こんにちは。
難病制度について別トピックの方で制度の意図や友の会の取り組みなど書いてきましたが、最近はなかなか余裕がありませんでした。
その間に、7月から実施される「指定難病」第2次実施分の疾患に、最終的に「遺伝性ジストニア」が確定しました。
ご覧のように5月13日付官報にも120番として明記されています。
https:/
ひとまずはホッとしました。
良かったと思います（^^
これにより、条件に該当する「遺伝性ジストニア」の患者は（障害者手帳による医療費助成を受けられない方でも）一定の助成を受けることが確定しました。
また同時に、昨年4月から障害者総合支援法に「難病等」の規定が追加されたことに伴い、「遺伝性ジストニア」の患者は（障害者手帳を所得していない人でも）障害福祉サービスも受けられることになりました。
この「遺伝性ジストニア」の難病指定に至る経緯や、結果と留意点、今後の課題などについての詳しい説明は、友の会の会報最新号（DFA通信第21号）に記しておきました。
ここでは、会員以外の方にも重要な点をお伝えしておくとともに、会報では書けなかったことや時期的に間に合わなかった情報も併せて載せておきたいと思います。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
◆経緯
指定に至る経緯の中で重要なことは、昨年11月18日の山本香苗厚生労働副大臣への要望書提出が決定的な意味を持ったということです。
これがなければ指定はありえませんでした。
この点に関して、一番最初の重要なきっかけを作ってくださった平孝臣先生、関係者との最初の仲介役を務めていただいた当会の佐藤治子前副理事長、10〜11月に行なった緊急アンケートと要望書提出でご協力いただいたジストニア大樹の会の古川さん、松浦さん、さらに緊急アンケートに回答を寄せていただいたすべての患者の方々に改めてこの場を借りて感謝申し上げます。
また身内話になりますが、もっちぃ（望月）さん、拓（佐藤）さんにも大いに助けられました。（もっちぃさんには集計結果の処理において途方もない力を発揮していただきました。）
※緊急アンケートの結果については近日中に発表します。
◆結果と留意点
１．対象者の条件
まず対象者の条件ですが、厚労省は結局、以前から発表している以下の説明をそのまま最終的なものとして先日掲載しました。
http://
ここに書かれている「診断基準」を満たした人が対象者になる、ということのようです。
これを額面通りに受け取るなら、結局のところ、DYTまたはNBIAのジストニア遺伝子を保有している人で、なおかつ「重症度分類」としてBarthel-Indexで85点以下の患者ということになります。
（このバーセルインデックスについてはhttp://
ただし、以上の条件をめぐっては、いくつかの疑問点や不確実さが付きまとうように思えます。
２．遺伝子検査体制
といいますのは、外見的特徴から候補遺伝子を絞ったとしても、はたして今の検査体制でそれらの遺伝子を全部調べられるのかどうかという疑問があります。
また、未知のジストニア遺伝子もおそらくまだ存在するでしょう（実際、新たに発見されたジストニア遺伝子は増え続けてきています）。
こうした検査体制上の限界から、上記の条件を実際の現場でどこまで貫徹できるかとなると、不確実さが付きまとうように思われます。
この点に関して、今後難病情報センターで情報が更新される際に、もう少し現場の実情に即した具体的で「緩やかな」基準が発表される可能性があると会報に書きましたが、関係者に問い合わせた限りでは、その可能性は小さいかもしれません。
となると、最終的にすべては専門医の先生方の「判断」にかかってくるのかもしれません。
たとえばですが、二次性の要素（薬剤性、脳疾患、外傷など）が全くなく― この点は制度の大前提となっています ―、遺伝性としか思えないような経過をたどっており、なおかつ近親者にジストニア患者（と思われる人）がいたような場合に、検査結果が陰性であったとしても「潜在的な遺伝性ジストニア」として専門医の先生方が裁量的な判断を下してくれるのか、…こういったところが問題になるのかもしれません。とはいえ、このあたりの事情については、私もまだどう考えてよいのか分かりません。
今、別トピックに挙げていますように、徳島大学の梶龍兒先生にこのあたりの質問もさせていただいているので、先生から何らかの回答を頂けるのではないかと思っています。
