≪世界の平和を願って - その４≫ <その３>の書き込みが増え、見やすいように<その４>を作りました。引き続きよろしくお願いします。
その１〜３は、トピックをクリックしていただくと検索できます。
毎日の普通の生活が出来るのは、平和であるからこそ。
≪世界の平和を願って≫に紹介してきた本をとおして、つくづく感じることは、平和でなければどうしようもないということです。
むのたけしさんの著書・『戦争いらぬ やれぬ世へ』には、「この世から戦争をなくするために、人類は本当の努力をしなくてはならない」と書かれています。今、いちばん切実にひびく言葉です。（本欄１３で紹介） <目次>
１ 『鳥よめ』 あまんきみこ・作 山内ふじ江・絵 ポプラ社
２ トルストイに魅せられた良心的兵役拒否者
『北御門二郎 魂の自由を求めて』 ぶな葉一・著 銀の鈴社・ジュニアノンフィクション
４ 『泣いたゼロ戦』 ぶな葉一・作 関口コオ・絵 銀の鈴社
５ 『イレーナ・センドラー』−ホロコーストの子ども達の母
平井美帆・著 汐文社
６ 『ちいさな命がくれた勇気』― ナチスと戦った子どもたち
キャシー・ケイサー／著 高橋佳奈子／訳 主婦の友社
７ 『エーディト、ここなら安全よ』 −ユダヤ人迫害を生きのびた少女の物語
キャシー・ケイサー／著 石岡史子／訳 ポプラ社
８ 『燃える川』 木村セツ子・作 市川禎男・画 金の星社
１０ ＜シリーズ戦争孤児� 銑ァ筺 ー�文社
�ぁ 悵�揚孤児と残留孤児』 ― 海峡を越えた子・越えられなかった子
�ァ 惴暁�孤児』 ― ヒロシマの少年、ナガサキの少女
（
� 銑�は、世界の平和を願って・その３に掲載しています。） １１ 『アンネのバラ』― 40年間つないできた平和のバトン
國森康弘／文・写真 講談社
１２ 『明日をつくる十歳のきみへ』― 103歳のわたしから
日野原重明・著 冨山房インターナショナル
１３ 『希望は絶望のど真ん中に』 むのたけじ・著 岩波新書1323
『戦争いらぬ やれぬ世へ』− むのたけじ語る ��
むのたけじ・著 評論社
１４ 『せんそうしない』 谷川俊太郎・文 江頭路子・絵 講談社
１５ 『トットちゃんとトットちゃんたち 1997 − 2014』
黒柳徹子・著 講談社
１７ 「続 『被爆者』 ７０年目の出会い」 会田法行／写真・文 ポプラ社
１８ 『暴力は絶対だめ！』 アストリッド・リンドグレーン
石井登志子／訳 岩波書店
１９ 『小さな魚』 エリック・C・ホガード／作
犬飼和雄／訳 冨山房
２０『杉原千畝と命のビザ』― 自由への道 ケン・モチヅキ／作
ドム・リー／絵 中家多惠子／訳 汐文社
『パパ・ヴァイト』― ナチスに立ち向かった盲目の人
インゲ・ドイチュクローン／作 ルーカス・リューゲンベルク／絵
藤村美織／訳 汐文社
２１ 『国境を越えて』 ウイリアム・カプラン，シェリー・タナカ／文
シュテファン・テイラー／絵 千葉茂樹・訳 ＢＬ出版
２２ むのたけじ『100歳のジャーナリストからきみへ』
全５巻（学ぶ・平和・生きる・育つ・人類）より ― １・２巻
武野武治・菅 聖子／著 汐文社
２３ 『ユガンスン』― 朝鮮のジャンヌ・ダルク
仲村 修・文 金 石出・絵 ソウル書林
２４ 『柳寛順の青い空』― 韓国で歴史をふりかえる
早乙女勝元・編 草の根出版会
２５ 『もっと知ろう朝鮮』 尹 健次・著 岩波ジュニア新書
２６ 『子どもたちの朝鮮戦争』− ユギオ6･25
李元寿・姜小泉・申東一・権正生＝著
仲村修＝編・訳 素人社
２７ 『おかあさんのいのり』 武鹿悦子・作 江頭路子・絵 岩崎書店
２８ 『戦争といのちと 聖路加国際病院ものがたり』
日野原重明・著 小学館
２９ 『１９歳の小学生』 久郷ポンナレット・久郷真輝／著 メディアイランド
３０ 『国をつなぐ奇跡の鳥 クロツラヘラサギ』 − 日本・韓国・朝鮮の架け橋
今関信子・著 汐文社
表紙写真・左から 〜トルストイに魅せられた良心的兵役拒否者〜
『北御門二郎 魂の自由を求めて』 ぶな葉一・著
『戦争いらぬ やれぬ世へ』− むのたけじ語る �� むのたけじ・著
『おかあさんのいのり』 武鹿悦子・作 江頭路子・絵 岩崎書店
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『鳥よめ』 あまんきみこ・作 山内ふじ江・絵
ポプラ社（2014年12月）1300円
周平さんは、岬の小さな灯台のあかりを、たった一人で守っていました。若者はみな、兵隊になる時代でした。子どものときのけがが原因で右ひざがまがらず、兵隊になれなかった思いが、苦労の多い灯台の仕事をえらばせたのでしょう。
あるとき、周平さんのもとに若いむすめがやってきました。むすめは、周平さんに命を助けられた鳥だといい、やがて二人はなかのいい夫婦になりました。
ところが、幸福な日々に戦争のかげがしのびより･････。
<巻末のあまんきみこさんのメッセージより>
この国の灯台のあかりがすべて消えたのは、わたしが子どもの頃 ―いくさの時代でした。
空襲にそなえて、灯台のかたちがわかりにくいように、色がぬられたり、木でおおわれたりしたのです。
小さな灯台であかりを一人で守っていた若者のもとにやってきた鳥よめ。
いくさがはげしくなって、二人のしあわせは長く続きません。
二人の悲しみの深さについておもいめぐらせてもらえれば･････と、心から願っています。
あまんきみこさんは、1931年、旧満州生まれで、京都府長岡京市に在住の児童書作家。
『ちいちゃんのかげおくり』『車の色は空の色』など、数多くの作品が世代をこえて愛され、読み継がれています。『鳥よめ』は、作者の平和への深い祈りが込められ、山内ふじ江さんの絵もとても素晴らしく、深く心に沁みてきました。長く読み継がれる作品になるのではないでしょうか。
ポプラ社（2014年12月）1300円
周平さんは、岬の小さな灯台のあかりを、たった一人で守っていました。若者はみな、兵隊になる時代でした。子どものときのけがが原因で右ひざがまがらず、兵隊になれなかった思いが、苦労の多い灯台の仕事をえらばせたのでしょう。
あるとき、周平さんのもとに若いむすめがやってきました。むすめは、周平さんに命を助けられた鳥だといい、やがて二人はなかのいい夫婦になりました。
ところが、幸福な日々に戦争のかげがしのびより･････。
<巻末のあまんきみこさんのメッセージより>
この国の灯台のあかりがすべて消えたのは、わたしが子どもの頃 ―いくさの時代でした。
空襲にそなえて、灯台のかたちがわかりにくいように、色がぬられたり、木でおおわれたりしたのです。
小さな灯台であかりを一人で守っていた若者のもとにやってきた鳥よめ。
いくさがはげしくなって、二人のしあわせは長く続きません。
二人の悲しみの深さについておもいめぐらせてもらえれば･････と、心から願っています。
あまんきみこさんは、1931年、旧満州生まれで、京都府長岡京市に在住の児童書作家。
『ちいちゃんのかげおくり』『車の色は空の色』など、数多くの作品が世代をこえて愛され、読み継がれています。『鳥よめ』は、作者の平和への深い祈りが込められ、山内ふじ江さんの絵もとても素晴らしく、深く心に沁みてきました。長く読み継がれる作品になるのではないでしょうか。
トルストイに魅せられた良心的兵役拒否者
『北御門二郎 魂の自由を求めて』 ぶな葉一・著
銀の鈴社・ジュニアノンフィクション（2014年）1200円
『まぶしい涙』〈鈴の音社〉がとても素晴らしかったので、このような作品を書かれた、ぶな葉一さんがどんな方なのか知りたくなりました。他の作品もぜひ読んでみたいと思い、『北御門二郎 魂の自由を求めて』との嬉しい出会いへとつながっていきました。
<著者・プロフィール>
安曇野に生まれる。本名 石田昭義。北御門二郎氏と出会い、地の塩書房を設立。
トルストイの作品『イワンの馬鹿』『文読む月日』などを広めることを始めて今日にいたる。著書は他に『山のみち』『泣いたゼロ戦』（ともに銀の鈴社刊）。
<北御門二郎の横顔>
1913年（大正２年）熊本県球摩郡湯前町に生まれる。旧制五校時代に、トルストイの『人は何で生きるか』を読んで感激。東大英文学科を退学、徴兵を拒否するが、奇跡的に生き延びる。以来「トルストイも言うように、農耕が一番罪がない」と人里離れた熊本県水上村湯山にこもり、農業を営みながら、トルストイの翻訳に没入する。
「翻訳に大切なことは、原書に感動し、読者とその喜びを分かち合いたいと思うこと、だからトルストイが涙して書いたところは、私も泣いて訳します。」
2004年死去。享年91歳。
本文中に『イワンの馬鹿』について書かれているところがあり、そのごく一部ですが抜き書きしてみます。
≪憲法九条が行きつく先は、「イワンの村」であると二郎はよく語っていました。
「トルストイの作品『イワンの馬鹿』は、子供の読み物のように思われているが、子供大人に限らずに、人間にとっての深い心理、生き方を語っている。」 （中略）
二郎はこの『イワンの馬鹿』が全国の学校で読まれて、トルストイの絶対平和、絶対非暴力の精神が子供たちの心に芽生え、すくすくと育ち、やがてはイワンの王国となり、人類が戦争から解放される日がくることを願っています。≫
『イワンの馬鹿』を授業でつかったいくつかの学校から、二郎のもとに便りが届き、その中の二つが紹介されています。かつて二郎が失望して中退した東大の先生からと、小学6年生たちの感想文です。教師側の指導は全くせず、ただ読んだだけということですが、感想文は生徒さんたちが本の内容を深く汲み取ったものであり、とても感動しました。
本書は、<元気な本棚 ― 伝記・ノンフィクション>にも掲載しています。
『北御門二郎 魂の自由を求めて』 ぶな葉一・著
銀の鈴社・ジュニアノンフィクション（2014年）1200円
『まぶしい涙』〈鈴の音社〉がとても素晴らしかったので、このような作品を書かれた、ぶな葉一さんがどんな方なのか知りたくなりました。他の作品もぜひ読んでみたいと思い、『北御門二郎 魂の自由を求めて』との嬉しい出会いへとつながっていきました。
<著者・プロフィール>
安曇野に生まれる。本名 石田昭義。北御門二郎氏と出会い、地の塩書房を設立。
トルストイの作品『イワンの馬鹿』『文読む月日』などを広めることを始めて今日にいたる。著書は他に『山のみち』『泣いたゼロ戦』（ともに銀の鈴社刊）。
