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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの10

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10




勝利の鍵



国際通りに、ナデューサの三線の音色が響き渡る。
「な、なんだ?この音は?耳が痛い!」ファットバギーはナデューサの三線の音色を聞き苦しむ。
逆に、ファットバギーと戦っていた四人は、その音色に癒される。音色の美しさに聴き入ってしまい、声も出ない。
ナデューサの三線の音色は、荘厳でありながら、聞いている者を優しく包み込む。その場にいたスドウも音色に耳を奪われる。
弾いているマサカーズは、驚いた。指が、ナデューサの三線に導かれるように動くからだ。まるでナデューサの三線自身の意思で、弾かれているようだ。
「ヤバい。めっちゃ良い音だな。」サクーンの顔が緩む。
「うん。優しい音だね〜。」フィロヤも、のほほんとしてしまう。
そんな中、奇跡は続く。
「ん?あれは。おい、みんな!伝説の武具を見ろ!!」ヤラキは気づく。石になった伝説の武具が輝いていることに。
「おぉ!すげぇ!!」ヘイオスは目を輝かせる。
「眩しくて、目を開けてられない。」マサーは目を細める。伝説の武具は、音色に反応して凄まじい輝きを放つ。
「すごい。すごいぞ。学者をやっていて、本当に良かった。」スドウの目から、涙が溢れる。まだ、何かを達成したわけではない。自分自身にそう言い聞かせるが、目の前で起こる神秘的な出来事に、不思議と涙が溢れてくるのだ。
伝説の武具の輝きは増していく。徐々に石化が解け、その姿を現していく。
「あれは…。」トゥーマコは光の中に、長老、ズッケランの姿を見る。幻であることには気づいているが、光の中で励ますように微笑む二人の姿に、勇気づけられる。

輝きを増し続けた光は、ナデューサの三線の音色とともに、やがて収束を迎える。そして、光は消えた。だが、そこには光ではなく、伝説の武具自身の持つ輝きがある。
フェリスの兜、グリンガムの鞭、ヘリオスの剣、ガリオンの盾、ゴルゴスの槍、エルフェの弓矢が、元の姿に戻った。
「よっしゃ〜!!!」ヘイオスが雄叫びをあげる。
「やった!」ヤラキも喜ぶ。
「諦めなければ、奇跡は起こったね。」マサーも微笑む。

「大丈夫か、マサカ−ズ君?」スドウはマサカーズに声をかける。マサカーズは、ナデューサの三線を弾き、精根尽きてその場に座り込んでいる。
「不思議な楽器でしたよ。まるで、自分の意思があるように、全然弾けない僕をリードしてくれました。と、とりあえず、煙草が吸いたいっす。」マサカーズは大役を見事果たした。ヘビースモーカーのマサカーズは、こんなときでも煙草を吸う。

「ぐぅ。貴様ら…。」ファットバギーは、耳を押さえて、フラフラしている。
六人は、音色に怯むファットバギーを尻目に、伝説の武具を手にした。
トゥーマコがゴルゴスの槍、ヘイオスがヘリオスの剣、サクーンがガリオンの盾、ヤラキがグリンガムの鞭、マサーがエルフェの弓矢、フィロヤがフェリスの兜を、それぞれ装備した。
「おおぉ!みんな!」スドウは、伝説の武具を装備した六人の雄々しさに、感動する。

「なんか、体が軽くないか?」サクーンが体に軽さを感じる。
「そうだね。てか、傷治ってない?」フィロヤが、傷が治っていることに気づく。
「もしかして…。」マサーはナデューサの三線を見つめる。
六人の顔には精気がみなぎる。それだけでなく、傷も癒えている。どうやら、ナデューサの三線の効果のようだ。
「諦めなかったから、奇跡が起こったな。」トゥーマコがみんなを見て微笑む。
「そうだな。これで、万全の状態であのデブをやれるぜ。ひひひ。」ヘイオスの顔が、いじめっ子の顔になっていく。ヘリオスの剣を装備したことにより、残虐性が増している。
「防御は任せろよ!」サクーンは自信満々の顔で、ガリオンの盾の陰に隠れる。

奇跡は起こった。いや、起こしたのだ。六人の諦めない勇気によって。
六人は勝利の鍵を手にし、扉を開けるための最後の試練に立ち向かう。
戦いは、終幕に向けて加速していく。



