのよね。とりあえず他組織のやつはその場で絵里華が始末したけど。」
オレは沙樹の言葉で勧誘がうまくいったことを知った。そしてオレが撃った他組織の奴はおそらく命を落としたのだろう。相手はあくまでも普通の人間だ。オレのように大怪我を負っても寝たら治る身体ではないのだ。
「やらなきゃやられるのがこの世界の掟よ。それは変えられない。正当防衛は罪にはならないでしょ?それと同じよ。」
沙樹の言葉に真美の顔色がまた若干悪くなる。そりゃこんな話を聞かされたら普通の神経だったら耐えられないだろう。
「真美にはまだ早すぎだ、沙樹。というより真美には組織の闇の部分にはできるかぎり関わってほしくない。それは親父も同じ意見のはずだ。」
オレは沙樹を諌める。クソ親父もたぶん真美にはあまり組織の闇の部分にはかかわってほしくないはずだ。
「そうね、真美にはきれいな仕事だけしてもらいたいし。そのかわり、闇の部分はあたしたちがばっちりひきうけるから安心して。」
強制的に闇の部分を引き受けるというあたしたちの一員にオレが入れられた気がするのは必然か?
「とりあえず、弾2発ほど撃ちこまれたんだって?一発は大動脈かすってて出血がひどかったって聞いたぞ。シャレイル先生のこともあったから心配してたんだ。」
ミュリシスがオレを覗きこみながら言う。だいたいの撃たれた箇所はわかっていても弾が何発入っているかまでは出血に邪魔されてミュリシスにはわからなかったのだろう。
「ミュリシス姉様が力分けててくれたおかげでだいぶ助かったよ。あれがなかったらヤバかったかも。」
本当にミュリシスの力のおかげでダメージ少なくて済んだようなものだった。あれがなかったらもっとオレはフラフラになっていただろう。そろそろ痛みどめも切れてきたのか胸の痛みが少しずつひどくなってきていた。
「沙樹、痛み止め切れてきたみたいだ。」
オレが言うと、沙樹はうれしそうにどこからか薬液の入った注射器を取り出す。完全に用意してやがったな。
「これ使うとすぐに意識なくなるけど、言っておくことある?」
オレは心配そうな真美に
「真美、とりあえずオレのことは忘れて研修楽しんでこいよ。悪いが、沙樹はちょっと借りとくぞ。こんなんでも治療の腕だけはいいからな。」
と、最後は沙樹への嫌みをこめて言ってやった。沙樹の顔がむすっとするのが見えた。
「ミュリシス姉様、フォローを頼むよ。オレ2-3日使い物にならないだろうから、事後処理を任せる。」
ミュリシスにそう言うと、ミュリシスは了承の代わりに軽く頷いた。
「じゃあしばらく眠っていなさい絵里華。」
沙樹がオレにつながっている点滴の側管から薬液を入れていく。すぐに身体の痛みが消えていき、ついでに意識も一緒に闇に引きずり込まれていった。

次に目が覚めると部屋によく見知った顔が増えていた。
「シャレイル・・・?」
オレは薬で多少寝ぼけている頭で問いかけた。シャレイルがオレの問いかけに対して微笑んだ。幻覚ではないようだ。
「絵里華のおかげで任務がやっと終わったからね。お礼を兼ねて、私も力を使っておくよ。」
シャレイルの言葉で沙樹がオレの包帯をはずすと、シャレイルの手がオレの身体に触れる。暖かい癒しの力が流れ込んでくるのがわかった。同時に沙樹が抜糸をしていく。まだ薬が多少残っているのか痛みは感じなかった。シャレイルの手が離れると傷口はすっかりとふさがっていて、外見上は傷が跡形もなく綺麗になっていた。
「一応外見だけは整えたけど内部の修復まではまだ完全ではないからね。しばらく安静にして回復させないとだめだよ。」
シャレイルはオレに病衣を着せてくれながら言った。
「沙樹がキレイに縫ってくれていたから、抜糸するのがもったいなかったんだけどね。」
シャレイルの言葉に沙樹が得意げに胸を張る。こいつ普段はガサツなクセに、縫合だけはやたら丁寧にやるんだよな。
「研修は無事進んでるのか?」
オレは真美達のことを聞いてみた。オレの怪我のせいでなにか不都合がでてなければいいが。
「そっちは大丈夫。今日も市内観光にまわってたみたいよ。」
それなら安心かな。オレは沙樹の言葉にほっとした。
「絵里華も明日の飛行機で一緒に帰るのよ。それまで絶対安静、いいわね?」
沙樹の鬼のような形相にオレは仕方なく
「わかってるよ。」
と答えを返した。寝てるのは退屈だが、この際しょうがない。
「じゃあ私はミュリシスに少し提供してもらってくるよ。絵里華に使った力の分とミッションで消費した分をね。」
シャレイルがそう言うと部屋を出ていく。今度はミュリシスの血で補給するつもりらしい。
「ミュリ姉様も絵里華が寝ている間に力使ってくれたんだからね。あとでちゃんとお礼言っときなさいよ。」
そう言いながら沙樹はオレの腕につながれている点滴のチューブを手に取る。
「てことで、絶対安静継続といきますか。」
いつのまにか沙樹の手には注射器も握られていた。唯一の救いといえば、元々点滴がつながっているおかげで針の痛みを感じることなく側管からいろいろな薬剤を投与できることか。
「明日の朝にはおきてもらうから、そのつもりでね。おやすみ絵里華。」
沙樹がそう言ったのを聞いたのを最後にオレの意識は途切れていった。

