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小児風邪対策研究会コミュのインフルエンザ治療薬とその使用方法について

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現在、インフルエンザA香港型を主体とするインフルエンザの流行がピークに近づこうとしています。今のところ、A香港型亜型によるインフルエンザは軽症です。そこで、最近の治療薬、及び、その使用法について気を付けてほしいと思うことをまとめてみます。

当初、ノイラミダーゼ阻害剤としてのインフルエンザ治療薬は、内服薬のオセルタミビル(タミフルDS)だけでしたが、数年前から、経口吸入薬ザナミビル(リレンザ)が加わりました。さらに、その経口吸入薬も1日1回で治療完結を謳う製剤ラニナミビル(イナビル)が登場しました。また、静注製剤ペラミビル(ラピアクタ)もあります。

使用状況は、主として小児科領域では、タミフルDS(ドライシロップ)内服薬、イナビル経口吸入薬、リレンザ経口吸入薬、タミフルcap (カプセル)内服薬の順で、経口吸入が困難な小学生低学年以下の年齢層が割合として多いため、タミフルDSが40%を占めていますが、イナビル経口吸入薬が25.2%、リレンザ経口吸入薬が18.9%で、経口吸入薬全体では44.1%を占め、タミフルDSを上回っています。16歳以上の年齢では、尚更、この傾向が強く出ると思われます。

リレンザもイナビルも、主成分そのものは優れたノイラミダーゼ阻害剤です。特にイナビルはプロドラッグで、細胞内に取り込まれて活性化し、ウイルスのノイラミダーゼが完成する過程でゴルジ小体で不活化します。

問題なのは、薬剤そのものではなく、薬剤のデリバリーシステムにあります。リレンザのデリバリーシステムはメーカーの得意とする微量ステロイド吸入薬に使われているシステムです。結果、ウイルスの初感染部位である鼻腔や上咽頭はいきなりパスして、一気に気管支肺に向かいます。イナビルのデリバリーシステムも同様です。インフルエンザウイルスの迅速診断では初感染部位の鼻腔・上咽頭が検出しやすいと云っておいて、治療では、わざわざ、そのウイルスが感染していることを確認した上気道を飛ばして、下気道に薬剤を散布するのはおかしくありませんか。

気管支喘息のような閉塞性呼吸障害が存在する場合、すなわち、吸気の一部が気道にトラップされるケースでは、吸気中のウイルスも下気道にトラップされるため、間違いなく、下気道炎(気管支炎や肺炎)のリスクが高まります。新型インフルエンザ(2009H1N1)が流行した際、在庫の少ないワクチンの接種の優先順として気管支喘息などが挙げられていたのもこのためです。

しかし、通常は、下気道は湿度100%で無菌に保たれています。異物や病原体は、気管支粘膜の粘液細胞の分泌する粘液で捕捉されたり、あるいは線毛細胞により、絶え間なく除去されています。そう安々と下気道感染は起こりません。インフルエンザでも同様です。

初感染部位の局所治療を無視したデリバリーシステムが何故使われているのか。簡便だから、1回で済むから、飲まなくて良いから、などと謳われていますが、こんな理由は無意味です。このシステムで効果が出る条件は唯一つ、一旦、下気道に吸入されて、下気道に吸着しなかった薬剤の一部が呼気と共に、上昇気流に乗って、さらに、その一部の薬剤が上咽頭や鼻腔に到達して吸着した場合です。どんなに簡単で便利そうに見えても、効果が得られるかどうかは、非常に不安定な要素があります。実際、経口吸入薬の治療が無効であった事例は数多く経験しています。

そもそも、ウイルスの初感染部位に特化した治療を考えれば、経鼻吸入が望ましいことは明らかです。経鼻吸入であれば、初感染部位が最初の治療ターゲットになり、気道の構造からみても、下気道に最も自然にストレートに吸入されます。

何故、経鼻吸入を採用しないのか、私は、何度も製薬メーカーに照会しましたが、納得できる回答は得られませんでした。著名な筆頭著者の英文論文を紹介してきたメーカーもありましたが、比較研究デザインに決定的な不備があり、経鼻吸入療法の優位性が否定される内容ではありませんでした。

また、残念ながら、経鼻吸入療法用のデバイス開発を表明する製薬会社はありませんでした。むしろ、今の薬剤で効果があるのだから、経口吸入薬のままで良いではないかと云われてしまう場合もありました。

現在の経口吸入薬が適応になるのは、原則として、気道系に関しては、気管支喘息やCOPD(慢性)閉塞性肺疾患など閉塞性呼吸障害が合併している場合、高齢者などで日常的に誤嚥のリスクがある場合、インフルエンザによると思われる気管支炎や肺炎の合併が認められる場合に限られ、その場合は、是非、経口吸入してほしいと思います。しかし、通常、下気道の合併症は稀で、痰がらみの咳の場合も、実態は鼻副鼻腔炎に伴う後鼻漏に起因し、下気道炎ではないことが殆どです。ターゲットは、あくまで初感染部位である上気道であるべきです。

現在の経口吸入用のデバイスを用いる場合は、吸入したら、口から息を吐かずに、口を閉じて、ゆっくり鼻から吐くことです。この操作により、下気道に吸着しないで吐き出される薬剤が、呼気と共に、ウイルスの初感染部位である鼻腔・上咽頭に吸着する確率が高くなり、治療効果が出ます。製薬メイカーは、吸うと音が出る器具まで製造して、如何に上手に吸入するかに最大の力点を置いていますが、まるで逆です。実際に重要なのは、むしろ、息の吐き方、口から吐かずに、鼻からゆっくり吐くことで、薬剤を上気道に吸着させることです。

今日は、7か月の妊婦さんがインフルエンザA型にかかりました。二病日で微熱がある程度で軽症の経過でした。今シーズンのA香港型については全般に軽症で、有熱期間も二日前後であること、妊娠の器官形成期は過ぎて、比較的安全に薬剤の使用が可能であること、全身療法は避けられれば避けたいこと、など説明しました。妊娠の経過にインフルエンザが悪い影響があっては困る、家族内感染など防ぎたいこと、と云われ、治療の希望があり、イナビル吸入薬を処方しました。吸い込んで吐く時、必ず、口を閉じて、鼻から吐くように説明し、予備練習もしてもらいました。

既述のように、今シーズンのA香港型については全般に軽症で、受診時には既に解熱しているケースも数多く見られます。某高校女子高生は、1日だけ熱が出て、直ぐ下がったので登校しようとしたら、学校から検査確認を指示され、登校途中の制服姿で元気に受診しましたが、A型インフルエンザの判定で、そのまま、出席停止になりました。薬はいらないと云って元気に帰りました。逆に、言えば、適切ではないデバイスによる適切ではない使用方法が広まっている経口吸入薬の効果が、見かけ上、物凄く目立ちやすい状況です。利便性と簡便性のみで使用者が急増し、インフルエンザウイルスの感染動態を無視したとも云える経口吸入薬の評価が過剰に高まることを懸念しています。経鼻吸入薬の開発は期待できないにしても、それなら、せめて、最大限の効果が出る使用法を啓蒙してほしいと思います。

参考図書:横山俊之:インフルエンザと漱石の周辺:元祖・漱石の犬、朝日クリエ、p85,2012

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