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FINAL OKINAWA FANTASYコミュの5

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5




非情な女



三人は敵に囲まれた。敵はざっと数えただけでも二十人はいる。相当厳しい戦いになることをトゥーマコは予感した。
敵の群れの中から筆頭らしき女が出てきた。
「私の名前はカツオ。ファットバギー様のしもべだ。まさか、イスガキ島の伝説の武具の在り処まで知っていたとは思わなかったぞ。だが、お前らの命運も今日で尽きる。私は他の馬鹿どもとは違う。もしものことを考えて、これだけの人数を揃えてきたんだからね。」カツオは冷たく微笑んだ。

三人は剣を構えた。しかし、フィロヤの手が震えている。フィロヤは今回が初めての戦いだ。かなり緊張している。トゥーマコは一瞬でそれを見抜いた。
「心配すんな。今回は俺は全然緊張してないぜ。二人でフィロヤをカバーしながら戦おう。」サクーンは心配そうなトゥーマコの顔を見て、活躍を誓う。
「わかった。死ぬなよ。」トゥーマコは笑顔でサクーンに返す。

「おしゃべりは済んだかい?じゃ、そろそろ死にな。」カツオは部下に指示を出した。部下たちは一斉に襲い掛かる。
三人は懸命に闘った。互いの死角をカバーしつつ、一人一人確実に仕留めていく。フィロヤの緊張も解けたようで、ちょこまかした動きで敵を翻弄する。

「こいつら、思っていたよりも手強いッッッ!」カツオは三人の奮戦に驚く。カツオはトゥーマコたちがホクロと戦ったときのデータしかもっていない。しかし、旅の中で起こった様々な試練が、心身ともに男たちを成長させていた。

「あとはお前だけだ。」サクーンがカツオに剣を向ける。カツオが気づいたときには部下は全員倒されていた。
「おのれ〜。」
カツオは悔しがる。しかし、その時だった。
「お〜い、取ってきたよ〜。」家に伝説の武具を取りに行っていた、テポドーンが外に出てきた。
が、運悪く扉の前にいたのは、カツオだった。カツオは状況を理解できないテポドーンを捕まえ、伝説の武具を奪い取った。
「まだあたしにもツキは残っていたみたいだね。武器を捨てな。さもないと、この男の命はないよ。」カツオはテポドーンの喉もとに、伝説の武具の槍を突きつける。
三人は武器を置いた。たとえ伝説の武具を手に入れるためだとしても、テポドーンの命には代えられないからだ。
「これが噂に名高いゴルゴスの槍か。手に持つだけで凄まじい力が伝わってくるわ。間違ってこの子を殺してしまうかもね。」カツオは高々と笑う。卑怯な女だ。
「このままどうしようもないのか。」トゥーマコは悔しがる。フィロヤもサクーンも、成す術がない。
諦めかけた、その時だった。テポドーンはかかとで力いっぱいカツオの足を踏んだ。カツオが一瞬ひるむ。そのすきにテポドーンはカツオから逃れることに成功した。
「これで俺に構わず戦えるだろう。奴を倒してくれ。」テポドーンは木の陰に隠れる。

「おのれ小童が。しかし、ゴルゴスの槍はまだ私の手にある。私はまだ負けない。」カツオの発する負のオーラを、ゴルゴスの槍が増幅して空間を包み込む。

「私の本来の名はショウナン。漢字では勝男と書く。しかし、ファットバギー様は勝利をもたらす女であってほしいと、私のことをカツオと呼んでくださる。ファットバギー様のためにも私は負けられない。」カツオはゴルゴスの槍を振り回し、三人に突撃してきた。

「どうする?」サクーンは慌てる。
「相手は伝説の武具だ。こちらも伝説の武具で対抗するしかない。」トゥーマコはヘリオスの剣を取り出す。
「だけど、誰がやるんだよ。」サクーンは向かってくるカツオに焦っている。
「俺がやるよ。」フィロヤが名乗りを挙げた。
「こいつを倒して、俺も男になるんだ。」フィロヤはヘリオスの剣を奪い取り、カツオに向かう。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」フィロヤの持つヘリオスの剣と、カツオのゴルゴスの槍がぶつかり合う。凄まじいエネルギー同士のぶつかり合いに、大気が震える。