もしも遺伝子検査の結果で陽性の判定が出た患者だけに厳密に限定される場合には、残念ながら対象者はかなり狭くなるのを避けられないでしょう。
全身性などの大変な思いをされているジス患者さんの中には、遺伝子検査が陰性であっても外見的には遺伝性に見えるような理解し難い経過をたどって来られた方々が多数いらっしゃると思います。
そのような方々が1〜2級レベルの障害者手帳を取得されていれば無条件に医療費助成を受けられますが、取得できずにいる方もかなりいらっしゃるという印象があります。
まずはそういった方々ができる限り救済対象に含まれてほしいと願わずにはいられません。
全国各地のジストニアの患者さんが遺伝子検査を受けたいと思った場合には、かかりつけの主治医（神経内科か脳神経外科）から必ず最寄りの地域にいらっしゃる「ジストニアの専門医」（全国に20〜30人程度いらっしゃるようです）を紹介してもらうようにしてください。
厚労省の説明では「難病指定医」に診断書（臨床調査個人票）を書いてもらうように記していますが、単なる一般的な難病指定医（多すぎるくらい大勢の医師が指定されています）では事情を理解できないだろうと思います。
それらの専門医の先生を通じて、ジストニア遺伝子検査の出来る医療機関に検査を依頼することになります。
そのような機関はいくつかありますが、おそらく最も整備されている中心的機関は徳島大学でしょう。
また、徳島大学や同大学と連携している北里大学に検査が依頼された場合、検査は国費で行われるため、患者は検査代を負担せずに済みます。
ただし、検査に関連して、いくつかのことを留意しておいた方がよいと思えます。
まず、上述しましたが、二次性（薬剤や他の脳疾患や外傷に誘発されたケース）のジストニア患者は難病制度の対象外となります。
明らかに職業性（習慣性）の方もそうです。
そういった点から、専門医の先生が所見の段階で「あなたは遺伝性ではないので検査の必要はない」と判断する可能性があります。
また、今回の難病指定の結果、遺伝子検査の依頼件数が一時的に増えて、検査作業が滞る可能性もないとは言い切れません。
さらに、検査を受ける場合には、遺伝性であることが分かった場合の心の準備もしておく必要があるでしょう（結婚、出産等のことで悩むことにならないか、など）。
難病制度の趣旨についても基本的な部分はきちんと理解しておく必要があります。
３．助成内容と申請手続きについて
この点については、厚労省が先日、簡潔に要点をまとめたものをHPに載せました（ただしこれは医療機関向けのものですが）。以下をご覧ください。
http://
この表の低所得�兇醗貳冥蠧性気龍�界は年収約160万円です。
一般所得�気鉢兇龍�界は年収約370万円です。
一般所得�兇半絨冥蠧世龍�界は年収約810万円です。
ここで注意していただきたいのは、右ページの1項目目です。
遺伝性ジストニアでかかる月ごとの医療費総額（保険適用前の額であることに注意してください保険の3割負担だと1万円以上となります）が33,300円を超える月が申請時の直前12か月間に3月以上ある場合には、その時点で対象者となります。
この場合は、「バーセルインデックスで85点以下」という重症度の条件を満たしていなくても対象になるはずです。
ただし、ここでも何点か注意する必要があります。
まず、この説明書きには「重症度の条件を満たしていなくても」という注記がありません。
それどころか逆に「症状が一定以上（または高額な医療費を支払っている）場合」と書かれています。
ここに書かれていることは厚労省が以前から「軽症者の特例」という言い方で説明してきた事項なのですが、厚労省は意図的に逆向きの書き方をしているのです。
難病制度の枠組は厚労省が決定しますが、実際に現場で運用する主体は都道府県です。
しかし、都道府県はそれぞれに財政事情が異なりますので、この項目をあまりはっきり書いてしまうと軽症患者の申請が増えて財政運営の厳しい都道府県にしわ寄せが行くため、厚労省もそこまで踏み込んだ書き方ができないようです。
でも、私は難病制度の中枢に関わる与党の方から、これは以前から言ってきた「軽症者の特例」の規定のことで、重症度基準を満たしていなくてもこの条件を満たせば医療費助成を受けられるとの説明を直接聞いていますので、この点は間違いありません。
遺伝性ジストニアの場合でいえば、「バーセルインデックス85点以下」という条件を満たしていなくても、医療費総額が33,300円を超える月が直前1年間に3月以上ある場合であれば、この新制度の対象者になります。
