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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの16

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16



最終日・夕



夕方、年に一度の学校祭のフィナーレに参加しようと、大勢の人が大学に流れ込む。
シゼンカーンも、籠球部も大忙しだ。お客を呼び込む必要などない。むしろ、売り捌くだけで、火の車になっている。空は薄暗くなり、各団体のテントはランタンに明かりを灯す。

そして、このタイミングでサクーンが待ちかねていた人がやってくる。
「あれ〜、あれってサクーン達じゃん!」
「本当だ!イスガキで会ったみんながいるね!」
サクーンの耳は、祭りの騒音の中、敏感に聞き分ける。
サクーンが目を向けた先には、ケーイとナルミーが立っていた。
忙しさの中、サクーン以外はケーイとナルミーがやってきたことに気付いていない。
胸の鼓動が高鳴る。上手く呼吸が出来ない。声を出したくても、言葉を選ぶ余裕すらない。
「あ…、あ…。」立ち尽くすサクーン。

「サクーン何やってるんだ!ウィンナー足りてないぞ!早く茹でて!」マサーがサクーンに声をあげる。ここでやっとマサーもケーイに気付く。
「あ、ゴメン、ゴメン。ウィンナーは俺が茹でるよ。少しサクーンは休憩したら?」マサーが気を使う。ファインプレーだ。

「ん?」ヤラキも気付いた。ヤラキはヘイオス、フィロヤ、マサカーズに小声で話す。
「おい!今、サクーン決戦の最中だからよ!わかってるよな?」
「わかってるよ!」フィロヤが答える。
「おーけー!頑張れよ〜サクーン。」マサカーズは小さな声でエールを贈る。
「ちっ、まぁ今回だけは冷やかさんどいてやるか。」ヘイオスは素直じゃない。

祭りの賑やかさなど関係なしにサクーンの中では時が止まっている。どうすれば良いのかわからない。
そんなサクーンをよそに、ケーイが話し掛ける。
「イスガキで会ってから、すぐに再会出来たね!このお店はサクーン達がやっているの?」
「あ、ああ。」不器用な答えしか出せないサクーン。
ここで、ナルミーがトゥーマコを見つける。
「トゥーマコもお店やってるね!あたし、トゥーマコのところ行ってくるから、ケーイはサクーンと話してて!」ナルミーは焼鳥を焼いているトゥーマコのところに行った。ナルミーはサクーンの気持ちに気づいているわけではないが、今ここに最高の舞台が揃った。サクーンとケーイが、シゼンカーンのテントの前で向き合う。他のメンバーも、忙しい中、サクーンを見つめる。

美女と野獣。二人を形容するのに、これ以上の言葉はない。だが、野獣になりきれないサクーンがいる。気の利いたことでも言いたいが、なかなか言えない。口をもごもごさすサクーンが、野獣どころかカピバラに見えてくる。緊張して鼻を掻く姿が愛らしい。
見つめるメンバーもじれったい。

ここで、意外な男が動きを見せた。
「うちの焼鳥も天下一品だけど、向かいのホットドッグもおいしいよ〜!さあさあ、この機会にご賞味あれ!」焼鳥を焼きながら、汗だくのトゥーマコが大声で叫ぶ。トゥーマコなりの、トゥーマコが今出来る、最大限のアシストだった。
「ふ〜ん。トゥーマコが自分の店より進めるホットドッグか。食べたいな~。」ケーイが可愛くつぶやく。
ヘイオスもトゥーマコに続く。
「うちの店で一番ホットドッグ作るの上手いの、サクーンなんやで。サクーンに作ってもらいーや!」
「へぇ〜、そうなんだ。サクーン料理作るの上手なんだね。」ケーイの中でサクーンへの好感度が上がる。
「サクーン、ケーイに作ってあげなよ!」フィロヤがサクーンの背中を押す。
「わ、わかったよ!」サクーンが力強く返事をする。サクーンの中で何かが吹っ切れたようだ。みんな、俺なんかのために、ありがとな!サクーンが心の中でつぶやく。
サクーンがウィンナーを茹でるため、鍋に向かう。
その姿を見て、一同、拳を握る。
トゥーマコも遠目にサクーンの姿を見て、ほっとするのだった。

「ケーイ、何個食べる?何個食べるかで、何本茹でるか決まるんだけど。」サクーンが緊張を隠すように、クールぶる。
「え〜とね〜、三つもらって良い?」ケーイが三本、指を立てる。
ん、三本?ケーイとナルミーで、三個も食べるのか。なかなか大食いだな、と一同気にも留めずに呑気に思う。