<北御門二郎の横顔>
1913年（大正２年）熊本県球摩郡湯前町に生まれる。旧制五校時代に、トルストイの『人は何で生きるか』を読んで感激。東大英文学科を退学、徴兵を拒否するが、奇跡的に生き延びる。以来「トルストイも言うように、農耕が一番罪がない」と人里離れた熊本県水上村湯山にこもり、農業を営みながら、トルストイの翻訳に没入する。
「翻訳に大切なことは、原書に感動し、読者とその喜びを分かち合いたいと思うこと、だからトルストイが涙して書いたところは、私も泣いて訳します。」
2004年死去。享年91歳。
本文中に『イワンの馬鹿』について書かれているところがあり、そのごく一部ですが抜き書きしてみます。
≪憲法九条が行きつく先は、「イワンの村」であると二郎はよく語っていました。
「トルストイの作品『イワンの馬鹿』は、子供の読み物のように思われているが、子供大人に限らずに、人間にとっての深い心理、生き方を語っている。」 （中略）
二郎はこの『イワンの馬鹿』が全国の学校で読まれて、トルストイの絶対平和、絶対非暴力の精神が子供たちの心に芽生え、すくすくと育ち、やがてはイワンの王国となり、人類が戦争から解放される日がくることを願っています。≫
『イワンの馬鹿』を授業でつかったいくつかの学校から、二郎のもとに便りが届き、その中の二つが紹介されています。かつて二郎が失望して中退した東大の先生からと、小学6年生たちの感想文です。教師側の指導は全くせず、ただ読んだだけということですが、感想文は生徒さんたちが本の内容を深く汲み取ったものであり、とても感動しました。
本書は、<元気な本棚 ― 伝記・ノンフィクション>にも掲載しています。
『泣いたゼロ戦』 ぶな葉一・作 関口コオ・絵
銀の鈴社（2009年）1200円 小学校低学年以上
ゼロ戦とは、第２次世界大戦中、日本海軍の主力戦闘機としてつくられたもので、正式な名称を零式艦上戦闘機といいます。ゼロ戦はおよそ一万五百機が製造されましたが、日本が敗戦をむかえるころには、おおくのゼロ戦が撃ち落とされ、また特攻機として爆弾をつんで敵の軍艦に体当たりさせられ、海の藻屑と消えていきました。
「靖国神社の遊就館の玄関ホールに、“ぼく”はいます。ぼくは遊就館の人気者なんだ。でも、いったいぼくはなにものか？なぜここにいるのか？」
ある日はげしいカミナリの音と閃光とともに、ゼロ戦に遠い記憶がよみがえってきます。
ゼロ戦に乗り、ともに戦った日比少尉。ゼロ戦はアメリカの戦闘機に爆撃を受けて密林に墜落し、少尉は死んでしまったのです。
ゼロ戦は自分がなにものかわかりました。ようやく60年のねむりから覚めたのでした。
ある日、子どもたちがゼロ戦が涙をながしているのに気がつきます。
ゼロ戦は夢を見るようになりました。
子どもたちを乗せて空に舞います。 「ごらん、空には境なんてないんだ。海にもないんだ。山にも川にも。国の境なんて見えやしないだろ」
ゼロ戦はそれからぐんぐん上昇して、地球がはるかに見えるところまで昇っていきます。
はるかに青い地球が浮かんでいます。みんなからため息がもれます。
ゼロ戦は静かに機首の向きを変えて、地球に向かいます。最後の瞬間、空を仰いだ少尉のことばを胸に秘めて。
「･･･なぜ戦う！ なぜ殺す！･･･みんな地球の子じゃないか。みんな同じにこの星から命をもらっているのに。 ･･･ああ、一日、一日を生きたい。･･･この太陽のしたで」
今日４月10日、新聞に掲載された、両陛下のパラオ慰霊に関する記事の中に、朽ち果てたゼロ戦の残骸の写真がありました。ちょうど読み終えたばかりの本書と重ね合わせ、この若い少尉のように、無残に散っていった多くの命があることに思いを馳せずにはおられませんでした。
銀の鈴社（2009年）1200円 小学校低学年以上
ゼロ戦とは、第２次世界大戦中、日本海軍の主力戦闘機としてつくられたもので、正式な名称を零式艦上戦闘機といいます。ゼロ戦はおよそ一万五百機が製造されましたが、日本が敗戦をむかえるころには、おおくのゼロ戦が撃ち落とされ、また特攻機として爆弾をつんで敵の軍艦に体当たりさせられ、海の藻屑と消えていきました。
「靖国神社の遊就館の玄関ホールに、“ぼく”はいます。ぼくは遊就館の人気者なんだ。でも、いったいぼくはなにものか？なぜここにいるのか？」
ある日はげしいカミナリの音と閃光とともに、ゼロ戦に遠い記憶がよみがえってきます。
ゼロ戦に乗り、ともに戦った日比少尉。ゼロ戦はアメリカの戦闘機に爆撃を受けて密林に墜落し、少尉は死んでしまったのです。
ゼロ戦は自分がなにものかわかりました。ようやく60年のねむりから覚めたのでした。
ある日、子どもたちがゼロ戦が涙をながしているのに気がつきます。
ゼロ戦は夢を見るようになりました。
子どもたちを乗せて空に舞います。 「ごらん、空には境なんてないんだ。海にもないんだ。山にも川にも。国の境なんて見えやしないだろ」
ゼロ戦はそれからぐんぐん上昇して、地球がはるかに見えるところまで昇っていきます。
はるかに青い地球が浮かんでいます。みんなからため息がもれます。
ゼロ戦は静かに機首の向きを変えて、地球に向かいます。最後の瞬間、空を仰いだ少尉のことばを胸に秘めて。
「･･･なぜ戦う！ なぜ殺す！･･･みんな地球の子じゃないか。みんな同じにこの星から命をもらっているのに。 ･･･ああ、一日、一日を生きたい。･･･この太陽のしたで」
今日４月10日、新聞に掲載された、両陛下のパラオ慰霊に関する記事の中に、朽ち果てたゼロ戦の残骸の写真がありました。ちょうど読み終えたばかりの本書と重ね合わせ、この若い少尉のように、無残に散っていった多くの命があることに思いを馳せずにはおられませんでした。
『イレーナ・センドラー』−ホロコーストの子ども達の母
平井美帆・著 汐文社（2008年）1400円
イレーナ・センドラーは、第２次世界大戦当時、ドイツ軍に占領されていたポーランドで、ゲットーから2500人もの子どもたちを救った女性です。
1910年、ワルシャワでイレーナ・センドラーは生まれましたが、２歳のとき病気にかかり、両親は娘のため、空気のきれいな郊外の町オトフォックへ引っ越します。
イレーナが大きな影響を受けたのが、お医者さんだったお父さんです。お父さんは「宗教や人種、社会的な身分に関係なく、すべての人を尊敬して愛するんだよ」とイレーナに教えました。
第１次世界大戦がはじまり、戦火に包まれたヨーロッパでは伝染病が広まり、オトフォックでも「発心チフス」が大流行しました。オトフォックにはほかに３人の医師がいましたが、みんな、病気が移ることをおそれて町を出ていってしまいました。ところが、イレーナのお父さんだけは、「患者さんを治療しなくてはいけない」と町に残りました。
そして、お父さん自身が、発疹チフスに感染してしまいました。お父さんは、自分が助からないことがわかりましたが、病気の人たちを助けて、伝染病に移ってしまったことになんの悔いもありませんでした。
―誰かが苦しい思いをしていたら、知らないふりをしてはいけない。何があっても、助けようとする努力が大切なんだよ。
イレーナはその後、お父さんの言葉をしっかりと胸にきざんで、人生を歩んでいくことになるのです。
1939年、ドイツ軍がポーランドに侵攻して、第２次世界大戦がはじまりました。ドイツ軍によるユダヤ人迫害がはじまります。当時29歳だったイレーナは、ソーシャル・ワーカー（社会福祉士）としてワルシャワで働いていましたが、こんな状況に心を痛めていました。
イレーナは、仲間たちとともにゲットーにいるユダヤ人に支援物資を届けているうちに「子どもたちを助けなくてはならない」と強く感じるようになりました。そして仲間たちと、「ジェゴタ」という地下組織に加わり、子ども対策部門のリーダーになり、ドイツ兵に見つからないようにさまざまな策をねって、子どもたちをゲットーの外に連れ出します。
イレーナは、子どもたち一人ひとりの居場所がわかるように、子どもたちの本当の名前、うその名前、隠れ家の住所を書いた紙をビンに詰め、友人宅の庭のりんごの木の下に埋めました。
命がけの脱出作戦がつづきますが、イレーナはとうとうゲシュタポに捕まってしまいます。拷問を受け、手と足の骨が折れてしまいますが、「ジェゴタ」のメンバーが多額のお金を守衛に渡し、処刑前日に一命をとりとめます。
戦争が終わり、時が過ぎていきましたが、歴史の陰に隠れひっそりと暮らす彼女に、ある日一通の手紙が届きます。アメリカの学生から、イレーナの功績をお芝居にしたいという内容でした･･･。
お芝居は「ビンの中の命」というタイトルで、2008年春までに、アメリカ、カナダ、ヨーロッパで250回以上も上演されました。（
表紙写真・上は「ビンの中の命」N.Y公演のチラシ）
2007年には「ノーベル平和賞」の候補に選ばれました。同賞は、元アメリカ副大統領の「アル・ゴア」に贈られましたが、イレーナの偉業が世界に認められたできごとでした。戦争が終わってから60年余りたっていました。
2008年5月12日、イレーナは98歳でこの世を去りました。
『ちいさな命がくれた勇気』― ナチスと戦った子どもたち
キャシー・ケイサー／著 高橋佳奈子／訳
主婦の友社（2006年）1600円
かつてチェコスロバキアと呼ばれた国の首都プラハから、150キロほど南に、ブデホヴィーツェという町がありました。当時の人口は5万人。そのうち約千人がユダヤ人でした。
このきれいな町での人々の平和な暮らしは、ナチスの侵略によって踏みにじられ、ユダヤ人の弾圧がはじまります。
その中で、子どもたちによって作られた新聞がありました。
新聞の名前は『クレピー』。チェコ語で“ゴシップ”という意味でした。
一部しか作ることの出来なかった新聞は、子どもたち全員が、先を争って手に取り、もっと読みたいと思いました。そして、みんなが積極的に新聞づくりに参加していき、そればかりか大人たちも『クレピー』を読みたがり、ついにはブデホヴィーツェのユダヤ人社会全体に回覧されることになるのです。
クレピーはブデホヴィーツェのユダヤ人の子どもたちを結ぶ絆となり、子どもたちは、自分たちがユダヤ人であることに誇りを持つことができました。そして大人たちにも生きる希望と勇気を与えてくれたのです。クレピーは22号まで発行されます。
ナチスのしめつけは次第に強くなり、ついに人々は収容所に送られることになります。