翌朝オレはわりと速い時間に沙樹に起こされた。
「おはよう。痛みの方はどう?」
沙樹の質問にオレは
「少し痛むけど、ガマンできないほどしゃないよ。」
と返す。ほんの少しだけ胸の傷があった部分に痛みがあった。
「じゃあ朝ご飯たべて痛み止め入れたら、点滴抜いてあげる。」
沙樹はそういうとベッドの上にテーブルをかけてその上に軽い食事をのせた。オレはタオルで手を拭いてから食事をとった。眠っている時間がながかったせいか久しぶりの食事な気がする。食事を食べ終わると、沙樹はオレの腕に刺さっていた点滴から鎮痛剤を投与してからそれを抜いた。
「軽くならシャワー浴びてきても大丈夫だよ。ただし無茶な動きは控えてね。」
沙樹の許可を得て、オレは部屋に備えつけの風呂場でシャワーを浴びて服に着替える。風呂から上がると沙樹が
「今日これから聖ラフィーユ黒潮学舎の記念式典があるけど出席どうする?総帥がちらっと顔出すみたいよ。」
と告げてきた。オレは
「出席するに決まってるだろう。」
と即答する。クソ親父がわざわざ四国まで出向いてくるんだ。オレが呑気に休んでいるわけにはいかない。
「そう言うと思ってた。本当なら出発直前まで横になっててもらいたいんだけど無理そうね。でもあんま無茶はしないでよ、あくまでも静かに出席するだけだからね。」
沙樹はあきらめたように溜息をつくと、オレを部屋の外に連れ出す。
「式典は講堂だから。あたしは研修組を迎えにでるから先に行ってて、場所はわかるよね?」
オレは何度か黒潮学舎とこの地下基地に来ていたので、道はばっちりだった。
「じゃあ講堂でね。」
オレは沙樹と別れて一人で講堂にむかう。途中ですれ違う組織のメンバーがオレに次々と頭下げる。総帥としてそこそこオレの顔は基地中に知れ渡ってるようだ。講堂に入ると組織の職員がオレを席に案内してくれる。舞台から見て横の来賓席エリアだ。オレが座ってしばらくたつと沙樹に引率されて研修組やミュリシス達が来賓席に入ってきた。
「みんな揃ったな。心配かけてすまない。」
オレは研修組に謝る。彼らには大きな心配をかけてしまった。
「シャレイルとミュリシス姉様のおかげでなんとか回復できたよ。もちろん沙樹の腕もあってのことだけど。」
オレがそう言うと沙樹が自慢げに自分の胸を叩いた。調子に乗りすぎだ。
「とりあえず親父が式典にでる以上、呑気にベッドで寝てるわけにはいかねーからな。」
はっきりいって体調はまだ悪かった。横になっていた方が断然楽だというのは自分でもわかっていたが、どうしても自分のプライドがそれを許さなかった。
「絵里華のはただの意地だもんね。おじさまに弱いとこ見せたくないんでしょ?」
沙樹がさらっとオレの本音をバラす。こいつは、いつも余計なことを・・・
「本部に戻ったら2-3日入院するかい?幹部専用病棟の特別室がちょうど空いてるからね。私と沙樹が責任もって完治させるよ。」
シャレイルがオレの顔色を観察しながら言う。幹部専用病棟なんて空いてない日のほうが少ないだろうに。
「まぁ、仕方ねーだろうな。かなり不本意だけど従うよ。」
オレは諦めた口調でシャレイルにそう答える。シャレイルはオレの言葉を聞いて安心したように微笑んだ。
「さて式典がそろそろ始まるわよ。ほら、総帥が入ってきた。」
沙樹の声に入口の方向を見るとクソ親父が正装で入ってきているところだった。出番までまだ時間があるのか来賓席の最前列の方に座る。
「オレ寝とこうかな。痛み止めが効きすぎて眠い。」
オレは口からでまかせをいいながら軽く目を閉じた。やがて式典がはじまり、退屈な話が続いた。その中盤あたりでクソ親父の声が聞こえ始めた。一応クソ親父は学園の経営母体である川井財閥の総帥と言うことで挨拶にきていた。オレはステージの上のクソ親父を睨みつける。クソ親父も完全にオレの視線に気が付いているようだった。クソ親父は演説が終わると式典会場から出て行った。それを見送ってからオレは再び目を閉じる。座っているだけでもけっこう疲れた気がする。式典が終わるまでにオレはどんどん体調が悪くなっていくのを感じていた。もう限界かも、と思った瞬間に式典は閉式を迎えた。
「さて、今回の研修はすべて終了だ。あとは飛行機で帰るだけだよ。空港までは乗ってきたバスで移動する。出発は30分後だ、遅れないように。」
藤田先生の声が遠くに聞こえる。
「絵里華、歩けるか?」
ミュリシスがオレをなんとか席から立ち上がらせてくれる。
「この分なら内側でたぶん出血してると思う。表皮は綺麗になってるけど中はまだ癒えてないから。」
沙樹がオレの様子を見ながら冷静に分析する。
「少し力を使っておこうか。ミュリシスから補給したばかりだからね。」
シャレイルがオレの身体に手を触れた。優しい癒しの力が流れ込んできてオレは少しだけ身体が楽になった。
「ありがとう、シャレイル。だいぶ楽になったよ。」
オレはなんとか自力で歩行を始める。けっこうきつかったが、精一杯の意地をはってみた。そのままバスの停まっている学園の玄関まで移動する。先頭きってバスに乗り込むと、オレの目の前に信じられない現実が待っていた。

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