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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの18

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18




男たちの未来



カズーとツグーと別れたトゥーマコとヘイオスは講堂に入り、二人で講義に潜り込む。講義が終わり、廊下に出ると、サクーンとフィロヤと出会った。サクーンとフィロヤも、ケーイたちと別れた後、小さな教室の講義を聴いていた。四人が談笑していると、ヤラキとマサーがやってきた。ヤラキは三コマも講義を聴いていたらしい。マサーも女の子と別れていた後、一人で講義に潜っていたのだった。
「しっかし、ためになる話とはいえ一刻半も聴きっぱなしは疲れるで。俺には肉体労働の方が合ってそうや。」少しぐったりするヘイオス。
「たしかに疲れたな。けど、俺は楽しかったぜ。ウォキナワの若者の文化についての話を聴いてきたんだけど、音楽の移り変わりとか興味のある話だったから、時間が経つのが早く感じたもん。」フィロヤは目を輝かせる。
「俺も。服とか、おしゃれについての話を聴けたから楽しかったぜ。」サクーンも上機嫌。
「おしゃれって…、おしゃれする前に、プチアケボーノをなんとかせーや!」ヘイオスがサクーンにチクリ。
「あぁ?そーゆうお前の、服の上からポコっと見える腹はどうなんだよ?」サクーンが刺し返す。たしかに、太っているわけではないがヘイオスのお腹はぽっこり出ている。体内に脂肪がついているパターンだ。
「まぁ、不健康の証だな!」トゥーマコはヘイオスをフォローしようがない。
「マサーは何だか良いことあったみたいな様子だけど、何かあった?」フィロヤがマサーの異変に気づく。
「ん?な、何もないよっ!」焦るマサー。
「マサーのご機嫌の訳はなぁ〜、女の子と二人っきりでぇ〜…」ヘイオスがバラそうとする。
「ヘイオスっ!」慌ててマサーがヘイオスの口を塞ぐ。
「くっ、苦しぃ〜!」ヘイオスは息が出来ない。
それを見て四人は笑う。

「俺、講義を受けてみて思ったんだけど、大学に入りてぇ。んで、もっともっと勉強してぇ!」ヤラキが真剣な目で話す。
「俺も。すぐに仕事に就くっていうのも大事かもしんないけど、先に勉強しないといけないこもあるって、今日強く感じたぜ。」サクーンがうなずく。
「そうだね。土台がしっかりしていないと、建物が崩れてしまうように、人としてある程度固まった状態を作ってから働いたら、働く中で新しい価値観が見いだせるかも。」マサーがしみじみ感じる。
「今日の文化の話にしても、知らなかったら、その文化を持つ人たちをバカにしちゃったり、受け入れることが出来無いかもしれないしね。知って初めて尊重出来るものがあるもんね。」フィロヤは気づく。
「ウォキナワは宗教というより先祖崇拝やけど、カンサーイなんてほぼ仏教やからな。けど、同じ仏教やのに、いろいろ種類が違って、啀み合ったり、けなし合ったり、終いには殺し合いも昔はあったっていうからな。」ヘイオスが思い出す。
「もしかしたら俺たちもこんなに仲良くなれなかった可能性があったってことか。」トゥーマコが悲しく呟く。
「だから、俺は人間的に大きくなりたいと思うぜ。ファットバギーにしても、本当は戦いたくなかったし。」サクーンがセイゴンを思い出す。
「あいつは例外!けど、ほんまに戦いのない平和が良いな。自分たちの子どもが悲しむような世の中にはせんどこうぜ!」ヘイオスが投げ掛ける。
「おぅ!俺も協力するぜ。俺は教師になる。んで、子どもたちに仲間の大切さとか教えてやりてぇ!」ヤラキが高らかに宣言。
「俺は音楽を勉強したい。音楽があるところに、争いはない。音楽で平和を作れるように勉強したいぜ!」フィロヤも夢を語る。
「俺は…、俺はウォキナワの海を守りたいな。せっかく綺麗なウォキナワの海なのに、最近はゴミで汚くなっている。ゴミ拾いからスタートして、ウォキナワの綺麗な海を未来に残したい。」マサーが目を輝かせる。
「俺は具体的には何もないな。けど、自分のために頑張れない弱い人間だから、家族のために頑張って、幸せな家庭を築きたい。子どもが誇れる父親になりたい。」トゥーマコは照れながら語る。
「トゥーマコは普通やな〜。そうやな〜、俺は〜、うーん。うーん。うーん。」考え込むヘイオス。
「おいおい。最後なんだから格好良く締めてくれよ。」嘆くサクーン。
その時。
ぷぅ〜〜。
ヘイオスが屁をこく。
「すまん。屁がしたくて何も思いつかんかった。ははは。」笑うヘイオス。
すかさず距離とり、離れる五人。
「あのマイペースっぷりがヘイオスの良さかもね。」フィロヤは苦笑いをする。
「相変わらず臭いぜ。死にそう。」サクーンはぐったりする。
「けどまぁ、大学に入りたいけど、どう頑張っても解決しない問題があるんだよな〜。」ヤラキが悩む。
「たしかに。」マサーも悩む。
「いまの俺の生活じゃ…。」空の財布を見るフィロヤ。
「資金か…。」トゥーマコが諦めに近い声を上げる。
「どう頑張っても無理だ。」サクーンはしょんぼりする。
現実に帰り、元気のない六人。

