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小説・評論:孤城忍太郎の世界コミュの五、『ノストラダムス・大予言の秘密』高木彬光著 『摂取本(セツシボン)』

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この作品を讀む時に、この音樂を聞きながら鑑賞して下さい。
 これは自作(オリジナル)の

『motion1(cembalo)』

 といふ曲で、YAMAHAの「QY100」で作りました。
 雰圍氣を味はつて戴ければ幸ひですが、ない方が良いといふ讀者は聞かなくても構ひませんので、ご自由にどうぞ。








五、『ノストラダムス・大予言の秘密』高木彬光著 『摂取本(セツシボン)』


 一時期、五島勉氏の著(あら)はした、

 『ノストラダムスの大予言』

 といふ書物がブウムになつた事がある。


 それによつて、

 「一九九九年七月に世界は滅亡する」

 といふ内容が實(まこと)しやかに語られ、その爲に、子供は疎(おろ)か一部の大人にまで、

 「どうせ世界は滅んでしまふのだから、いまさら勉強しても仕方がない」

 とか、

 「結婚して子供が出來たつて、人類が死滅するのだから、子供は作らないし、最早、結婚も無意味だ」

 といふやうな、ハレエ彗星が出現した當時の、いま考へると馬鹿莫迦(ばかばか)しい理由による厭世氣分が蔓延してゐた。
 

 困つた事に、一九九一年の現在に於いてもそれがなくなつてゐないといふ事であるが、これがなくなる爲には、二〇〇〇年になるより外はないのかも知れない。
 筆者は、超自然現象(?)や超能力(?)に大變(たいへん)興味を持つてゐるが、あまり智識と行動力を兼ね備へてゐない無精な愛好家である。


 その筆者が、最近、高木彬光(たかぎあきみつ・1920-1995)氏の、

 『ノストラダムス・大予言の秘密(角川文庫)』

 といふ文庫本を入手し、例によつて氣が向いた時にしか讀(よ)まないので、購入してから半年かかつて讀み終へた。
 斷(ことわ)つておくが、昭和三十年代に黒沼健氏の書かれた、同じやうな内容の本を讀んでゐて、ノストラダムスが預言者(よげんしや)であり、それも、

 「人類滅亡」

 といふ途轍(とてつ)もない豫言をしてゐた事を知つて、それを面白いと思つて讀み耽つた少年時代を過ごした筆者だが、決してノストラダムス教の信者になつた譯(わけ)ではない。


 けれども、高木彬光氏の本を讀んで、筆者なりに感じた事もあつたので、それを二、三書いて見たいと思つた次第である。
 筆者は、英語も仏蘭西語も出來ないし、況(いはん)やノストラダムスの原書や、その英譯の本ですら手にする事が出來ない現状であるから、高木彬光氏の著作、

 『ノストラダムス・大予言の秘密』

 を信ずじる外はないのだが、その本によると、ノストラダムスの殘した書物、

 『諸世紀』

 の序文に、

 「これは今から三七九七年まで」

 とあり、高木氏自身も解り易く、そこに傍點(ばうてん)をつけてをられた。


 筆者が非常に興味を抱いたのは、ここで何故、西暦年數を使用しなかつたのかといふ事であるが、勿論(もちろん)、ノストラダムスが息子に宛てた手紙が、

 『諸世紀』

 の序文、乃至(ないし)解説の役目を持つて書かれたかどうか、また、ノストラダムス自身がその意圖を持つてゐたかどうかは、曖昧であると言はれればそれまでであるものの、さうとばかりは言へない何かを筆者は感じた。


 大膽(だいたん)な發想(はつさう)をすれば、ここに年號(ねんがう)解讀の絲口(いとぐち)を、ノストラダムス自身が讀者の爲に與(あた)へておいたとは考へられないだらうか。
 といふのは、これも高木氏の著書の中の「二百四頁」に、ノストラダムスの言葉として、

 『各詩を私はあいまいに配列したが』

 とあるのだが、普通、作者が一册の書物を著はさうとする時、年代順に整理しようとするのが妥當(だたう)ではあるまいか。
 これまで、それらの詩を原稿に書きなぐつたものだとしても、書物として印刷して殘さうとするからには、著者のノストラダムス自身も、さう考へたと思ふのが自然であらう。


 とすれば、ノストラダムスが年代を既存のものに頼らなかつた場合、その基準となるものが何によつたのかを、何處(どこ)かに記してゐたのではないかと考へられ、それがこの息子に宛てた手紙を序文にする事だとすると、この手紙はかなり重要な意味を持つて來る事になる筈である。


