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97 記憶に残したいニュースコミュの社説:児童虐待5万件 子育て環境の改善を

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 児童虐待というと殴るなどの暴力が想起されるかもしれないが、もとの英語表記「child abuse」は親権の乱用・誤用(abuse)を意味する。親は幼い子を保護する権限と責務がある。その権限を逸脱して子どもを傷つけることが児童虐待だ。

 10年度に全国の児童相談所が受けた虐待の相談件数は5万5152件(速報値)に上った。東日本大震災の影響で宮城県と福島県、仙台市を除いた件数だが初めて5万件を超えた。前年度比では28・1%増だ。

 児童虐待防止法が成立した00年度の相談件数は1万7725件。この10年で約3倍に増えたことになる。すべての国民に通報義務を課した同法が施行され、潜在的な虐待が表に出るようになったと指摘される。ここ数年は前年比増加率が1けたにとどまるなど鈍化傾向にあり、潜在群も含めた全体像が見えてきたとも言われていただけに衝撃は大きい。

 最近の傾向として発見しにくいネグレクト(育児放棄)や精神的虐待の相談が増えていることが挙げられる。近隣住民や病院、学校などの関係機関の意識が高くなり通告へとつながったケースも多い。今回の10年度速報値は虐待類型の分析が行われていないが、大阪で幼い姉弟がマンションの一室に何日も放置されて死亡した事件(10年7月)の影響で、ネグレクトに対する一般住民の感度の高まりが背景にあるのではないかとも言われる。精神的な傷が深く長期的ケアが必要とされるネグレクトへの対策の強化が求められる。

 一方、虐待そのものが増えているとの見方もある。虐待を生む主な要素は(1)貧困(2)孤立(3)親の未成熟−−と言われるが、若年層の失業や経済的困窮は相変わらずで、家族や地域の結びつきも弱くなっている。1世帯の平均人数は現在2・46人だ。親の未成熟は時代を問わず指摘されてきたが、その親を支える人も親代わりになる人もいないというのが今日的状況なのである。

 課題は山積している。急増する相談件数に対する児童福祉司のあまりの不足。児童相談所に強制介入などの権限も集中させたため本来の福祉的な動きが取りにくくなっているという矛盾。制度面の不備や現場職員のスキルの低下も深刻だ。

 起きている虐待への事後的対応だけでなく、虐待を生まないための子育て環境の改善にも目を向けるべきだ。ただでさえ子育てが難しい時代である。未成熟な親を責めるだけでなく、地域ぐるみで子育てを早期から支援する施策がもっと必要だ。初めからわが子を傷つけたい親はいないはずだ。その原点を忘れてはならない。

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