自己中心的な男



ナデューサの三線を使い、再び輝きを取り戻した伝説の武具。六人の士気が高まる。一方、ファットバギーも、ナデューサの三線の効果で一時怯んだが、まだ闘志は生きている。
「良い気になるなよ。俺は、俺は絶対に負けない。そんな物があっても、俺は無敵だぁぁぁぁぁ!」ファットバギーが鋭い目つきで、六人を見る。
「それは俺たちだって同じだ。」ヤラキがファットバギーに言い返す。
「お前らは、自分たちが正しいことをしていると思っているだろう。だがな、正しいも、悪いも、勝った奴が決めることだ。俺は負けない。俺が正しい。俺が正義だ。弱い者は消えろ。」ファットバギーは闘志を燃やす。
「とくに、お前は許さない。絶対に!」ファットバギーは、トゥーマコに指をさす。
六人は、なぜトゥーマコなんだ?と疑問を抱く。ここは、ヘイオスだろうと、みんなが思う。
「……被ってるんだよ。」ファットバギーが小さな声でつぶやく。
「?」六人は意味がわからない。というか、声が小さくて聞こえない。
「お前は、俺とキャラが被ってるんだよッッッ!!!!」ファットバギーはトゥーマコに対して怒鳴る。怒鳴られたトゥーマコは唖然とする。
六人は、ファットバギーの不可解な言い掛かりを理解できない。
「はぁ〜、アホか。トゥーマコとお前のどこが被っとんねん。」ヘイオスが呆れる。
「そうだ。たぶん、俺とお前のキャラは被ってないと思うよ。」トゥーマコもヘイオスに続く。
「黙れ。キャラ被りまくってるわ!その、みんなの中心的なとこ!」ファットバギーはまだ言い掛かりをつける。
「よくわかんないけど、あいつの器の小ささは、完全にはっきりしたわ。」サクーンは溜息すら出ない。
「もう、決着つけちゃおう。」フィロヤもファットバギーの突っ込みの入れにくさに、ウザさを覚える。
「あいつ、みんなの中心じゃないと、駄々こねちゃう子のパターンだな。」ヤラキは残念な気持ちになる。
「そんな理不尽に、負けて溜まるか!」マサーは怒る。
ファットバギーは、トゥーマコの仲間内での立ち位置が気に入らないようだ。だが、その立ち位置は、誰がどう考えてもファットバギーのポジションではない。しかも、トゥーマコもそのポジションを狙ってやっている訳ではない。ファットバギーは、なんて迷惑なやつなんだ。
「ふん。お前らなど、俺の世界にいらない。俺が勝って、思い通りの世界を作るんだ!」ファットバギーが吠える。
「喰らえっ!!」ファットバギーは、大きく息を吸い込んだ。超音波攻撃をする気だ。
「またあれや!どうする?」ヘイオスが焦る。
「ここは任せろ!みんなは俺の後ろに回ってくれ。」フィロヤが前に出る。
ファットバギーは先ほどよりも、さらに大きな声を出した。大気の震えは、周辺の建物を揺らす。
「どうだ。立ってはいられないだろう。」ファットバギーは大声を発すると、ニヤける。
だが、六人は平然と立っている。
「馬鹿な。どういうことだ?あれを喰らって立っていられるわけがない。」ファットバギーは動揺を隠せない。
ファットバギーが大声を出した瞬間、フィロヤを中心に目に見えないバリヤーが張られた。バリヤーは、ファットバギーから発せられた超音波を完全に遮断したのだ。
「そうか。フェリスの兜には、幻術が効かないんだ。」トゥーマコはフェリスの兜の効果を思い出す。
「けど、どうしてフィロヤはあの時まだいなかったのに、何でそれがわかったんだ?」ヤラキが疑問に思う。
「突然誰かの声が、たぶん、フェリスの兜が俺に語りかけてきた感じがしたんだ。大丈夫だから、仲間を守れって。」フィロヤは、不思議な感覚を感じたことを教える。
「伝説の武具のことだけに、もう何が起こっても不思議じゃないね。」マサーは笑う。
「フテンマンのこともあるしな。」ヘイオスが思い出す。