 して見ると、先ほどの、

 『今から三七九七年』

 後(のち)までといふ西暦以外のものを基準として、

 『諸世紀』

 を解釋した場合に、これまでの多くの人々の解析した豫言とは、全く異なつたものになる事になる。


 何故かと言へば、さつきも書いたが、そこだけ西暦を使用せず、

 『今から』

 とした事に、必要以上の特別な意味を見出すのは危險を伴ふが、敢(あへ)て、その危險を冒(おか)すと、

 『今から』

 といふ言葉が、全ての年號を記した豫言書にも、當(あ)て嵌(は)める事が出來るのではあるまいか。
 謂はば、

 「ノストラダムス元年(即ちノストラダムスの生きてゐた時代を一年とする)」

 とでも言ふ可き刻印を殘したのだと。


 その理由の一つには、これも同じく、ロバアツ氏や五島氏は言ふまでもなく、高木氏自身もその事に觸(ふ)れてゐないからで、その疑問の原因ともなつた豫言詩を、ここで引用すると、
 
 『だいたい五八〇年ごろは
  奇妙な年となるだろう
  七〇三年には
  多くの王国、一つから五つまでに変化がおこるだろう』

 この詩に對する疑問は高木氏も言はれる通り、西暦一五五〇年頃に生存してゐた人間が、西暦五八〇年や七〇三年の事件を書いても、豫言にはならないであらう。
 

 確かに、過去のものを思ひつく儘に書いたやうに見せ、それが當つてゐる事を他の智識人に示し、ノストラダムス自身が歴史に疎(うと)い事を證明(しようめい)すれば、如何にもその豫言が正しく、また、その正しさが未來の豫言に於(お)いても、當然(たうぜん)當て嵌める事が出來るのだ、といふ權威づけにもなるだらうと考へる事も可能である。


 これは詐欺師のよく使ふ手で、

 「これまでの私が正しかつたやうに、これからの未來の私も正しい」

 と人々に訴へる事は一種の手品で、それを樂しまうとする觀衆には面白いかも知れないが、證明の手段としては、愚の骨頂と言へるものだらう。


 それより、

 『今から(ノストラダムス元年)』

 といふ言葉をつけ加へる事によつて、その意味が通じるやうになるのであるならば、その可能性に賭ける方が、眞實(しんじつ)性が増すと思ふのである。


 さつきも言つた通り、筆者はノストラダムス教の信者ではないから、その権威を守らうとする義理もないので、ロバアツ氏のやうに年代の矛盾を納得させる爲に、「ニカエヤ」とか「グレゴリウス」の暦(こよみ)まで持出さなければならないやうな、こじつけ的な年代の解釋をしよう、とは考へなくても濟む譯である。


 しかし、著者のノストラダムス自身の手紙を基本とする事は、如何にこの序文となつた手紙に僞作説があるとは言へ、ロバアツ氏のやうな荒唐無稽なものよりも、危險率は少ないと考へられると思つてゐる。
 勿論(もちろん)、それでもノストラダムス自身の豫言が、全て正しいとは言へないだらうし、この、

 『今から』

 を、ノストラダムスが生存してゐた時期の、何處におくかも問題とならう。
 

 一五〇〇年とするか、一五五〇年とするか、あるいは筆者の言つたやうに、手紙の書かれた時とするか。
 今からを一五〇〇年とすれば、一九九九年は三四九九年となる譯だが、序文の手紙に、

 『今から三七九七年』

 とあるやうに、文庫本の百八十四頁の詩にある『偉大な世紀』が三千年代とする事は、それ程の無理も生じないと思ふのである。


 ここまで私見を述べて見たが、たとへこの年代の問題を譲歩しても、一九九九年に人類が滅ぶのではなく、これ以降にも西暦三千年及ぶ豫言があるのだから、豫言の内容が人類以外の生物の事を語るのではないとするならば、一九九九年に人類は滅亡しないといふ事になる筈である。
 とは言へ、筆者の書いた事も思ひつきの域を出ないものであるが、いづれにしても面白い本ではある。


 最後に、この本の讀後感はと言ふと、筆者は、五島勉氏の書いた本がベストセラアだといふ事は知つてゐたが、黒沼健氏の書物を讀んでゐたので、またか、といふ氣がして、讀んで見る氣も起きなかつたので、高木彬光氏の本だけを讀んだのだが、この二人には、一寸した論爭もあつたやうであるが、この本を讀む限りに於いては、二人の勝負は問はずとも良い事が解るだらう。


 さうして、論爭とはさうしたもので、芥川龍之介(1892-1927)と谷崎潤一郎(1886-1965)の論爭も似たやうなものであつた。
 ただ、この二人は文學者なので、それを辨(わきま)へてゐたが、五島氏と高木氏の場合は、その差が勝負の分れ目となつたのであらう。
 高木氏は、平然と五島氏との論爭を放り出してをられる。
 感心する外はない。


 だからこの本を讀んだ時、筆者はノストラダムスに就いて書かれてある事よりも、その後の、高島嘉右衛門(たかしまかゑもん・1832-1914)や、出口王仁三郎(でぐちわにさぶらう・1871-1948)に就いて書かれてあつた方が、面白く讀めたといふのが正直な感想である。


 これは一九九一年平成三年一二月二十七日に書いたものです。



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