「あれ?君たち何してるの?」眼鏡のノッポ登場。スドウだ。
「あ、先生。実は…。」トゥーマコはスドウに今日のことを話した。授業に潜ったこと、そして自分たちが感じたこと。トゥーマコは思い切って、みんなを代表して資金面の悩みもスドウに相談してみた。

「ああ、それなら大丈夫だと思うよ。」スドウの口から意外な言葉が出た。
「!?」驚く六人。
「うちの大学は地域に根差した大学だから、君たちのように地域に貢献したいという人には、就学金の減額や免除とかは惜しまないよ。それにファットバギーの件もあるしね。僕も推薦するし、学長も喜んでくれると思うよ。きっと多くの人の賛同が得られるはずだ。」スドウが明るく説明する。

「やったぁ〜!」喜ぶ六人。
「じゃ、すぐにでも来期での入学で、学長にかけあってくるよ。」そういうと、スドウは去っていった。

夢の大学生活。諦めかけていただけに、サクーン、ヤラキ、マサー、フィロヤの喜びようは凄い。
だが、喜ぶウォキナワ出身の四人をよそに、トゥーマコとヘイオスは考えている。
「さっきは勢いで喜んだけど…、俺、どうしよう。」トゥーマコは悩む。
「ほんまやなぁ。どないしよかな。」ヘイオスも悩む。
「あっ、そうか…。」フィロヤが正気に戻る。
「まっ、今すぐ決めることでもないだろ!」サクーンは上機嫌で浮つく。
「けど、やっぱり二人は地元のこともあるしね。」マサーも悩む。
「ゆっくり考えれば良いんじゃないか?一度実家に帰った後でも遅くはないし。」ヤラキが問い掛ける。

そこへ、ヤースーとリョーマが通りかかる。
「よっ!打ち上げの日程はいつか決まったか?」リョーマが話し掛ける。
「トモヒロもデーゴもいつでも大丈夫ってよ!」ヤースーが話す。
「じゃあ、今日は急なんで、明日の夜はどうですか?」トゥーマコが提案する。
「わかった!明日だな。大丈夫だぜ!」ヤースーが了解する。
「学校集合でお願いします!」トゥーマコが声を掛ける。
「おぅ!そういえば、テント片付けてくれたってな。話聞いたぜ。ありがとな。」ヤースーが礼を言う。
「いいっすよ!いいっすよ!大したことなかったから。」ヘイオスは調子の良い男だ。
「サンキューな!そんじゃ、明日!」リョーマが六人に手を振る。
ヤースーとリョーマは打ち上げの日程が決まり、ウキウキで去っていった。
ヤースーとリョーマが来たことにより、話は途切れたが、トゥーマコとヘイオスは将来を悩む。大きな選択を迫られることとなった。すぐには答えは出ないということで、六人はシゼンカーンの部屋に戻る。タイミング良くマサカーズがやってきたので、明日の夜に学校祭の打ち上げをすると伝えた。
美味しいお酒を飲むために、気持ちを切り替える六人。すぐに気持ちは切り替わった。トゥーマコもヘイオスも考えるのは後にした。