『クレピー』は力を貸してくれる人に託され、守られます。
今、『クレピー』はプラハにあるユダヤ博物館に展示されており、世界中の誰もが目にすることが出来るということです。
この新聞を作った少年・少女たちの多くが収容所で亡くなっています。本書に掲載されている、子どもたちの明るい笑顔の写真と、心血注いで作られた手作りの新聞を見ると、戦争に対して激しい憤りを感じずにはいられません。
本書により、大変遅ればせながら初めてこの新聞の存在を知ることができました。『アンネの日記』ほどには知られていないことが残念で、是非もっと多くの方に知ってほしいと思いました。
『エーディト、ここなら安全よ』 −ユダヤ人迫害を生きのびた少女の物語
キャシー・ケイサー／著 石岡史子／訳
ポプラ社（2007年）1400円
これは、第２次世界大戦のさなか、ナチスの迫害を逃れ、けんめいに生きぬいたユダヤ人の少女と、その子を守った人たちの物語です。
ウイーンに住んでいたシュワルブ一家−父母と幼いエーディトと姉と弟は、ナチスドイツの迫害を逃れ、ベルギーで暮らしていましたが、そこにも居られなくなり、今度はフランスに逃れます。
ある晩、兵士たちがやってきて、お父さんを連れ去ってしまいます。母は、少し北にあるモアサックという町にユダヤ人のスカウト団が援助している寄宿舎があることを知り、そこにエーディトと弟をかくまってもらうことにします。母と姉はとなり村で、かくまってくれる家族をみつけます。
モアサックの町では、寄宿舎にユダヤ人の子どもたちがかくまわれていることを町の人全部が知っていて、みんなでこの秘密を守ってくれているのでした。
寄宿舎では、ナチスがユダヤ人をさがしに来た時に備えて、訓練をしていました。
モアサックの町長さんから連絡がくると、すぐに森の中に隠れるためにキャンプに行くことになっています。そのために、テントや寝袋を用意し、ロープの張り方を覚え、キャンプに必要な様々な道具、食料を備えて、いつでもすぐに出発できるようにしていました。
エーディトはここであたたかく守られて日々を送りますが、とうとう危険がせまってきて、別の寄宿学校に移らなければならなくなります。そして、そこからまた逃れて、ある農家にかくまってもらい、そこで終戦を迎えます。
エーディトは、さまざまな人たちに守られて、生きのびることができたのです。
2004年、エーディトやモアサックにかくまわれていた子どもたちが寄宿舎にふたたび集い、記念式典が行われ、何百人ものユダヤ人の子どもたちの命を守ったモアサックの人々の行いを忘れないために、記念プレートがかかげられました。
キャシー・ケイサー／著 石岡史子／訳
ポプラ社（2007年）1400円
これは、第２次世界大戦のさなか、ナチスの迫害を逃れ、けんめいに生きぬいたユダヤ人の少女と、その子を守った人たちの物語です。
ウイーンに住んでいたシュワルブ一家−父母と幼いエーディトと姉と弟は、ナチスドイツの迫害を逃れ、ベルギーで暮らしていましたが、そこにも居られなくなり、今度はフランスに逃れます。
ある晩、兵士たちがやってきて、お父さんを連れ去ってしまいます。母は、少し北にあるモアサックという町にユダヤ人のスカウト団が援助している寄宿舎があることを知り、そこにエーディトと弟をかくまってもらうことにします。母と姉はとなり村で、かくまってくれる家族をみつけます。
モアサックの町では、寄宿舎にユダヤ人の子どもたちがかくまわれていることを町の人全部が知っていて、みんなでこの秘密を守ってくれているのでした。
寄宿舎では、ナチスがユダヤ人をさがしに来た時に備えて、訓練をしていました。
モアサックの町長さんから連絡がくると、すぐに森の中に隠れるためにキャンプに行くことになっています。そのために、テントや寝袋を用意し、ロープの張り方を覚え、キャンプに必要な様々な道具、食料を備えて、いつでもすぐに出発できるようにしていました。
エーディトはここであたたかく守られて日々を送りますが、とうとう危険がせまってきて、別の寄宿学校に移らなければならなくなります。そして、そこからまた逃れて、ある農家にかくまってもらい、そこで終戦を迎えます。
エーディトは、さまざまな人たちに守られて、生きのびることができたのです。
2004年、エーディトやモアサックにかくまわれていた子どもたちが寄宿舎にふたたび集い、記念式典が行われ、何百人ものユダヤ人の子どもたちの命を守ったモアサックの人々の行いを忘れないために、記念プレートがかかげられました。
『燃える川』 木村セツ子・作 市川禎男・画
金の星社（1973年初版 1981年第11刷）
第二次世界大戦のさなか、東京の深川で父と祖母と暮らしていた少年トク。誇りにしていた大工の仕事を奪われ、軍需工場で働いていた父は、ある日突然の病気で帰らぬ人になります。祖母と残されたトクは、生きぬくために悪いこともしました。
昭和20年3月10日未明、東京は大空襲をうけ、またたくまに火の海となります。
あとがきで著者の本書への思いが語られていますが,、大変心に残りましたのでご紹介したいと思います。
＜中学校の教師であるわたしは、学級会や遠足のバスの中などで、「戦争を知らない子どもたち」という歌をよく聞きます。
今のわたしに残っているのは
涙をこらえて歌うことだけさ
戦争を知らない子どもたち
戦争を“体験しない”ということは、それだけですばらしいことですが、“知らない”ということとはまた意味が別だからです。たとえば、実際に戦争を“体験した”人の中にも、戦争を“知らない”人が多くいます。
「むかしの若者は、きびきびしていてよかった。やっぱり徴兵検査がなくてはだめだ。」
「国を守るためには、軍隊が必要だ。」
というおとなたちは、“戦争を知らない”のか、あるいはとぼけているのだと思います。
このことは、逆に考えれば、戦争を体験しなくても、勉強したり、真剣に考えていけば、戦争とは何かということを、“知ることができる”ということにならないでしょうか。
わたしはみなさんに「戦争を知っている」という歌をうたってもらいたいと思います。そのためには、戦争体験者のおとなたちが、できるだけ真実を伝えなくてはならない。そう考えて、わたしはトクちゃんの話を書きました。＞
金の星社（1973年初版 1981年第11刷）
第二次世界大戦のさなか、東京の深川で父と祖母と暮らしていた少年トク。誇りにしていた大工の仕事を奪われ、軍需工場で働いていた父は、ある日突然の病気で帰らぬ人になります。祖母と残されたトクは、生きぬくために悪いこともしました。
昭和20年3月10日未明、東京は大空襲をうけ、またたくまに火の海となります。
あとがきで著者の本書への思いが語られていますが,、大変心に残りましたのでご紹介したいと思います。
＜中学校の教師であるわたしは、学級会や遠足のバスの中などで、「戦争を知らない子どもたち」という歌をよく聞きます。
今のわたしに残っているのは
涙をこらえて歌うことだけさ
戦争を知らない子どもたち
戦争を“体験しない”ということは、それだけですばらしいことですが、“知らない”ということとはまた意味が別だからです。たとえば、実際に戦争を“体験した”人の中にも、戦争を“知らない”人が多くいます。
「むかしの若者は、きびきびしていてよかった。やっぱり徴兵検査がなくてはだめだ。」
「国を守るためには、軍隊が必要だ。」
というおとなたちは、“戦争を知らない”のか、あるいはとぼけているのだと思います。
このことは、逆に考えれば、戦争を体験しなくても、勉強したり、真剣に考えていけば、戦争とは何かということを、“知ることができる”ということにならないでしょうか。
わたしはみなさんに「戦争を知っている」という歌をうたってもらいたいと思います。そのためには、戦争体験者のおとなたちが、できるだけ真実を伝えなくてはならない。そう考えて、わたしはトクちゃんの話を書きました。＞
�ぁ 悵�揚孤児と残留孤児』の表紙写真が、事情があり変更されたということで、前の写真と差し替えて、再度紹介しました。詳しいことは、読書サロンに掲載しましたので、そちらをご覧ください。
＜シリーズ戦争孤児� 銑ァ筺 ー�文社（各3000円）
� 銑�とご紹介してきた〈シリーズ戦争孤児〉の�きイ�出ました。これでシリーズすべての本がそろいました。
�ぁ 悵�揚孤児と残留孤児』― 海峡を越えた子・越えられなかった子
（2015年３月）
「引揚孤児」「残留孤児」とは、日本が支配していた旧満州（現在の中国北東部）や朝鮮半島、東南アジアや南洋諸島などからの引揚げのなかで身寄りをなくした孤児や、現地に取り残された孤児のことです。こうした子どもたちが、戦中をどのように生きのび、戦後をどのように暮らしたのでしょうか。当時の記録と数々の写真などとともに、孤児たちの体験が語られます。
�� 『原爆孤児』 ― ヒロシマの少年、ナガサキの少女 （2015年３月）
2014年の平和宣言の一節に、原爆孤児のことが書かれました。詳しく平和宣言に書かれたのはこれまでほとんどなかったということです。誰もが生きていくために必死だった時代、孤児たちは忘れられた存在だったのです。
原爆孤児たちと、それを支えた人々。わずか一冊の本に詰まっている内容が、ずしんと心にとどきます。しかし、ここに記されていることは、まだまだごく一部なのです。
このシリーズで、戦争孤児について今まで知ることのなかったたくさんのことに気づかされました。戦争孤児のことを後世に伝える、貴重なシリーズではないかと思いました。
写真が多く掲載されていることもあってか、一冊3000円という価格ですが、図書館で借りることも出来ますし、この中のどれか一冊でも家庭で購入して、家族皆で平和について思いを馳せ、語り合うきっかけに出来ないものでしょうか。
『アンネのバラ』― 40年間つないできた平和のバトン
國森康弘／文・写真
講談社（2015年5月）1500円
毎年、春から秋にかけて、東京都杉並区にある高井戸中学校には、
ちょっとめずらしいバラがさきます。
その名は、「アンネ／フランクの形見」。
平和への祈りがこめられたこの花を枯らしてはならないと、
40年間、人びとはバトンをつないできました。
そして、これからも･････。
アンネのバラを育てることは、平和への願いを受けつぐこと。
これは命のバトンリレー。そして平和へのバトンリレーでもあるのです。
アンネの死をいたんだベルギーの園芸家が、新種のバラに「アンネの形見」と名づけ、父親のオットーさんにおくられ、家の庭に植えられました。