「ファットバギー様ぁぁぁぁ!」カツオが吠える。
「欲しがりません、勝つまではぁぁぁぁぁぁ!!」フィロヤも負けない。

しかし、凄まじいエネルギーにフィロヤの体が押し負ける。吹っ飛ぶ、フィロヤがそう思ったその時、誰かが後ろから支えてくれている。
「一人でしょい込み過ぎるなよ。」トゥーマコが笑う。
「そうそう。仲間がいるんだからな。」サクーンが必死にフィロヤの背中を支える。
「トゥーマコ。サクーン。そうだな、三人でこいつを倒そう。」フィロヤの心から迷いが消えた。三人はありったけの力をこの一瞬に込めた。

「なんだ!?私が押し負ける?おのれぇぇ。ファットバギー様、ばんざーい。」カツオは断末魔の悲鳴をあげ、二つの伝説の武具のぶつかり合いが生んだ凄まじいエネルギーに吞みこまれ、完全に消滅した。

三人は敵に勝った。



続・面倒臭い男



三人は一瞬気を失っていた。
「おーい、大丈夫か?」三人の体をテポドーンが揺する。
三人は気がついて起き上がる。そこに敵の姿はない。
「俺たち勝ったんだな。」フィロヤはまだ実感が湧かない。
「おい、見ろよ。槍が落ちているぜ。」サクーンがゴルゴスの槍を見つけて拾う。
「これがファットバギーの手に渡ったら、とんでもないことになってるな。」トゥーマコは背筋が凍る。

「悪の手に渡すわけにはいかないから、君たちに渡すんだよ。君たちならゴルゴスの槍を正しく使ってくれると信じているからさ。」テポドーンはサクーンの肩を叩く。

三人はゴルゴスの槍を手に入れた。

「ありがとうテポドーン。」トゥーマコは礼言う。
「良いってことよ。それより、今日はどこで寝るの?」テポドーンが尋ねる。
「まだ決まってないよ。けど、今日は頑張ったご褒美に焼肉でも食べたいね。」フィロヤはニヤける。
「それ、俺も賛成。」サクーンも晩飯は焼肉が良いようだ。
「しょうがないな。まだ賞金の残りもあることだし、今日はパーっとしますか。」トゥーマコも焼肉は大賛成だ。

「それなら良いお店を知ってるよ。イスガキ牛を食べられるとこ。あと、うちでやってるホテルがあるから、今日の夜はそこに泊まって。もちろん、お金はいらないからさ。市街地までは遠いから、馬車で行こう。ちょっと待ってて。」テポドーンの家は富豪のようだ。三人はテポドーンに甘える。

長かった道のりも、馬車だとすぐに市街地まで着くことが出来た。三人はテポドーンおすすめのイスガキ牛が食べれる店、焼肉キンジョウに着いた。
「じゃ、俺はここまでで。ホテルには連絡を入れておくよ。じゃ、達者でね。」そう言うと、テポドーンは家に帰って行った。変わってるけど、良い奴だ。
「なんかテポドーン様様だね。」フィロヤは馬車が見えなくなるまで手を振った。
「さっ、中に入ろうぜ。」サクーンはよだれを垂らしかけながら、店に入ろうとする。
「ちょっとまて。店の前にいるやつ、何か見たことないか?」トゥーマコは嫌な予感がした。
三人は恐る恐る近づき、記憶を辿る。しかし、逆にその男は三人に気がついてしまった!
「あれ?昼に公園のとこであった子たちだよね?何しとん?」焼肉キンジョウの前をうろつく男は、なんとマルタだった。
「伝説の武具は手に入ったん?あ、ほんま。良かったね。じゃ、僕情報教えたわけだし、何かお礼もらってもええんちゃうかな〜、な〜んて。」マルタはウザい。
「焼肉おごれと?」サクーンは半ギレでマルタに聞く。
「いや、別にそういうこと言ってるわけちゃうで。けど、お礼の一つはしといた方がええんちゃうかな〜、思って。」
「じゃ、マルタさんも一緒に入りますか?」耐えかねたフィロヤはマルタを誘ってしまった。
「あ、ほんま。えらいおおきに。」マルタは先頭で店に入って行くのだった。そして、当たり前のように、酒を飲み、一番高い肉を食べ、自分がお腹いっぱいになると、そそくさと帰って行くのだった。
三人は心の中で、こんな大人になるものかと、堅く誓うのだった。
食事を終えた三人はホテルに向かった。ホテルでゆっくり休み、翌日ナーファに帰ろうとしたが、海がシケで船が出航できなかった。しかたなく、翌日は民宿に泊まり、イスガキをエンジョイしたのだった。
出航の朝、快晴でシケもおさまった。三人はヘリオスの剣とゴルゴスの槍を土産に、ナーファに戻るのだった。