「くそぉ。超音波が効かないなら、直接叩き潰すまで!死ねぇぇ!!」ファットバギーは六人に突進する。
「次は俺だ!」サクーンはガリオンの盾を構える。
「そんなもので、俺のタックルが防げるかっ!」ファットバギーは構わずに、猛進する。そして、サクーンと衝突した。ファットバギーは凄まじい衝撃を受ける。だが、サクーンは何事もなかったかのように、平気な顔をしている。
「どうだ!」サクーンが得意気な顔をする。
「ぐっ…。」ファットバギーはよろめき、倒れる。
「すげぇ!」ヤラキは驚嘆の声をあげる。
「おのれぇ。ならば、これだ!オボボーっっっ!!!!」ファットバギーは立ち上がると
何でも溶かすヨダレをサクーンに飛ばした。
「みんな、俺の後ろに隠れろ!」サクーンがたくましい。ファットバギーのヨダレは何でも溶かすと言われているが、ガリオンの盾に溶ける様子などない。ガリオンの盾はタレパンダを凌ぐ、最硬防御であることを示した。

「ひっひっひっひ。形勢逆転やな。」ヘイオスが不敵に笑う。

長い我慢の時を経て、反撃の時は来た。



雌雄決す



伝説の武具の復活により、六人はファットバギーの攻撃を完全に防ぐことに成功した。
「何故だ?何故俺の攻撃が効かない?」ファットバギーは明らかに焦っている。
「自分の思い通りにいかないと、意外に脆いね。」マサーはファットバギーを見る。
「ここからは、お仕置きの時間や。」ヘイオスが袖を捲くり、ヘリオスの剣を構える。
「ああ。今までの仕返しだ。」ヤラキがグリンガムの鞭を握る。
「まだだ。タレパンダは負けてない。お前らの攻撃など、全て防いでくれるわ!」ファットバギーはまだ諦めない。
「望むところだ。決着をつけてやる!」トゥーマコはゴルゴスの槍を構えると、ファットバギーに向かって走る。
ファットバギーもタレパンダに力を込める。トゥーマコはゴルゴスの槍をタレパンダに向かって勢いよく突いた。
「ぐ、ぐふ。」ファットバギーの口から血が流れる。ゴルゴスの槍はタレパンダをもろともせず、ファットバギーの体に突き刺さる。
「どうだ!」トゥーマコは、タレパンダからゴルゴスの槍を抜く。
「やった!」サクーンが声をあげる。
「よし、次は俺だ!」ヤラキはグリンガムの鞭を振り回す。三つに分かれた先端が、勢いよく空気を切る。ヤラキはファットバギーに目標を定めた。
「あがぁぁぁぁ!」国際通りにファットバギーの悲鳴がこだまする。グリンガムの鞭がファットバギーに命中した。グリンガムの鞭に攻撃された部分は、赤く腫れあがる。ファットバギーはその場でのたうち回る。
「喰らえぇぇ!」ヘイオスがファットバギーの隙をついて斬りかかる。
「くそっ。」ファットバギーは防御しようと、右手でガードする。だが、
「うぎゃぁぁ!腕が、腕がぁぁぁぁ!」ファットバギーの丸太のような太い腕が宙に舞った。ヘリオスの剣の切れ味に、ファットバギーは成す術がなかった。
「どうや!」ヘイオスがファットバギーにヘリオスの剣を向ける。
「くそぉ…。こんなはずでは。」ファットバギーは険しい表情を見せる。ファットバギーは動けない。
「俺が止めを射す。」マサーがエルフェの弓矢を引こうとする。だが、上手く引けない。弦が硬過ぎて引けないのだ。その時、何処からともなく声がする。
「…六人の勇者よ。力を合わせて矢を引くのだ。さすれば、放たれた矢は一筋の光となり、悪を滅するであろう…。」
「この声は?」トゥーマコは天を仰ぎ見る。
「聞こえた?」フィロヤがサクーンに尋ねる。
「おぅ。はっきりな。」サクーンがうなずく。
「つまり、みんなで協力しろってことだな。」ヤラキがマサーに駆け寄る。
「誰の声かは後回しや。今はこの戦いを終わらすのが先や。」ヘイオスもマサーに駆け寄った。
マサーのもとに五人が集う。トゥーマコとヤラキは、弓を支える。サクーン、ヘイオス、マサー、フィロヤが矢を引く。
「手がちぎれそうだ!」フィロヤが痛がる。弦の張りは、四人がかりでもギリギリなぐらい、とてつもなく硬い。
「んなもん、俺たちも痛いわ!」ヘイオスが必死に耐える。
「最後の大仕事やり遂げようぜ!」サクーンがみんなに声をかける。
「おう!歴史に名を刻もう!」弓を支えながら、ヤラキが答える。
「俺たちが新しい歴史を作るんだ!」マサーが歯を食いしばる。
「この戦いに、終止符を!」トゥーマコはこれまでのことを、走馬灯のように思い出す。弓を支える体に力がこもる。