40年前、生徒たちはアンネへの手紙をオットーさんに送りました。そして、バラのことを知り、自分たちの手で育てたいとねがいます。
今、高井戸中学校に、さきはなやいでいるアンネのバラは、そのねがいを受けて、オットーさんが送ってくれたものです。
わずか３株だったバラは、今では160株ほどにふえています。
生徒たちだけでなく、保護者と地域の人びとなど、多くの人の手に守られて、アンネのバラはさきつづけてきました。
本は問いかけてきます。
「アンネのバラ･････、あなたの心にもさいていますか？ 」 と。
『明日をつくる十歳のきみへ』― 103歳のわたしから
日野原重明・著
冨山房インターナショナル（2015年4月）1100円
103歳の日野原さんの新刊です。日野原さんは、95歳のとき、『十歳のきみへ』という本を書かれましたが、あれから8年たって、『十歳のきみへ』にも書いたのだけれども、もっと力をこめて言いたいことができてきたのだと言われます。それは、「いのちと時間」ということについてです。
“世の中をよくするために、子どもたちに二つのことをわかってもらいたい。それは「ゆるしの心を持つこと」と「おとなになったら人のために自分の時間を使えるような人になること」です。この二つをみにつけた子どもたちがふえていけば、世の中から争いや、にくしみはなくなっていくでしょう。”
日野原さんは、「長生きすることはいいことなの？」と子どもたちから聞かれたことがあります。日野原さんははっきり答えます。「いいことです」。なぜなら、人のために使える時間がそれだけふえるからです。
また、４章の＜科学のよい使い方と悪い使い方＞では、このように書かれています。
“きみたちが科学の勉強をするときには、「人のいのちをうばう科学は悪い科学だ」と、しっかり頭にきざみこんでほしい。もしできたら、きみたちが世界の子どもたちと手を取り合って、みんなで「悪い科学はやめよう」と声をあげてほしい。原子爆弾のようなもののために頭を使うのではなくて、風や水の流れや、太陽の光で人々の生活を豊かにする科学を勉強してほしい。”
日野原さんは、2014年の5月まで、自分の足で元気に歩いておられましたが、心臓の大動脈弁がせまくなる病気にかかり、心臓に負担をかけないようにと、車いすや杖を相棒として生活することを選ばれました。なれてしまうと快適で、車いすで韓国や台湾にも行かれたということです。車いすは新しい相棒として、日野原さんの活動範囲を広げてくれているといいます。どこまでも前向きで、「いのちの時間を人のためにつかう」ことを自ら実践し、身をもって私たちに教えてくださいます。
終わりにはこう書かれています。
“十歳のきみたち、きみたちこそが私の最高の友です。私の宝ものです”
103歳にして渾身で書かれた子どもたちへのメッセージが込められた本書に、心より感銘を受けました。
『希望は絶望のど真ん中に』 むのたけじ・著
岩波新書1323 （2011年）700円
『戦争いらぬ やれぬ世へ』− むのたけじ語る ��
むのたけじ・著
評論社（2007年）1800円
現在100歳のジャーナリスト・むのたけじさんの著書を初めて読みました。
この世から戦争をなくするために、人類は本当の反省と努力をしなくてはならない。
未来を担う若い人たちに是非、むのたけじさんの本を知ってほしいと思い、さっそく紹介することにしました。
〜 むのたけじ・略歴 〜
≪秋田県六郷町に生まれ、東京外国語学校スペイン科卒業。報知新聞社を経て朝日新聞社に入社するが、1945年8月15日の敗戦の日に、新聞人としての責任をとる形で退社。1948年、郷里の横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊し、78年に休刊するまで、新聞としての在るべき姿を求め続けた。その後も、著述や講演を通してジャーナリスト活動を続けている。≫
最初に読んだのは『希望は絶望のど真ん中に』です。いろいろ本を読んで来たつもりでも、本当に肝心なものが抜けていた。今までの自分の考え方、感じ方が、まだまだ生ぬるく、あいまいなものだったことに気づかされ、愕然としました。また振り出しに戻り、人間として再出発するつもりで、むのさんの著書を読んで行きたいと思いました。
次に手に取ったのは、＜むのたけじ語る＞シリーズの�機慇鐐茲い蕕� やれぬ世へ』です。居住地周辺の諸集会でおこなった、身近な問題での講話が収められていて、 なかなかまとまった読書の時間が取れない私でも、一話づつ読んでいくことが出来、まず、シリーズ�気痢慇鐐茲い蕕� やれぬ世へ』を、なんとか読み終えることが出来ました。
最初は『前へ進む道しるべ』と題して、秋田県横手青陵学院にて、中学部1年生に語られています。
≪大人の中には、「人類は大昔から戦をやってきたから戦好きの本能があるらしくて、平和だのなんの言ったって戦を止めることができないでしょう」という声が意外に多い。これほど間違った見解はありません。
人類が地球上に現れたのは、最近では600万年前に遡ると言われています。1万年前に農耕が始まり、２、３千年たって権力構造ができ、武器もつくれるようになった。そして６、７千年前から戦が始まった。過去の４３０万年を昨日の正午から時計に当てはめて２４時間に回してみると、１万年前の農耕の創始は、昨日の昼から動いた時計の針が今日の午前11時57、8分を指すころにあたる。そして戦を始めたのは今日の正午の1分2、30秒前ということです。24時間の中のわずか昨日、つい先頃始めた。何でやめられないことがありますか。≫
詩集『たいまつ』（週間新聞「たいまつ」の巻頭を飾っていた、むのたけじ語録）から選んだ言葉もたくさん掲載されています。反骨のジャーナリストの芯はぶれない。
♡ 一月一日に、おおみそかと元旦がかさなっている。おわったところから、はじまっている。死ぬるところは、つまりうまれるところである。
♡ イネは夜に育つ、誰にも見られていないときに。自分ひとりのときにするかしないかで成長するかしないかが決まる。
♡ 読書は満腹させるものではなく、飢渇の自覚を深めていく食事である。
♡ たいまつは何にも依存しない。自分で自分を燃やす。自分で燃えながらどこでも照らす。照らしながら周りを温める。だれでもたいまつをつくることができる。
岩波新書1323 （2011年）700円
『戦争いらぬ やれぬ世へ』− むのたけじ語る ��
むのたけじ・著
評論社（2007年）1800円
現在100歳のジャーナリスト・むのたけじさんの著書を初めて読みました。
この世から戦争をなくするために、人類は本当の反省と努力をしなくてはならない。
未来を担う若い人たちに是非、むのたけじさんの本を知ってほしいと思い、さっそく紹介することにしました。
〜 むのたけじ・略歴 〜
≪秋田県六郷町に生まれ、東京外国語学校スペイン科卒業。報知新聞社を経て朝日新聞社に入社するが、1945年8月15日の敗戦の日に、新聞人としての責任をとる形で退社。1948年、郷里の横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊し、78年に休刊するまで、新聞としての在るべき姿を求め続けた。その後も、著述や講演を通してジャーナリスト活動を続けている。≫
最初に読んだのは『希望は絶望のど真ん中に』です。いろいろ本を読んで来たつもりでも、本当に肝心なものが抜けていた。今までの自分の考え方、感じ方が、まだまだ生ぬるく、あいまいなものだったことに気づかされ、愕然としました。また振り出しに戻り、人間として再出発するつもりで、むのさんの著書を読んで行きたいと思いました。
次に手に取ったのは、＜むのたけじ語る＞シリーズの�機慇鐐茲い蕕� やれぬ世へ』です。居住地周辺の諸集会でおこなった、身近な問題での講話が収められていて、 なかなかまとまった読書の時間が取れない私でも、一話づつ読んでいくことが出来、まず、シリーズ�気痢慇鐐茲い蕕� やれぬ世へ』を、なんとか読み終えることが出来ました。
最初は『前へ進む道しるべ』と題して、秋田県横手青陵学院にて、中学部1年生に語られています。
≪大人の中には、「人類は大昔から戦をやってきたから戦好きの本能があるらしくて、平和だのなんの言ったって戦を止めることができないでしょう」という声が意外に多い。これほど間違った見解はありません。
人類が地球上に現れたのは、最近では600万年前に遡ると言われています。1万年前に農耕が始まり、２、３千年たって権力構造ができ、武器もつくれるようになった。そして６、７千年前から戦が始まった。過去の４３０万年を昨日の正午から時計に当てはめて２４時間に回してみると、１万年前の農耕の創始は、昨日の昼から動いた時計の針が今日の午前11時57、8分を指すころにあたる。そして戦を始めたのは今日の正午の1分2、30秒前ということです。24時間の中のわずか昨日、つい先頃始めた。何でやめられないことがありますか。≫
詩集『たいまつ』（週間新聞「たいまつ」の巻頭を飾っていた、むのたけじ語録）から選んだ言葉もたくさん掲載されています。反骨のジャーナリストの芯はぶれない。
♡ 一月一日に、おおみそかと元旦がかさなっている。おわったところから、はじまっている。死ぬるところは、つまりうまれるところである。
♡ イネは夜に育つ、誰にも見られていないときに。自分ひとりのときにするかしないかで成長するかしないかが決まる。
♡ 読書は満腹させるものではなく、飢渇の自覚を深めていく食事である。
♡ たいまつは何にも依存しない。自分で自分を燃やす。自分で燃えながらどこでも照らす。照らしながら周りを温める。だれでもたいまつをつくることができる。
『せんそうしない』 谷川俊太郎・文 江頭路子・絵
講談社（2015年7月）1300円
ちょうちょと ちょうちょは せんそうしない
きんぎょと きんぎょも せんそうしない
くじらと くじらは せんそうしない
すずめと かもめは せんそうしない
すみれと ひまわり せんそうしない
まつのき かしのき せんそうしない ･････
この地球上の生きものたちは、みな戦争しないのに、人間の大人だけがどうして戦争するのでしょう。
描かれているのは、戦争の残酷な場面ではなく、美しい地球の自然や生き物たち。
私たちに本当に大切なものは？ と静かにおだやかに問いかけてきます。
