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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの14

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14




のどかな日



学校祭に向けて、着々と準備は進む。
「おえ〜。」
「うげ〜。」
「窓!窓開けろ!」
昼間からシゼンカーンの部屋は、嗚咽が飛び交う。

「おーい、大丈夫か?」籠球部を手伝いに行っているトゥーマコが心配して見に来た。
シゼンカーンの部屋は塗料の臭いが充満していた。
トゥーマコも顔をしかめる。
「げほ、げほっ。おぅ、トゥーマコ。換気するのを忘れて、看板作っていたから、部屋に臭いが充満してよ。」サクーンが説明する。
五人は朝からサルの絵の看板の店に行き、塗料や備品の買い出しを済ませた。
勢いそのままに、早速看板を作っていたのだが、夢中になり換気をするのを忘れていたのだ。

「う〜ん、ヘイオスのオナラと良い勝負だな。危ない、危ない。」フィロヤが冷や汗を拭う。
「本当に。どっちも九死に一生ものだぜ。」ヤラキが呼吸を整える。
「そんなに僕の爆弾が恋しいなら、嗅がしたるで。」ヘイオスが悪い顔をする。
「あ〜、遠慮しとくよっ!」マサーが焦る。
一同笑う。
トゥーマコは五人が作っていた看板を覗き込む。
「あっちこーこーいぬぐわー?」聞き慣れない言葉だ。
「ホットドッグをウォキナワ語に訳したんだよ。インパクトがあって、人がたくさん来そうだろ?」サクーンが自慢気に語る。
「これはインパクト絶大だな。良いアイデアだぜ。」トゥーマコがサクーンを誉める。
サクーンの鼻が伸びる。

「で、トゥーマコの方はどうなの?」マサーが尋ねる。
「看板作りとかはリョーマたちがやっているよ。俺は一人で調理担当。焼鳥やるとか言っといて、あいつらノープランなんだよな。しかも、味にこだわれとか、注文も多いし。」トゥーマコが苦笑いする。
「ウォキナワ人はほとんどノープランだから、その辺は大目に見てよ。」フィロヤがトゥーマコを励ます。
「それで調理担当のトゥーマコは、今は何をしているんだ?」ヤラキが聞く。
「今は焼鳥のたれを開発してるよ。けど、全然納得出来るものが作れなくて、まだまだ苦労しそうだ。おかげで、こっちの部屋は甘じょっぱい臭いが充満しているよ。」トゥーマコが様子を話す。
「味見は俺たちに任せろよ。」ヤラキが変な張り切りを見せる。
「そういえば、お腹空いてきたね。」マサーがお腹を擦る。
「ん?そっか。気づかなかったけど、もう昼か。」サクーンが窓から空を仰ぎ見る。太陽は天高く昇っていた。もう正午だ。
「よし、一回休んで、続きは午後からにしようや。今日は弁当にしようぜ。」ヘイオスが提案する。
「良いな。リョーマたちも出掛けているし、俺も一緒するぜ。」トゥーマコもついていく。
六人は、学校近くの弁当屋に行き、弁当を買う。
ヘイオス、サクーン、ヤラキ、マサーは中ぐらいの弁当。トゥーマコは一人、一番大きい弁当を買う。そんな中、フィロヤは一番小さい弁当を買う。フィロヤの食は細い。
その帰り道だった。見覚えのある後ろ姿を正門前で見つける。マサカーズだ。
「おーい、マサカーズさ〜ん。」ヘイオスがマサカーズを呼び止める。
「おぉ。君たち。」マサカーズは眠そうな顔をしている。手には弁当を持っている。
「マサカーズさんも学校祭で何かやるんですか?」フィロヤが聞く。
「俺は何もやらないよ。というか、今日授業あると思って学校来たんだけど、学校祭の準備で授業ないことを、教室まで行って気づいてさ。で、しょうがないから、学校の近くの弁当屋で弁当買って家に帰るとこ。」マサカーズが煙草を吸いながら説明する。
「実は俺たち学校祭出るんですけど、マサカーズさんも一緒にやりませんか?」ヤラキがマサカーズを勧誘する。
「ん〜、いや、俺家で寝てたいし。」マサカーズは断る。
「そうですか。」サクーンが残念がる。
だが、ここでまたしてもあの男が動く。
「マサカーズさん、一緒にやりましょ。ね!ね!!」ヘイオスが熱心にマサカーズを勧誘したのだ。
渋っていたマサカーズだが、ヘイオスの勢いに負けて、首を縦に振ってしまった。あまりの押しの強さにマサカーズだけじゃなく、五人も圧倒される。
こうして、新たな仲間、マサカーズが加わることになった。七人はミーティングも兼ね、シゼンカーンの部屋で弁当を食べることにした。

