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ミュリのオリジナル小説連載コミュの聖ラフィーユ学園黒潮学舎  第4話

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聖ラフィーユ学園黒潮学舎  第4話

「じゃあおやすみ真美、明日朝ご飯9時までにいかないと食べれないからがんばって起きるのよ。」
沙樹ちゃんはそう言ってあたしを部屋に入れると絵里華と一緒に手を振りながら自分の部屋の方に歩いて行った。あたしはそれを見送りながらドアを閉じると、出しかけになっていた荷物の整理にかかった。とりあえずパジャマを出してからあたしはお風呂に行く。船の中であるということを忘れるくらい快適にバスタイムを過ごすことができた。それにお風呂にはちっさな窓がついていて外の景色をちらっとみることができた。あとで聞いた話だがお風呂の窓はマジックミラーになっていて外からは見えないようになっていたらしい。でもあたしは外から見えるとか一切考えずに窓の外を見た。もう日もすっかり暮れてまっくらな海がちらっと見えた。あたしはお風呂からでるとパジャマを着てベッドに入った。枕元の目覚まし時計を6時半にセットする。30分で支度して七時からご飯食べに行くんだ。でも絵里華も沙樹ちゃんも睡眠薬飲んで寝てそうだから、一緒に食べれるのかな?あたしはとりあえず心配はしつつもそのまま疲れに身を任せて眠りについた。
翌朝、目覚まし時計であたしはばっちりと目覚め服を着替えていた。すると部屋の電話がなって出ると沙樹ちゃんだった。
「おはよー真美。ぐっすり眠れた?昨日バイキング食べたレストランに7時半に集合ね。藤田クラスの子たちにも声かけといたから遅れないようにね。」
うーん、沙樹ちゃん起きれたんだ。意外な結果だったな。そしてあたしは沙樹ちゃんに言われたとおりに7時半に昨日バイキングを食べたレストランに向かった。レストランの前には藤田クラスのみんなが勢揃いしていた。
「おはよう。昨日は全然会わなかったね、この船広すぎ。」
そう言ってきたのは眠気がまだ残る江崎君だ。
「あたしは見たで、ミュリシス様と一緒に歩いとったやろ。すごい視線あびまくっとったで。」
アシャンに言われてあたしはあらためてはずかしかった。あんな美形と二人で歩いてるとあたしの立場がない。
「バイキングは9時までだから食べたら各自部屋にもどって下船準備だな。といってもそこまで急がなくても我々は一般客が降りた後に降りるようになるから、実際の下船は12時前と思ってくれててもいいよ。」
藤田先生の言葉にみんながはーいと返事を返す。
「おはようみんな。ゆっくり休めたか?」
あたしのよーく知るその声にみんながいっせいに振り向く。そこには昨日より全然元気そうな絵里華の姿があった。うーん沙樹ちゃんの薬にも負けずに起きたか。
「おはよー。みんな今日も元気にいこー。」
絵里華の後から沙樹ちゃんもついてきていた。今日もかわらずテンションが高い。それからあたし達はみんなで朝食バイキングを味わった。絵里華がいるせいかみんなほぼ無言で沙樹ちゃんと絵里華が主に漫才チックな会話を繰り広げていた。
「おはよう。オレもまぜてもらっていいかな?」
突然の声とともに現れたのは、昨日お世話になったミュリシスさんだった。
「ミュリシス姉様、昨日はサンキュー。真美預かってもらっちゃって助かったわ。」
沙樹ちゃんが自分の隣の席をひいてミュリシスさんを座らせる。
「いや、こちらこそお姫様とデートできて光栄だったよ。」
ミュリシスさんは言いながらあたしにウインクをしてきた。あたしは思わず顔を赤らめる。女性だとわかっていてもかっこよすぎてどきどきするよー。
「ミュリシス姉様、もう船の仕事はいいのか?」
絵里華が質問するとミュリシスさんは微笑みながら
「ああ、船長にすべて任せてきたよ。一応夜間は当直してたから黒潮学舎についたら少し仮眠をとるけど、オレの今日の仕事はほぼ終わりかな。」
と返す。どうやらミュリシスさんはあれから寝てないらしい。でもそんな雰囲気は少しもみえないんだよね。
「絵里華やオレには黒潮学舎の宿泊棟が割り振られてる。藤田クラスのみんなには温泉付きの旅館を手配してあるよ。じっくり修学旅行気分を楽しんでおいで。」
ミュリシスさんの言葉であたし達と絵里華達は泊るところが別だということがわかった。温泉付きの旅館ってちょっと楽しみだな。まくら投げとかできるかしら?