六人はその夜、運動会前夜の無邪気な子どものように、興奮してなかなか寝付けないのであった。



打ち上げ



学校祭の打ち上げの日の夕方。六人は胸の高鳴りを抑えきれない。
「早くみんな集まらんかな〜。体が酒を欲してるわ。」ヘイオスはいつも以上に落ち着きがない。
「だな〜。今日は飲むぞ〜!!!」ヤラキが燃えている。
「やっぱりお酒は楽しく飲まないとね!嫌いなお酒を飲まされても美味しくないし。だから、今日は泡盛は飲まないからさ!」フィロヤはどさくさに紛れようとする。
「ん?今なんか言うたか?全然聞こえへんかったけど。まさか、ウォキナワ人のくせして、また泡盛飲まないとかいうやつおらへんよな?」ギロっと怖い目をするヘイオス。
「……。」言葉を失うフィロヤ。
「まぁまぁ。今日ぐらいは許してあげなよ。」マサーがフィロヤをフォローする。
「今日は長ぁ―く、みんなで騒ごう!いきなり潰れられても困るのは俺たちだからな。」トゥーマコがヘイオスに話す。
「ちっ。今日は大目に見といてやるか。」ヘイオスは諦める。
「そうそう。今日は楽しく飲もう!俺飲む気満々だから!」サクーンの鼻息が荒い。
「珍しいな、サクーンがそんなこと言うなんて。」ヘイオスはきょとんとする。
「なんかな、今日は飲みたい気分なんだよ!」サクーンが不敵に笑う。
「で、まだ聞いてなかったんだけど、学校祭の売り上げって結局いくらだったの?」マサーは疑問に思う。
「それについては店に着いてから、ヤースーさんと一緒に発表するわ。大丈夫、大人数で飲んでもお釣りくるぐらい儲けてるで。だから、後でのお楽しみ!」ヘイオスは自信満々で胸を張る。
「お前がそういうなら、楽しみにとっておくさ。今日はみんなで馬鹿騒ぎしような。」トゥーマコはヘイオスに任せた。

六人が雑談していると、シゼンカーンの部屋の扉がノックされる。
トゥーマコが扉を開けると、籠球部の面々がいた。
「っしゃ、酒飲むぞ!酒!酒!!」リョーマはヤル気満々。その後ろではトモヒロがはしゃいでいる。ヤースーとデーゴもソワソワしている。待ちきれない様子だ。
そこへマサカーズもやってきた。
「うぃ〜っす!」いつ会ってもマサカーズは眠そうだ。全員が揃ったところで、出発することに。
「しゅっぱぁぁ〜つ!」サクーンが先頭を切る。

一行は大学近くにある、柚子屋という居酒屋にやってきた。モダンな洒落た雰囲気の店だ。しかも今日は週に一度の半額の日らしい。半額の日とあって、店内は早くも賑わっている。この日を狙っていただろう、学校祭に参加していた他の団体もいる。
一行は大人数なので、大部屋に通される。

とりあえず一口目は麦酒ということで、テーブルの上にはズラリとジョッキが並ぶ。そして、乾杯の挨拶。ヤースーとヘイオスが二人ですることに。
「ぇ〜っと、まずは売り上げの発表からしま〜す。」ヘイオスは緊張気味だ。
「両方の売り上げを合わすと、二十万イェンでした!」あっさり言うヤースー。そんなあっさり言うんかい、という表情のヘイオス。緊張し損だ。
ヤースーの発表で、ざわめきと歓声が起こる。
「二十万イェンはたぶんダントツ一番だと思うよ!去年の一番稼いだところで、十五万だったから!」トモヒロが喜ぶ。
「うぉぉぉ!」
「俺たちすげぇぇ!」
「欲しがりますとも、勝ったから!」
「だから、それ俺の!!」
「いただきましょう、勝ったから!」
「だから、それ俺のってば!」
「飲んじゃいましょう、べろべろに!」
「だから、それ俺のだ〜〜!」
「騒ぎましょう、夜明けまで!」
「だから、それ〜!!!!」
喜ぶ男たち。テンションが上がっていく。場の雰囲気は最高潮。
しかし、その時だった。
「乾杯っ!」
「えぇ…?」
「……。」
一人いきなりぐびぐび飲みだす男。はい、リョーマさんだ。
どうやら、気持ちが高まりすぎて、これからヘイオスとヤースーの挨拶だってのに、この男は一人勝手に乾杯してしまったのだ。
「……。」一同は戸惑いを隠せない。
「……しゃっ、乾杯だ!乾杯!」トゥーマコが慌てて乾杯する。
「か、かんぱ〜い!」男たちの低い声が店内に響く。
「おいリョーマ!これから俺が良い話をしようって時に。ようやらかしてくれたな!」リョーマを小突くヘイオス。
「お酒目の前にして平気でいられるかっ!もう待ちきれんかった。スマン、スマン!」ぐびぐび飲むリョーマ。
「リョーマらしいやし。トゥーマコありがとな!お前がいてくれたから、焼鳥大成功したぜ!」ヤースーがトゥーマコに礼を言う。
「みんなと焼鳥やれて僕も楽しかったです!ありがとうございます!」トゥーマコも感無量。