再戦


サイファ御嶽に向かう四人は浜辺で朝を迎えていた。
「おーい、朝やで〜。朝飯食べようぜ。」ヘイオスは三人を起こす。
三人は目を擦りながら、しぶしぶ起きた。まだ頭がぼーっとしている。だが、ヘイオスの手を見て驚く。なんとヘイオスは大きなイラブチャー(アオブダイ)を両手に持っていたのだ。
「あ、これ?昨日の炭残ってるから、朝から焼き魚でも食べようかと思って海に潜ってきた。こんな色した魚がいるなんて、ウォキナワはすごいな。」ヘイオスは感動する。
いや、すごいのはお前だよヘイオス。三人は心の中でそう思いながら、朝ご飯を食べるのだった。ヘイオスは器用な男だ。

「朝からお腹いっぱいだぜ。今日も良い天気だし、すぐ準備して、サイファ御嶽に早めに向かおう。」ヤラキが提案する。
「そうだね。イスガキに行った三人よりも、早く帰りたいしね。」マサーは賛成だ。
四人は支度を済ませ、太陽浜からサイファ御嶽に向かって出発した。途中、サイファ御嶽までの行き先を示す看板を多く見つけた。そもそも御嶽とは、ウォキナワに古くから伝わる聖地である。サイファ御嶽はウォキナワの中でももっとも神聖な場所で、ウォキナワの東側にあり、神が舞い降りたとされる島、キダカ島を一望することが出来る場所だ。案内の看板が多いのも、巡業でやってくる人が多いのが理由だ。

坂道を三十分ほど登ると、空気が引き締まっていて、別次元に入ってしまったかのような感覚を感じた。どうやらここがサイファ御嶽のようだ。

四人は鳥居を潜り、中に入る。
「なんかすごく気分が晴れやかだ。ここが神聖な場所っていうのが肌でわかるね。」マサーは御嶽から発せられるパワーを感じるようだ。
「俺も。なんか強くなったような気がする。」セイゴンは適当に言ってみる。
「それはない。」ヘイオスは呆れ顔だ。
「今日は参拝にやってくる人もいないみたいだな。怖いぐらい静かだぜ。」ヤラキは辺りを見回す。
「たまたまじゃないか。それよりさっさと伝説の武具のある場所を見つけないとな。奥もまだ何かありそうだし、行ってみようぜ。」ヘイオスを先頭に四人は奥に進む。

少し歩くと、大きなほこらが見えてきた。ほこらの前で、怪しい奴らが地面を掘り返している。人数は三十人ほどだ。四人は直感で、ファットバギーの一味であることに気がついた。ヘイオスは先制攻撃を仕掛けようと、飛びだそうとしたが、マサーに止められた。そのまま四人は一時、木の陰に身を隠す。
「少し待て、ヘイオス。奴らの動きを見ていると、どこに伝説の武具があるのか、わかっていないみたいに闇雲に地面を掘り返している。ここは少し様子を見て、一気に片をつけよう。」マサーは冷静にヘイオスに訴える。ヘイオスは声を出さないようにオーケーの合図をした。それを見て、ヤラキとセイゴンも無言でマサーに向かってうなずく。
それから、十分ほど経った。まだ敵は地面を掘っている。ヘイオスは小声でマサーに話しかける。
「もうええんちゃう?あいつら倒して、俺たちがゆっくり探せば良いじゃないか。」ヘイオスは待つのが苦手だ。
「まだだヘイオス。闇雲に突っ込んでも、逆に俺たちの方がやられるかもしれないぞ。敵の人数はかなり多い。今は待つんだ。」マサーは必死に訴えかける。
ヘイオスはヤラキとセイゴンの方を見る。ヤラキはまだ耐えようという表情。セイゴンは…、鼻をほじって、俺はどうでも良いという表情だ。
「わかったよ。」ヘイオスは小声で喋った。

しかし、事態は急転する。
人数が多くて見えなかったが、奥で座っている男がいる。その男が立ち上がった。
「おい、お前らまだ時間かかってるのかよ。こんなにタラタラしていたら、絶対兄ちゃん機嫌悪くするぞ。お前らが兄ちゃんに殺されるのは別に良いけど、俺が怒られるのは違うだろうが。俺のためにせっせと働け。」リーダーらしき男が、手下にどなり散らした。男は手下に当たり散らす。

