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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの15

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15




正体



ウォキナワ大学の正門を潜ると、大学のシンボルとも言うべき大きなガジュマルの木が立っている。ガジュマルは熱帯地方に分布する、常緑の高木だ。昔からウォキナワでは、ガジュマルの大木にはキジムナーが住んでいるといわれる、縁起の良い木だ。しかし、そのガジュマルに登り、大声で叫ぶ男がいる。
「かき氷はいかがっすかぁ〜?そこの人!うちのかき氷食べていきなよ!」
男は通りがかる人に声をかけるが、目を逸らされて相手にされない。それどころか、通行する人々は走って逃げていく。

「ん?あ、あいつは!」ヘイオスはこの男に見覚えがある。いや、シゼンカーンのメンバーもトゥーマコも、この男には見覚えがある。
サクーンがトングを落とす。
「う、嘘でしょ?だって、あいつはあの時…。」フィロヤが言葉を失う。
「そうだ。たしかに俺たちはあの時あいつを倒したはずだ。」マサーは冷静を装う。
「復活したって言うのか?」ヤラキが動揺する。
「そうだとしたら、また倒すしかない。」トゥーマコが包丁を握る。
「くそ!こんなタイミングで!伝説の武具が揃ってないのに。」サクーンが悔やむ。
「だが、やるしかない。自分たちを信じるんや!俺たちが食い止めな、多くの人が犠牲になる。」ヘイオスが決意を固める。

日焼けした黒い肌、どっしりとした体格、そして、シャツの肩の袖を捲っている姿、空気の読めなささ。どれ一つとっても、男はファットバギーと瓜二つだった。

一同は臨戦態勢をとる。そこに、トモヒロとリョーマがやってくる。
「やったぁー何してるば?」リョーマが話し掛ける。
「二人はさがっていて!最悪な悪魔が復活したんだ。」マサーが指示する。
「悪魔?何言ってるば?まぁ、たしかに悪魔みたいなやつだけど。」トモヒロが笑う。
「あいつを知っているのか?」トゥーマコが尋ねる。
「ああ、あいつ人文学部のサモハンだろ。いつもあんなことして目立とうとしてる、まあまあ学校で有名な迷惑野郎だぜ。」リョーマが解説する。
サモハンからはファットバギーのような邪悪さは感じられない。一同はホッと胸を撫で下ろす。
「なーんだ。そっくりさんってことか。」フィロヤが安心する。
「それにしても似過ぎやろ。あれはあかんで。」ヘイオスが冷汗を拭う。
「世界に三人は似てる人がいるって言うもんな。」トゥーマコが笑う。
「サクーンの場合、人以外だったら数えられないほどおるで!はっはっは!!」ヘイオスが大声で笑う。
「おい!」サクーンが顔を真っ赤にして怒る。

一同が談笑していると、シゼンカーンの店の前にいる女の子たちがサモハンに指をさしコソコソと話している。
「あっ!またあいつ木に登ってるよ!何回目?」
「え〜、あれで自分のこと格好良いとか思ってるのかな?」
「なんでも、法律学部のアラレって子にラブレター二十枚もあげたらしいよ。」
「本当〜?こわ〜い!!」
「この前、不良に勝ったとか、嘘ついてたらしいよ!」
「それ知ってる!放火したとか、女に金貢がせたとか、裏社会に先輩がいるとか、暇さえあれば嘘ついてるんでしょ。」
「とりあえず彼女欲しくて、留学生の女の子と言葉もわからないのに付き合ったんだって!」
「最低〜〜〜!!!!」

どうやらサモハンは、ファットバギーに負けず劣らずの残念なやつのようだ。
コソコソ話を聞いてしまった一同もサモハンの残念さに苦笑いだ。
すると、サモハンがこちらを向く。そして、手を振って叫ぶ。
「リョーマぁ〜!」
サモハンが顔見知りとばかりに、リョーマに向かって手を振る。
「え、何?籠球部のあの人、サモハンの友達なの???」
店の前にいる女の子たちも、その光景を見て引いてしまう。
「し、知り合いなのか?」トゥーマコが軽蔑の眼でリョーマを見る。
「違う!違う!!全然知り合いじゃない!喋ったこともないし!!」リョーマは全力で全否定する。半端ない焦り方だ。本気だ。
それを見て、一同笑う。
「こんな巻き添えの仕方嫌だ~!」フィロヤが笑う。
「わぁーの名前呼ばれんくて、良かったやっさー。」トモヒロがホッとする。
「人ごとだと思いやがって!」リョーマがトモヒロを小突く。