六人は、この一瞬に全力、全神経を集中させた。矢を放つタイミングをとる。六人は不思議と仲間の呼吸がわかった。旅の始めはバラバラだった呼吸だが、今では手に取るように仲間の呼吸がわかる。仲間への絶対の信頼が成す技だ。

誰が何を言ったわけではないが、矢を引いていた四人は完ぺきなタイミングで、矢を放った。トゥーマコとヤラキは、それに合わせ、力を入れる。
六人の思いを乗せた矢は、完ぺきな軌道を描き、ファットバギーへと飛んでいく。
「いけぇぇぇぇっっ!!!!!!」六人は絶叫した。
六人は放たれた矢を、祈るように目で追う。

「このまま終わってたまるかぁぁぁ!」ファットバギーは、最後の力を振り絞り立ちあがる。伝説の武具に負けない、自らこそが最強だという、強い意志が体を動かした。自らの力を誇示するがごとく、タレパンダを剥き出しにし、矢を迎え撃つ。

互いの意地と意地がぶつかり合う、まさに最後を飾るに相応しい戦いの、決着の瞬間は刹那だった。

矢はまばゆく輝き、邪悪な黒い意思を打ち抜き、ウォキナワを明るく照らす。


ファットバギー・クリストファー、敗れる。



戦いの果て



ドスン、と重い音を立てて、巨体が倒れる。
「まさか…、この俺が…。」ファットバギーは、現実を受け入れられない。
六人は、全てを出し尽くし、その場に膝をつく。
「へへ、やったな。」ぼろぼろのヘイオスが笑う。
「勝ったぁー!」フィロヤが両腕を天に突き立てる。
「待てフィロヤ。ファットバギーはまだ生きているぞ。」ヤラキは慎重だ。
「だが、もう力は残っていないはずだ。」マサーは瀕死のファットバギーに目を向ける。
「行こう。」トゥーマコがつぶやく。
「そうだな。俺達で最期を看取ろう。それが俺たちの責任だ。」サクーンが真剣な表情になる。サクーンは、ファットバギーに歩み寄る。
「そやな。俺たちも行こうぜ。」ヘイオスも真面目な表情になる。
六人は、横たわるファットバギーに近づく。
「お前ら…。くそ。お前らなんかにやられるなんてな。」ファットバギーが悔しがる。
「勝った方が正義言うたのは、お前やろ。」ヘイオスが鋭く攻める。
「………。」ファットバギーは返す言葉が思い浮かばない。
そして、時間は過ぎていく。ファットバギーの呼吸の数が徐々に減る。死期が近いのを六人も感じ取る。
「ちっ。あ〜あ。世界征服したかったな。仲間も、金も、女も、飯も、全部俺の者だ。世の中の女はみんな俺に惚れる。俺は強いんだ。俺が最強。俺が一番カッコいい。俺が一番面白い。俺が…、俺が…、……。」最後にそうつぶやくと、ファットバギーは目を閉じた。すると、エルフェの矢によって貫かれた部分から、ファットバギーは光となって消えていく。
六人は、光となり消えていくファットバギーの最後を見守る。そして、全て光となり、ファットバギーは、この世から消え去った。


「これで俺たちの完全勝利だね。」フィロヤがはしゃぐ。
だが、他の五人の顔は浮かない。それを見てフィロヤが不安な顔になる。
「フィロヤは間違ってないぜ。確かに、俺たちは勝った。けど、なんかな。」ヤラキは釈然としない。
「思えば、ファットバギーも、セイゴンも可哀想なやつだったな。」サクーンが天を見つめる。
「そうだね。たぶん、少しだけ不器用だったんじゃないかな。」マサーがサクーンの肩を叩く。
「俺たち自身もな。あいつらのコンプレックスを俺たちも理解しようとすべきだったんだ。」セイゴンのことを思い出し、トゥーマコが悲しい顔をする。
「ファットバギーのあの力を正しいことに使えば、きっと良い仲間に恵まれただろうね。」フィロヤが残念がる。

