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お好み焼 味幸コミュの『永遠の0』を觀て

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 この作品を讀む時に、この音樂を聞きながら鑑賞して下さい。
 これは自作(オリジナル)の

 『Motion1絃樂器(Strings)』

 といふ曲で、YAMAHAの「QY100」で作りました。
 映像は鳥取懸にある、

 『三朝温泉』

 へ出かけた時のものです。
 雰圍氣を味はつて戴ければ幸ひですが、ない方が良いといふ讀者は聞かなくても構ひませんので、ご自由にどうぞ。





     『永遠の0』を觀て


 二〇一四年一月二十三日の木曜日は店が休みなので、昨日入院したばかりの繼母(はは)を見舞つてから箕面へ映畫(えいぐわ)を觀に行つた。
 二週間前の九日には『ゼロ・グラビティ』を觀たのだが、この作品は所謂(いはゆる)脱出劇で、どちらかといふと映像と音による部分が強く感ぜられたので感想は書かなかつた。
 さうして、一週間前の十六日は妻の實家の美作へ歸つてゐたので、映畫は觀られなかつたが、今月はこれで二囘も鑑賞出來て嬉しい限りであつた。


 で、この映畫であるが、最初から一定の先入觀を持つて見てはいけないと思ひながらも、私にしては珍しくどうせお涙頂戴の反戰映畫ではないかと思つてゐた。
 だから觀る事はないだらうと考へてゐたのだが、何を思つたか妻に誘はれて觀る事になつた。
これも「0」つながりといふ事なのか。
 だが、映畫の出來は想像したよりも面白かつて、納得度はかなり高かつた。
 それといふのも、どうせといふ思ひが良い方に作用したのかも知れない。


 冒頭の連合ひの葬儀の場面で周りの眼も氣にせずに泣き崩れるお祖父(ぢい)ちゃんを見て、深い愛の表れだと感じてゐたら、母や姉から實(じつ)の祖父の存在を知らされた主人公が、何故、その海軍航空兵だつた祖父が終戰間際に特攻で戰死したのかを調べて行くといふ按排(あんばい)で、現在から過去を振返るといふこの手法は『嫌われ松子の一生』と同じでよくある類型(パタアン)であるが、その謎を解いて行く過程で、特攻を志願した理由と犯人探しのやうなどんでん返しなどもあつて、とても面白く觀る事が出來た。


 しかし、何よりも觸發(しよくはつ)されたのは、「神風特攻隊」について考へる切掛けを與(あた)へてもらつた事、いや、國家間の戰爭といふものについて少し述べて見ようといふ氣にさせられた事であらうか。
 少し煩雜ではあるが、以下、ざつと粗筋と一緒に意見を述べて見ると、司法試験を四年續けて失敗(ミス)してゐて投遣りな主人公が、新聞社の仕事でそれを記事にする爲の手傳ひを姉から依頼されたが、興味がなかつた上に訪ね歩く生き殘りの海軍從軍者から次々に臆病者といふ非難を聞いて、やる氣を失つてしまふ。


 けれども、調べる内にさうではないといふ證言(しようげん)も聞かれるやうになつて、今の平和がどのやうにして得られたのかが見えてくるやうに主人公は考へ始める。
 そんな時、今どきの軟弱な若者達の合コンで、特攻を政治的暴力主義(テロリズム)と同列に論じる友人達に反撥する主人公が論爭するが、それを切掛けに眞實を探す旅にのめり込んで行く。


 さうして、あの當時(たうじ)赤紙一枚で徴兵され、拒否すれば非國民と呼ばれて國の爲に命を捧げるのが當り前であつた戰時下での状況を見せられると、この特攻兵士達は直接的には敵國に殺されたのであるが、自分の國に殺されたのも同然ではないかとの感を強く抱いた。
 「神風特攻隊」は生きるか死ぬかといふ出兵ではなく、行く先に待つてゐるのは死だけといふ片道切符なのである。
 この映畫で唯一、靖國神社への表現がなかつた事が救ひではあつたものの、時の総理大臣が靖國へ參拜する事に賛否兩論で喧(かまびす)しい昨今(さくこん)を鑑(かんが)みれば、戰死者を英靈として祀(まつ)る事に疑問を禁じ得ない。


 國の爲に死んだ靖國に祀られてゐる英靈に對して、敬意と感謝の氣持を抱く事には吝(やぶさ)かではないが、よく考へれば兵士よりも安全な場所から命令して死を強いる行爲(かうゐ)に、どうしても納得出來ない。
 それは例へば、家族に危機が迫つた時、家族を守る爲に自分の息子に危地へ赴け、

 「死んだら骨は拾つてやるから」

 と云ふだらうか。
 墓碑銘を自宅や墓に英靈として祀つて、若い命を散らした事を是とするのだらうか。
 さうして、それを可笑しいとも思はず、甘んじてその境遇を受容れるのだらうか。


 あと氣になつた處は、宮部久藏の妻の松乃が再婚する前に、やくざの組長に圍(かこ)はれ者になつたところを、日本刀を持つた男に助けられたと再婚相手に告白するが、それは東京から大阪へのがれてからの事であつた。
 しかも、その暮しぶりは貧しさの極致で、國家は國の英靈とまで持上げる死んだ兵士の家族に對して、何の援助(ゑんじよ)もしてはくれないのかと憤慨してしまつた。
 確かに、英靈として祀る分には家族に遺族年金を拂(はら)ふよりも費用はかからないだらう。