この場合の医療費には、診察・検査・手術・注射・処方・薬代、および食事代を除く入院費、訪問看護費、等が含まれるはずです。
ただし、このあたりの細かい規定は、都道府県によって異なってくる可能性があります。
そしてこの「医療費総額が33,300円を超える3月以上の月」については、自分から領収証のコピーを提出しなければならないかもしれませんので、自分はこの条件に該当するかもしれないと思う方は、必要な場合に備えて領収証を取っておかれることをお勧めします。
あと一つ、ジストニア患者にとっては、はたして「鍼治療」の費用がこれに当たるのかが問題になります。
難病制度の医療費助成は、「保険適用の対象になっている治療法」での医療費しか助成されません。
ですので、たとえば首と目以外のボツリヌス治療では助成を受けられません。
鍼治療は、いくつかの病名に限って保険適用が認められますが、その中に「頚腕症候群」というのがあり、首・肩・腕・手のジストニア患者がこの病名で保険適用を受けている場合があると思います（私自身もそうでした）。
この頚腕症候群についてネットで調べてみると、いまだに正確な定義が確定していないようで、ジストニアも含むように解釈している説明も見られます。
ですので、もしかするとこの点を行政の窓口で主張すれば、33,300円に算入してもよいと認めてくれるかもしれません。
このあたりも、都道府県の窓口によって対応が変わってきそうな気がしますが、私たち患者としては主張すべき点は強く主張した方がよいと思います。
上記の政治家はこの点についても、「もしも鍼治療の保険適用対象の病気にジストニアも含まれる（と解釈できる）のであれば、33,300円に算入することはできます」と、はっきりおっしゃっていました。
さて、厚労省の説明書きに戻ると、２の申請に必要な書類のうち最初の診断書（臨床調査個人票）については、
http://
ここの120番からダウンロードできます。
これを見ると、すべて厚労省の発表通りのチェック項目となっていることが分かります。
これを見る限りでは、やはり遺伝子検査で陽性の結果が出ないと対象にならない可能性が高そうな気がします。
専門医の「裁量的判断」の入り込む余地があるのかどうか、今の時点ではわかりません。
上述のように難病制度の実施主体は各都道府県なので、具体的手続きは地域によって多少違いが出てくるかもしれません。詳しいことはお住まいの都道府県の難病関連サービスについてネットで調べたり、窓口に問い合わせたりしてください。
◆恩恵を受ける患者層と今後の展望
今回の難病制度改革の結果をご覧になって、たぶんジストニア患者の大半の方はがっかりされるかもしれません。
やはり症状のきつい方や地方在住者を初め、医療費を何とかしてほしいと思っていらっしゃる方は多いでしょうが、今回の「遺伝性ジストニア」の指定を通じて確実に助成対象になる患者層は、全体から見ると一握りに留まります。
今回の制度改革で「新たに」恩恵を受けることになるジストニア患者は、結局のところ、遺伝性のジストニアでありながらも上級（1〜2級）の障害者手帳を取得できず、バーセルインデックス85点以下を満たす程度に不自由であるか、または33,300円の規定を満たす人、ということになります。
遺伝性のジストニア患者は概して全身性に発展しやすい（決して全部がそうではなく、局所性に留まる場合もありまる。この点については対象者の条件の最初に示したリンク先の資料を読むと分かります）ようなので、遺伝性でありながら幸いDBSを受けるほどにまでは重症化していないとか、逆にDBSを受けてある程度症状が緩和したとか、あるいはDYT5（瀬川病）などでLドーパの服用により症状を抑えているといった方が、障害者手帳1〜2級を取得できずにいるといったケースが、おそらく典型的な（主な）該当者になるのではないかと推測できます。
国がそれなりに頑張っているのは確かですが、財源との関係もあり、救済範囲を「広くする代わりに浅くする」傾向もはっきりしています。
この制度は困窮している難病患者を一律に無条件に救済しましょうという単純な福祉的制度ではなく、理解不能な先天的な難病について、その解明と治療法開発のためのデータ集めに協力してもらうことと引き換えに患者さんの医療費を助成しましょうというのが基本コンセプトです。二次性の症状をすべて除外しているのは、そのためです。