「今日はケーイと二人で学校祭回っているの?」ナルミーにトゥーマコが尋ねる。
「今日はね〜、ケーイの彼氏と三人だよ!」ナルミーが答える。
「え?」トゥーマコは声が詰まる。
「あ、ほら、あそこにいるのがケーイの彼氏だよ。こっち、こっち〜!」ナルミーが、中庭に向かって手を振る。
トゥーマコは変な汗が止まらない。


「ほら、出来たぞ。熱いうちに食べれな。」出来たてのホットドッグとは逆に、あえてクールにサクーンが振る舞う。
「ありがとうサクーン!」ケーイが渾身の笑顔で礼を言う。
サクーンは思いっきり照れたいが、あえてクールに我慢する。
その時だった。
「おーい、ケーイここにいたのかよ。探したぞ。」男がケーイに親しげに話し掛ける。横にはナルミーが立っている。
一同、嫌な予感がする。
「ゴメン、ゴメン。友達がホットドッグ売っててさ。ほら、あんたの分も買ったよ。」ケーイは男に一つ、ホットドッグを手渡す。
「あの〜、こちらの方は?」フィロヤが恐る恐る尋ねる。
「あたしの彼氏です。今日うちの学校祭に来たいって言い出して。」ケーイが照れつつ紹介する。
「そ、そうなんや〜。」ヘイオスが愛想良くしておく。サクーンの顔を見れない。
「じゃ、みんなまたね。サクーンありがと。」ケーイは礼を言うと、彼氏とナルミーと三人で去って行った。

一同は言葉を失う。トゥーマコは不安げな表情で、シゼンカーンのテントを見つめる。サクーンは一人、空を見上げる。薄暗い夜空だ。黒とオレンジが混ざり合いそうな中で、キラキラと輝く星が綺麗だ。だが、ウォキナワの夜空を飾る満天の星空を、サクーンは涙で見ることが出来なかった。

サクーン、散る。



最終日・夜



中庭では、エイサー部によるエイサーが始まり、学校祭がいよいよ大詰めを迎える。三線、太鼓の音がウォキナワ人の心を揺らす。大学の中は最高に盛り上がる。
そんな中、周囲の盛り上がりとは対極にいる男がいる。サクーンは一人、立ち尽くす。
悲しみに暮れる背中を見ると、誰も声をかけることが出来ない。

サクーンは必死に涙がこぼれないように、顔を上向けている。堪えれば、堪えようとするだけ、余計に涙が溜まっていく。あの兄ちゃん大丈夫か?と、子どもたちに指をさされるが、今のサクーンは何も感じない。
サクーンの目から、涙が溢れ落ちそうになったとき、サクーンのケツを強烈な蹴りが襲う。
「あがぁっ!」サクーンが悲鳴を上げる。お尻を押さえながら振り向くと、そこにはヘイオスがいた。
「何さぼってんねん!ここからが最後の詰めって時やのに。サクーン根性見せろや。戦いはまだ終わってない。泣くのは、最後まで売り切ってからや。お前の仲間は、お前を待ってるで!」ヘイオスが熱く語り掛ける。ケーイのことは敢えて慰めず、今やるべきことを促す。仲間だからこそ、厳しく叱咤激励する。
「お前は一人やない。仲間がおるやんか。」ヘイオスが辺りを見回す。
正気に戻ったサクーンが、シゼンカーンのテントに目を向ける。
ヤラキ、マサー、フィロヤ、マサカーズが微笑む。
籠球部の方にも目を向けると、トゥーマコは拳を握りしめ、サクーンに無言のメッセージを送る。
横にいるリョーマが、ニヒルな顔をして、ドンマイっといったようなジェスチャーをする。

泣いてる場合じゃない。気持ちを切り替え、サクーンが袖で涙を拭いた。
「ちっ。俺としたことが、弱きになっていたぜ。」サクーンが精一杯強がる。
「ふん。ほな行くで。みんなでラストスパートや!」ヘイオスが歩を進める。
「おぅ!」サクーンも走って持ち場につく。
サクーンは恋に敗れた。だが、仲間の存在を再確認し、少し大人になれたサクーンがいたのだった。