大切なことは、こんなにシンプルなことなのです。
読み聞かせやプレゼントにぜひお薦めしたい絵本です。
この絵本は、＜元気な本棚・日本の絵本＞にも掲載しています。
『トットちゃんとトットちゃんたち 1997 − 2014』
黒柳徹子・著 講談社（2015年5月）1600円
著者がユニセフの親善大使に任命されて、今年で３０年になるといいます。１冊目の本は、はじめの１３年間を書かれたものでしたが、本書には、それ以後から昨年までの１８年間に訪れた国のことが書かれています。
30年前は、１年間に1400万人もの子どもたちが幸せにならず、手もかけてもらえなくて死んでいましたが、いまは、年間620万人まで減ったということです。
それでもまだ、年間620万人の子どもが死んでいるのです。
本書を読んで、戦争というものがいかに愚かなものであるか、あらためて思い知らされました。住む家も、病院も、学校も、何もかも破壊された中で、途方にくれる人たち。
子どもたちは少年兵にされたり、搾取されて働かされたり、女の子は連れ去られて売春を強制されたり。
2007年に訪問のアンゴラでは、何と800万個の地雷が埋まっているとあります。2008年に訪問のカンボジアでも400万個〜500万個の地雷が埋められたままだとありました。想像しただけでも気が遠くなりそうです。
ユニセフが、せいいっぱいさまざまな支援を行っていても、まだまだ足りないものばかり。とてもおっつける現状ではない。戦争は破壊するばかりで、何も生み出さない。戦争で儲けようとしている人たちは、それがどんなに愚かなことなのかわかっていないのです。
コートジボワール（2006年訪問）では、黒柳さんたちの乗ったユニセフの車は、停まると襲われる危険があるので、決して停まってはいけないと厳重に言われ、高速道路を止まらないで５時間走り続けたということです。
このとき、同行の新聞記者とカメラマンの方が、車の衝突事故に巻き込まれ、大怪我をされました。
カンボジア（2008年訪問）北部のストゥン・トレン州の保健センターへ行くのには、岩をよじ登って。「（この年で、こんなとこ来る人って少ないかも）と、よじ登りながら考えていました」と書かれています。
さらっと書かれていますが、さまざまな困難をくぐり抜け、まさに命がけの30年だったことが伺えます。
黒柳さんが訪れた様々な国では、ひどい状況のなかでも、自殺した子どもは、一人もいないのだそうです。
日本では、子どもが自殺している。こんな悲しいことが、あるでしょうか。豊かさとは、なんなの？ と、著者は問いかけます。
「続『被爆者』７０年目の出会い」
会田法行／写真・文 ポプラ社（2015年7月）1500円
「『被爆者』 ６０年目のことば」が出版されてから１０年が経ちました。（
世界の平和を願って・その２ で紹介）
７０年目に出版された本書では、まず、 「６０年目のことば」でも紹介されていた、長崎で被爆した片岡津代さんと、広島市で被爆した原廣司さんのその後が語られます。
片岡さんは身体が弱り、一人暮らしの家をでて長崎の原爆ホームという施設で生活されていましたが、2015年1月3日、93歳で亡くなられました。
原廣司さんは、雨の日も飾の日も原爆ドームに通い、絵を描き続けて来た方です。今は足腰も弱り、寒い時はやめたり、前ほどは無理がきかなくなりましたが、それでもお天気の良い日には出かけ、描き続けた絵は3000枚を超えたといいます。
「これからは若い人に平和のバトンをつないでもらいたい」
広島市立基町高校では、広島平和文化センターとともに2007年から、被爆者の記憶に残る光景を「原爆の絵」として残すプロジェクトを始めました。被爆者と高校生がいっしょになって絵を描くことによって、被爆体験を若い世代へと継承していくためです。
本書では、広島で12歳のとき被爆した兒玉光雄さんと高校2年生の津村果奈さんの二人が紹介されています。（表紙写真はこのお二人）
制作中の様子も紹介されています。兒玉さんの体験を聞き、当時の悲惨な状況を想像して描かれた絵は、とても高校生とは思えないような作品で、まさに入魂の作だと思いました。
最後は、東日本大震災と原発事故のために、福島県の飯館村から避難し、福島市内で家族７人で暮らす佐藤誠君一家の生活が紹介されています。
読み終えて、あらためて「平和のバトンをつないでいく」ことの大切さを思いました。私たちの一人ひとりがまず、家族など身近な人に伝えていく。それは、やろうとすれば出来ることなのです。
『暴力は絶対だめ！』 アストリッド・リンドグレーン
石井登志子／訳
岩波書店（2015年8月）900円
アストリッド・リンドグレーンは、『長くつ下のピッピ』や「やかまし村」シリーズなどを生んだ、スウェーデンの国民的児童文学作家です。
本書には、1978年にドイツ書店協会平和賞を受賞したリンドグレーンの名演説が収められています。
リンドグレーンは、授賞スピーチの中で、暴力と権威主義、とくに、子どもたちが最も被害を受ける家庭内暴力の問題について、強く訴えました。
訳者の石井登志子さんはあとがきの中でこう語られています。
≪残念ながら、このスピーチがまだ重要な意味を持つほど、現在も世界中で争いが繰り返され、暴力がはびこっています。リンドグレーンの望みどおり、暴力のない公平で平和な世界が実現し、みんなが幸せになり、このスピーチが必要でなくなる時がくるようにと願っています。≫
今年は『長ぐつ下のピッピ』が出版されてちょうど70周年だということです。
カバー絵は、リンドグレーン賞を受賞された荒井良二さん。
石井登志子／訳
岩波書店（2015年8月）900円
アストリッド・リンドグレーンは、『長くつ下のピッピ』や「やかまし村」シリーズなどを生んだ、スウェーデンの国民的児童文学作家です。
本書には、1978年にドイツ書店協会平和賞を受賞したリンドグレーンの名演説が収められています。
リンドグレーンは、授賞スピーチの中で、暴力と権威主義、とくに、子どもたちが最も被害を受ける家庭内暴力の問題について、強く訴えました。
訳者の石井登志子さんはあとがきの中でこう語られています。
≪残念ながら、このスピーチがまだ重要な意味を持つほど、現在も世界中で争いが繰り返され、暴力がはびこっています。リンドグレーンの望みどおり、暴力のない公平で平和な世界が実現し、みんなが幸せになり、このスピーチが必要でなくなる時がくるようにと願っています。≫
今年は『長ぐつ下のピッピ』が出版されてちょうど70周年だということです。
カバー絵は、リンドグレーン賞を受賞された荒井良二さん。
『小さな魚』 エリック・C・ホガード／作
犬飼和雄／訳 冨山房（1969年初版 1995年改訂新版第１刷）
本書は、第二次世界大戦末期の荒れ果てたイタリアで、11歳の孤児グイドが、アンナとその弟のマリオという二人の仲間を守りながら、ナポリからカッシノまでを放浪し、戦争による飢えと孤独と恐怖のなかを生きぬいていく物語です。旅の途中で、幼いマリオは命を落とします。物語は、二人を引き取ってくれる大人も、住む家も、まだ見つからないままで終わります。
作者は、1923年デンマーク生まれ。17歳のときアメリカに渡り、後にカナダに移ります。第２次世界大戦にパイロットとして参加し、イタリアへもいっています。現在はアイルランド在住とあります。ホガードの作品はいずれも英語で書かれているということです。
＜もう一つのあとがき ― 訳者の言葉＞より
“ずっと昔から、人間の世界には、いい考えと悪い考えがあった。いつも、いい考えをもった人間は、悪い考えをもった人間をやっつけようとする。おたがいににくしみあうことしかできなくなる。やがて、自分は正しいのだからといって、相手をなぐっても平気になるし、人殺しだってしかねなくなる。しまいには戦争になっていく。
どちらがよくて、どちらが悪いとか、悪いやつはやっつけなければ、と考えるかぎり、この世の中から戦争はなくならないのではないかと思う。
よくとも、悪くとも、それは同じ人間どうしのいだいた考え方の相違にすぎないのだ。
グイドが泥棒をナイフで殺さなかったのも、相手が同じ人間だとわかっていたからだ。そして、そう考えることが、じつは人間としていちばん大切なことだし、同時にいちばんむずかしいことなのだと思う。
大人になるにしたがい、グイドが心の中から逃げだそうとする。そのとき、グイドを思い出してもらえたらと思う。”
本書はすぐれた戦争児童文学だとの定評があり、数々の賞も受賞しているということですが、読んでみてそれが納得できました。ホガードの他の作品もぜひ読んでみたいと思っています。
犬飼和雄／訳 冨山房（1969年初版 1995年改訂新版第１刷）
本書は、第二次世界大戦末期の荒れ果てたイタリアで、11歳の孤児グイドが、アンナとその弟のマリオという二人の仲間を守りながら、ナポリからカッシノまでを放浪し、戦争による飢えと孤独と恐怖のなかを生きぬいていく物語です。旅の途中で、幼いマリオは命を落とします。物語は、二人を引き取ってくれる大人も、住む家も、まだ見つからないままで終わります。
作者は、1923年デンマーク生まれ。17歳のときアメリカに渡り、後にカナダに移ります。第２次世界大戦にパイロットとして参加し、イタリアへもいっています。現在はアイルランド在住とあります。ホガードの作品はいずれも英語で書かれているということです。
＜もう一つのあとがき ― 訳者の言葉＞より
“ずっと昔から、人間の世界には、いい考えと悪い考えがあった。いつも、いい考えをもった人間は、悪い考えをもった人間をやっつけようとする。おたがいににくしみあうことしかできなくなる。やがて、自分は正しいのだからといって、相手をなぐっても平気になるし、人殺しだってしかねなくなる。しまいには戦争になっていく。
どちらがよくて、どちらが悪いとか、悪いやつはやっつけなければ、と考えるかぎり、この世の中から戦争はなくならないのではないかと思う。
よくとも、悪くとも、それは同じ人間どうしのいだいた考え方の相違にすぎないのだ。
グイドが泥棒をナイフで殺さなかったのも、相手が同じ人間だとわかっていたからだ。そして、そう考えることが、じつは人間としていちばん大切なことだし、同時にいちばんむずかしいことなのだと思う。
大人になるにしたがい、グイドが心の中から逃げだそうとする。そのとき、グイドを思い出してもらえたらと思う。”