その場が重苦しい空気になる。
「はぁ〜〜。そんなこと考えてもキリがないぜ。」ヘイオスが静寂を破る。
「あいつの正しいて言うのは、強い者が全てってことやろ?俺は、そんな正しさ絶対理解できんもん。やっぱ、そこは社会のルール守って何ぼやからな。こんな広い世の中やから、合う、合わないで、物事考えて良いと思うで。比べたり、競い合ったり、他人と違う部分もあるけど、ルールがあった上でやからな。それを破って、人を殺してしまったら、犯罪を犯してしまったら、もう元には戻れないんや。」ヘイオスがもっともなことを言う。
五人は、何となくだが、ヘイオスの考えを理解する。
「僕は、いろいろな考えがあって良いと思うけどな。」スドウがマサカーズとともに六人に歩み寄る。
「だが、君たちがファットバギーを倒して、世界を救ってくれたのも事実なんだ。君たちがやらなければ、多くの人たちの笑顔が奪われて、ファットバギーだけが笑う世界になっていたかもしれないんだ。」スドウが真面目な顔で話す。
「そうだ、そうだ。君たちがいなかったら、俺たちはどうなっていたか。ありがと。」マサカーズは煙草を咥えながら、六人に礼を言った。
六人の顔が笑顔になる。
「まっ、難しいこと抜きにして、故郷の家族も無事だし、みんなも無事なのが、俺は嬉しいぜ。」サクーンが笑う。
「そうだな。こうやってみんなが笑顔でいられる世界を守るために戦ってきたんだ。俺たちは世界を守ったんだ!」トゥーマコが高らかと宣言する。六人は何とも言えない達成感を覚える。それを見て、スドウもマサカーズも頬が緩む。
そんな中、フィロヤがまた何かを考え込む。
「どうしたフィロヤ?」ヤラキがフィロヤに尋ねる。
「どこか怪我でもしたのか?」マサーも心配する。
「…俺、欲しがりません、勝つまでは!って言って、ここまで頑張ってきたんだけど、何が欲しかったんだっけな〜っと思って。」フィロヤが苦笑いする。
「そんなことかよ。ちゃんと考えておけよな。」サクーンが呆れる。
「だってよ〜、無我夢中で、そんなこと考える余裕なかったんだよ!」フィロヤが残念がる。
だが、ここであの男が最後にやらかすのだった。ヘイオスが、フィロヤの横に立ち、身長を比べるような仕草をする。
「う〜んと、背は変わってへんな!欲しい、欲しい言うても、やっぱ身長は簡単には伸びないもんやな!はっはっは。」ヘイオスが笑う。さすがのフィロヤもこれにはキレる。
国際通りで、ヘイオスとフィロヤの追いかけっこが始まった。
それを見て、みんなから笑い声が漏れる。
六人は、世界を見事に守りきった。
ナーファの町を夕暮れが赤く照らす。ウォキナワは今日も平和だ。

長い戦いが終わった。



帰路へ



普段は観光で賑わう国際通りだが、今は八人の男たちしかいない。国際通りに、戦いを終えた勇者たちの笑い声が響く。みんなが笑いあえる、この瞬間こそが何よりも、平和を意味する。
八人は、一通り笑い終える。
「さぁ、そろそろ大学に帰ろう。君たちも相当疲れているはずだよ。」スドウが六人に声をかける。
「そうやな。体が重いわ。」ヘイオスがダルさを感じる。
「本当だ。興奮して、疲れているのを忘れていたんだね。」フィロヤがその場に座りこむ。
「俺もこの場にいただけなんだけど、なんか緊張して疲れたよ。」マサカーズもヘトヘトだ。
「俺、足震えてやばいんだけど。」サクーンの足が生まれたての子鹿のように震えている。
「きっと疲れがいきなり出たんだね。俺も足やばいし。」マサーもぐったりしている。
「じゃ、日が暮れる前に大学に帰りますか。」ヤラキが提案する。
「そうだな。今はとにかく思いっきり休みたい。」トゥーマコが賛成する。みんなも賛成だ。
それぞれ伝説の武具を拾い、帰路に就こうとした時だった。
西から猛烈な速さで、集団が走ってくる。武装した大勢の集団が、八人を取り囲む。