「ぷはぁ〜!」サクーンが麦酒を一気に飲み干す。
「サクーンでーじ飲むね!何かあったの?」デーゴが尋ねる。
「サクーン、女にフラれたってよ!」クスクス笑うトモヒロ。
「あいっ!マジか〜。」デーゴは苦笑い。
「ふん。そんなんじゃねーよ。今日は飲みたい気分なんだよ。」強がるサクーン。
「サクーン、良かったら俺の友達紹介するか?背は低いけど、顔は悪くないよ!ただ…。」濁すデーゴ。
「ただ何なの?」マサーが尋ねる。
「ただ少しばかり太いかな。服がはち切れんばかりに…。」デーゴは胸を張って表現する。
「服がはち切れそうって…。それって太いで済むの?」マサーも笑うしかない。
「だぁぁぁ、うっさい!俺に構わずお前らも飲め〜!」サクーンがキレる。

「おぅ、ヤラキ!お前ナーゴんちゅなんだって?」リョーマがヤラキの横にくる。
「おぉ!生まれも育ちもナーゴだぜ!」
「だぁーるば!ナーゴの人、美人多いよな!大学にいるやつも、しに可愛いやっさ!」リョーマは興奮する。
「そうかやぁ〜?地元にいたからわからんやっさ〜。」
「えぇっ!あのリィナってやつもナーゴんちゅだろ?あのお人形さんみたいの!」リョーマの口からリィナの名前が出る。
フィロヤの耳が素早く反応する。音速、いや、光速だ。
「リョーマ、リィナわかるば?うちの地元の寺子屋の準ミスだったぜ!」ヤラキが思い出す。
「その話、俺も聞かせてっ!」すかさずヤラキの横に来るフィロヤ。
「マジか?あれで準ミス?じゃ、ミスはどんだけ美人よ?」困惑するリョーマ。
「実はあれ、仲の良い友達が投票したからだぜ!みんな後で言ってたけど、リィナの方が美人さ!」ヤラキが説明する!
「だろ?だろ?リィナが負けるわけないやし!」ガッツポーズして、一人で盛り上がるフィロヤ。
「ん?ど、どうしたフィロヤ?」ヤラキはフィロヤの様子に驚く。
「あ、えーと、何でもなんでもないよ!なんでもない!」慌てて平静を装うフィロヤ。
「さてはあれか?お前リィナのこと好きなのか?」リョーマが迫る。
「ち、ち、違うし!」照れるフィロヤ。

角の方ではヤースーとマサカーズが二人で盛り上がる。
「へぇ〜、マサカーズはハカータからウォキナワに来たのか。俺も行ってみたいな〜!」
「ウォキナワも良いところっすよね!今度籠球教えて下さいよ〜!」
年も近いこともあり、二人は盛り上がる。

打ち上げはまだ始まったばかり。夜はまだまだ長い。



ヨコシマな者



一同は麦酒から泡盛に切り替える。同じ釜の飯を食べた仲、ではないが、一升瓶をみんなで飲むというのは、それと相通じるものがある。
トイレに立つトゥーマコ。歩いていると、見覚えのある男を見つける。サモハンだ。どうやら、サモハンも学校祭の打ち上げに来ているようだ。席には、ホクロに似ている男もいる。
サモハンはだいぶ酔っ払っている。
「ぐへへぇ〜!ぐへっ!へへへぇっ〜!」奇声を発し、口からはヨダレを垂らすサモハン。
「おい!おい!こんなところでやめてくれよ〜!」ホクロに似ている男がサモハンの酔っ払いっ振りに困っている。制御出来ない部分でも、ファットバギーと似ている。
呆れつつも、トイレに向かうトゥーマコ。席に戻って、サモハンの話をヘイオスにすると、ヘイオスが意味不明に興奮する。
「きたぁぁ〜!しゃっ、俺もトイレのついでに見てくるわっ!おもろそうや〜!」無邪気な笑顔を見せて席を立つヘイオス。
柱の影からサモハンを眺めるヘイオスは、笑いが止まらない。
一通り、サモハンとホクロに似ている男のやりとりを見終わると、トイレに向かうヘイオス。トイレの手前の席で飲んでいる集団の中に見覚えのある男を見つける。学校祭で悪事を働いていた、豚っ鼻の男だ。手下を従え、女の子数人とコンパをしているようだ。
気になったヘイオスは席の影から話を立ち聞きする。
「さぁ、今日は俺のおごりだ。遠慮せずに飲んでくれ!」豪快に振る舞う、豚っ鼻の男。
「いやぁ〜、うちの大学はブスばっかりだからさ。参っちゃうよ。アグーの放し飼いだもん。君たちみたいな綺麗な人と勉強したいよ。」
「欲しい服とかあったら、俺に言ってよ!全部買ってあげるから。家でも買ってあげようか?」
「この前うちの学校祭行ってきたんだけどさ、マジつまんねーの。貧乏人が端金稼ごうと必死になっててさ。見てて超ウケるよ。全部俺が買い占めてやるから、さっさとやめろよって感じ。」

