いま資料と言えるもののないところで、一般的な日本訳がどうなのか、明確ではないが、僕の持っている河出書房新社の「世界の大思想」第2期4巻の「マルクス・経済学哲学論集」の「共産党宣言」では「プロレタリアートと共産主義者」の章の冒頭がこのようになっている。「共産主義者は、プロレタリア一般とどういう関係にあるか? / 共産主義者は、他の労働者政党にくらべて何も特殊な政党ではない。」この後続いていくのであるが、この冒頭の訳は、日本で一般的なのであろうか。ちなみにこの訳者は都留大治郎氏。レクラム文庫版を見ても英語版を見てもこのようには訳せない。英語版はドイツ語を追っているしスペイン語版の標準と比べても同じように訳せる。英語版を普通に訳すとこうなる。
「共産主義者は、他の労働階級諸党に敵対する別個の党を結成しない。」
The Communists do not form a separate party opposed to other working-class parties.
つまり、河出書房新社の「世界の大思想」版「共産党宣言」では、書名に対する矛盾が生じないことを配慮したのか、あるいは既成政党への気がねがあったのか、かなり原文の趣旨を曲げている。