一同はさらに笑う。

「おーい、戻ろうぜ〜!」男がサモハンを呼び戻しに来た。
「わかった!降りるよ〜。」
サモハンはガジュマルの木を降りて、男ともに歩いて去っていく。
それを見て、トゥーマコ、ヘイオス、サクーン、ヤラキ、マサーは一瞬で笑いが止まる。
仲間の男も、ナーゴで戦ったホクロにそっくりだった。笑えない。

「似てる人っているもんだな。」ヤラキは呆然とする。
「おいおい、他人のそら似って、こんなに高確率か?」サクーンが話す。
「まぁまぁ、落ち着いて。たぶん、そっくりさんだよ。たぶんね。」マサーがなだめる。
「いつでも戦う準備はしとかな。一応。」ヘイオスは固唾を飲む。
「い、一応な。」トゥーマコも表情が固まる。


今日のウォキナワの午後は、いつもより涼しげな風が吹くのだった。



秘策



サモハンはファットバギーのそっくりということで、一同は一安心する。それぞれ、夕方の繁忙期に備え準備をしていると、中庭が何やら騒がしい。
「おい、アグー!アグー!お前だよ!お前!見ていて暑苦しいんだよ!!」
トゥーマコがテントの中から中庭を覗く。すると、多少ふくよかではあるものの、そこまで酷い言われ方をされる理由もない女の子に向かって、男が三人笑っている。横の二人は普通の体型をしているが、真ん中の男はかなりのデブだ。ファットバギー以上の太り方をしている。どちらかと言えば、このデブの方がアグーにそっくりだ。鼻は豚そのものだ。その男が今度は違う女の子に向かって言い放つ。
「ブス!そこのブス!!おめーだよ!そんな顔して生まれてきてるんじゃねーよ!」そう言うと男たちはゲラゲラと笑い去って言った。罵声を浴びせられた女の子たちは泣き崩れている。
トゥーマコが拳を握り締め、中庭に行こうとすると、ヤースーに止められる。
「やめておけ。殴った拳の方が腐るほどの、クズたちだ。それに、何か問題を起こすと学校祭が中止になるぞ。お前は良いかもしんないけど、それを良く思わない人たちもいるんだ。」
「…わかりました。で、さっきのやつらは誰なんですか?」トゥーマコがヤースーに尋ねる。
「あったぁー(あいつら)は最近学校に入学してきたやつらさ。真ん中のデブは、ウォキナワ人じゃないらしい。その横にいたのは、あのデブの手下みたいなもんさ。」デーゴが説明する。
「いっつもあんな感じで、威張り散らしているんだよ。悪い噂しか聞かないな。あのデブは相当な金持ちで、金に物を言わせて遊び歩いているらしい。なんであんなやつが大学に来ているんだか。」ヤースーが残念がる。
「悪意があるってとこに関しては、サモハンより性質は悪いな。授業態度も悪いし。」リョーマが説明する。
そこにヘイオスがやってくる。
「おぉ!さっきのやつ見たか?女の子相手に酷いことするで。懲らしめてやらんとな。」ヘイオスは鼻息が荒い。
興奮するヘイオスをヤースーとトゥーマコが必死に止める。
「おいヘイオス!お客さん来出したぞ。早く捉まえに行こうぜ。」ヤラキがヘイオスを呼びに来た。
「ちっ。あんなやつ、学校祭じゃなかったらすぐにケチョンケチョンにしたるのに。」ヘイオスは悔しそうにシゼンカーンのテントに戻っていく。

ヤースー達も作業に戻る。しかし、トゥーマコは豚っ鼻の男にただならない胸騒ぎを感じていた。確信には至らないが、ファットバギーと相対したときのような、邪悪なまがまがしさを感じたのだった。自分の思い過ごしであれば良いと考え、トゥーマコも作業に戻るのだった。

その後、学校祭二日目も、順調に進んでいった。客足は途絶えることがないまま、終了時刻を迎えた。初日など比べ物にならないほどの忙しさだった。

初日を遥かに上回る売り上げに、シゼンカーンのテントは大盛り上がりだ。男たちは喜びのあまり、疲れも忘れる。
しかし、浮かない顔の男が一人いる。サクーンだ。今日もケーイは来なかった。だが、サクーンは下を向かない。明日は、明日こそは、きっと!と、みんなにばれないように一人拳を握り締めるのだった。
夜は更けていくが、一日はまだ終わらない。夜の警備が残っているのだ。
シゼンカーンのメンバーからは、マサカーズとサクーンが行くことになった。サクーンはマサカーズに恋の指南を受けようと、躍起になっている。