「四国についたらオレ達は仕事、お姫様達は観光だ。バスで観光地巡りしておいで、夕方には一回黒潮学舎に全員集合予定だけどね。」
絵里華と別行動なのがいいのか悪いのか。でも観光は行きたいよ。なんたって四国とか行くのはじめてなんだもん。本州からでたことなかったあたしには四国なんて別世界だ。そうしているうちに時間はどんどんすぎてバイキングの閉店時間が近づいてきた。
「さて、そろそろ部屋に戻ろうか。11時半頃までにバスをのせてあるデッキまで来てバスに乗っておくこと、いいね。」
藤田先生に言われてみんなは了解と返事を返した。
「オレらはこのまま黒潮学舎に行くからここでお別れだな。みんなまた夕方にな。」
そう言って絵里華が席を立つ。それにミュリシスさんと沙樹ちゃんも続いた。あたしも席を立って絵里華達についていく。Lデッキまで戻ってくると沙樹ちゃんが
「あたし達は先に船おりるから時間までゆっくりしておいで。夕方にまた会いましょ。」
と手を振りながら部屋のほうに消えていった。
「じゃあなお姫様。楽しんでおいで。」
絵里華も沙樹ちゃんと同じ方向に歩きだす。ミュリシスさんも手を振ってから絵里華に続いた。あたしはそれを見送ってから自分の部屋に入ると荷物をまとめてからソファーに座る。ソファーから見える窓からはだいぶ陸地が近くに見えてきていた。あたしがぼーと眺めているとやがて港らしきものが見えてきて船がゆっくりとそこに近づいて行った。接岸もあまり揺れずに行われて、窓の外が少し騒がしくなるのが聞こえた。一般客がおり始めたのだ。あたしは時計を見ながら11時が過ぎるのをまった。その頃にはだいぶ船のお客さんも片付いたみたいで静かになってきていた。あたしは11時15分に自分の部屋を出た。バスをとめてある船の下の方に向かうとみんなもぞくぞくと集まってきていた。カーデッキも自分達の乗ってきたバス以外はすべて降りたようでポツーンとバス一台だけが取り残されていた。もう運転手さんは乗っていてバスのドアも開かれていたのであたし達は順次バスに乗り込んでいった。
「楽しみだね。僕も四国来るの初めてなんだ。」
藤沢君の楽しそうな顔をみてあたしも修学旅行気分がだいぶもりあがった。
「肉くうぞ肉。」
仁藤君は相変わらず肉が大好きらしい。どこにいってもその土地の肉料理を食べ歩いていると聞く。
「私も四国は初めてなの。どんなところなのか楽しみだわ。」
クリスティーナちゃんも声を弾ませている。みんなドキドキワクワクなようだ。
「みんな四国、四国ってひとくくりにしてるけど、四国には四つの県があるんだよ?知ってるか?」
藤田先生の質問にみんなが一瞬沈黙する。えーと四国て何県があったっけ?