途中、トゥーマコがヘイオスに話しかける。
「凄い勢いでマサカーズさんを引き入れたな。そんなに人手が足りない計算なのか?」トゥーマコが心配する。
「いや、女の子対策や。」ヘイオスが微笑む。
「限られた人数の中で、売り上げを伸ばすには、男女関係なく売らないとアカン。外部から学校祭に来る人が多いとも限らんからな。そうしたときに、女の子たちからの支持を得るには、なんといってもイケメンに限るやろ?長身でイケメンでクールでギター弾けて、煙草吸ってることにより少し影のある、あの感じが女心をくすぐるんや。俺らにはない部分やからな。」ヘイオスが力説する。
「お前には参るよ。」トゥーマコから自然と笑みがこぼれる。
「売ったら売った分だけ、使える金が増えるんや。儲けた金で、あいつらと大騒ぎして、良い思い出作らな。」ヘイオスの目が真剣になる。
ヘイオスの意外な言葉に、トゥーマコが驚く。
「なんや?」ヘイオスが驚くトゥーマコに尋ねる。
「…いや、意外と熱血な部分もあるんだなと思って。」トゥーマコが笑う。
「お前も失礼なやつやな。俺だって燃える時があるっちゅーに。」ヘイオスが呆れつつ、笑う。

太陽よりも熱い男たちは、午後も準備に励むのだった。



一難



学校祭まで、残すところ二日余りとなった。今日も朝から準備に励む。皿やコップなど、備品を買い出ししたり、お客さんが休む場所の椅子や机など、準備が進めば進むほど足りない物が出てくる。だが、男たちは逞しく、困難に立ち向かっていく。

現在シゼンカーンのメンバーは、椅子と机を作るのに躍起になっている。
「ヘイオス、ペンキ借りるよ!」トモヒロがシゼンカーンの部屋にやってくる。
「ええで!あ、あとで、釘欲しいんやけど。」
「わかった!すぐ持ってくるさ。」
「マサカーズさーん、ギター弾いてばかりいないで、手伝ってくださいよ〜!」トンカチを打ちながらサクーンが叫ぶ。
「いや〜、適度に音楽が流れてた方が、作業の効率も上がるだろ〜。」マサカーズが逃げる。
「ひ〜、腕がもげる〜!」フィロヤは朝から木材をノコギリで切り続けている。腕はパンパンだ。
「俺も。ちょっと休憩しようぜ。」ヤラキが汗を拭う。
マサーは真剣な眼差しで、木材に鉛筆で印を付けていく。
そこへトゥーマコがやってくる。
「ついに納得いく味のたれが出来たぜ!」トゥーマコがたれを持ってきた。
「どれどれ…、うまっ!このタレ最高だな。」フィロヤがトゥーマコの作った焼鳥のたれを一舐めする。
続いてヤラキも舐める。
「これなら、売れること間違いない!」ヤラキが太鼓判を押す。

「ふ〜。代表者会議行ってきたよ。あ〜、疲れた。実行委員長の話が疲れる。」マサーが会議から帰ってきた。
「すまないなマサー。籠球部のぶんもお願いしてしまって。」トゥーマコが礼を言う。
「大丈夫。人手が少ないんだから、みんなで協力しないと。会議で決まったことを話すから、みんな集まってくれ。」マサーがみんなを集める。

