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小説置き場(レイラの巣)コミュの【エッセイ】すずつながり・言葉遊び

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 800文字弱です。初出 11/02/05

               クローバー


 小鳥が集まる樹、というのがある。
 時間は夕暮れよりも少し前、陽が傾き始めた頃。
 今なら、3時から4時前の時間。
 1本の樹に小鳥が集まって、かまびすしくおしゃべりをしている。

 3時に家を出て、隣の集合住宅の入り口わき。
 何本かの公孫樹(イチョウ)の樹がある。この時期、その樹の1本に集まっている。
 ほんの50メートル離れたら聞こえない。
 空から小鳥達の声が降ってくる。

 冬の乾燥した、突き抜ける様に青い空に、葉の落ちた公孫樹の枝がつんと伸びて、そこかしこに小鳥達の丸い姿がある。
 逆光に鳥は黒にしか見えない。
 でも、その小ささと声から、きっと雀(すずめ)だろう。

 その声を聞いていると、鳥にも言語があり、井戸端会議があると信じられる。
 でなければ、あんなに騒がしく1日の報告を語り合ったりしないだろう。

 さらに15分ほど歩くと、大きな公園の前を通る。
 その入り口に5本のプラタナスが並ぶ。
 その一番右端。その樹も、小鳥の集まる樹だ。

 会社に向かう私に、小鳥達の声が降り注ぐ。
 見上げれば、冬の青空によろよろと伸びるプラタナスの枝々。
 やはり雀とおぼしき黒い影が集まっている。

 プラタナス。和名で鈴懸けの木。鈴をかける。
 さくらんぼのようにふたつつながった実が、枝にひっかかるようにつく。
 葉の落ちた枝に、茶色のさくらんぼに似た実の姿は、まさに鈴をかけたよう。
 だから、鈴懸けの木。今はその実も落ちて枝だけだ。

 降り注ぐ小鳥達の声を聞きながら『鈴懸けの木に、雀が、鈴なり』
 そんなおばさんギャグを胸に浮かべて、にんまりとする。

 陽のかげる時間が変わると、集まる時間が変わる。
 お気に入りの樹も変わる。
 葉が茂ると見えない。

『鈴懸けの木に、雀が、鈴なり』

 今の、この季節だけの、言葉遊びを胸に浮かべて、会社に向かう。

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