JCPと国民統一戦線の建設コミュの【『広原盛明のつれづれ日記』と読者のコメント、短い私見】

『広原盛明のつれづれ日記』

2018-02-19
「市民と野党共闘をどう評価する」、京都で小さなシンポジウムが開かれた、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか（１５）、改憲派「３分の２」時代を迎えて（その１０２）Add Star
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２月１７日（土）の午後、京都市内で小さなシンポジウムが開かれた。テーマの１つは「市民と野党共闘をどう評価する」というもの。参加者は少人数ながらも全国（東京、浜松、名古屋、神戸、京都など）から集まり、各分野から多彩な議論が交わされた。私も最近の野党共闘に関する情勢について発言したので、私見、他見を交えて感じたことを報告したい。

まず、市民と野党共闘に関する全体評価については、それをオールマイティー視することに疑問を投げかける消極的意見と、市民運動と野党共闘の連携のなかから「新しい社会を（市民と政党で）創っていこう」という動きが立憲民主党として結実した（しつつある）と評価する積極的意見が交錯した。面白いのは、両者とも共産党がその動きに大いに貢献しながらも、（その旧い体質のゆえに）新しい時流に取り残されつつあるという点で意見が一致したことだ。

まず、昨年総選挙後の情勢変化の特徴としては、第１に共産党の存在感が小さくなったことが挙げられる。共産党の議席が減ってマスメディアへの登場機会がめっきり減り、国民の前に姿が見えにくくなった。野党間でも順位が立憲民主党、希望の党、民進党の次となり（たとえばＮＨＫ国会討論会など）「格下政党」の印象が一段と強まった。新聞各紙の紙面でも野党関係の記事は旧民進系３党に集中し、ときたま共産党に触れるという程度の軽い扱いになっている。

第２の変化は、政党間の力関係が変わったために共産党が野党共闘のイニシャティブが取れなくなり、市民と野党共闘が進まなくなったことだ。言うまでもなく、事態打開の決め手になるのは野党第１党の立憲民主党の動向だが、枝野氏の関心はもっぱら立憲民主党の体制固めに集中しているので（いまのところ）取り付く島もない。市民と野党共闘の旗は降ろさないまでも、関心がそこから遠く離れているので運動が停滞し、事実上の「塩漬け」状態が続いているのである。

この状況をどうみるかについて重要な指摘があった。それは「市民と野党共闘」には「市民と政党」「政党と政党」という２つの側面があり、これを区別しないで混同すると判断を誤るという指摘である。「市民と政党」の連携や共闘についてはこれまで多くの経験や蓄積がある。市民要求を実現するために個々の政党が協力する、政策を掲げる、共同行動を起こす、議会活動の中で取り上げるなどは日常活動であり、ごく普通の出来事として行われてきた。また「政党と政党」の連携や共闘についても、選挙戦における個別政党間の政策協定や候補者調整など、これまで数多くの事例が積み重ねられてきた。

ただ、これらのケースは「市民と個々の政党」「個別政党間」の共闘であって、取り上げられるテーマも限定的なものが多かった。それに対して、今回の「市民と野党共闘」は、憲法や国家安全保障など国家体制の基本にかかわる「国家的大事」を共同テーマとして、個々の政党がその垣根を超えて「野党全体」が結集し、しかも市民が「野党共闘の絆」としての役割を果たすという点でこれまでにない画期的なものになったのである。

問題は、それが「民進党解体」という一大策謀によって崩壊し、共産党の決断によって辛うじて命脈を保ったものの、実質的には機能不全状態に陥っていることだろう。民進党解体にともなう一連の混乱に嫌気がさしたのか、野党共闘への国民の不信感が深まり、市民と野党共闘の再結成という方向へ世論がなかなか動かないのである。その結果、市民と野党共闘は「市民と個々の政党」のレベルに逆戻りして、立憲民主に注目と期待が集まるようになった。今年に入ってからの各社世論調査においても、立憲民主は軒並み１０％前後の高支持率をキープしている一方、希望や民進は１％前後、共産は３％程度に沈んでいる。

結論的に言えば、１７年衆院選では野党第１党の民進党が解体されるという前代未聞の危機的状況に直面して、民意はこの危機を救う代表選手として個別政党の立憲民主を選択したのであり、「市民と野党共闘」体制ではなかった。枝野氏らが民進党解体に手を貸したにもかかわらずその政治責任を問われず、あたかも救世主のように持ち上げられたのはこのためだろう。一方、共産党は筋を通して野党共闘路線を堅持したにもかかわらず大きく後退した。言い換えれば、市民と野党共闘は民進党解体によって「容器」は残ったものの「中身」が失われたために、市民と政党の関係は個々の政党レベルに立ち戻ったのである。