「ああっー!」それを見ていたヘイオスは無意識に大声で叫んでしまった。敵は四人に気づかれてしまった。四人は仕方がないので、木の陰から姿を現す。
「お前のせいでバレたじゃないかよ〜、ヘイオス!」セイゴンはここぞとばかりにヘイオスに怒る。
「どうしたんだ、ヘイオス?」マサーもヘイオスに驚いている。
「そら、びっくりするわ。あいつ、俺がバックレ街でぶん投げてやったやつやもん。」ヘイオスはまだ驚いている。
「ん、誰なんだ?」マサーがヤラキに尋ねる。
「ウラッソの町の繁華街で、女の子に無理矢理絡んでいて、ヘイオスにお仕置きされたやつさ。まっ、あの時のヘイオスも不純な動機だったけどな。」ヤラキが苦笑いをする。

ヤンキーの眼鏡、短足、色黒、変なアロハシャツ…。バックレ街で見たときは気には留めなかったが、この変な格好は、まさしくあの時のチンピラだ。チンピラもヘイオスに気づく。
「てめーはあの時の。俺様の邪魔をしやがって。お前のせいで、背中がまだ痛いぜ。兄ちゃんはいないが、今日はこれだけの人数だ。おめーをあの世に送ってやるには充分だぜ。」チンピラは吠えた。
四人の脳裏に、チンピラのいう兄貴というのが浮かぶ。
「ということは、お前の兄貴はファットバギーなのか?」ヤラキが首をかしげながら、チンピラに尋ねる。
「そうとも。我が名はアントニー。俺の血には兄貴と同じ、王者の血が流れているのさ。お前らは兄貴の邪魔をする奴らだな。優しい兄貴の邪魔をするやつは俺が許さないぞ。」そう言うと、アントニーは服を脱いだ。少し胸が垂れている。
「この前はお前らに不覚をとったが、今日は手加減はしない。本気だ。兄貴の絶対防御にはまだ遠く及ばないが、俺のタレパンダでも、お前らの攻撃は効かないぞ。」
なんと、アントニーもタレパンダを持っていた。
「さぁ、殺人ショーの始まりだ。」アントニーは不敵に微笑む。

「ふん。もう一度やられないと気が済まないようだな。僕ちゃんがお仕置きしてあげるよ。」ヘイオスも不敵に笑う。
「結局こうなるのね。けど、どうせやるんだから良いか。」マサーは剣を構えた。
「やろう、やろう。遅いか、早いかの違いだから、先にやっちゃいましょう。」ヤラキのテンションがいきなり高まりだした。
「よし。俺のサポートよろしく。」セイゴンは堂々と負け犬宣言だ。

バックレ街でのリベンジ戦が、今幕を開ける。



矛盾


「やっちまえ!」アントニーは手下に指示を出す。手下どもは一斉に襲い掛かった。
「セイゴンは役に立たない。俺たち三人で片づけるで。」ヘイオスが指示を出す。ヘイオスの両翼をヤラキとマサーが固める。

三人の作戦は雑魚を先に片づけて、最後にアントニーを倒す、…はずだった。
「あれ?何かこいつら強くないか?」ヤラキは焦る。
「こいつら強いよ。前の奴らとは全然違う。」マサーも必死だ。

雑魚だと思っていたアントニーの手下は計算外の強さだった。三人の表情に焦りが見え始める。
「ふっふっふ。そりゃそーだ。なんてったって、俺は可愛い弟だからな。兄貴が俺のために親衛隊を選りすぐって作ってくれたのさ。俺がタレパンダを出すまでもなかったな。」アントニーは微笑む。

だが、この男の心は折れない。
「ふん、親衛隊だから、なんだってんだ。俺たちだって、今までの旅の中で成長しているんだ。こんなところで負けてたまるかぁ!」ヘイオスは敵を薙ぎ払う。
「そうだな。さっきの弱気発言は忘れてくれ。おらぁぁっ!」ヤラキが気力を吹き返す。
「勝負はまだ始まったばかりだ!」マサーも本来の動きを取り戻す。
そこから三人は必死に戦った。一人を除いて。セイゴンは一人でこっそりと木陰に隠れるのだった。
だが、その時、セイゴンとアントニーの目がたまたま合った。
「ん?お前は…。そうか。そういうことか。」アントニーは不気味に笑う。それを見てセイゴンも微笑み返す。

