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獄中小説「獄窓」コミュの獄中小説「獄窓」第1話「逮捕」1

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「…君、…君

、陽色君てば。」




「……うん?」




慧「やっと起きた。ただいま。仕事終わったょ。」

2005年、夏。

それは焼けつくような暑さのある日の出来事だった。

陽色「おー、おかえり。今日はどうだった?」

慧は近所の保育園で保育士のアルバイトをしている。

元々は吉原の最高級ソープランドのナンバーワンで、
月に10日も働けば充分東京の一等地で最高級マンションに住み遊んで暮らせるだけの収入を得ていたが、陽色と出会ってからはスッパリと足を洗い、時給800円のアルバイトに精を出している。

慧「たっくんていう男の子がいてね、
その子が“せんせーこれあげる”って言って松ぼっくりをくれたの。
超カワイイんだよ!」

陽色「はは、そっか。よかったな。」

陽色は携帯電話着信履歴を見た。煌也から着信がある。おそらくジョイも一緒だ。
煌也は都内を主に縄張りとする武等派で知られるヤクザ、ジョイは残忍さではヤクザをもしのぐとの声も高いチャイニーズマフィアの一員である。
陽色もかなり喧嘩っ早いが、二人の性格の荒さはとても手が付けられず、3人でいると陽色が一番温厚に感じてしまうほどだ。


陽色「慧、お前ちょっと留守番してろ。煌也とジョイに会ってくる」

慧「え〜〜!つまんなーい!慧も一緒に行く!」

陽色「ダメだ。あいつらと一緒にいるのは危ない。すぐ帰ってくるよ。帰ってきたらラーメン食いに行こう。」

慧「ほんと?ゼッタイだよ?早く帰って来てね…。」

慧「…ねぇ陽色君。」

陽色「ん?」

慧「慧ね、怖いんだ。
陽色君が今のアブナイ仕事をしている限り、
いつかはパクられて離れ離れになる日が来るじゃないかって…。
それに自分でクスリやるのももうやめてほしーんだ…。陽色君前に言ったよね。
自分がこんな仕事をしてる以上、もしそうなったら俺の事待たなくていいからなって。
ケド、そんなの無理。そうなったら、
何のために慧今までの人脈全部切ってフーゾク上がって、電話帳も陽色君1件だけにしたかわかんないよ。もう慧には陽色君しかいないんだよ?」

陽色「大丈夫だよ。もうすぐバイの仕事も自分でやるのもやめる。
CDのレコーディングももう明後日だし、やっと音楽だけで生きていけそうなんだ。
お前を一人にはさせねーよ。
」

慧「ほんと?一人にしないでね。ゼッタイだよ?」

陽色「おう心配すんな!
じゃ行ってくらぁ。」


歌舞伎町

煌也とジョイが現れた

煌也「おう、陽色」


ジョイ「トバシのケータイ作りに行くんだ。付き合ってくれよ。」

「ああ、じゃ行くか。」

3人が歌舞伎町の裏通りを歩いていたその時、
前からいかにもな格好をしたチンピラ達が肩をゆすりながら歩いてきた。

煌也「なんだありゃ…?」

ジョイ「自分たちがこの歌舞伎町を仕切ってると勘違いしてるチンピラだな。」

陽色「…。」

チンピラ達は陽色たちのすぐ前まで来ていたが、
どちらも道を譲る気はない。

チンピラ達の一人が口を開いた。

チンピラ「おい、テメーら何さっきからガンくれてんだコラ。ここがどこだかわかってんのか!?
やっちまうぞ!?」

陽色たちは無言で顔を見合わせる。

煌也「何言ってんの?コイツら。」

ジョイ「へへ…。
ジョ−トージョートー。
ほれかかっておいで?」

チンピラ「ふざけんなこの野郎!!」


チンピラ「な…なんなんだこいつら…。強すぎる…。」


ジョイ「よえーなぁ。」

煌也「ジョイ、お前ストレート外しただろ?見てたぞ?」

ジョイ「バカ、あれはフェイントって言うんだ。」

陽色「うし、行こうぜ。すぐデコが来る。」


再び3人が歩き始めたその時、
陽色の売人専用携帯が鳴った。

客の鎌田からだ。

客の鎌田「陽色さんどうも。
今回はまとめて注文しようと思います。大丈夫ですか?」

鎌田は太い客だが、最近ちょくちょく注文をしておいてバックレる事が続いている。
が、陽色はこの客から入る利益を考えて、その事については今までは大目に見ていた。
前回バックレた際には、今後もう二度と約束を破らないときつく約束もさせた。

陽色「本当に大丈夫なんですね?もう前回の様な事は認めませんよ?」

客の鎌田「大丈夫ですよ!じゃあ後で金振り込みますんでよろしくお願いしまーす。」

電話を切り、陽色は煌也とジョイに言った。

陽色「悪ぃ、客から電話だ。また後で電話するわ。」


煌也「おう、気ーつけてな。
俺らはここで待ってるわ。」


・・・ところがそれからいくら待とうが鎌田からの連絡がない。

またバックレたようだ。・・・

陽色「あの野郎…。」

陽色は車に乗り込み鎌田の家に直接乗り込む事にした。


鎌田の持ちビル


来る途中何度も電話はしたがいくらしても出ない。
インターホンを押す。返事はない。

一度や二度のバックレではない。
しかも一度の注文単位がでかいだけにこちらの損害もでかかった。

陽色の怒りは頂点に達していた。
ドアノブを引く。鍵は掛かっていなかった。


土足のまま中へ入り、
3階にある鎌田の部屋を開ける。

足の踏み場もないほどゴミで散らかった室内。

しかしそのゴミの中に紛れて落ちているのは、紙屑のようにクシャクシャに丸められた一万円札の数々、

ブルガリの時計、
ヴィトンのカバン、
エルメスの財布…。
そして空のシャブのパケと使用済みのポンプ。

金は腐るほど持っているが、
何年も部屋を片付ける事も出来ないほどだらしなく不潔で、
ポン中の鎌田の部屋の光景は異常だった。


その宝とゴミの中で鎌田は全裸で寝ていた。

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