ジストニアは他の疾患の「派生的症状」として出やすいので、今回「遺伝性」という条件を課すことにより縛りを強くしたといえます。
このように難点や限界を挙げていけば色々あるわけですが、それでも一歩前進と言えば前進なので、恩恵を受けられる方にとっては良かったと思います。
また、最初に記しましたように指定難病に該当する患者は障害福祉サービスも無条件に受けられることになったので、まだ障害者手帳をお持ちでなかった方（おそらく少数でしょうが）にとっては、行政のサービスを受けられる範囲が広がります。
※障害福祉サービスの具体的内容についてはネットや市町村の窓口に当たってください。
厚労省は今、難病患者の就労支援にも取り組み始めていて、まだ都道府県に1人ずつのようですが、難病患者就職サポーターという相談員を配置し始めています。
制度上、この相談員のサポートを受けられるのは難病制度の対象者だけに限定されるかもしれませんが、「遺伝性ジストニア」が難病に指定された結果として、「私はジストニア患者です」というだけでも少しは対応に気遣ってくれやしないか・・・そういうことも考えています（甘いかもしれませんが）。
あとは「ジストニア」の認知度向上にも少しは影響を与えてくれたらと思います。
また今後の課題として、もしも「遺伝性のような経過をたどったけれど遺伝子検査では陰性だった全身性ジス患者」が対象外となった場合には、少なくともまずこのような方々を「潜在的遺伝性」の患者として対象に加えるよう要望していきたいと考えています。
この点については、上記のように梶先生からの説明や実際の現場での今後の状況を踏まえて判断していきたいと思います。
それ以外のタイプのジストニア患者については、残念ながら、今のところこの制度で攻めていくのは正直なところかなり難しいと感じています。
やはり上述したこの制度の基本コンセプトがどうしても障壁になってしまう面があります。
今回の遺伝性ジストニアの指定は、そういう難しい状況の中でのかろうじての一歩前進といったところかと思います。
難病制度について別トピックの方で制度の意図や友の会の取り組みなど書いてきましたが、最近はなかなか余裕がありませんでした。
その間に、7月から実施される「指定難病」第2次実施分の疾患に、最終的に「遺伝性ジストニア」が確定しました。
ご覧のように5月13日付官報にも120番として明記されています。
https:/
ひとまずはホッとしました。
良かったと思います（^^
これにより、条件に該当する「遺伝性ジストニア」の患者は（障害者手帳による医療費助成を受けられない方でも）一定の助成を受けることが確定しました。
また同時に、昨年4月から障害者総合支援法に「難病等」の規定が追加されたことに伴い、「遺伝性ジストニア」の患者は（障害者手帳を所得していない人でも）障害福祉サービスも受けられることになりました。
この「遺伝性ジストニア」の難病指定に至る経緯や、結果と留意点、今後の課題などについての詳しい説明は、友の会の会報最新号（DFA通信第21号）に記しておきました。
ここでは、会員以外の方にも重要な点をお伝えしておくとともに、会報では書けなかったことや時期的に間に合わなかった情報も併せて載せておきたいと思います。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
◆経緯
指定に至る経緯の中で重要なことは、昨年11月18日の山本香苗厚生労働副大臣への要望書提出が決定的な意味を持ったということです。
これがなければ指定はありえませんでした。
この点に関して、一番最初の重要なきっかけを作ってくださった平孝臣先生、関係者との最初の仲介役を務めていただいた当会の佐藤治子前副理事長、10〜11月に行なった緊急アンケートと要望書提出でご協力いただいたジストニア大樹の会の古川さん、松浦さん、さらに緊急アンケートに回答を寄せていただいたすべての患者の方々に改めてこの場を借りて感謝申し上げます。
また身内話になりますが、もっちぃ（望月）さん、拓（佐藤）さんにも大いに助けられました。（もっちぃさんには集計結果の処理において途方もない力を発揮していただきました。）
※緊急アンケートの結果については近日中に発表します。
◆結果と留意点
１．対象者の条件
まず対象者の条件ですが、厚労省は結局、以前から発表している以下の説明をそのまま最終的なものとして先日掲載しました。
http://
ここに書かれている「診断基準」を満たした人が対象者になる、ということのようです。