 出兵するのは國の爲だといふが、國民は國といふ捕へどころのない漠然としたものではなく、家族が無事に過ごせるならばといふ氣持が殆どではなかつたのではあるまいか。
 同じやうに國の爲といふ上層部の者にしてからが、個人の榮達や自己滿足を心の隅に隱した發言でしかないやうに思はれる。
 本當に國の爲を思ふのならば、國民を死地へ送るやうな事などはしなかつた筈だらう。


 また、主人公の祖父母である宮部や松乃には、家族がゐなかつたのだらうか。
 勿論、物語として解り易くする爲に端折るといふ手法であつたのかも知れないが、母と娘の暮しに同情させようといふ表現だとすれば興醒めである。
 その困窮した生活ぶりを見てゐると、國は年金などを徴収する時は積極的だが、支拂ふ段になると事務的で國民が手續きをしなければ拂つてもらへず、その儘放置すれば國の儲けになるとでも思つてゐるのではないかと、その當り前のやうな對應(たいおう)の不親切さに呆れてしまふ。
 それと同じやうな憤りを感じた。


 さらに、特攻の生き殘りがやくざの組長になつてゐるといふのもどうかと思つたが、一方で彼が松乃を救助した事を匂はせた表現には感心させられ、それは戰後の日本の荒廢した混亂期に、戰爭で亡くなつた戰友に對する贖罪の心算(つもり)もあつたのかも知れない。
 彼等の忸怩(ぢくぢ)たる思ひが日本の復興に果した役割は、途轍もなく大きなものだつたに違ひない。


 といふのも戰爭に敗れた當時の日本には、日本人である敗戰國民とGHQなどの戰勝國民と、そのいづれでもない国内に居住した舊(きう)日本植民地の朝鮮や台彎などの出身者を指して「三國人」と呼んでゐた。
 その「三國人」が敗戰によつて気力を失くした日本人に對して、それまでの恨みつらみを晴らすかのやうに亂暴を働いたと言はれてゐる。
 その中には、隨分と非合法な事もあつたといふが、その防波堤となつたのが日本のやくざで、警察も細部にまでは手が廻らず、「三國人」に對するやくざの暴力まがひの行爲にも黙認してゐるといふか、積極的に利用した節も窺(うかが)へる。
 但し、その後のやくざといふ組織の有樣(ありやう)は斷乎として拒否すべきもので、すでにその役目は終へたと言つても過言ではない。


 そんな感想を抱きながらこの映畫を見終へたのだが、最終場面(ラストシイン)で畫面(ぐわめん)一杯に海の上に巨大な雲が廣がる風景の上に、最終字幕(エンドロオル)がかぶさつて來るのだが、筆者なら手前から零戰が雲の中へ緩(ゆつく)りと消えて行くか、逆に雲の中から忽然と觀客に向つて來る映像で終らせたかつた。
 前者はこの映畫の題名(タイトル)に合せた、零戰よ永遠なれといふ氣分を表現し、後者は戰前のやうな軍靴の響きが身に迫つて來たやうな昨今(さくこん)の情勢への警鐘としての表現である。


 ただ、後者の場合に操縱席(コツクピツト)までを映すか、その手前の機体で突然に映像を切つて觀客に衝撃を與(あた)へるかが迷ふ處である。
 さらに、操縱席を映す場面にしたとしても、主演の岡田准一の顏の大寫し(アツプ)で終へるのは、彼の支持者(フアン)にとつては嬉しい事かも知れないが、映畫の主旨としては賛成出來兼ねるのでさうはせずに、變はつた處で死神が操縱してゐる映像で終へるといふのはどうか。


     二〇一四年一月二十七日(月)午前二時 店にて記す


     關聯記事

『硫黄島に於ける戰沒者の遺骨』に就いて
http://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=25109385&id=1913258967

コメント(1)

遅れ馳せながらの一文です。

「永遠の0」を読んだ時は、
まだ世間がここまでのブームになっていませんでした。
読んだ本の中で、手元に残すのは十冊に一冊あるかないかの私ですが、
迷った末に手元に残した一冊が、後に世間の話題を席巻し驚いたものです。

ケンタウロスさんと私は多分、先の大戦や現在の政治に対する考え方に、
少なからぬ齟齬が生じるのではと思います。

しかしてともあれ、どんな立場にあろうとも、
「特攻」や「零戦」について考える機会を提示したことが、
本作品の最大のポイントではないかと評価致しております。

映画に関して申しますれば、
「回天」と並ぶ非人道的人間兵器、「桜花」について描いて頂きたかったです。
宮部が何故特攻を志願するに至ったか、それを考える大切なものですゆえ。

余談ですが、義父は自称「元特攻隊員」です。
とは申せ、少年志願兵にて赤トンボの訓練中に終戦を迎えましたが。
戦後はいわゆる「特攻崩れ」となりまして、相当無茶もしたと聞いています。
元特攻隊員がヤクザの組長になっているのも、さもありなんと思いました。

私が本作を手元に残したのは、
そのヤクザが戦後、宮部の妻の為に大立ち回りを演じた下りがあったからです。
ただ、涙しました。

もう二度と、あのような悲劇を繰り返してはなりません。

その一点においては、
ケンタウロスさんとも心を一つにできる、そう確信致しております。

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