閉店まで、残すは一時間。客足が減りだした。家路に就きだしたのだ。
「おい、ヘイオス!パンはまだあるのに、ウィンナーが無くなってしまったぞ。どうする?」ヤラキが焦る
「パンの在庫も残りわずかやな…。」ヘイオスが残ったパンを見つめる。
「あともう少しで売り切れるっていうのに。」フィロヤが悔しがる。
「あれをやるしかないな。よし、最後の勝負に出るで!」ヘイオスがつぶやく。
「おーい、トゥーマコ!あれをやるで!!」ヘイオスがトゥーマコに叫ぶ。
「あれか!わかった!こっちも在庫は少しだ。」トゥーマコも叫ぶ。
「何をするつもりなんだ?」マサーがヘイオスに聞く。「今こそ同盟の真の力を発揮するとき。市場が停滞しだしたときに求められ、逆転を狙う、最後のワンピース。それは何やと思う?」
「?」
「最後の最後は、ずばり意外性や!」ヘイオスが自慢気に笑う。
そこにトモヒロが、焼鳥を抱えてやってきた。焼きたての焼鳥を冷まさないようにと、息を切らしている。
「はぁ、はぁ。トゥーマコに言われて、全部持ってきたぞ!」
「ん、焼鳥?」フィロヤが首をかしげる。
「これこそが同盟の真の意味であり、最後の切り札や。焼鳥サンド…、いや、焼鳥ドッグや!」ヘイオスが目を輝かせる。
「これが同盟の真の意味…!」マサーが驚く。
「そう。これが切り札さ。」トゥーマコもやってきた。
「ヘイオスが最後の切り札として発案したのは良いが、味の調整には苦労したぜ。ヤースーさんやリョーマたちに味見してもらいながら、毎晩試行錯誤したんだぜ。これなら絶対に負けない自信がある!」トゥーマコが胸を張る。
「ただの売り切り狙いだろ。さっさとパンに挟んで売りにいこうぜ。」疲れきっているサクーンが焼鳥をパンに挟む。
「ふっふっふ。俺がそれだけで終わらせると思ってるのか?」トゥーマコが笑う。
「さすがトゥーマコ。何か仕掛けがあるんだね?」マサカーズが尋ねる。
「はい。焼鳥ドッグの隠し味。それがこれです。」トゥーマコはテーブルからある物を手に取った。
「マスタード…?」一同きょとんとする。トゥーマコが手に取ったのは、ホットドッグを買った人用にセルフサービスで置いてあるマスタードだった。
「焼鳥のジューシーさ、ほかほかのパン、食欲をそそるたれの甘味。この三つを融合させ、なおかつ完成度を高めてくれるのが、マスタードの酸味と辛味なのさ。みんな、味見してみてくれ!」
一同、トゥーマコの指示通りに作った焼鳥ドッグを一口ずつ頬張っていく。納得、説明不要の美味というものが、そこにはあった。
男たちはありったけのパンを焼鳥に挟み、それぞれ焼鳥ドッグを手に持ち散って行く。最後の一つを売るまで、全力で駆け抜ける。

そして、学校祭が閉会を迎える。後片付けが始まる中、各団体のテントからは、売れ残りを嘆く声がちらほら聞こえる。
しかし、シゼンカーンと籠球部のテントの中の様子は違った。テントの中にごみはない。売れ残りで晩ご飯を済ます様子もない。あとは機材を片付けるだけだ。
学校祭が終わった瞬間、体が悲鳴を上げる。だが、心の中は爽快だった。やりきった、何とも言えない充実感に包まれている。