その間に、三人は手下を全滅させた。しかし、いつもの余裕はない。三人とも傷だらけで、呼吸も乱れている。
「残るはお前一人だ。お兄さんたちが、礼義を教えてやるよ。」ヘイオスはアントニーを挑発する。
「ふん。そんな姿でよく言うぜ。さて、どうやって、俺のタレパンダを破るのかな?楽しませてくれよ。」アントニーはまだ余裕だ。タレパンダだというアントニーの腹は、ただの中年太りにしか見えない。
「まずは、こちらから仕掛けよう。もしかしたら、絶対防御もハッタリかもしれないからね。」マサーは全力でアントニーに斬りかかる。だが、
「何だこの感覚は?硬くもなく、柔らかくもない。けど、斬れない!」マサーは驚く。剣が全く動かない。
「言っただろ?」アントニーは冷たく笑う。アントニーはマサーの胸ぐらを掴むと、投げ飛ばした。
「この野郎。今度は俺だ!」ヤラキもアントニーに斬りかかる。だが、やはり斬れない。ヤラキはアントニーのカウンターパンチを受け、ぶっ飛ばされる。
「俺が…!」ヘイオスもアントニーに突っ込もうとする。
「待て。今行っても結果は同じだ。考えるんだ。やつの防御を破る方法を。」マサーはヘイオスを止める。
「くそっ!」ヘイオスは我慢して踏み止まった。
「こんな時こそ冷静になろう。」ヤラキが落ち着きを取り戻す。
「俺様に勝てる可能性は無いが、チャンスをやろう。作戦でも考えるが良い。」アントニーは余裕だ。

三人は必死に勝つことだけを考えた。そして、ある作戦を思いついた。
「これでダメだったら、もうお手上げだぜ。」ヤラキはおどける。
「だが、この方法以外は無い。」マサーは自信満々だ。
「決着をつけるぜ。」ヘイオスに気合がみなぎる。
三人はシキネ園で手に入れた、ガリオンの盾を袋から出した。そして、それを三人で持つ。
「行くぞっ!」マサーの掛け声で、三人は呼吸を合わせ、ガリオンの盾を盾にしながら全力でアントニーに体当たりした。
しかし、アントニーは微動だにしない。
「それがどうした?所詮は浅知恵。そろそろ止めを刺してやろう。」アントニーは両腕を振りかぶった。万事休すか。
「へへ。やっぱり、馬鹿だから気づかなかったか。」ヘイオスは満面の笑みだ。
「ほんと。馬鹿で良かった。」マサーも笑う。
「お前ら何を笑っているんだ?これから死ぬのがそんなに楽しみなのか?じゃあ、今すぐ冥土に送ってやろう。」アントニーは振りかぶった腕で、三人を叩きつぶそうとした。だが、その時にやっと自らの体に起きた異変に気がつく。
「な、なんだと?」アントニーが気がついた時には、もうすでに遅かった。なんと、タレパンダにひびが入っているのだ。
「今だっ!ひび割れているところを狙えっ!」ヤラキが叫ぶ。
三人はガリオンの盾を捨て、一斉に剣をアントニーに突き刺す。三本の剣はアントニーの急所を確実に貫いた。
「うぅ、うわぁっ。ま、まさか、俺のタレパンダが。何故だ?」アントニーは困惑している。
「矛と盾だよ。」マサーがつぶやく。
「このガリオンの盾は、伝説の武具の一つで、最高の硬さを誇る。ガリオンの盾が君のタレパンダと同じ硬さなら、相打ちだったが、ガリオンの盾の方が勝った。ただそれだけのことさ。矛なら突き刺すところだったが、盾なので、体当たりをさせてもらったよ。」マサーが説明した。
「く、くそが。だがな、兄貴の強さは次元が違う。必ず俺の敵討ちをしてくれるはずだ。お前らの本当の絶望を知ったときの顔、死に際が見れなくて残念だぜ。先にあの世で待っててやるよ。」そういうと、アントニーは倒れた。壮絶な最期だ。