「おぉ〜!良い!良い!良いっ!」
夜の廊下に、シゼンカーンの部屋からヤラキの声が響き渡る。
「ど、どうした!?」トゥーマコは慌ててドアを開ける。警備がなかったので、籠球部で明日の仕込みをしていた。今日の売り上げを見て、明日の準備に余念がない。
ドアを開けたトゥーマコは目を丸くする。
視線の先には、三人の美女?がいた。ヤラキは横で笑い転げる。
「うっふーん!どうかしら、トゥーマコ?」
「あたしたちに惚れちゃうー??」
「もう、トゥーマコったらおませさんなんだから。キャーっ!」
「スカートの中は有料ですよ〜?」
「ぱふぱふしちゃう〜??」
三人の美女?たちの悪ふざけを見て、トゥーマコは唖然としていた。
トゥーマコの目の前にいたのは、女装をしたヘイオス、マサー、フィロヤだった。かつらから覗く、日焼けした男の顔が気持ち悪い。
「どや、トゥーマコ!明日の秘策は?」肩幅がしっかりし過ぎで、気持ちの悪いヘイオス嬢が尋ねる。
「お、俺は嫌だって言ったんだけどヘイオスが着ろっていうんだよ。」マサーは照れる。
「いやいや!マサー、ノリノリだったじゃん!」女以上に細いフィロヤがマサーに突っ込む。
「明日の秘策って…。お前らずいぶんな賭けに出たな。」トゥーマコは言葉が出ない。
「さっきゴミを捨てに行くとき、ゴミ捨て場で見つけたんや。明日の一番の注目は俺らが貰ったで!」かつらを外し、ヘイオスが自慢気に誇る。
「これで売り上げ倍増間違いなし!」フィロヤは根拠のない自信を振りかざす。
「良い!良いよ!明日も頑張ろう。」ヤラキは意味のわからないテンションだ。
「とりあえず、その汚いスネ毛とワキ毛を何とかしろ。」トゥーマコは目を当てられない。
トゥーマコは呆れ顔だが、ヘイオス、マサー、フィロヤの三人は頼もしいほどにノリノリだ。
「あなたたち〜、明日も売って、売って、売りまくるわよ〜!!!」ヘイオスが奇声を発す。

シゼンカーンの部屋は深夜まで笑い声が絶えないのであった。
そして、予測不能の最終日がやってくるのだった。



最終日・朝



シゼンカーンの部屋に差し込む日の光でトゥーマコが目を覚ます。辺りを見回すと、マサーとフィロヤがいないことに気づく。今日の朝の警備担当はマサーとフィロヤなのだ。トゥーマコは歯を磨きに行く。磨き終え、戻ってくると誰かのうめき声が聞こえる。
「うぅ〜、うぅ〜、ううぅ〜。」
聞くだけで、寝苦しさの度合いが想像出来るほど、低い声。正体はサクーンだった。
トゥーマコはサクーンを起こす。
「おい、おい!大丈夫か?」
「あ、ああ。」サクーンが目を覚ます。サクーンの顔は汗まみれだ。
トゥーマコは一瞬脳裏に水浴びをしたカバが浮かんだが、今は心の中にそっとしまっておく。
「だ、だ、大丈夫か?ひ、酷く、うなされていた、よ。」トゥーマコは必死に笑いを堪えている。
「ちょっと嫌な夢を見てよ。はぁ。寝た気がしない。」サクーンはボーっとしている。
「もぉ〜、朝から何なん?」ヘイオスが目を覚ます。ヘイオスに続いてヤラキも起きる。そこへタイミング良く、マサー、フィロヤも警備から帰ってきた。
「凄い汗だな。サクーン何かあったのか?」フィロヤがサクーンを心配する。
「お前らのあの気持ち悪い格好が夢に出てきたんだよ!あ〜、気持ち悪い!」サクーンが汗拭う。