聞いていたヘイオスは、豚っ鼻の男の話に呆れる。しょーもな、と思い、トイレに向かう。トイレを出ようとすると、扉の向こうから女の子の声がする。豚っ鼻の男の席にいた女の子二人が話をしているようだ。ヘイオスは扉に耳を付け、息を殺して話を盗み聞く。
「どうする?」
「あいつ絶対頭可笑しいよ。」
「食事が終わったら帰ろうか。」
「あんまりかかわらない方が良い感じだし。」
「そろそろ戻らないと、怪しまられるから、行こう。」
足音が遠くなったことを確認し、ヘイオスはトイレを出る。ふん、あんな男がモテるわけあるかいな、と意気揚々と歩きつつ、豚っ鼻の男の席を通り過ぎようとしたときだった。ヘイオスは、野性の感が働いたのか、再び豚っ鼻の男の席の影で足を止める。
「そんなにお金あったら、欲しいものとかもうないでしょ〜?」一人の女の子が豚っ鼻の男に尋ねる。
すると、豚っ鼻の男は真剣な声のトーンで話しだした。
「俺はねぇ、この世界が欲しいんだよね〜…。何もかも俺の自由な世界が。簡単に言えば世界制服だよね。」
「もう、冗談言っちゃって。」女の子が茶化す。
「冗談?真剣さ。この前、俺と同じように世界制服を狙っていたやつがいたけどね、奴はバカだった。だけど、俺は違う。俺には完璧な計画がある。それに力も。」氷のように冷たい目で豚っ鼻の男が語る。女の子は蛇に睨まれた蛙の如く、身動きがとれない。圧倒的な負の圧力に気圧される。
「はい、冗談。ごめんね〜、冗談だよ〜!」豚っ鼻の男は笑顔になる。女の子が引いてしまっていたからだ。
安心し、胸を撫で下ろす女の子たち。
「俺が世界制服をしたら、この中の誰かを王女にしてあげても良いからね〜!」冗談口調で言う、豚っ鼻の男。
その場が若干和む。
「俺トイレ行ってくるね〜!」豚っ鼻の男が立ち上がった。ドスンドスンと豚っ鼻の男の足音が響く。
ヘイオスは慌てて立ち去る。
ヘイオスは自分の席に戻る途中、今までのことを振り返る。上手く整理できないながらも、確かなことが一つあった。ファットバギーとの戦いで感じた、圧倒的な負のオーラを、豚っ鼻の男から感じたのだ。やつの口から、世界征服、の言葉が発せられた時の一瞬の悪意は、ファットバギーと同等の邪悪さだった。ヘイオスが感じたこの嫌な感じは、学校祭の時にトゥーマコが感じたものと同じだ。
席につくヘイオス。場を乱さないために、この話は後々ゆっくりとすることにした。豚っ鼻の話を聞いて酔いが醒めたので、ヘイオスは飲みなおす。
仲間と飲む泡盛の美味しさに再び平和を感じるのであった。



療治



飲み初めて三時間ほど経った。ここで、ハーフ面した生粋のウォキナワ人が立ち上がる!
「二軒目行こうぜっ!!」リョーマが提案。
「は〜い、行く行く行く!」トモヒロ賛成。
「絶対行くっ!」ヤラキも大賛成。
「帰りたい奴は帰れよ!」強がるサクーン。顔は真っ赤。
「そんなやつ、いるかいなっ!」ヘイオスも立ち上がる。
「いない!いない!!」フィロヤはへべれけ。
「決定だね。」マサカーズも乗り気。
「眼鏡、眼鏡、眼鏡。」マサーは何故か眼鏡を探している。
「で、どこ行く??」ヤースーが尋ねる。
「歩きながら決めましょう!とりあえず国際通りに行きません?」デーゴが提案。
「じゃ、出ますか!会計しようぜ。」トゥーマコが玄関に行く。ぞろぞろと男たちは出ていく。