これを額面通りに受け取るなら、結局のところ、DYTまたはNBIAのジストニア遺伝子を保有している人で、なおかつ「重症度分類」としてBarthel-Indexで85点以下の患者ということになります。
（このバーセルインデックスについてはhttp://
ただし、以上の条件をめぐっては、いくつかの疑問点や不確実さが付きまとうように思えます。
２．遺伝子検査体制
といいますのは、外見的特徴から候補遺伝子を絞ったとしても、はたして今の検査体制でそれらの遺伝子を全部調べられるのかどうかという疑問があります。
また、未知のジストニア遺伝子もおそらくまだ存在するでしょう（実際、新たに発見されたジストニア遺伝子は増え続けてきています）。
こうした検査体制上の限界から、上記の条件を実際の現場でどこまで貫徹できるかとなると、不確実さが付きまとうように思われます。
この点に関して、今後難病情報センターで情報が更新される際に、もう少し現場の実情に即した具体的で「緩やかな」基準が発表される可能性があると会報に書きましたが、関係者に問い合わせた限りでは、その可能性は小さいかもしれません。
となると、最終的にすべては専門医の先生方の「判断」にかかってくるのかもしれません。
たとえばですが、二次性の要素（薬剤性、脳疾患、外傷など）が全くなく― この点は制度の大前提となっています ―、遺伝性としか思えないような経過をたどっており、なおかつ近親者にジストニア患者（と思われる人）がいたような場合に、検査結果が陰性であったとしても「潜在的な遺伝性ジストニア」として専門医の先生方が裁量的な判断を下してくれるのか、…こういったところが問題になるのかもしれません。とはいえ、このあたりの事情については、私もまだどう考えてよいのか分かりません。
今、別トピックに挙げていますように、徳島大学の梶龍兒先生にこのあたりの質問もさせていただいているので、先生から何らかの回答を頂けるのではないかと思っています。
もしも遺伝子検査の結果で陽性の判定が出た患者だけに厳密に限定される場合には、残念ながら対象者はかなり狭くなるのを避けられないでしょう。
全身性などの大変な思いをされているジス患者さんの中には、遺伝子検査が陰性であっても外見的には遺伝性に見えるような理解し難い経過をたどって来られた方々が多数いらっしゃると思います。
そのような方々が1〜2級レベルの障害者手帳を取得されていれば無条件に医療費助成を受けられますが、取得できずにいる方もかなりいらっしゃるという印象があります。
まずはそういった方々ができる限り救済対象に含まれてほしいと願わずにはいられません。
全国各地のジストニアの患者さんが遺伝子検査を受けたいと思った場合には、かかりつけの主治医（神経内科か脳神経外科）から必ず最寄りの地域にいらっしゃる「ジストニアの専門医」（全国に20〜30人程度いらっしゃるようです）を紹介してもらうようにしてください。
厚労省の説明では「難病指定医」に診断書（臨床調査個人票）を書いてもらうように記していますが、単なる一般的な難病指定医（多すぎるくらい大勢の医師が指定されています）では事情を理解できないだろうと思います。
それらの専門医の先生を通じて、ジストニア遺伝子検査の出来る医療機関に検査を依頼することになります。
そのような機関はいくつかありますが、おそらく最も整備されている中心的機関は徳島大学でしょう。
また、徳島大学や同大学と連携している北里大学に検査が依頼された場合、検査は国費で行われるため、患者は検査代を負担せずに済みます。
ただし、検査に関連して、いくつかのことを留意しておいた方がよいと思えます。
まず、上述しましたが、二次性（薬剤や他の脳疾患や外傷に誘発されたケース）のジストニア患者は難病制度の対象外となります。
明らかに職業性（習慣性）の方もそうです。
そういった点から、専門医の先生が所見の段階で「あなたは遺伝性ではないので検査の必要はない」と判断する可能性があります。
また、今回の難病指定の結果、遺伝子検査の依頼件数が一時的に増えて、検査作業が滞る可能性もないとは言い切れません。
さらに、検査を受ける場合には、遺伝性であることが分かった場合の心の準備もしておく必要があるでしょう（結婚、出産等のことで悩むことにならないか、など）。
難病制度の趣旨についても基本的な部分はきちんと理解しておく必要があります。
３．助成内容と申請手続きについて