「何?何?」フィロヤが焦る。
「これをやったのはお前らか?」武装した集団の中のリーダー格が尋ねる。
「アホか!誰がこんなことするか。これをやったのはファットバギーや!」ヘイオスが崩れ去った四越に指をさす。
「ファットバギー?誰だそいつは?」リーダー格は首を傾げる。
「なんか面倒臭いことに巻き込まれたな。」サクーンが苦笑いする。
「僕たちは怪しいものではありません。あなた方は誰なのですか?」マサーが尋ねる。
「我々はナーファの治安維持部隊だ。国際通りで騒ぎがあったという話を聞いて、やってきたのだ。急いできてみたら、国際通りの中心に位置する四越が跡形もなくなっているではないか。こんなことをするやつらを、我々は生かしておくわけにはおかない。」リーダー格が八人に剣を向ける。全く聞く耳を持とうとしない。
「待ってください。僕はウォキナワ大学のスドウというものです。この子たちは、悪の魔の手からウォキナワを救ってくれたんです。この惨状は、その悪がやったものです。」スドウが熱弁を振るう。
「そんな話が信用出来るか。ウォキナワ大学が関与しているならば、貴様らを処刑し、ウォキナワ大学も取り潰すまでよ。」リーダー格は徹底抗戦の構えだ。
「ていうか、あれだけ派手にやってたのに、このタイミングでここに来るって方が遅いと思うけどな。」フィロヤがもっともなことを言う。
「そうだ、そうだ。」ヤラキがうなずく。
「ぐぬぬ、うるさい奴らめ。力ずくで、本当のことを暴いてやる。お前ら、やってしまえ!」リーダー格が部下に指示する。

だが、その時、一人の男が走ってやってきて、止めに入る。朱里城にいた役人だ。
「待てお前ら!この御方達は、ウォキナワを救ってくれた方達だ。無礼なことをするな!」役人が怒鳴る。
治安維持部隊の面々は唖然とした表情になる。
リーダー格も戸惑いを隠せない。
「すみませぬスドウ殿。私の部下が無礼な真似をしてしまいまして。伝説の武具のことも、ファットバギーのことも、機密事項でして一部の者にしか知らされていないのです。私は先ほど、国際通りで騒ぎがあったと聞き、駆けつけた次第です。」役人が、八人に訳を話す。
「ったくよ〜、こっちは疲れてるのに、人騒がせなことやで。」ヘイオスが呆れる。
「そう言うなヘイオス。勘違いだったんだから、良いじゃないか。」トゥーマコがヘイオスをなだめる。
「本当に申し訳ない。お礼と言ってはなんですが、この先に馬車を用意させておりますので、どうぞお使いください。この場の後始末は我々がいたしますので。」役人は馬車を用意してくれていた。
「お〜、話がわかるやんけ。」ヘイオスの顔が明らかに変わる。
「ナイス!もう歩けないところだった。」ヤラキが喜ぶ。
「よし、じゃあ馬車があるところまで歩こう。」スドウが歩きだす。
「ちょっと待ってください。」サクーンが止める。
「どうしたサクーン?」マサーがサクーンに尋ねる。
「あいつも一緒に連れて行きたいんだ。」サクーンはセイゴンの亡骸を見つめる。
「そうだな。この町出身って言っていたし、探せば家族がいるかもしれない。とりあえず、大学まで運ぼう。」ヤラキはサクーンに賛成する。
役人の指示で、治安維持部隊は国際通りの復旧作業を始める。
ヤラキとサクーンは、二人掛かりでセイゴンの亡骸を運ぶ。六人は手分けして、伝説の武具を持ち、夕陽で赤く染まる国際通りを歩くのだった。

八人が東に向かい少し歩くと、国際通りのマシキという場所に辿り着いた。そこで用意されていた馬車に乗り込むと、緊張の糸が切れたかのように八人は疲れ果てて一言も発さぬまま大学に着く。セイゴンの遺体を倉庫に横たわらせると、それぞれ部屋に行き、食事もとらずに布団に潜った。スドウは保健室の先生に見つかり、怪我をしていたのに勝手に出て行ったことを怒られる。マサカーズは風のように去っていった。
いつもは暑くて寝苦しいウォキナワの夜だが、この日だけはほどよく風があり、涼しくて寝心地の良い夜だった。シゼンカーンの部屋には、男たちの気持ち良いほど豪快ないびきが響き渡った。



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