ヘイオスが会計を済まして外に出てくる。
「今日半額だし、めっちゃ安く済んだで!みんないる?」見回すヘイオス。
「サクーンとフィロヤがトイレ行ってるよ!」マサーが教える。
しばらくすると、サクーンとフィロヤが外に出てくる。
「ぷぷ!サモハン飲み過ぎたみたいで、トイレで吐いてたよ!おぼぼ〜って!」笑いを堪えるフィロヤ。
「トゥーマコ、学校祭の時にいた豚野郎もこの店にいたぜ。女と呑気に飲んでやがった。」サクーンがトゥーマコの耳元で話す。
「ああ、俺も見た。今日は可愛い子といたせいか静かだったな。」トゥーマコも小声話す。
それを見ていたヘイオスが二人の間に割って入る。
「何喋っとんねん!さっさと行くで!」
二人の腕を引っ張る。
ヘイオスは事を荒立てないように慎重だ。今夜はあくまでも、みんなの祝いの場なのだ。サクーンもトゥーマコもお酒が入ったせいか、豚っ鼻の男の悪意には気づいてはいないらしい。

一同はデーゴを先頭に国際通りを目指す。
国際通りに着いた一同は、朝まで屋、という居酒屋に入る。
その後、三軒目だっ!というリョーマに連れられ、でぃすわん、という民謡酒場へ。
この店はリクエストした曲を店員が演奏してくれ、お客が歌うという店だ。
それぞれ好きな曲の楽譜を選び、お店の人に演奏してもらう。
陽気で明るい曲を、みんなで歌って、踊って楽しむ。三線、指笛の音が魂を振るわせる。それが何曲か続いた後だった。
悲しそうな、横笛のイントロ。このタイミングで一体誰が選曲したのだろう?一同首をキョロキョロ回す。立ち上がった一人の男が台に上がる。サクーンだ。
「え、このみんなの雰囲気で、こんな悲しそうな曲はあかんやろ!」ヘイオスは慌てて、サクーンが選んだ楽譜を見に行く。

曲名、道路〜第一章〜

一人盛り上がるサクーンが、サビを歌い上げる。
「なんでもなかぁったこと〜がぁ〜幸せだったと思うよぉ〜♪」
サクーン大熱唱。まるで、タケトゥミ島で出会った時が、一番幸せと言わんばかり。
悲しいメロディ、歌詞に、一同のテンションはガタ落ち。
サクーンは強がってはいても、ケーイのことが忘れられないのだ。サクーンの腫れぼったい目に、うっすらと涙が見える。
見事歌い上げるサクーン。ああ、やっと終わった。そう一同が安心した次の瞬間、また悲しい横笛のメロディがっ!

道路〜第二章〜

「やめや、やめぇ〜!」
「ストップ、ストップ!!」トゥーマコとヘイオスが強制終了に踏み切る。
もがくサクーン。まさに暴れる猪。それを見て笑う一同。
「サクーンでーじやっさ〜!」デーゴが腹を抱える。
「次は僕が歌います!」リョーマが段に上がる。

ハイサイオジサン大熱唱。
みんなが腹を抱えて笑う。

「フィロヤは何か歌わないの?」マサーが聴いてばかりのフィロヤに声をかける。
「いや、俺は聴くの専門だから〜!」恥ずかしがるフィロヤ。
「そんなん言わずに歌えや〜!」無理矢理ヘイオスに歌わされるフィロヤ。
仕方なしながら、ここぞとばかりに熱唱するフィロヤであったが、お約束と言わんばかりに全く聴かない一同。
「おいっ!」フィロヤは寂しさのあまり突っ込む。

その後、マサカーズが格好良く歌い、一同酔い痴れる。ギターを弾けるだけはある。
マサーはマニアックな歌を選曲して場を混乱させ、ヤラキは元気良く歌い、トモヒロはずっと踊る。

ひと休みしていると、サクーンはみんなの目を盗み、道路〜第三章〜を選曲。

「またかいなっ!」呆れるヘイオス。
「もうそっとしといてやろう。」諦めたトゥーマコ。

その後も楽しく歌い、浴びるように飲む一同。忘れられない思い出が、また一つ出来たのであった。



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