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剣聖伝 上泉伊勢守信綱コミュの【本編】約束

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今から470年前に,約束という日本語が日常的に使用されていたかは知らない。
ただ,その意味するところは確かにあった。

約束は己を縛る。
と同時に,己を支える。

陰流免許皆伝を拝受した以降,秀綱が生涯ただ一度だけ,破れた相手が,小具足の達人,竹内久盛である。
1539年の夏であった。

その後,文字通り命を削る修行を積み,1545年に雪辱を果たすまでの間。
秀綱と久盛には,余人の知れない固い約束があったのである。

このエピソードを知る者は,秀綱の弟子にさえいない。
唯一,柳生石舟斉が新蔭流の正式伝承者になった際,その象徴たる無刀取を信綱に披露した時に,天下を握る者の必要条件として,たとえ話の形で語られた匿名の秘話に過ぎない。

秀綱はそれを公にすることを恥じたのではない。
すべては,久盛との約束を守ったに過ぎない。

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1539年春,上野の国は戦乱の中にも一服の安堵を得ていた。
箕輪城主,長野業政は,苦笑した。
おのが右腕と頼む秀綱が,あのまなざしで言い出せば,決して後には引かぬことを知っていたからである。
武将として,家臣としてではなく,一介の剣士として,他国の強者と手合わせの旅に出たいという願いであった。

「伊勢守,このたびは,いつ戻る?」
「は,今まで相手したことのない技の使い手にて,もしや破れるようなことがあれば,戻らぬやらもしれませぬ」
その口調は,冗談とは思えない覚悟が感じられた。

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