昨晩、サクーンとマサカーズが警備を終えて帰ってくると、女装をした三人がサービス精神たっぷりで二人をお出迎えしたのだ。
マサカーズは警備が終わったことを告げると逃げるように自宅に帰ったが、サクーンはノリノリの三人の悪ノリに深夜まで付き合わされたのであった。
「そうだったのか。ゴメン。」マサーが謝る。
「もぅ、サクーン、そんな夢の中でまで僕のこと考えちゃって。ほんなら、今から夢の続きしよか?」ヘイオスは朝から悪ノリだ。サクーンに抱きつく。
「うっせー!俺から離れろー!!」サクーンの叫びが校内に響いた。

朝食をみんなで済ませた一同は、準備に取り掛かる。籠球部に準備に行っていたトゥーマコが様子を見にシゼンカーンの部屋にやってくる。
「あれ?サクーン一人か?」シゼンカーンの部屋にはサクーンしかいない。
「おう。あいつら最後の支度があるからって、どっか行ったぜ。」サクーンは黙々と作業する。
「昨日はドンマイだったな。俺も最初見たときは声が出なかったぜ。」トゥーマコがサクーンに声をかける。
「俺の予定じゃ、夢の中でケーイと話すときのイメージトレーニングをするつもりだったのによ。まさか、あいつらが出てくるとは…。」サクーンは残念がる。
「今日はケーイが来ると良いな。時間が合えば、ケーイを誘って二人で一緒に学校祭回ってみたらどうだ?俺が暇だったらサクーンの代わりに手伝いに行くよ。」トゥーマコが提案する。
「いや〜、ヘイオスたちが何て言うかな。てか、ケーイを誘えるほどの勇気がないぜ。」サクーンが臆病になる。
「俺たちはあれだけの旅をして、命を懸けてファットバギーと戦ったんだぜ?他に出来ないことはないはずだろ?勇気を形作る材料は俺たちには揃っているんだ。あとは、勇気を作るも、作らないも、自分次第だぞ!」トゥーマコがサクーンを勇気づける。
「勇気を作るか…。良い言葉だな。よーし、やってみるか!ありがとうなトゥーマコ。お前の誠実さには、いつも救われてるぜ。」サクーンがトゥーマコに礼を言う。
「誠実?初めて言われたぜ、そんなこと。誠実っていうのも良い言葉だな。ありがとよ!」トゥーマコが照れる。
「ケーイとデートか。本当に夢のような話だな。何か買ってプレゼントしてあげたいぜ。」サクーンが妄想する。
「サクーン気をつけろよ。女は怖いぞ。俺、昔良い雰囲気になった人がいて、プレゼントを送ったことがあるんだ。俺の地元は寒いから、友達の薦めもあって手編みの靴下をあげたんだが、ものの見事にフラれたんだ。女は何を考えているのかわからん。冷え性には靴下が合うと思ったんだけどな。」トゥーマコは昔を思い出す。
「そんな、悲しいエピソードがあったのか。わかった、んじゃ靴下はアウトだな。俺も慎重に選ぶぜ。」サクーンが真剣にトゥーマコの話を聞く。

「おっ待たぁ〜!」
そこに、女装した三人が帰ってきた。
トゥーマコとサクーンは驚く。
部屋の入り口には、髭やムダ毛を剃り落とした三人が立っていた。
「どうかしら?」マサーが控えめに尋ねる。眼鏡が知的な女の子を演出している。
「き、昨日とは別人だな。」トゥーマコは驚きっぱなしだ。毛を剃ったことによって、三人はその辺の女の子よりも、ずっと綺麗になっていたのだ。
「そやろ!そやろ!毛ぇ剃るのに、えらい苦労したもん!」ヘイオスは喜ぶ。髭を剃ったことによって、顔立ちがくっきりした元気な女の子な感じだ。だが、肩回りは相変わらずごつごつしている。
「けど、明日ぐらいから、チクチクしそうだね。ワキとか。スースーするのが変な感覚だ。」フィロヤは苦笑いだ。
「毛はまた生えるけど、金は今日しか稼げないんじゃ!肉を斬らせて骨を断つ。それぐらい、ええやろが!」ヘイオスは無理矢理フィロヤをフォローする。
「おーい、お前ら、自分の毛ぐらい片付けろよ〜!」ヤラキが部屋にやってきた。
「剃るのも手伝わせて、後片付けもさせるなんて、ひどいぞっ!」ヤラキが三人に怒る。
「ゴメ〜ン!トゥーマコとサクーンに早く見せたくて。」フィロヤがヤラキに謝る。
そこにマサカーズもやってくる。
「おぉ!昨日とは見違える完成度の高さ。やるね〜!」マサカーズも三人を認めた。
「フィロヤとか、後ろから見たら完全に女だぜ!」ヤラキも褒める。
「俺の細さもここで役立ったか!」フィロヤが喜ぶ。
「お前らその調子で、人たくさん連れてこいよ。じゃないと、俺の苦しみが報われないからな。」サクーンが声をかける。
「えらそーに。」そう言いつつも、ヘイオスはサクーンと拳を突き合わせる。素直じゃないやつらだ。