本書はすぐれた戦争児童文学だとの定評があり、数々の賞も受賞しているということですが、読んでみてそれが納得できました。ホガードの他の作品もぜひ読んでみたいと思っています。
『杉原千畝と命のビザ』― 自由への道 ケン・モチヅキ／作
ドム・リー／絵 中家多惠子／訳
汐文社（2015年7月）1600円
『パパ・ヴァイト』― ナチスに立ち向かった盲目の人
インゲ・ドイチュクローン／作
ルーカス・リューゲンベルク／絵 藤村美織／訳
汐文社（2015年8月）1600円
２冊とも、ナチスからユダヤ人たちを救った人のことが書かれた絵本です。
『杉原千畝と命のビザ』
第二次世界大戦中、リトアニアの外交官だった杉原千畝は、ナチス・ドイツに占領されたポーランドから避難してきたユダヤ人に対し、日本政府に背いてビザを発給し続けます。
本書では、父千畝と家族が経験したことが、当時5歳だった息子弘樹さんの視点から描かれています。
原書は１２万５千部を越えるベストセラーとなり、海外で数々の賞を受賞したということです。
『パパ・ヴァイト』
ナチスの反ユダヤ政策に対抗し、ユダヤ人障害者たちを救ったドイツ人オットー・ヴァイト。彼は、ユダヤ人が多く働くベルリンの盲人作業所の所長で、自身もほとんど目が見えませんでした。
ヴァイトは何度も身を挺して、ナチスの秘密警察から、ユダヤ人作業者たちを守り続けました。
彼に助けられたインゲ・ドイチュクローンの子ども時代の視点から書かれ、功績をやさしく分かりやすく紹介しています。
ドム・リー／絵 中家多惠子／訳
汐文社（2015年7月）1600円
『パパ・ヴァイト』― ナチスに立ち向かった盲目の人
インゲ・ドイチュクローン／作
ルーカス・リューゲンベルク／絵 藤村美織／訳
汐文社（2015年8月）1600円
２冊とも、ナチスからユダヤ人たちを救った人のことが書かれた絵本です。
『杉原千畝と命のビザ』
第二次世界大戦中、リトアニアの外交官だった杉原千畝は、ナチス・ドイツに占領されたポーランドから避難してきたユダヤ人に対し、日本政府に背いてビザを発給し続けます。
本書では、父千畝と家族が経験したことが、当時5歳だった息子弘樹さんの視点から描かれています。
原書は１２万５千部を越えるベストセラーとなり、海外で数々の賞を受賞したということです。
『パパ・ヴァイト』
ナチスの反ユダヤ政策に対抗し、ユダヤ人障害者たちを救ったドイツ人オットー・ヴァイト。彼は、ユダヤ人が多く働くベルリンの盲人作業所の所長で、自身もほとんど目が見えませんでした。
ヴァイトは何度も身を挺して、ナチスの秘密警察から、ユダヤ人作業者たちを守り続けました。
彼に助けられたインゲ・ドイチュクローンの子ども時代の視点から書かれ、功績をやさしく分かりやすく紹介しています。
『国境を越えて』 ウイリアム・カプラン，シェリー・タナカ／文
シュテファン・テイラー／絵
千葉茂樹・訳 ＢＬ出版（2001年）1600円
この物語は、第２次世界大戦下、ナチスドイツの迫害を逃れ、リトアニアからカナダまで、地球の４分の３にもおよぶ距離を、１年半にわたって旅しつづけた家族を、主人公の少年イーゴルの目を通してえがいたものです。
リトアニアの海辺の町メーメルに暮らしていたカプラン一家は、リトアニアを出ていくためにビザを手に入れなければなりませんでしたが、手だてのないまま、時間はどんどん過ぎていきました。
8月末のある日、カウナスのスギハラという日本の領事が、ユダヤ人にソ連を通って日本へはいるためのビザを出してくれるらしいとわかりました。
日本領事館の前には、何百人という人があふれていました。ちょうどその時、領事館の門があき、車が出て来ました。車を運転しているのは疲れた顔をした杉原領事でした。国からもうこれ以上、ビザを発行することを禁じられ、出て行かなければならなかったのです。
お父さんは車を追いかけて走り、窓をたたきました。
「おねがいです」
一家はまさに紙一重のところで命をつなぎとめることが出来たのです。
カプラン一家はついに、祖父母の暮らすカナダのコーンウォールに着きました。
大きくなって、イーゴルは弁護士に、妹のノーミは芸術家になりました。
本書の文を書いたウイリアム・カプランは、イーゴルの息子さんです。
杉原千畝について書かれた外国の絵本が二冊続きました。先日ご紹介した『杉原千畝と命のビザ』に続き、本書でも杉原千畝が大きな役割を持った人物として描かれています。
シュテファン・テイラー／絵
千葉茂樹・訳 ＢＬ出版（2001年）1600円
この物語は、第２次世界大戦下、ナチスドイツの迫害を逃れ、リトアニアからカナダまで、地球の４分の３にもおよぶ距離を、１年半にわたって旅しつづけた家族を、主人公の少年イーゴルの目を通してえがいたものです。
リトアニアの海辺の町メーメルに暮らしていたカプラン一家は、リトアニアを出ていくためにビザを手に入れなければなりませんでしたが、手だてのないまま、時間はどんどん過ぎていきました。
8月末のある日、カウナスのスギハラという日本の領事が、ユダヤ人にソ連を通って日本へはいるためのビザを出してくれるらしいとわかりました。
日本領事館の前には、何百人という人があふれていました。ちょうどその時、領事館の門があき、車が出て来ました。車を運転しているのは疲れた顔をした杉原領事でした。国からもうこれ以上、ビザを発行することを禁じられ、出て行かなければならなかったのです。
お父さんは車を追いかけて走り、窓をたたきました。
「おねがいです」
一家はまさに紙一重のところで命をつなぎとめることが出来たのです。
カプラン一家はついに、祖父母の暮らすカナダのコーンウォールに着きました。
大きくなって、イーゴルは弁護士に、妹のノーミは芸術家になりました。
本書の文を書いたウイリアム・カプランは、イーゴルの息子さんです。
杉原千畝について書かれた外国の絵本が二冊続きました。先日ご紹介した『杉原千畝と命のビザ』に続き、本書でも杉原千畝が大きな役割を持った人物として描かれています。
むのたけじ『100歳のジャーナリストからきみへ』
（全５巻−学ぶ・平和・生きる・育つ・人類）より ― １・２巻
武野武治・刊 聖子／著
汐文社（2015年）1500円
本書は、むのたけじさんの言葉や文章を、フリーライターの菅聖子さんが選び、子ども向けにわかりやすく解説したものです。大人になる前に学んでほしい、生き方や考え方についての、むのさんの思いが、いっぱいつまっています。
第1巻の「学ぶ」に続いて、２巻の「平和」を読み終えました。３〜５巻も順次出版されることと思います。
今、「平和」が手元にありますので、たくさんのメッセージの中から一つ紹介してみます。
＜人と人は敬い合おう。すると対立が一対になる＞
むのさんが日本の学生に質問すると、多くは「対立」という言葉を上げるそうです。しかし、中国の学生の多くは、「一対」と答えます。
「日本のなりたちを書いた『古事記』には、『男の神と女の神が一対になり、日本の島々が生まれた』と書かれています。その意味を考えれば、日本人も『対』という漢字に、ちがうものや対立するものが一対になって新しい命を生むことを連想するべきではないでしょうか」
一対となるためには、お互いの違う部分を認め合い、受け入れ合うことです。相手を心から敬う気持ちを持てば対立は消え、結びつきを深めていくことができます。
＜どうしたら、戦争を必要としない世の中をつくれるか、戦争をやりたいものがあらわれても戦争のやれない世の中をつくれるか。子どもたちも、大人たちもいっしょになって最高の知恵を絞ってそれを実行しないといけない。＞ ― むのたけじ
＜くり返し読んでみてください。そして身近な人といっしょに、平和とは何かを語り合ってもらえたらと思います。＞ ― 菅 聖子
むのたけじさんについては、≪元気な本棚・世界の平和を願って・その４≫でも紹介しています。
『ユガンスン』― 朝鮮のジャンヌ・ダルク
仲村 修・文 金 石出・絵
ソウル書林（1993年）1800円
ユガンスン（柳寛順）は「朝鮮のジャンヌ・ダルク」とよばれ、韓国の子どもたちは、社会の時間に3.1独立運動の勉強をするとき、かならずユガンスンのことをならうということです。切手にもなっていますし、ソウルには銅像が三つ立っています。また、本屋さんの児童書コーナーには、ユガンスンの伝記が、偉人の一人として、何種類もならんでいるということです。
ナチズムの犠牲になった少女アンネ・フランクに関する本は、日本でもたくさん出版されています。でも、それに比べて、日本の軍国主義の犠牲になったユガンスンに関しては、ほとんど知られることがありませんでした。
日本の朝鮮侵略の歴史すら、詳しくは知らないことにがくぜんとします。
朝鮮を侵略した日本は、1910年、ついに朝鮮（大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国）を植民地にしてしまいました。以来1945年に第二次世界大戦で日本が敗戦するまで、36年という長い年月、その支配は続いたのです。
1919年の3.1独立運動は、朝鮮のほとんどの人びとが立ち上がり、約１年間にわたって全国的にくり広げされました。これに対する日本の弾圧はすさまじいものでした。
独立運動で、カンスンは両親を目の前で殺され、自身も投獄され、拷問を受けました。牢獄でも、命をすてるかくごで戦いをやめないカンスンは、とうとう広さが一メートル四方しかない独房にうつされ、しだいに体が弱り、息をひきとりました。あまりにも短い一生でした。
戦争を描いた本は、被害者と加害者の、どちらの立場から書かれた本も知ることが大切なのですが、日本人の加害について書かれたものは、被害者の立場から書かれた本より、ずっと少ないのではないでしょうか。
これまで、さまざまな戦争と平和関連の本に出会い、≪元気な本棚≫でも、何年かにわたって＜世界の平和を願って＞のコーナーで、戦争と平和を考える本を紹介してきましたが、あらためて振りかえってみると、日本人の加害について書かれた本がなかったのではないか、また、さらに気づいたことは、平和のために尽くした、様々な国の人々との出会いがありましたが、朝鮮の国とその人々を描いた本との出会いがなく、一冊も紹介出来ていなかったことにも、愕然とする思いでした。さらに一歩踏み込んで積極的に探せば見つかったのでしょうが、そこまでに至らなかった自分に気づかせてくれたのが、この『ユガンスン』でした。