「えーと、愛媛、徳島、高知、香川ですか?」
藤沢君が思い出しながらなんとか言う。
「そう正解だ。ちなみに船がいま着いているのは高知だ。みんな地理はちゃんと頭にいれとくんだぞ。」
あたしははーいと返事しながらもどの県がどこに配置されてるのか、全然わかんなかったりする。とりあえず四国の下の方は高知県だった気がするけど。
「じゃあそろそろ出発しようか。」
藤田先生がそう言うと運転手さんに指示をだす。バスはゆっくりと船からおりはじめた。船をおりると広い港があって客船ターミナルが見えた。港をでるとすぐ横に大きな建物がいくつも見えた。
「あれが今回の研修先の聖ラフィーユ学園黒潮学舎だ。夕方にはあそこに行くからな。でもそのまえに、とりあえず日中は観光だ。」
あたし達は窓の外を各自きょろきょろしながらバスに乗っていた。黒潮学舎は本当に学校だけの建物でラフィーユみたいに学園都市とかはついていないようだ。港を離れるにつれてけっこう田舎な風景が広がってくる。畑とか田んぼが多い。あとハウスもいくつも見えた。確か農業が盛んな県だったっけ。
「最初に向かうのは桂浜という月の名所だ。まぁ今は昼だから月は見えないけど。砂浜があるし水族館もあるぞ。あと有名な坂本龍馬像もある、みんなで像の前で写真取るからな。スマイル準備しとけ。」
藤田先生の言葉をきいてると本当にただの修学旅行みたいだ。あたしは研修であるということも忘れてさらにテンションがあがった。桂浜と言う場所はけっこう黒潮学舎から近かったらしく。わりと短時間で到着した。
「みんな降りるでー。」
アシャンちゃんが先頭にたってバスを降りる。みんなも続々とそれに続いた。
「とりあえず最初に記念撮影な、予約もいれてあるし。そのあと自由行動で、バス集合は午後4時だ。それじゃあまずはみんなで坂本龍馬像までいくぞ。」
藤田先生の後についてあたし達はみんなで龍馬像のところに移動した。そこにはお約束な撮影台みたいなのが作られててカメラマンさんがスタンバイしていた。あたし達は並んで記念撮影をする。とりあえずその時もまわりの視線が痛かった。あたし達はラフィーユではあまり目立たないけど、一歩学園の外に出ればアシャンちゃんやクリスティーナちゃんのような外人が入っていることでかなり目立つ。どこにいっても視線を浴びてしまうのだった。記念撮影を無事に終えるとあたし達はみんなでとりあえず水族館にいってみた。入場料はけっこう高めだったけど、給料を何カ月かもらったあたしには余裕で払える額だった。庶民感覚は残っているけど、貯金残高だけは組織に入ってから確実に増えていってる。あんま仕事らしい仕事もしてないのにお給料もらっていいのかどうか、あたしはちょっと気にしていた。
「かわいい。イルカさんだ。」
藤沢くんは動物が好きなようでイルカをみて目をうるうるさせていた。
「こっちきてみー。カメにエサやれるで。」
アシャンちゃんの声にあたしはアシャンちゃんがいるとこにかけ寄る。水族館の真ん中にはでっかい水槽があってウミガメにエサをあげられるようになっていた。あたしはアシャンちゃんが買ったエサを一個わけてもらって割りばしでカメさんにあげた。カメさんはけっこう力が強くてあやうく割りばしを引きちぎられそうになった。けっこう命がけかもしれないカメのえさやり。しかも看板に噛まれるの注意とか書いてあるし、これってどーなのかな。噛まれた人いないのかしら?