この点については、厚労省が先日、簡潔に要点をまとめたものをHPに載せました（ただしこれは医療機関向けのものですが）。以下をご覧ください。
http://
この表の低所得�兇醗貳冥蠧性気龍�界は年収約160万円です。
一般所得�気鉢兇龍�界は年収約370万円です。
一般所得�兇半絨冥蠧世龍�界は年収約810万円です。
ここで注意していただきたいのは、右ページの1項目目です。
遺伝性ジストニアでかかる月ごとの医療費総額（保険適用前の額であることに注意してください保険の3割負担だと1万円以上となります）が33,300円を超える月が申請時の直前12か月間に3月以上ある場合には、その時点で対象者となります。
この場合は、「バーセルインデックスで85点以下」という重症度の条件を満たしていなくても対象になるはずです。
ただし、ここでも何点か注意する必要があります。
まず、この説明書きには「重症度の条件を満たしていなくても」という注記がありません。
それどころか逆に「症状が一定以上（または高額な医療費を支払っている）場合」と書かれています。
ここに書かれていることは厚労省が以前から「軽症者の特例」という言い方で説明してきた事項なのですが、厚労省は意図的に逆向きの書き方をしているのです。
難病制度の枠組は厚労省が決定しますが、実際に現場で運用する主体は都道府県です。
しかし、都道府県はそれぞれに財政事情が異なりますので、この項目をあまりはっきり書いてしまうと軽症患者の申請が増えて財政運営の厳しい都道府県にしわ寄せが行くため、厚労省もそこまで踏み込んだ書き方ができないようです。
でも、私は難病制度の中枢に関わる与党の方から、これは以前から言ってきた「軽症者の特例」の規定のことで、重症度基準を満たしていなくてもこの条件を満たせば医療費助成を受けられるとの説明を直接聞いていますので、この点は間違いありません。
遺伝性ジストニアの場合でいえば、「バーセルインデックス85点以下」という条件を満たしていなくても、医療費総額が33,300円を超える月が直前1年間に3月以上ある場合であれば、この新制度の対象者になります。
この場合の医療費には、診察・検査・手術・注射・処方・薬代、および食事代を除く入院費、訪問看護費、等が含まれるはずです。
ただし、このあたりの細かい規定は、都道府県によって異なってくる可能性があります。
そしてこの「医療費総額が33,300円を超える3月以上の月」については、自分から領収証のコピーを提出しなければならないかもしれませんので、自分はこの条件に該当するかもしれないと思う方は、必要な場合に備えて領収証を取っておかれることをお勧めします。
あと一つ、ジストニア患者にとっては、はたして「鍼治療」の費用がこれに当たるのかが問題になります。
難病制度の医療費助成は、「保険適用の対象になっている治療法」での医療費しか助成されません。
ですので、たとえば首と目以外のボツリヌス治療では助成を受けられません。
鍼治療は、いくつかの病名に限って保険適用が認められますが、その中に「頚腕症候群」というのがあり、首・肩・腕・手のジストニア患者がこの病名で保険適用を受けている場合があると思います（私自身もそうでした）。
この頚腕症候群についてネットで調べてみると、いまだに正確な定義が確定していないようで、ジストニアも含むように解釈している説明も見られます。
ですので、もしかするとこの点を行政の窓口で主張すれば、33,300円に算入してもよいと認めてくれるかもしれません。
このあたりも、都道府県の窓口によって対応が変わってきそうな気がしますが、私たち患者としては主張すべき点は強く主張した方がよいと思います。
上記の政治家はこの点についても、「もしも鍼治療の保険適用対象の病気にジストニアも含まれる（と解釈できる）のであれば、33,300円に算入することはできます」と、はっきりおっしゃっていました。
さて、厚労省の説明書きに戻ると、２の申請に必要な書類のうち最初の診断書（臨床調査個人票）については、
http://
ここの120番からダウンロードできます。
これを見ると、すべて厚労省の発表通りのチェック項目となっていることが分かります。
これを見る限りでは、やはり遺伝子検査で陽性の結果が出ないと対象にならない可能性が高そうな気がします。
専門医の「裁量的判断」の入り込む余地があるのかどうか、今の時点ではわかりません。
上述のように難病制度の実施主体は各都道府県なので、具体的手続きは地域によって多少違いが出てくるかもしれません。詳しいことはお住まいの都道府県の難病関連サービスについてネットで調べたり、窓口に問い合わせたりしてください。