シゼンカーンの部屋にみんなが集まる。籠球部は買い出しに行っているメンバーを除いて、リョーマとトモヒロ、そして、デーゴがマサーの話を聞きに来た。デーゴは筋肉質な体つきをしている、マッチョマンだ。全員が集合したところで、マサーが話しだした。
「今日の会議で決まったことなんだけど、出店する各団体から、本部から指定された時間に警備を出すことになりました。」
一同、ポカーンとする。
「で、それって何するんだ?」リョーマが尋ねる。
「二人一組で、大学に不審者が侵入しないように警備するんだ。学校祭期間は出入りが自由だから、関係者の把握が難しいから人手が必要なんだって。」マサーが答える。
「で、俺たちが指定された時間は?」ヤラキが尋ねる。
「前日から最終日までの四日間。早朝と夜になったよ。場所は、裏門と、学校近くの馬車の停留場。俺たちは裏門で、籠球部は停留場になってるからさ。」マサーが話す。
「四日間ってことは、四回か。なかなかハードだな。」サクーンが焦る。
「しかも、時間にどおりに行かなかったりしたら、罰金だって。」マサーが思い出す。
「きっつー。店が閉店しても、終われないね。」フィロヤは苦笑い。
「めんどくせー!なんでそんなことするんだよ!実行委員会がそういうのをやるんと違うんか?だいたい、あいつらが仕事してるところ見てないで。始まるまでは忙しかったのかもしれへんけど、最近はずっと本部で漫画読んでるだろ。絶対おかしいで。」ヘイオスは様子を話す。
「ヘイオスの言うことも一理あるな。人数の少ない団体も俺たちだけでは無いんだから、そこは実行委員会がやるべきなんじゃないか?」トゥーマコも疑問に思う。
「そうだよ。それに去年は警備とか一回で良かったのに。今年は四日間毎日なんて…。」トモヒロが困り果てる。
「なんか、今年から変わったみたい。委員長がめんどくさそうな人だから…。」マサーが濁す。
「委員長てのは誰や?俺が抗議しに行ってやる。」ヘイオスの目が血走る。
「ソーマっていう女の人だけど。待てヘイオス。」マサーはヘイオスを止める。「ヘイオス待てよ!」トゥーマコもマサーと一緒になり止める。
「俺たちはここの学生じゃないのに出させてもらってるんだ。それに、俺たちのせいでリョーマたちに迷惑がかかったらどうする?」トゥーマコがヘイオスを説得する。
「ちっ。わかったよ。やるならとことんやってやろうぜ。けど、実行委員長さんが次に不手際を起こしたときは、俺は容赦しないからよ。」ヘイオスが落ち着く。
「どんな困難があっても乗り越えていくのが俺たちだろ?絶対乗り越えてやろうぜ!」ヤラキが檄を飛ばす。
「んじゃ、そろそろ昼だし飯食べようぜ。午後は隣のウォキショー学園にテント借りに行かないといけないからな。」サクーンが笑顔で話す。
「そうだな。俺の作った自慢のたれは、白いご飯にかけても美味しいと思うから、みんな食べてみてくれ!」トゥーマコは自信満々だ。
「お!気が利くな。俺たちも初めての味見だから、楽しみだ。」リョーマがお腹を鳴らす。
「テント重いから、ご飯食べて、腹拵えしないとね。」トモヒロがはしゃぐ。

こうして、学校祭二日前の日も、忙しく過ぎていく。
旅は男たちを人間としても強くした。

その成果を見せる日が着々と近づくのであった。



勝負の朝



今日は学校祭当日。小鳥がさえずりだして間もない早朝。二人の男が目を擦りながら校内を歩く。ヘイオスとマサーだ。二人は早朝四時から六時までの警備を終え、シゼンカーンの部屋に戻るところだ。
「ふぁ〜、眠い。こんな朝っぱらから不審者なんて出るかっちゅーに。」ヘイオスはあくびが止まらない。
「ずっと座ってたけど、猫一匹見なかったね。一日目は夕方から営業だから、お昼まで仮眠をとろう。準備はもうほとんど出来てるし。ふぁ〜。」マサーもあくびが止まらない。
二人がとぼとぼ歩いていると、向かいから身長がでこぼこな二人組が歩いてくる。トゥーマコとヤースーだ。ヤースーは籠球部で、リョーマたちの先輩だ。トゥーマコとは馬が合い、今ではトゥーマコの兄貴分だ。
「おーい、ヘイオス!お前らも朝から警備か〜?」ヤースーがヘイオスに話し掛ける。
「あっ!ヤースーさん!そうなんすよ〜、朝から警備とか参っちゃいますよ〜。」ヘイオスが笑って答える。この二人、トゥーマコ伝いで知り合ったのだが、これまた仲が良い。
「だからな〜。俺も眠いよ。」ヤースーも笑う。
「そういえば、昨日ヤースーさんに教えてもらったダンス、けっこう出来るようになりましたよ!」ヘイオスが廊下で踊りだす。
「おっ!上手やし!よーし、俺も。」そういうと、ヤースーも踊りだす。
二人を見て、トゥーマコとマサーは笑う。
朝から男たちは賑やかだ。