なぜ市民と野党共闘はかくも脆く崩れたのか。そこにはこれまで「自共対決」を一貫して標榜してきた共産党が、ある日突然「市民と野党共闘」路線に方針転換したことと無関係だとは思われない。長年「自共対決」にこだわってきた共産党が突如方針転換しても、その「プロセス」が開かれたものでなければ国民の共感を呼ばないし、信頼もされない（いつまた変わるかもしれないから）。また、新しい方針を十分にこなせるだけの組織文化が党内に成熟していなければ、それを実行に移すこともできないし、民意を獲得することもできない。

結局、民意の決め手となるのは、当該政党が信頼に足るかどうか、国民の総意に基づいて行動できるかどうかであろう。言い換えれば、組織が多様な国民感情を受けとめることのできる「開かれた体質」を有しており、民主的な討論に基づいて政策や方針を決定できるかどうかが信頼の決め手になる。政党の結党理念や綱領、政策や方針の持つ重要性は否定しない。しかし、政策や方針が全てではない。それらがどのように決定され、実行に移されていくかという「プロセス」が重要なのであり、そのプロセスを検証できる「透明性」が重要なのである。

この点、強固な組織政党である共産党がこの期に及んでもなお「長老支配」「上意下達」「閉鎖性」といったマイナスイメージを拭いきれず、積年の「歴史的負荷」を払い除けることができないのは残念なことだ。民意はトータルな世論ともいうべき国民感情の総体である。政党間に政策や方針の違いがあったとしても、それらを包含した政党に対する総体的な国民感情すなわち「政党イメージ」が最終的な評価基準になる。政党への「好感が持てる、持てない」「信頼できる、できない」といった評価は決して気まぐれなものではない。その背後には政党への「トータルな評価」が横たわっていると見るべきなのだ。

立憲民主党は当分動かないだろう。「右でも左でもなく前へ」が枝野氏の信条であり、その政治姿勢が１０％前後の支持率につながっているのだから、今さら野党共闘に舵を切る必要がないのである。共産党はそんな動かない相手に過度の期待を掛けるよりも、「政党イメージの変革＝党の体質改善」に取り組んではどうか。振り向かない相手をいくら追いかけても疲労感が残るだけで、「虚しさ」の蓄積は消耗感の深まりとともに戦意を喪失させる。すでにその兆候は各地であらわれていて、体力がどんどん失われていっている。（つづく）

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読者のコメント

通りすがりのモブ 2018/02/21 22:17
初めまして、こんにちは。いつも広原先生の記事を読ませていただいている者です。
今回、コメントをしようと思ったのは、記事を読んで、先生の日本共産党に対する批判が、若干、共産党「自己責任論」になってしまっているのではないかという疑問を感じたからです。
なぜそう思ったのかは、それは先生の共産党の「長老支配」「上意下達」「閉鎖性」という組織批判について、それ自体はなるほどと思う反面、でも国民はそんなに共産党について詳しくリサーチして判断しているのだろうか？という疑問を持ったからです。それは私自身、投票する時に共産党のトータルの姿をリサーチして投票しているわけではないし、他の政党についても恥ずかしながらそこまでちゃんとリサーチして投票しているわけではないと思うからです。共産党も含めてどの政党に投票するかは、その人自身が受けてきた教育、生活してきた周りの環境によって形成された思想やテレビのワイドショーや新聞・雑誌、ネットなどの媒体を通して形成されるイメージなど、いろいろな要素が大きな影響を及ぼしているのではないでしょうか。その意味で、共産党が自身の組織を改めたとしても、多くの有権者が各政党の政策などについてまったく勉強しないで、なんとなくワイドショーを見て、やっぱり安倍さんだね！自民党だね！　共産党？ソ連や全体主義はダメだよ。と判断する可能性や、あるいは地縁や所属している組織のしがらみに合わせて投票する可能性もあるのでは・・（私はできればそうなりたくないです）という不安を感じます。以上、私自身、何か特効薬や答えを持ち合わせてないのですが、記事の共産党に対する批判を見て、そういう疑問を感じました。もちろん共産党が自身のよくない所を変革していくということはそれ自体は良いことだと思ってます。

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私見

　ある点では広原盛明氏の見解には、該当する箇所がいくつもある。しかし、立憲民主党の躍進は、総選挙での日本共産党の支えがあったからだ。そのことを見落として、共産党力量低下論はやや異なる。いずれにしても、安倍政権の国民無視の反動政策は変わらず続いている。それを見忘れず、政治闘争は重要な段階にある。