三人の呼吸は乱れている。だが、ハイタッチをして勝利を喜んだ。
三人はアントニーのリベンジを退け、勝利したのだった。



託された思い


「勝った〜!」三人は勝利の雄叫びをあげると、そのまま倒れこんだ。
アントニーとの死闘で、体力が底を突いたのだ。

三人が倒れて休んでいると、木の陰からセイゴンが出てくる。
「やったな。お前らすごいよ。俺はビビって何も出来なかったよ。ごめんな。」セイゴンはとりあえず謝った。
「怒りたいけど、その体力すら残ってないわ。とりあえず、水を飲ませてくれ。」ヘイオスは、セイゴンに水を持ってくるのをお願いした。
「わかった。泉を探してくるから、少し待っていてくれ。」そう言うと、セイゴンは泉を探しに走りだした。
「しっかし、アントニーっていうやつ、今までの奴とは強さのレベルが違ったな。」ヤラキは、戦いを振り返る。
「うん。ガリオンの盾がなかったら、やられていたのは俺たちだった。間違いない。ファットバギーは、アントニーが恐れるほどの強さなのだから、そう考えると恐ろしいね。」マサーは冷静に戦力の分析をする。
「そんなに気にしないでおこうぜ。」ヘイオスが声をかける。
「確かに、アントニーも強かった。けど、俺たちにも頼もしい仲間がいるじゃないか。」ヘイオスがヤラキとマサーに語り掛ける。
ヤラキとマサーの頭に、イスガキに行っている三人の顔が浮かぶ。ヤラキとマサーの表情が明るくなる。
「そうだな。みんなで戦えば、絶対何とかなるよな。」ヤラキは気持ちを強くした。
「それに、伝説の武具もある。」マサーが思い出す
「おーい、水汲んできたぞ〜。」セイゴンが水を汲んで戻ってきた。三人は、あっという間に飲み干してしまい、セイゴンはもう一度水を汲みに行くことになった。

水を飲み終えた三人は、とりあえずセイゴンに説教をした。だが、セイゴンの反応は薄い。セイゴンは根っからの負け犬ということで、その場は収まった。

「さてと、一息ついたし、伝説の武具を探しますか。」ヘイオスは気持ちを切り替える。
「そうだな。あいつらがあの人数でこれだけやって見つからないなら、俺たちだけならもっと時間かかりそうだし、早めにとりかからないとな。」ヤラキは気合を入れる。
「そうだね。」マサーはアントニーの手下が使っていたスコップを手に持って、手下たちが掘っていたところに一刺しした。すると、鈍い音がした。何か硬いものに当たったようだ。
「マサー、もう一回やってみてくれ。」ヤラキがマサーに頼む。マサーがもう一度スコップを刺し、おもいっきり土を掘り返す。すると、金属で出来た箱が出てきた。
驚きつつも、四人で協力して箱を地上に上げる。そして、中を見てみる。そこには、なんと弓と矢が入っていた。弓矢の横に、古臭い字で書かれた手紙が置かれてある。ヘイオスが手紙を読む。
「ここにある弓矢は、サイファ御嶽に伝わる、エルフェの弓矢である。正義の心を持って矢を射てば、必ずや悪の心を打ち抜くだろう。どうか、正しい心の持ち主に使われることを、ただただ祈るだけである。」
「誰が残したかはわかんないけど、重みのある手紙だな。」ヤラキは心にじんわり来ている。
「そうだね。見つけたのが俺達で良かったんじゃん。」セイゴンは早速調子に乗る。
「誰かはわからないが、必ず正しいことに使うことを、ここに誓います。」マサーは熱く誓った。

四人はエルフェの弓矢を手に入れた。

「よし、目的の物も手に入れたし、ナーファに帰ろうぜ。」ヘイオスが言う。
「そうだね。けど、ゆっくり帰らないか?疲労が溜まって、みんなきついぞ」ヤラキは疲労を心配する。
「じゃ、昨日キャンプした場所で、もう一泊するのはどうかな?」マサーが提案する。
「それ、有っちゃ、有り。」セイゴンは飛び跳ねる。
ヘイオスもヤラキも賛成だ。四人は太陽浜に向かい、ビーチでくつろいだ。夜はもちろん泡盛を飲みながら、近くにいた女の子を誘ってバーベキューだった。夜遅くまで勝利を祝うカチャーシー(沖縄の伝統的な踊り)をして、眠りに着いたのは朝日が昇る前だった。
夜が明けても、熱い日差しを浴びながら、四人は昼まで寝ていた。やっと昼過ぎに起きた四人は支度をして太陽浜を出発する。途中、バルヨナそばの店に寄り、そばを食べてごきげんの四人は、夕陽を背にしつつウォキナワ大学に戻るのだった。



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