昼過ぎ、テントに材料や器材を運ぶ。シゼンカーンと籠球部のテントは斜め向かいの位置取りだ。
一生懸命作った看板を立て掛け、今日が本番だということを実感する。
ヘイオスたちは炭をおこしつつ、鍋を火に掛ける。
トゥーマコも炭をおこし、開店に備える。リョーマやヤースーたちは手作りのビラを配る準備をしている。
「去年は全然売れなかったから、今年はたくさん売りたいな。」デーゴが意気込む。
「今年はトゥーマコたちもいるから心強いな。」トモヒロが期待する。
「みんなで頑張ろうぜ。頑張った分だけ自分たちに返ってくるからな。」トゥーマコは準備に励む。

こちらはシゼンカーンのテント。
「ヤバい!俺ドキドキしてきたぁ〜!!」ヤラキは興奮を隠せない。
「俺も。たくさん人が来ると良いね。」フィロヤも興奮する。
サクーンは黙々と作業に打ち込む。
「な、なんか、今までになくサクーンに気合いがみなぎっているね。」マサーがフィロヤに話し掛ける。
「確かに。ファットバギーのとき以上に気合い入ってる。」フィロヤもサクーンを見つめる。
「ひっひっひ。お前ら、サクーンのことわかってないなぁ〜。」ヘイオスが後ろで笑う。
「?」
「ケーイが来るのを期待してるに決まっとるやろ。見てみ、水牛並みに鼻息荒いで。」ヘイオスが笑いを堪える。
「な、なるほど。単純だなぁ〜。」フィロヤが笑う。
「そうか、サクーン…。よーし、俺もこの機会に女の子と話せるようにならないと!っし!練習あるのみ!!お、お、お嬢さん。ほっ、ほっ、ホットドッグは、い、いか、いか、いかかかがですか?あーっ、上手く言えない!い、いかがですか?いかがっすかぁ〜??うぉぉぉ、緊張するぅ〜!」ヤラキが吠える。
「こっちも単純だね。」マサーが呆れる。
「ただの変態や。捕まれ、捕まれ。」ヘイオスがため息を吐く。

「きゃ〜、格好良い〜。学校祭で何やるんですが?どこでやってるんですか〜?」ギターを弾いているマサカーズに他の団体の女の子が群がる。
「あそこでホットドッグ売るんだけど、良かったらみんなで食べに来てよ。」
「絶対行きます!」
「あたしも〜!」

「ははっ、マサカーズさんの人気は凄いな。」マサーが脱帽する。
「ま、負けられん!」ヘイオスに火が点く。
「出ました、単純王。」フィロヤがつぶやく。

単純王たちは虎視眈々と準備を進める。そして夕方、開幕の花火が上がる。



ヤラキのご縁



中庭の真ん中にある高台の上では、なにやら楽器演奏などで盛り上がっている。
しかし、客は全くいない。

「うぅ〜、どうなっとんねん。全然客おらへんやん。」ヘイオスはイライラする。
そこにトモヒロがやってくる。
「ヘイオス焦るなよ。毎年一日目はあまり人来ないんだよ。」トモヒロがなだめる。
「俺の計画に初日から狂いが…。あぁ〜。」ナーバスなヘイオス。
「客が来ないなら、呼んでくれば良いんだよ。この辺は小さい子どもが多いから、正門のところで声かけたら、けっこう来てくれるよ!リョーマとヤースーさんはもう行ってるから、お前らも行こうぜ!」トモヒロはヘイオスたちを誘いに来たのだ。
「よし、練習の成果を発揮するときだ!俺は行くぜ。」ヤラキが名乗りをあげる。
「俺も行くよ!なんか面白そうだし。」フィロヤも手を挙げる。
「お前ら二人には任しておけん。俺も行くぜ!」ヘイオスもやる気だ。
「じゃ、いつお客さんが来ても良いように、何個か作っておくね。」マサーはホットドッグ作りに取り掛かる。
「俺も手伝うぜ。」サクーンも残る。ケーイ以外の女の子には興味がないようだ。
「あれ?マサカーズさんは?」フィロヤが辺りを見回す。
マサカーズは木陰でギターを抱えて寝ている。
「……。」
「よっしゃ、行こう!」ヤラキが一番に駆け出す。ヘイオスとフィロヤも続く。その後ろをトコトコとトモヒロが歩いてついていく。