本書との出会から、さまざまなことを考えさせられました。聖徳太子の時代よりももっと古くから交流があり、日本にさまざまな文化を伝えてくれた国、しかもいちばん近い国でありながら、私たち日本人は朝鮮についてほとんど詳しくは知らない、知らされてこなかったのです。そのことを意識していながら、長い年月をぼーっと過ごしてきた自分にきっかけを与えてくれたのが、この16歳の少女ユガンスンだったのです。
ユガンスンのこと、そして朝鮮のことをもっと知りたくて、二冊の本を読みました。続けてご紹介できたらと思っています。
自分から目を開こうとしなければならない。広い世界へ心の目を開き、真実を知ること。読書がそれを助け、道を示してくれるのだということを、あらためて感じました。
仲村 修・文 金 石出・絵
ソウル書林（1993年）1800円
ユガンスン（柳寛順）は「朝鮮のジャンヌ・ダルク」とよばれ、韓国の子どもたちは、社会の時間に3.1独立運動の勉強をするとき、かならずユガンスンのことをならうということです。切手にもなっていますし、ソウルには銅像が三つ立っています。また、本屋さんの児童書コーナーには、ユガンスンの伝記が、偉人の一人として、何種類もならんでいるということです。
ナチズムの犠牲になった少女アンネ・フランクに関する本は、日本でもたくさん出版されています。でも、それに比べて、日本の軍国主義の犠牲になったユガンスンに関しては、ほとんど知られることがありませんでした。
日本の朝鮮侵略の歴史すら、詳しくは知らないことにがくぜんとします。
朝鮮を侵略した日本は、1910年、ついに朝鮮（大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国）を植民地にしてしまいました。以来1945年に第二次世界大戦で日本が敗戦するまで、36年という長い年月、その支配は続いたのです。
1919年の3.1独立運動は、朝鮮のほとんどの人びとが立ち上がり、約１年間にわたって全国的にくり広げされました。これに対する日本の弾圧はすさまじいものでした。
独立運動で、カンスンは両親を目の前で殺され、自身も投獄され、拷問を受けました。牢獄でも、命をすてるかくごで戦いをやめないカンスンは、とうとう広さが一メートル四方しかない独房にうつされ、しだいに体が弱り、息をひきとりました。あまりにも短い一生でした。
戦争を描いた本は、被害者と加害者の、どちらの立場から書かれた本も知ることが大切なのですが、日本人の加害について書かれたものは、被害者の立場から書かれた本より、ずっと少ないのではないでしょうか。
これまで、さまざまな戦争と平和関連の本に出会い、≪元気な本棚≫でも、何年かにわたって＜世界の平和を願って＞のコーナーで、戦争と平和を考える本を紹介してきましたが、あらためて振りかえってみると、日本人の加害について書かれた本がなかったのではないか、また、さらに気づいたことは、平和のために尽くした、様々な国の人々との出会いがありましたが、朝鮮の国とその人々を描いた本との出会いがなく、一冊も紹介出来ていなかったことにも、愕然とする思いでした。さらに一歩踏み込んで積極的に探せば見つかったのでしょうが、そこまでに至らなかった自分に気づかせてくれたのが、この『ユガンスン』でした。
本書との出会から、さまざまなことを考えさせられました。聖徳太子の時代よりももっと古くから交流があり、日本にさまざまな文化を伝えてくれた国、しかもいちばん近い国でありながら、私たち日本人は朝鮮についてほとんど詳しくは知らない、知らされてこなかったのです。そのことを意識していながら、長い年月をぼーっと過ごしてきた自分にきっかけを与えてくれたのが、この16歳の少女ユガンスンだったのです。
ユガンスンのこと、そして朝鮮のことをもっと知りたくて、二冊の本を読みました。続けてご紹介できたらと思っています。
自分から目を開こうとしなければならない。広い世界へ心の目を開き、真実を知ること。読書がそれを助け、道を示してくれるのだということを、あらためて感じました。
『柳寛順の青い空』― 韓国で歴史をふりかえる
早乙女勝元・編 草の根出版会（1995年）2200円＋税
先日、「『ユガンスン』― 朝鮮のジャンヌ・ダルク」（仲村 修・文）という絵本との出会いがありました。この少女のことをもっと詳しく知りたい、それとともに時代背景や朝鮮の歴史についても知るきっかけになる本はないかと探し、二冊の本に出会うことが出来ました。
まず本書の紹介から。著者の早乙女勝元さんは、東京大空襲を体験された方で、『戦争と青春』『東京大空襲』などの著書があります。また、自国のことだけでなく、『ベトナムのダーちゃん』や、『アンネ・フランク』『アウシュビッツ』なども著されています。そして、本書『柳寛順の青い空』は、加害の側からの日本人が描かれています。本当に平和を願う姿勢とは、このようなことを言うのではないでしょうか。
被害と加害の両方の歴史を学ぶことが真実を知ることになり、正しい歴史認識ができる。そうしてはじめて、韓国民とほんとうの友情を結ぶことができるのではないか。加害の歴史に目をつぶっていては未熟な人間のままで、結局自分を成長させることにはならないのではないでしょうか。日本が韓国を侵略し、36年間植民地化していたこと。もし、これが逆だったらと想像したらどうでしょうか？
写真・左は、柳寛順記念祠を訪れ、記念写真を写す韓国の小学生。
右は、柳寛順（右上の写真・下の写真の右）と早乙女勝元さん
早乙女勝元・編 草の根出版会（1995年）2200円＋税
先日、「『ユガンスン』― 朝鮮のジャンヌ・ダルク」（仲村 修・文）という絵本との出会いがありました。この少女のことをもっと詳しく知りたい、それとともに時代背景や朝鮮の歴史についても知るきっかけになる本はないかと探し、二冊の本に出会うことが出来ました。
まず本書の紹介から。著者の早乙女勝元さんは、東京大空襲を体験された方で、『戦争と青春』『東京大空襲』などの著書があります。また、自国のことだけでなく、『ベトナムのダーちゃん』や、『アンネ・フランク』『アウシュビッツ』なども著されています。そして、本書『柳寛順の青い空』は、加害の側からの日本人が描かれています。本当に平和を願う姿勢とは、このようなことを言うのではないでしょうか。
被害と加害の両方の歴史を学ぶことが真実を知ることになり、正しい歴史認識ができる。そうしてはじめて、韓国民とほんとうの友情を結ぶことができるのではないか。加害の歴史に目をつぶっていては未熟な人間のままで、結局自分を成長させることにはならないのではないでしょうか。日本が韓国を侵略し、36年間植民地化していたこと。もし、これが逆だったらと想像したらどうでしょうか？
写真・左は、柳寛順記念祠を訪れ、記念写真を写す韓国の小学生。
右は、柳寛順（右上の写真・下の写真の右）と早乙女勝元さん
『もっと知ろう朝鮮』 尹 健次・著
岩波ジュニア新書（2001年）740円
≪日本と朝鮮は海をはさんだ隣どうし。古代からの文化交流、近代日本の歴史が落とす深い影、統一への模索をはじめた南北朝鮮のありよう、そして60数万人の在日朝鮮人の暮らしに目をむけ、21世紀をともに生きる道をさぐる必読の一冊。言い古された「近くてとおい国」を精算するために、もっと知ろう朝鮮！≫（裏表紙・紹介文）
戦争を描いた本は、被害と加害のどちらの立場にたった本も読まなくては、正しい歴史認識には至らない。「『ユガンスン』― 朝鮮のジャンヌ・ダルク」（仲村 修・文）をきっかけに読んだ２冊の本の残る１冊です。
著者の尹 健次さんは、1944年生まれの在日朝鮮人二世。京都大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。神奈川大学教授。
「�� 朝鮮と日本の交流史」だけでも、さまざまな発見がありました。古代、大陸からさまざまな文化がもたらされましたが、朝鮮からもたらされた文化も、日本の文化と一体化していき、今ではすっかりそのことに気づかないでいるものも多いのです。
例えば、聖武天皇の時代の僧・行基は、飢えや貧乏に苦しむ人びとを救おうと、辻々にたって仏の教えを説き、諸所の要害の地に橋を造り、場防を築いたということは、よく知られていますが、百済からの渡来人の子孫だったことを知っている人はどれだけいるのでしょうか？知っていても「ああそうなのか」で通り過ぎているのかも知れません。日本人のために尽くしてくれた朝鮮人の子孫がいたことを思うと、心に温かいものが湧き、感謝の気持ちも生まれます。そこまでに至らないと、本当に歴史を学んだ意味があるとはいえないのではないでしょうか。
また、すばらしい芸術作品も伝えられました。その中の一つ、日本の陶磁器生産に決定的な影響をあたえた「李朝白磁」は、世界の名品としてその名をとどめています。
有田焼、唐津焼、薩摩焼、上野焼、高取焼、萩焼はいずれも、秀吉の朝鮮侵略のさい、日本の大名たちによってつれてこられた朝鮮人陶工によってはじめられました。
私たちが日々の食事の時に手にし、生活に潤いをもたらしてくれている食器にも、そういった歴史が秘められているのです。
朝鮮は、日本に数々の文化をもたらしてくれ、そして日本人のなかには朝鮮人の血が入り、一体化しているのです。それがわかれば、仲良くするのは自然で当たり前のことになります。こういった歴史を知ることの大切さをつくづく感じました。
第�犠呂両匆陲世韻把垢�なってしまいました。
ジュニア新書シリーズは、大人の入門編としてもお薦めです。
『子どもたちの朝鮮戦争』− ユギオ6･25
李元寿・姜小泉・申東一・権正生＝著
仲村修＝編・訳 素人社（1998年）1700円
1950年６月２５日、朝鮮戦争は起こりました。第２次世界大戦後の痛ましい傷が残る朝鮮で、国民はまたもや悲惨な目に遭うことになるのです。
朝鮮は36年間にもおよぶ日本の植民地支配からやっと解放されて、新しい国を自分たちの力でつくることができると希望にもえました。しかし、北半分はソ連軍に、南半分はアメリカ軍によって占領されて、38度線が作られてしまいました。
この戦争は16ヵ国がくわわった複雑なしくみの戦争で、多くの国の人びとが犠牲になりました。しかしなんと言っても韓国・朝鮮の人びとが兄弟どうし、親子どうし敵味方になって戦ったことは、心に大きな傷をもたらしました。
