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小説置き場(レイラの巣)コミュのベランダジャングル化

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 約1200文字 初出 11/09/12

                芽

 狭いベランダに青シソが大きく育ち、ゴーヤも繁茂している。
 かきわけつつ、洗濯物を干す。

 それにしても茂った草木にふれると血湧き肉踊ってしまうのはなぜだろう。
 心の奥底の本能がめざめるというか…。
 人類の祖先は確かにジャングルに居たぞっと納得するのだが、もしかするとこれは私だけの感覚かもしれない。

 中学生のころ、ジャングルに住み、手製の武器を持ち、獲物を探す原始人の自分という夢をたびたび見た。
 目が覚めたらご近所がジャングル化していて、誰も居ない。
 ひとりでこれからがんばるぞ〜っと意外に元気な私。という夢も。
 で、そんな時の私はたいがい男の子だった。

 カウンセリングや分析をしなくてもわかる。
 どんだけ自分自身や自分が居る世界がイヤだったのだろう。
 女性である事や、文明やら、社会やら。

 それ以後だって、納得して生きてきたわけじゃない。
 結婚した事や、母親である事や、家事をしている事や。
 どれもこれも100%受け入れていたわけじゃない。
 不満な部分はいつだってあった。

 いや。
 肉体的にも精神的にも虚弱だった私は「長生きはできないだろう」と勝手に決め込んでいた。
 だから、20歳をすぎてどこかで驚いた。
 まだ、生きてるぞって。肉体も精神もまだ壊れてないぞって。

 なんとなく、これからは余生。オマケだから、なんでもやってみよう、と思ってその後を生きた。
 漫画家をめざしてみたのも、結婚したのも、その延長だったのかもしれない。
 自分を通して、いろいろな経験を確認した。
 それでも、どこかで本当に生きているという実感が無かった。

 今はもう、肉体も精神も、かなりボロボロだ。
 でも、今まで生きた中で一番自由な時間かもしれない。

 全てが納得しているわけじゃない。
 今の自分を100%受け入れたわけでも無い。それは昔と同じだ。

 でも、してきた事が私の過去に降り積もっている。
 わが子の存在もそうだ。
 のた打ち回って自分探しをしていた時期の友人達(同人誌の仲間達とか)とめぐりめぐってまた同人誌を作っている。

 なにより、よく生きてきたなぁ、と思う。
 こんなに長く生きる予定は無かった。

 なんだかそれだけでも自分に向かって「よくやったね」と言える。
 生きてきたから残っているなにかがある。

 さて、おいっこの結婚式の招待状が届いた。来月だ。
 今週末には息子Bが婚約者(多分)をつれて来る。

 やってきた事の実りがゾロゾロつれだってくる。

 あと十年か二十年か。
 三十年か(はちょっと欲張りか)を若い頃とは違う気楽さと重さを感じつつ生きてみましょうか。
 だってもう、ほんとにいつ終ったっていい人生なんだから。
 結婚も子育ても、あこがれの職業もやっちゃったから。
 これからは、やりたい事がやれるよね。
 やりたい事をやりたいなぁ。

 と、ジャングル化したベランダを見て思う。

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