正門に着くと、ヤースーとリョーマが呼び込みをしていた。
「おっ!ヘイオス!お前らも来たか。」ヤースーが声をかける。
「お供しますよヤースーさん!」ヘイオスは調子の良い男だ。
トモヒロの言ったとおり、小さな子どもたちが、学校祭に興味深々でやってきている。
ヤースー、リョーマ、ヘイオスは子どもウケが良く、買ってくれる子を早々と見つけて連れていく。そんな中、ヤラキは苦戦している。
「はぁ〜、全然ダメだ。何が悪いのかな。」ヤラキが嘆く。
「大丈夫、大丈夫。きっとホットドッグを食べたい気分じゃなかっただけだよ。」フィロヤが慰める。だが、フィロヤには原因がわかっていた。ヤラキの顔が引きつっているのだ。これでは客ウケが良いはずもない。

そんなヤラキに転機が訪れる。
「ホットドッグ売ってるんですか?」綺麗なお姉さんが話し掛ける。性格の良さそうな人柄が、雰囲気から滲み出る。
「あ、はい!」ヤラキが裏返った声で返事をする。完全な一目惚れだ。
「どこに行けば良いんですか?」
「あ、あ、あ、ぼ、僕が案内するので、つ、つ、ついてきてください!」ヤラキは緊張しながら、お姉さんを案内する。
フィロヤは緊張しているヤラキが面白そうなので、あとをつける。

ヤラキが緊張した足取りでお姉さんを案内する。緊張で、籠球部のテントの前を通ってもトゥーマコ達には目がいかない。籠球部のテントはヤースー達が連れてきた子どもたちで賑わっている。トゥーマコが慣れた手つきで焼鳥を焼いている。
「お、ヤラキ!お客さん捉まえること出来たのか!良かったな!」トゥーマコはヤラキを見て声をかける。
「ト、トゥーマコ!俺だってやれば出来るんだぞ!」ヤラキはトゥーマコに気づき、返事を返すが、どこかぎこちない。
焼鳥を焼いている網から、大きな炎があがる。
「うわ、あぶない。」トゥーマコが避ける。
「ゴメン、トゥーマコ。油こぼしちゃってさ。」デーゴが謝る。どうやら、デーゴの不注意のようだ。
「さっきの炎見た?危なかったな。」フィロヤがヤラキに話しかける。
「そ、そうだな。そういうことか。」ヤラキが不敵に笑う。
「?」フィロヤは疑問に思う。
ここでヤラキの頭の中を解説しよう。
ヤラキは緊張のため、デーゴの不注意が見えてなかった。しかし、炎があがる瞬間だけはしっかりと反応して視界に捉えた。このため、ヤラキ的にはなぜ炎があがったか理解できずにいた。しかし、ヤラキは大胆な仮説を思いつく。炎。そう、炎と言えば、恋の炎。自分の中で燻ぶっていた、この甘酸っぱい気持ちに反応し、現実に炎があがったのだ。そして、炎は言った。「ヤラキ、この小さな灯火を、大きくするのも、消し去るのも、お前次第だぜ!」と。ヤラキは勝手に思い込む。そうか、俺とこのお姉さんの二人で恋の炎を燃えあがらせろと言っているのだと。
仮説も、思い込みも糞もない。これはただの妄想というものだ。だが、単純王ヤラキに火を点けるにはこれで充分だった。
「さぁ、僕たちの店はすぐそこですよ。」ヤラキがぐいぐい引っ張っていく。
「お、ヤラキ。先に作ってあるのがそこにあるから、それから出してくれ。」客を引っ張ってきたヤラキにマサーが声をかける。
「いや、俺の手作りを出すから、それは別の人に売ってくれ。」そういうと、ヤラキは黙々とホットドッグを作りだす。そして、ケチャップとマスタードを丁寧に塗り、お姉さんに差し出す。
「あ、丁寧にありがとうございます。」お姉さんはヤラキに礼を言うと去っていった。
ヤラキはいつまでも手を振って見送る。
「おい、あいつどうしたんだよ?」サクーンがフィロヤに話しかける。
「う〜ん、よくわかんない。なんかいきなり張り切りだしたんだよな。」フィロヤが首をかしげる。
「ともあれ、ヤラキもお客さんと話すの慣れたみたいだし、良かったんじゃない?」マサーが笑う。
しかし、三人はヤラキの急変がどうも腑に落ちない。
真実を知るのはヤラキのみだった。