本書は、朝鮮戦争をテーマにした韓国の童話集です。
『アキギミの思い出』は、朝鮮戦争下、国軍兵士と人民軍兵士が特殊な状況のなかで助け合ってその場を生きのびる話です。
『夢をうつす写真館』『ばあちゃんと手をつないで』は、南北分断のために別れ別れになってしまった家族や親しい人への切ない思いが伝わってくるお話でした。
国は違っても戦争で悲惨な目に遭った人びとの思いは皆同じです。さまざまな国の戦争児童文学にふれる機会がありましたが、この韓国の童話集に出会えたことで、今まで欠けていたものに気づかされ、目が覚めた思いがし、遠くて近いと言われているお隣の国がぐんと身近になった気がしました。
巻末に、素人社の「コリア児童文学選」の紹介もありました。
「児童文学を通して南と北を、日本と朝鮮半島を、共感の懸け橋でつなげたい。このような想いの大人たちが、民族と国籍を越えて協力しあい、出版されたということです。
李元寿・姜小泉・申東一・権正生＝著
仲村修＝編・訳 素人社（1998年）1700円
1950年６月２５日、朝鮮戦争は起こりました。第２次世界大戦後の痛ましい傷が残る朝鮮で、国民はまたもや悲惨な目に遭うことになるのです。
朝鮮は36年間にもおよぶ日本の植民地支配からやっと解放されて、新しい国を自分たちの力でつくることができると希望にもえました。しかし、北半分はソ連軍に、南半分はアメリカ軍によって占領されて、38度線が作られてしまいました。
この戦争は16ヵ国がくわわった複雑なしくみの戦争で、多くの国の人びとが犠牲になりました。しかしなんと言っても韓国・朝鮮の人びとが兄弟どうし、親子どうし敵味方になって戦ったことは、心に大きな傷をもたらしました。
本書は、朝鮮戦争をテーマにした韓国の童話集です。
『アキギミの思い出』は、朝鮮戦争下、国軍兵士と人民軍兵士が特殊な状況のなかで助け合ってその場を生きのびる話です。
『夢をうつす写真館』『ばあちゃんと手をつないで』は、南北分断のために別れ別れになってしまった家族や親しい人への切ない思いが伝わってくるお話でした。
国は違っても戦争で悲惨な目に遭った人びとの思いは皆同じです。さまざまな国の戦争児童文学にふれる機会がありましたが、この韓国の童話集に出会えたことで、今まで欠けていたものに気づかされ、目が覚めた思いがし、遠くて近いと言われているお隣の国がぐんと身近になった気がしました。
巻末に、素人社の「コリア児童文学選」の紹介もありました。
「児童文学を通して南と北を、日本と朝鮮半島を、共感の懸け橋でつなげたい。このような想いの大人たちが、民族と国籍を越えて協力しあい、出版されたということです。
『おかあさんのいのり』 武鹿悦子・作 江頭路子・絵
岩崎書店（2015年7月）1400円
朝日新聞の記事で知った本です。子どもの頃に戦争を体験した作家に、平和への思いと、子どもたちに読んでもらいたい本を聞くインタビューが始まり、その第１回目ということで、児童文学作家のあまんきみこさんによるお薦めの３冊が紹介されていました。
こんな企画があったらいいなあと思っていたので、とても嬉しく思いました。
紹介されていた本は、本書の他に、『彼岸花はきつねのかんざし』（朽木祥・文、ささめやゆき・絵、岩崎書店）と、『世界の果てのこどもたち』（中脇初枝・著、講談社）でした。
まず、『おかあさんのいのり』を読んでみました。
こどもが生まれてきてくれた感動、育てる喜び。
おかあさんは祈ります。
この子が大きくなったとき、その手がどうか、銃などにぎりませんように。
かけがえのないものが、この世界にはたくさんあるのです。それをこどもたちからうばわないで！と。
武鹿悦子さんの詩がとても素晴らしいです。あまんきみこさんは、ぜひ声に出して読んでほしい、とおっしゃっています。
江頭路子さんの絵には、『せんそうしない』（谷川俊太郎・作）で初めて出会い、とても感動しました。本書でも素晴らしい絵を描いてくださっています。江頭さんは1978年生まれ。一児のお母さんでもあります。
岩崎書店（2015年7月）1400円
朝日新聞の記事で知った本です。子どもの頃に戦争を体験した作家に、平和への思いと、子どもたちに読んでもらいたい本を聞くインタビューが始まり、その第１回目ということで、児童文学作家のあまんきみこさんによるお薦めの３冊が紹介されていました。
こんな企画があったらいいなあと思っていたので、とても嬉しく思いました。
紹介されていた本は、本書の他に、『彼岸花はきつねのかんざし』（朽木祥・文、ささめやゆき・絵、岩崎書店）と、『世界の果てのこどもたち』（中脇初枝・著、講談社）でした。
まず、『おかあさんのいのり』を読んでみました。
こどもが生まれてきてくれた感動、育てる喜び。
おかあさんは祈ります。
この子が大きくなったとき、その手がどうか、銃などにぎりませんように。
かけがえのないものが、この世界にはたくさんあるのです。それをこどもたちからうばわないで！と。
武鹿悦子さんの詩がとても素晴らしいです。あまんきみこさんは、ぜひ声に出して読んでほしい、とおっしゃっています。
江頭路子さんの絵には、『せんそうしない』（谷川俊太郎・作）で初めて出会い、とても感動しました。本書でも素晴らしい絵を描いてくださっています。江頭さんは1978年生まれ。一児のお母さんでもあります。
『戦争といのちと 聖路加国際病院ものがたり』
日野原重明・著 小学館（2015年9月）1200円
聖路加国際病院は、アメリカ人のルドルフ・Ｂ・トイスラーが開設した、110年以上の歴史をもつ病院です。日野原重明さんは、太平洋戦争が始まった1941年、ここに内科医として勤務。それ以来ずっといのちと向き合ってこられました。
本書では、この聖路加国際病院で起こった戦中戦後の出来事をふりかえり、いのちと平和の尊さを次の世代の人たちに語り継ぐことが自分の大切な使命だと、稀有な体験をあますところなく語られています。
病院は戦後すぐに、戦勝国のGHQ（連合国軍最高司令官総合司令部）に建物をすべて取り上げられました。それらがすべて返還されたのは、10年8か月後の1956年5月25日でした。盛大な返還式がチャペルでおこなわれました。
子どもたちに「憎しみをのりこえてゆるし合うこと」の大切さを伝える、渾身の一冊です。
『１９歳の小学生』 久郷ポンナレット・久郷真輝／著
メディアイランド（2015年11月）2000円
大好きだった祖国カンボジア。ポルポト派が政権を握った悲惨な時代を耐えて生きぬいた少女は、両親と、８人兄妹のうち４人を失い、奇跡的な再会を果たした兄たちとともに、難民として日本にやってきました。
学校に行くのが夢だった少女は、16歳から19歳まで、日本の小学校に通い、読み書きを覚えました。
その少女は大人になり、娘さんと共にこの本を書きました。
地獄のような日々を耐えた４年間のこと、その後、日本にやってくるまでの日々、日本での生活、カンボジアへの慰霊の旅のことなどが語られます。
娘・真輝さんは、お母さんの生き方を見て育ち、子ども時代に家族で訪れたカンボジアでの体験、カンボジアへの慰霊の旅などをとおして、心に平和への思いを育てていきます。
ポンナレットさんは、悲惨な戦争による心の傷を乗り越えて、平和の大切さを語り継ぐための講演を各地で行っています。
カンボジアの伝統舞踊には、「世界平和と人々の幸せを祈る」という意味が込められているということです。真輝さんは大学２年生の時、単独でカンボジアへ渡り、カンボジア舞踊を習い、現在はカンボジア舞踊を通して、母・ポンナレットさんの平和への活動を支えています。
久郷ポンナレットさんの著書は、一般書では『虹色の空−カンボジア虐殺を超えて』（春秋社）が出版されています。
メディアイランド（2015年11月）2000円
大好きだった祖国カンボジア。ポルポト派が政権を握った悲惨な時代を耐えて生きぬいた少女は、両親と、８人兄妹のうち４人を失い、奇跡的な再会を果たした兄たちとともに、難民として日本にやってきました。
学校に行くのが夢だった少女は、16歳から19歳まで、日本の小学校に通い、読み書きを覚えました。
その少女は大人になり、娘さんと共にこの本を書きました。
地獄のような日々を耐えた４年間のこと、その後、日本にやってくるまでの日々、日本での生活、カンボジアへの慰霊の旅のことなどが語られます。
娘・真輝さんは、お母さんの生き方を見て育ち、子ども時代に家族で訪れたカンボジアでの体験、カンボジアへの慰霊の旅などをとおして、心に平和への思いを育てていきます。
ポンナレットさんは、悲惨な戦争による心の傷を乗り越えて、平和の大切さを語り継ぐための講演を各地で行っています。
カンボジアの伝統舞踊には、「世界平和と人々の幸せを祈る」という意味が込められているということです。真輝さんは大学２年生の時、単独でカンボジアへ渡り、カンボジア舞踊を習い、現在はカンボジア舞踊を通して、母・ポンナレットさんの平和への活動を支えています。
久郷ポンナレットさんの著書は、一般書では『虹色の空−カンボジア虐殺を超えて』（春秋社）が出版されています。
『国をつなぐ奇跡の鳥 − クロツラヘラサギ』日本・韓国・朝鮮の架け橋
今関信子・著 汐文社（2015年11月）1400円
熊本県八代市の鏡川河口付近の干潟には、めずらしい渡り鳥であるクロツラヘラサギが毎年飛来します。ある日、この近くにある八代市立鏡西部小学校に、一本の電話がかかってきました。
「クロツラヘラサギが、どこでどんなふうに冬を越しているのか見てみたい、という韓国の子どもたちがいる。日本の子どもたちと、クロツラヘラサギの観察をつうじた交流会を計画できないか」というものでした。
また、山階鳥類研究所に来た、朝鮮からの航空便での問い合わせを受けて、クロツラヘラサギの足輪につけられた標識番号をたどっていくうちに、南北朝鮮で離ればなれになった親子をひき会わせることになった、という信じられないような出来事もありました。
絶滅危惧種・クロツラヘラサギを守る環境活動が、人と人、国と国をつなぎ、広がっていきます。
「国境を越えて、自由に行き来しているクロツラヘラサギ。人間も、国どうしのいざこざもすべてとりはらって、みんなでこの地球に生きていることを喜び合いたい･･･」（本文より）
今、この本に込められたメッセージをかみしめています。
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