「よし、行くかっ!」ヤラキが荷物を持って、外へ飛び出す。一同も颯爽とテントに向かう。

最終日の幕が開けた。



最終日・昼



時刻は三時。ウォキナワを照らす太陽の日差しは弱まるどころか、さらに強さを増しているように感じる。祝日、そして最終日ということもあり、昨日以上の忙しさに見舞われている。客足は途絶えることもなく、何より壮絶さを物語るのが、用意してあった材料が無くなってしまったことだ。
シゼンカーンのテントを覗くと、女装三人組が忙しくホットドッグを作っている。マサカーズは一人、入口付近でお客さんに声を掛けている。女装三人組が店番を担当している間、サクーンとヤラキは買い出しに出掛けているのだった。女装効果、そして、マサカーズ目当ての女性客が後を絶たない。
もっと酷いのは籠球部。トゥーマコがただ一人残り、延々と焼鳥を焼いている。味にこだわったことが功を奏し、リピーターの来店が目立つ。

「ふぃ〜、ちょっと休憩〜。暑さで死んでまうわ〜〜。」ヘイオスは熱気にやられ、椅子に座りへろへろになっている。
「今日が一番暑いんじゃないかな。適度に水分補給しないと。」フィロヤが水を飲む。
「おい!股!股っ!!」シゼンカーンのテントの向かいの、籠球部のテントからトゥーマコが叫ぶ。
「あ、ほんまや!すまん、すまん。」ヘイオスは大股開きで座ってしまい、トゥーマコの角度から丸見えだったのだ。
「トゥーマコ〜、一人で大丈夫〜?」マサーがウィンナーを焼きながら話し掛ける。
「何とかな〜。今の時間しか買い出しに行く暇無いってトモヒロが言ってたし、夜はもっと忙しいみたいだから、あともう少しだけ頑張るよ!」トゥーマコが気丈に振る舞う。
「トゥーマコは何だかんだで凄い働き屋さんやな。しっかし、ほんまにこの暑さには参るで〜。」ヘイオスがうちわを扇ぐ。

「君たちのところは忙しそうだね。」
シゼンカーンのテントの横のテントの団体の男がヘイオスに話し掛ける。この男の名はジョータ。ジョリジョリという音が、今にも聞こえてきそうな青髭が特徴的な男だ。ジョータ達の団体は天ぷらを売っている。
「まあまあっすわ〜。そっちの調子はどうっすか?」
「いや〜、全然だよ。この暑さの中、天ぷら食べたい人いると思う?」
「あぁ〜、炎天下の中で天ぷらは、ちょっと厳しいっすね。」ヘイオスは苦笑いするしかない。
「失礼ですけど、何で天ぷらなんですか?もっと他の物売ればよかったのに。」話を聞いていたマサーが尋ねる。
「実はうちの団体は、少人数制の授業を受けている人たちの集まりでやっていてね。天ぷらを売れって言ったのは、その授業をしている先生なんだよ。だから、俺たちがやりたくてやっているわけではないんだ。けど、先生に逆らって、単位貰えなくなるのも避けないといけなくてね。いっしょにやっている人も、変な人とか、おもいっきり年上の人とかいて気も使うし、いろいろと大変なんだよ。」ジョータが説明する。
「た、大変なんですね。」フィロヤが汗を拭う。
「経済とか、仕事についての研究している先生のくせに、何で炎天下の中で天ぷらなんだよ。お前馬鹿じゃねーのって、頭大丈夫かって、口には出せないけど思っちゃうよね。はぁ、君たちに愚痴を言ってしまって悪かったね。はぁ。」そういうと、ジョータは戻って行った。
「俺たち、ちゃんといろいろ考えてやって良かったね。」フィロヤがジョータの寂しい背中を見つめながらつぶやく。
「本当にね。学校の先生って、変わった人多いって言うけど、変わった人にあたると大変なことになるんだね。」マサーがしみじみと思う。
「お〜い!股!股っ!!汚いもの見せるな〜!!!」トゥーマコが大声で叫ぶ。
「あぁ〜、すまん、すまん!またやってもうた。」ジョータの話に聞き入ってしまい、ヘイオスはついつい大股開きになってしまっていた。
そこへ、買い出しに行っていたサクーンとヤラキが帰ってくる。
「暑かったぁ〜。そこら辺の店全部から、ありったけのパンとウィンナー買ってきたぜ。」サクーンが両手の荷物を下ろす。
「もうこれで売り切れたらしょうがない。あとは売るだけ考えて頑張ろうぜ。」ヤラキが檄を入れる。
「そうやな。どーせ終了間際なったら、値引きして売る団体も増えてくるやろ。それよか、値引きせんどいて、しっかり売り切る方が、売り上げも若干多いはずや。」ヘイオスが力説する。