「もうすぐイルカのショーだって。一緒にみない?」
藤沢くんに誘われてあたし達はみんなイルカのプールに集合した。わりと小さな水族館なのでみんなの動きがけっこうまるわかりだ。ショーもけっこうこじんまりとしたもので水槽との距離が近いせいかけっこう水しぶきが飛んできたけど、みんなは水を多少かぶっても大はしゃぎだった。ショーが終わるとみんながそれぞればらけていく。あたしは何となくで江崎君と藤沢君と一緒になった。
「お土産物見に行こうか?沙樹に何か買っていかないと怒られそうだから。」
江崎君の提案であたし達は水族館を出てお土産物が売られている店がたくさんあるところまで戻った。何軒かお土産物屋を物色してあたしはキーホルダーとかお菓子とかを買いこむ。買い物が終わるとみんなでベンチに座ってアイスクリンなるデザートを買って食べた。アイスクリンというものは、白いシャーベットみたいなのがコーンの上に乗っていてほんのりバナナの香りがした。高知限定デザートらしい。わりと味は美味しかった。
「そういえば沙樹ちゃん達は無事に仕事済んだのかな?なんかウラがありそうっていってたけど。」
あたしが言うと藤沢君が返してきた。
「そういえば変ですよね。ミュリシス様やクリストファー様が船に乗ってるなんて普通はありえないことですよ。」
みんなミュリシスさんやクリストァーさんのことをそこそこ知っているらしい。あたしは入ったばかりだから全くわからないけど、二人ともオーラがすごかったというのはわかった。
「沙樹がはりきってたから、たぶん負傷者でるかも。沙樹にとって手術はお楽しみだからね。」
江崎君の言葉にあたしは沙樹ちゃんの普段の顔しかしらないのだと思った。あたしの知ってる沙樹ちゃんはいつもパワフルでつっぱしってて、でも乙女チックだ。手術してる姿なんてとても想像できない。
「総帥は何か言ってなかった?真美ちゃん総帥と同じデッキだったんでしょ?」
藤沢君の質問にあたしは
「そういえばピンチがどーのとか言ってた気がする。でも必ずミッションはクリアするって。」
と思いだしながら答える。絵里華のいつもの言動を見てるととても怪我するとか想像できないけど。
「はやければ夕方には結果がでてるだろうから。帰ってから沙樹に聞いてみよう。」
江崎君が言いながらベンチから立ち上がる。
「さて、そろそろ時間が近いよ。バスに戻ろうか?」
あたし達はそれぞれベンチから立ちあがって、お土産を抱えてバスに戻った。バスにはみんながぼちぼち集合していた。
「さてみんな、これから黒潮学舎に向かう。歓迎会をしてくれる予定だから楽しんでこよう。」
みんなが揃うと藤田先生がそう言ってバスを出発させる。バスはまっすぐに黒潮学舎に向かい学園内の建物の1つの前に到着した。あたし達はバスをぞろぞろ降りる。そこにはミュリシスさんが待ってくれていた。
「おかえり、観光は楽しかったかい?ミニパーティーの用意ができてるから中にどうぞ。」
あたし達はミュリシスさんに導かれて建物に入り2Fに用意されていた立食パーティー会場に入った。そこには制服姿の生徒達が40人くらい集まっていて拍手で歓迎してくれた。
「ようこそ黒潮学舎に。ここにいるのが黒潮学舎に所属する全JKFメンバーです。総勢42名。本日は本部の方とお会いできて光栄です。」
そう言って挨拶したのは黒髪を少し長く伸ばした男の子だった。わりとかっこいい。
「僕は黒潮学舎高等部2年、生徒会長を務めております市川誠といいます。大学は本部のほうにお世話になる予定ですのでよろしくお願いします。」
あと1年したらことかっこいい子もラフィーユに来るんだ。そう思うとちょっと楽しみかも。美形は多い方がいいもん。
「それでは本日は堅苦しいのはここまでにして、楽しい会食を。」
