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高田ねおの創作物置き場コミュのIntersecting Bullett プロローグ

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 −−それは白い光だった。

 なんの詩的表現も見つからぬ、ただひたすら無機質に感じる、その光。
 それが首都と呼ばれた領域をゆっくりと、しかし確実に包み込んでゆく。
 天を貫くように聳(そび)え立つ高層ビル群。
 そこに住まう者達。そこで人生を謳歌する数千の、数万の、数百万の、人々と数多の生物。
 歓喜、怒り、怠惰、絶望、悲しみ、幸福、恋慕、嫉妬。
 無限に近い、混沌とした思念すらも平等に。
 存在するものをすべてを飲み込み、白く白く白く染め上げてゆく。
 それは壁に書かれた落書きを消すためにペンキで壁を塗り替えてゆく
光景にも似ていた。
 実際、その表現は的確だった。

 文字通り、その光は世界を塗り替えていたのだから。
 文字通り、その光は世界を書き換えていたのだから。

 そうして世界は歪んだ。あまりに滑稽であまりにもあっけない終末。
 たった一つの異物が、この世界にあった一つのエラーがすべてを歪ま
せてしまった。
 真実を知れば、あり得ないことだと、人々は笑うだろう。
 人々は知らない。この現象の真相を。日本史に大きく刻み込まれる大きな事件であるが、それでも人々はこれを災害と信じて疑わないであろう。
 だが、自分は知っている。
 この悲劇の原因を。この惨劇を招いた思惑を。

 にも関わらず、止められなかった。

 助けられなかった。
この世で最も大切な自分の半身とも言える『存在』を永遠に失ってしまった。
 自分にとっての夢、希望、幸せ、生き甲斐。そのすべてをこの惨劇によって永遠に失ってしまった。
 世界の滅亡とは地球そのものが滅びることではない。
 世界とは己が見ることが出来る、主観的なものに過ぎない。
 自分の信じていた希望と大切な存在を失えば、あっさりと世界は滅亡する。
 そんな世界は自分にとって無価値なのだから。例え肉体は生きていたとしても、世界は死んだも同然だ。
 
 だから、世界も自分もすでに生きてはいないのだろう。

 ----始めよう。自分が死んでいるのならば、それは簡単な事だ。
 今まであった価値観をすべて捨て去り、新たな自分を再生させる。
 いかなる犠牲を払おうとも、構いはしない。
 どうせ世界は歪んでいる。滅んでいるも同然なのだから。
 突き進んでゆこう。それが救済なのだ。世界にとっても、自分にとっても。
 そう強く信じて。


 ……そして、おれはもう一度かのじょと----




Intersecting Bullett



 


Intersecting Bullett 登美丘詩織編 FILE1『依頼と少女』1へ


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