呼び込みの成果もあり、一日目はまあまあの売り上げを出すことが出来た。
気持ち良い風が吹く中、夜は更けていく。



突然の再会



学校祭二日目の朝。空は少し曇っている。
朝の警備を終えた、ヤラキとサクーンがシゼンカーンの部屋に戻ってくる。
二人はみんなを起こし、ホットドッグのパンにジャムを塗った質素な朝食を食べる。
「ふぁ〜、眠い。」フィロヤは目を擦る。昨日の夜の警備は、フィロヤとマサーだった。
「今日は何時から開店やったっけ?」ヘイオスがマサーに尋ねる。
「今日は十時からだよ。今日は休日だから、お客さんは多いってトモヒロが言ってたよ。」マサーが話す。
「今日は昨日以上に気合入れていかないとな。」ヤラキが張り切る。
サクーンは黙々とパンを食べる。ケーイが来ることを祈っているようだ。
「今日はセットメニューで押して、がっつしお客の心掴まないとな。」ヘイオスはプランを練る。
「そうだね。トゥーマコ達ともしっかり連携を取っていこう。」マサーが燃えてきた。
シゼンカーンの部屋のドアが開く。トゥーマコが朝の警備を終えてやってきた。
「おはよう。おい、すごいことになってるぞ!」トゥーマコが興奮している。
「何があった?」サクーンが聞く。
「俺たちの店は呼び込みの効果もあって、昨日の売り上げは一番だろうって噂が流れているんだ。けっこう注目されてるみたいだぜ!ホットドッグと焼鳥の店が人多かったって、みんな話していたぜ!」トゥーマコの声が弾む。
「ひっひっひ!どうやらスタートダッシュには成功したみたいやな。」ヘイオスが喜ぶ。
「気を抜かずに今日も頑張ろう。」マサーは気を引き締める。
「この調子で今日も頑張っていこうぜ。」ヤラキが音頭をとる。
「おぉ〜!」

時刻は正午。朝は曇りだったが、すっかり雲はなくなり、良い天気だ。お昼時と言うこともあり、順調に売り上げを伸ばす。
ヘイオスは慣れた感じでホットドッグを売る。
「ホットドッグ食べながら歩いて、またお腹減ったら、向かいの焼鳥屋で焼鳥食べてや!ごっつうまいで!おおきに!」ヘイオスの声が響き渡る。
「向かいのホットドッグ屋も美味しいからよろしくね!」トゥーマコもしっかり宣伝する。
「トゥーマコ〜、また連れてきたぜ〜!どんどん焼けよ〜。」お客を引っ張ってきたリョーマが声をかける。
「わかったぜ。もっと連れてこいよ!」トゥーマコが返事を返す。
トゥーマコは汗だくになりながら、必死に焼鳥を焼く。デーゴはその横で必死に太い腕を振ってうちわを扇ぐ。

「あいつらも頑張ってるな。負けられないぜ。」サクーンは鼻をフゴフゴさせながら、ウィンナーを茹でる。
「おーい、連れてきたぞー!」マサカーズが女の子五人組を連れてくる。
「さすが!」マサーが声をあげる。
「同盟かもしんないけど、俺たちが勝つ!」フィロヤもやる気だ。

良い雰囲気の中、時間は進んでいく。
客の入りは落ち着きをみせる。
「ふぅ〜、少しは落ち着いたかな。」トゥーマコが一休みする。籠球部のテントの中ではヤースーもリョーマもトモヒロもぐったりしている。
トゥーマコはシゼンカーンのテントに歩いていく。中では、みんながぐったりしている。
「よぉ。今日は忙しいな。」ヘイオスが汗を拭う。
「焼鳥焼きながら見てたら、たくさん人が来ていたな。売り上げの調子良さそうだな。」トゥーマコが笑う。
「そっちもね。けど、疲れた〜、くたくただよ。」フィロヤはバテている。
一同は労をねぎらい、しばし談笑する。

だが、汚い大声が耳を突いた。
驚いて外を見ると、見たことのあるような男が、木に登り大声で叫んでいる。
「かき氷はいかがっすかぁ〜?」
目立たんとばかりに、大声を出す。
日焼けした黒い肌、どっしりとした体格、そして、シャツの肩の袖を捲っている姿。

この男は一体……。



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