そう言うと市川君は隠し持っていたクラッカーを盛大に鳴らした。それを合図にあたし達は黒潮学舎の生徒たちに取り囲まれて、いろいろと質問攻めにあった。みんな本部にかなり興味があるみたい。あたしはあまり答えられることが少ないので、ジュースを片手にすみっこのほうにいたミュリシスさんのところまでこそっと移動した。
「どうしたんだお姫様、みんなと一緒にいなくていいのか?」
ミュリシスさんがあたしに食べ物をとってくれながら言う。
「だってあたしは組織に入ったばかりだし、あんまり質問されてもわかんないもの。それに沙樹ちゃんのことが気になって。」
あたしはそのパーティーに沙樹ちゃんがいないことが気にかかっていた。沙樹ちゃんの性格から考えてこのテの集まりは大好きなはずだ。
「ああ、沙樹なら絵里華に付き添ってる。ミッションは完了したんだけど、絵里華が負傷してね。緊急手術後ずっと沙樹が見守ってるよ。」
げ、やっぱり絵里華怪我したんだ。あたしが唖然としているとミュリシスさんが
「こっちにおいで、沙樹に合わせてあげる。」
といってあたしの手をひっぱってパーティー会場を抜けだした。会場のある建物を離れて別の校舎みたいな建物に入って行く。その入口には実験棟と書かれてあった。ミュリシスさんは建物の中をどんどん進んでいき、教官室と書かれたドアの前で立ち止まった。そこはカードキーでドアを開くようになっていてミュリシスさんは自分のカードでロックを外してドアを開ける。中に入ると正面に机と椅子があってその両側には本棚が並んでいた。ミュリシスさんが机の引き出しをあけると中にキーボードがあってそれで何文字か打ちこんだ。するとガコンって音とともに左側の本棚が動き出して、なんと地下への通路が現れた。すごーい、スパイ映画みたい。
「この下が組織の支部になっているんだ。生活スペースから訓練施設、医療施設までいろいろと揃っている。」
あたしはミュリシスさんに導かれて地下へと降りて行った。階段を降り切ってドアをあけると、まるでラフィーユの地下本部のような光景が広がっていた。
「ミュリシス様、今お帰りですか?」
入口には警備員が3人くらい並んでいて出入りをチェックしているようだ。
「うちの組織の新入りを連れてきたんだ。絵里華のお姫様だよ。」
あたしがお姫様ていわれたことに照れていると、警備員さん達が敬礼して挨拶してくれる。
「お噂はお聞きしてます、お会いできて光栄です。」
う、どんな噂が流れているんだろう。なんか絵里華のおかげであたしのことってけっこう組織内に知れ渡ってるのかもしれない。
「絵里華のとこにちらっと顔みせてくるよ。」
ミュリシスさんは警備員さんたちにそう言うと、あたしの手をひいて歩きだした。支部内はけっこう広くて絵里華と沙樹ちゃんのいる部屋にたどり着くまで、エレベーターにのったり廊下移動したりとけっこう長い時間歩かされた。
「ここから先が医療施設だ。診察室から手術室、病室まで一通り病院機能が揃ってる。組織の人間なら基本無料で医療が受けられるよ。」
ふむふむ、けっこう福利厚生がいき届いてるのね組織って。あたしはミュリシスさんに手をひかれて一つの部屋の前まできた。ミュリシスさんがドアをコンコンとノックする。すぐにドアが開いて沙樹ちゃんが顔をだした。
「あれミュリシス姉様。あ、真美連れてきてくれたんだ?」
沙樹ちゃんは若干疲れ気味の表情だったが、あたしをみると元気が多少でてきたようだった。
「絵里華は?」
ミュリシスさんが聞くと沙樹ちゃんは後ろのベッドを指差しながら言う。
「さっき意識が戻ったとこ。まだ鎮静させてないから、話しするなら今のうちにね。」
あたしが後ろのベッドをみると絵里華が点滴をつながれて横になっていた。こっちをじっと見ている。
「かっこ悪いとこみられちまったな。」
あたしがベッドに近寄ると絵里華は悔しそうに言った。着ている病衣の隙間から白い包帯が胸元に巻かれているのがみえた。
「大丈夫なの?痛くない?」