こうして、激動の一週間は過ぎ去った。



後片付け



学校祭翌朝、メンバーの中では一、二を争う寝坊キャラであるフィロヤが、珍しく一番に目を覚ます。体が重い。体に疲れが残っている。ぼーっとしながら、昨日のことを思い出す。
最終日の営業終了後、手に持てるような軽い機材や荷物だけをシゼンカーンの部屋に運んだ。近隣の住人に騒音で迷惑をかけないための配慮で、翌日の日中にテントや大きめの器材を撤去するのだ。
くたくたになりつつシゼンカーンの部屋に荷物を持っていくと、部屋からギターを弾く音が聞こえる。中を覗くと、マサカーズが学校祭中に捕まえたファンを相手にミニライブをしていた。迷惑極まりないが、怒る気力もない。頃合いを見て、女の子を帰らすと、明日の集合時間の確認をした。正午までに全ての片付けを終わらす必要があり、出来なければ罰則があるのだという。
その後、じゃんけんに負けたフィロヤは、ヤラキとともに警備に行く。テントや備品はまだ外に起きっぱなしなので、最終日の夜も警備が必要なのだ。
フィロヤとヤラキが警備を終えて帰ってくると、みんなはいびきを掻いて寝ていた。疲れていたので、フィロヤとヤラキもすぐに眠りに就くのだった。
疲れたではあったが今までにない体験が出来たと、フィロヤが昨日のまでの長い日々を振り返っていると、トゥーマコが目を覚ます。
「んあ〜、今何時くらい?」トゥーマコがフィロヤに尋ねる。
「たぶん〜九時過ぎってところだと思う。」フィロヤが答える。
「やばっ!籠球部の片付け行かないといけないから、俺もう行くわ。フィロヤもこいつら起こしてな!そろそろ外に出て片付けないとお昼までに間に合わないぞ。」そういうとトゥーマコは部屋を飛びだして行った。
フィロヤは寝ている四人を起こす。
しぶしぶ四人は起きる。そこへ眠そうな顔をしたマサカーズもやってくる。朝食を軽くとり、六人はテントに迎う。
籠球部はせっせと片付けを進めている。ジョータの店も片付けが進んでいる。出遅れたようだ。
ヘイオスたちも急いで片付けに取り掛かる
前日までの疲れが残っており、なかなか片付けのペースが上がらない。だが、罰則が怖いのでお昼までにはと、力を合わせて頑張る。
テントの中の物を全て片付け、残すはテントのみとなった。
「あれ?このテントどうするんだっけ?」サクーンがマサーに聞く。
「そういえば、実行委員会の方からは何も言われてないな。」マサーが思い出す。
「隣のウォキショー学園に戻しに行くんじゃないのか?」ヤラキが尋ねる。
「たぶんそうだけど、そのわりには他の団体も片付けてないから、なんか変な気がするんだよね。」マサーが辺りを見回す。他の団体もテントはまだ片付けてはいない。だが、テントの後始末に困っているような顔をしている。
そこにトゥーマコがやってくる。
「マサー、テントの片付け方聞いてる?」トゥーマコもテントの片付けについてわからず困っている。
「いや、何も言われてなかったと思うんだけど。」
「そうか。他の人たちにも聞いてみたんだけど、みんなわかんないみたいでさ。けど、片付け終わらなかったら罰則あるだろ。これじゃ、どうにも動けないよな。」トゥーマコが困る。
「こうなったら、実行委員会に直接行くしかないだろ。」サクーンが提案する。
「そうやな〜。このままズルズル午後も片付けしたくないし。」ヘイオスは疲れている。
「早く終わらせよう。もう疲れが限界だ。」ヤラキもぐったり。
「それに、このあとウィンナー卸してくれたお肉屋さんに借りた鍋も返しに行く約束あるよ。」フィロヤが思い出す。
ウィンナーを茹でる大きな鍋が見つからずにいた時、たまたま相談したお肉屋が貸してくれたのだ。
「わかった。俺が実行委員会に聞いてくるよ。」マサーが手を挙げる。
「俺も行くよ。」トゥーマコもマサーについていく。

二人が実行委員会に直接聞きに行ってから、半刻ほど経つ。なかなか帰ってこない。
「あ〜、こんな暑い中またされたら死んでまうで!」ヘイオスはイライラが募る。
「もう帰りたいな。」ヤラキが額の汗を拭う。
「ごめん。俺昼から用事あるから帰るわ。最後まで手伝えなくてごめんね。」マサカーズは用事があるので帰っていった。
重苦しい空気が漂う。
「お待たせ〜。」マサーが帰ってきた。
「何て言ってた?」サクーンが尋ねる。
「実は…。」マサーが実行委員会でのことを話す。トゥーマコとマサーが実行委員会に行くと、二人以外にもテントの片付けについて聞きに来た人たちで実行委員会はいっぱいだった。大勢の人が、実行委員会の男を取り囲む。実行委員の男はやってきた人たちを前にビビりながら説明する。実行委員長がテントについて専門なので、自分はわからないと。だったら実行委員長を連れてこいと、怒号が飛び交うが、とんでもない返答が飛び出す。テントの責任者である実行委員長が大学に来ていないのだと。だから僕らは片付け方がわからないのでお引き取りください、と言われてマサーとトゥーマコは帰ってきたのだった。
「ほな、俺らのせいちゃうから、もう戻ろうぜ。事故かなんかに巻き込まれてない限り、責任は来てない実行委員長が取るべきやろ。」ヘイオスは歩きだす。
「そうだな。指示わかんないなら、下手に動かすよりはそのままの方が良い。」サクーンもシゼンカーンの部屋に迎う。みんなもどうしようもないので帰っていく。
他の団体も帰路につく。
五人がシゼンカーンの部屋でくつろいでいると、トゥーマコも戻ってきた。籠球部のテントはそのままだという。

近くの弁当屋で弁当を買ってきてお昼を済まし、じゃんけんをしてお肉屋に鍋を返しに行く人を決める。トゥーマコとヘイオスが勝ったので、あとの四人は少し休んだあと、鍋を返しに行くのだった。
やっと辿り着いたひと時の平穏を、トゥーマコとヘイオスは横になりくつろぐ。

しかし、事件はその後起きた。



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