◆恩恵を受ける患者層と今後の展望
今回の難病制度改革の結果をご覧になって、たぶんジストニア患者の大半の方はがっかりされるかもしれません。
やはり症状のきつい方や地方在住者を初め、医療費を何とかしてほしいと思っていらっしゃる方は多いでしょうが、今回の「遺伝性ジストニア」の指定を通じて確実に助成対象になる患者層は、全体から見ると一握りに留まります。
今回の制度改革で「新たに」恩恵を受けることになるジストニア患者は、結局のところ、遺伝性のジストニアでありながらも上級（1〜2級）の障害者手帳を取得できず、バーセルインデックス85点以下を満たす程度に不自由であるか、または33,300円の規定を満たす人、ということになります。
遺伝性のジストニア患者は概して全身性に発展しやすい（決して全部がそうではなく、局所性に留まる場合もありまる。この点については対象者の条件の最初に示したリンク先の資料を読むと分かります）ようなので、遺伝性でありながら幸いDBSを受けるほどにまでは重症化していないとか、逆にDBSを受けてある程度症状が緩和したとか、あるいはDYT5（瀬川病）などでLドーパの服用により症状を抑えているといった方が、障害者手帳1〜2級を取得できずにいるといったケースが、おそらく典型的な（主な）該当者になるのではないかと推測できます。
国がそれなりに頑張っているのは確かですが、財源との関係もあり、救済範囲を「広くする代わりに浅くする」傾向もはっきりしています。
この制度は困窮している難病患者を一律に無条件に救済しましょうという単純な福祉的制度ではなく、理解不能な先天的な難病について、その解明と治療法開発のためのデータ集めに協力してもらうことと引き換えに患者さんの医療費を助成しましょうというのが基本コンセプトです。二次性の症状をすべて除外しているのは、そのためです。
ジストニアは他の疾患の「派生的症状」として出やすいので、今回「遺伝性」という条件を課すことにより縛りを強くしたといえます。
このように難点や限界を挙げていけば色々あるわけですが、それでも一歩前進と言えば前進なので、恩恵を受けられる方にとっては良かったと思います。
また、最初に記しましたように指定難病に該当する患者は障害福祉サービスも無条件に受けられることになったので、まだ障害者手帳をお持ちでなかった方（おそらく少数でしょうが）にとっては、行政のサービスを受けられる範囲が広がります。
※障害福祉サービスの具体的内容についてはネットや市町村の窓口に当たってください。
厚労省は今、難病患者の就労支援にも取り組み始めていて、まだ都道府県に1人ずつのようですが、難病患者就職サポーターという相談員を配置し始めています。
制度上、この相談員のサポートを受けられるのは難病制度の対象者だけに限定されるかもしれませんが、「遺伝性ジストニア」が難病に指定された結果として、「私はジストニア患者です」というだけでも少しは対応に気遣ってくれやしないか・・・そういうことも考えています（甘いかもしれませんが）。
あとは「ジストニア」の認知度向上にも少しは影響を与えてくれたらと思います。
また今後の課題として、もしも「遺伝性のような経過をたどったけれど遺伝子検査では陰性だった全身性ジス患者」が対象外となった場合には、少なくともまずこのような方々を「潜在的遺伝性」の患者として対象に加えるよう要望していきたいと考えています。
この点については、上記のように梶先生からの説明や実際の現場での今後の状況を踏まえて判断していきたいと思います。
それ以外のタイプのジストニア患者については、残念ながら、今のところこの制度で攻めていくのは正直なところかなり難しいと感じています。
やはり上述したこの制度の基本コンセプトがどうしても障壁になってしまう面があります。
今回の遺伝性ジストニアの指定は、そういう難しい状況の中でのかろうじての一歩前進といったところかと思います。
|
|
|
|
|
|
|
|
ジストニア談話室 更新情報
-
最新のアンケート
ジストニア談話室のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています
人気コミュニティランキング
- 1位
- パニック障害とうつ病
- 8447人
- 2位
- 一行で笑わせろ！
- 82528人
- 3位
- 写真を撮るのが好き
- 208286人