あたしが聞くと絵里華は少し笑いながら
「痛み止めがきいてるから、痛みは今のとこ大丈夫だ。ただ、かっこ悪すぎて情けないだけだ。」
と軽口をたたく。こんな感じなら大丈夫なのだろう。
「一応勉強のために、お姫様にも見てもらってた方がいいだろうと思って。組織の現実の一部をさ。」
ミュリシスさんが絵里華のベッドサイドにおかれてあった椅子に座りながら言う。
「そうね、真美も少しこういうことにも慣れておいた方がいいわね。こんなのけっこう日常茶飯事だからさ。」
これが日常茶飯事なのはあたしとしては抵抗がある。みんなみたいに生まれてからずーとこういう世界で育ってきたら慣れるのかもしれないけど、あたしには衝撃がけっこう大きい。
「とりあえずミッションは完了して、一人優秀な人材を組織に加えることができたんだけど。彼女他の組織から狙われてて、絵里華がかばって怪我したのよね。とりあえず他組織のやつはその場で絵里華が始末したけど。」
あたしは沙樹ちゃんの言葉を聞いて身体が震えた。恐ろしい事実が語られようとしている。
「やらなきゃやられるのがこの世界の掟よ。それは変えられない。正当防衛は罪にはならないでしょ?それと同じよ。」
沙樹ちゃんの言うことは理解はできても、あたしには賛同はできなかった。どんな理由があっても人の命を奪うのは、あたしにはきっとできないだろう。
「真美にはまだ早すぎだ、沙樹。というより真美には組織の闇の部分にはできるかぎり関わってほしくない。それは親父も同じ意見のはずだ。」
絵里華は言いながら少し顔を顰めた。どっか痛いのかな?
「そうね、真美にはきれいな仕事だけしてもらいたいし。そのかわり、闇の部分はあたしたちがばっちりひきうけるから安心して。」
沙樹ちゃんの言葉にあたしは少しだけ気が楽になったけど、衝撃はまだ抜けてなかった。
「とりあえず、弾2発ほど撃ちこまれたんだって?一発は大動脈かすってて出血がひどかったって聞いたぞ。シャレイル先生のこともあったから心配してたんだ。」
ミュリシスさんが絵里華に言う。そういえば、絵里華って貧血気味だったんだっけ。
「ミュリシス姉様が力分けててくれたおかげでだいぶ助かったよ。あれがなかったらヤバかったかも。」
絵里華は言いながら自分の胸元を押さえる。どうやら少し痛みがあるらしい。
「沙樹、痛み止め切れてきたみたいだ。」
絵里華が言うと、沙樹ちゃんはどこからか注射器を取り出した。
「これ使うとすぐに意識なくなるけど、言っておくことある?」
沙樹ちゃんがやたらうれしそうに注射の準備をしながら言うと、絵里華は
「真美、とりあえずオレのことは忘れて研修楽しんでこいよ。悪いが、沙樹はちょっと借りとくぞ。こんなんでも治療の腕だけはいいからな。」
と、最後は力なく微笑みながら言った。沙樹ちゃんがそのセリフにむすっとするのが見えた。
「ミュリシス姉様、フォローを頼むよ。オレ2-3日使い物にならないだろうから、事後処理を任せる。」
そう言うと絵里華は力なくベッドに倒れこんだ。うっすらと冷や汗をかいている。
「じゃあしばらく眠っていなさい絵里華。」
沙樹ちゃんが言いながら絵里華につながれてる点滴の側管から注射器の中身をゆっくりと入れていく。すぐに絵里華の表情が和んでそのまま眠りについた。
「これで明日の朝あたりまでぐっすり眠れるはず。あたしはまだしばらく付添してるから、真美ちゃんを藤田クラスに返してあげてね、ミュリシス姉様。」
沙樹ちゃんが絵里華のベッドの横に座りながら言うと、ミュリシスさんが
「了解。」
と言って、あたしの手を握った。
「じゃあパーティー会場に戻ろうか。もうパーティー終わってるかもだけど。」
あたしはそのままミュリシスさんに連れられて元来た道を戻って行った。

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