少し涼しい風が吹き出し、お客の入りも落ち着いてきたようだ。一同はこの機に休憩をとる。
籠球部の方も、買い出し班が戻り、余裕が出来たようだ。トゥーマコも休憩に入る。
ぐったりしていると、中庭の方から歌が聞こえてくる。トゥーマコが目をやると、中庭に台を設置して、演奏している男たちが見える。音楽好きの団体の発表か、と思い、トゥーマコが再びくつろいでいると、今度はシゼンカーンのテントから悲鳴が聞こえる。と同時に、シゼンカーンのメンバーがトゥーマコのもとに走ってやってくる。
「トゥーマコ〜〜!!!」ヘイオスが息を切らす。
「あいつ!あいつ!!」ヤラキが指をさす。真ん中で演奏している帽子を被った男をさしているようだ。
「あの人がどうかしたのか?」トゥーマコが尋ねる。
「今度はヘンティー!ヘンティー!!」マサーが取り乱す。
「こいつら大丈夫か?」トゥーマコはサクーンに聞く。
「いや、こいつらがいきなり叫んで走りだしたから、一応付いてきたんだけどよ。」サクーンも理解不能のようだ。
「とりあえず、落ち着いて!」フィロヤが三人に声を掛ける。
深呼吸をして落ち着きを取り戻したヘイオスが説明する。
「お前ら三人がイスガキに伝説の武具探しに行ってるとき、俺たちがシキネ園で戦った、ファットバギーの手下にそっくりなんだよ!」
「顔だけじゃなくて、あの帽子もそっくりなんだよ!」マサーが指をさす。
「それに、あの肩口から先の無いダサいシャツ。あれはまさしくヘンティーだ!」ヤラキが早口で説明する。
「でも、邪悪な感じはしないぜ。この人たちもそっくりさんなんじゃないのか?」サクーンが冷静に話す。
「う〜ん、そう言われれば。また、そっくりさんか。」マサーが落ち着きを取り戻す。
「ほんま心臓に悪いな、この学校。いい加減、疲れるで。」ヘイオスも安堵の表情を見せる。
「そっくりさんぐらいで、いちいち取り乱さないでよ。こっちも疲れるだろ。」フィロヤがチクリと刺す。
「こいつ〜、一番ビビりのくせして!きぃ〜!!!」ヘイオスが怒る。
「まぁまぁ。これで一安心だろ。さ、戻ろうぜ。」サクーンがなだめる。
しかし、帰り際、サクーンも発見してしまう。
「ト、ト、トゥーマコ…、フィ、フィロヤ…、あれ…。」サクーンは膝をガクガクさせながら指をさす。
「ん?」二人はサクーンの指す方を見る。
「……。そっくりさんだ。そう、そっくりさんに違いない。」トゥーマコが自分に言い聞かせる。
「今度はカツオ〜〜???」フィロヤが混乱する。
「おいおい、そんなに取り乱すなよ〜。さぁ僕に話してごらん。」さっきの仕返しとばかりに、ヘイオスが攻め立てる。
三人が見たのは、留学生らしき集団の中にいた女の姿だった。その女が、イスガキで戦った、カツオにそっくりだと言うのだ。
あーでもない、こーでもないと、六人が話をしていると、ヤースーが買い出しから帰ってきた。六人の様子を見て、ヤースーが話を聞いてくれた。
ヤースーによると、二人ともずっと前から大学にいるという。
納得がいかないながらも、そっくりさんだと自らに言い聞かせる六人であった。

大忙しの最終日は、これからピークを迎えていく。



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